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カテゴリー「誂え品(Bespoke accessories)」の10件の記事

2012年4月21日 (土)

Order made shirts(FRAYの特注Ⅱ)

今回はフライのオーダーシャツ続編。そもそもフライのシャツを再び注文しようと思い立ったきっかけは、最初にオーダーしたピンホールカラーのシャツがあちこち傷んでいるのが分かったため。後継を今のうちに用意しようと思ったので、2枚注文してそのうち1枚は最初と同じ白の織柄にしようと決めてから店に出向いた。ところが店に着いて生地見本を見たところ、当たり前だが昔と同じ生地が残っているはずもない。結局ベーシックな生地からよく似た生地のものを探して注文、晴れて今回受け取ったところだ。

それにしてもフライのオーダーは選択肢が広い。襟とカフのスタイルやステッチの入り方、胸ポケットの有無や前立てのスタイルなどベーシックな範囲でもかなり選べる。前回注文した時のことを忘れてしまったが3段階から選べる襟の硬さやタイスペースの間隔設定まであるのには驚いた。これにボタンの厚さやハンド部分の有無、ターンナップカフやダブルカフなどオプション価格有りの選択肢を加えるとオーダー慣れしている人でもさぞ迷うだろう。ということで出来上がったもう1枚のホワイトピンホールカラー・シャツを紹介してみる。

1.届いたばかりのシャツ

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フライのシャツはブリーニのシャツと並んで高級既成シャツのファクトリー、襟の仕上げの美しさに定評がある。ただ日本ではブリーニのシャツはブリオーニの傘下のためだろうか見かける機会が少ないのでフライの方がよく知られるているようだ。写真を見ても襟腰から綺麗に返る襟の美しさが分かると思う。サビルロウ仕立ての英国調スーツであっても日頃合わせるシャツは大抵の場合ターンブル&アッサーではなくフライなのがその証拠だ。

2.カフのデザイン

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先に紹介したラウンドカラーシャツのバレルカフ(左)と今回紹介する2代目の白シャツ(右)のシングルカフ。どちらも襟型に合ったカフスタイルに仕上げてもらった。もっとも白シャツの角切りはイレギュラーで注文主の好みだが…。モノグラミングは自分で好きなところに入れることができないので「購入店のアフターサービスを利用することもできます。」という店員の薦めに従って今回初めてイニシャルを付けずに注文した。カフのステッチはどちらも襟同様コバ縫いで仕上げている。

3.ロングポイントのピンホールカラーシャツ

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襟は通常のロングポイントカラー。クラシックな襟型だがピンホールにする場合はカラースティッフナーが入らないので芯地の硬さには気を配る必要がある。タイスペースを5㎜ほどとれば肉厚でノットが大きくなりがちなネクタイも合わせられるはず。次回はタイスペースを少し空けてみたい。生地はシャドーストライプと呼ばれる織柄の入ったもの。ストライプ部分をよく見るとトリプルステッチになっていて目立たぬとは言えかなり凝っている。

4.シャツのフィッティング

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トルソーに乗せて撮影してみたところ。背裏のダーツの効果でかなりフィットしているように見えるが、実際に着用した感じではボディサイズ(ネック15-1/2)をハーフ下げて15インチにし、背裏のダーツをとるとブルックスのエクストラスリムフィットに近い着心地になりそうだ。「ドレスシャツには胸ポケットは付けないもの」と言ったのはローマのシャツ屋ミコッチの主人だったが、付けても付けなくても価格は変わらないのであれば「あると何かと便利な胸ポケット」を付けない理由もなく、お願いした。

5.ブレザースタイルに合わせて

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スーツにピンホールカラー・シャツはよく合わせているので、ここではブレザーの下に挟んでみた。用意したブレザーはブルネロ・クチネリのもの。以前も紹介したシングルピークドラペルのもので、これくらい個性的なデザインの方がピンホールカラーのシャツに負けない。下はグレンチェックのインコテックスJ35に軽い履き心地のブラウン・ローファー。これからの季節は明茶色のローファーが何ペアか欲しいところだ。

6.アズーロ・エ・マローネ

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ネクタイは白地に青と茶のストライプが入った春夏もの。他にはない色合いが特徴のステファノ・ビジのものだ。イタリア紳士の色合わせでは定番のアズーロ・エ・マローネ(青と茶)になっているところなど如何にもの配色。それならばとポケットチーフも青と茶の混ざったシルクのペイズリー柄をパフスタイルで挿してみた。春から夏にかけては明るめの色使いや素材使いなどイタリア男性の着こなしを参考にすることが多い。

7.素材感を合わせる

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平織りのウール素材を用いたブレザーと同じく平織りのシルクタイ。間に挟んだシャツも織柄の入ったものにして生地の凸凹感を揃えてみた。もっともスーパー220'sのような極細の繊維を用いたスーツだったりすると合わせるシャツやネクタイがなかったりするので、あくまで実用範囲の素材でワードローブを整えるのも賢い着こなしの一つ。白シャツに白ベースのタイではややもするとネクタイが沈んでしまうが、ピンホールカラーのおかげでタイが持ち上がり、立体的なVゾーンになる。

8.ベージュを加えたコーディネイト

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春物のキーカラーはベージュ、ジャケットスタイルならばベージュのベルトを合わせても気にならない。写真のベルトはエルメスのものだが今から15年以上も前に購入、ピッティの関係者が締めるようになるよりもずっと昔のものだ。初代のバックルが経年劣化したためお蔵入りしていたがHバックルを交換、更に別のバックルも買い足したことで再び愛用できるようになった。ブランドのベルトと意識せずに締めると気にならなくなるし、革製品なのでなるべく長く愛用したい。

9.角切りのカフ

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本切羽を全て開けた状態。角切りのカフが見えるが実際はこれに腕時計が加わる。(右手に嵌めるので)。時計を外して切羽を開け、シャツのカフボタンも外して一気に肘までジャケットの袖やシャツを捲る。そして手首から手全体にかけて丁寧に洗う。そんな機会が多いので本開きの切羽があるととても便利だ。また、日頃愛用している腕時計がベゼルの大きいものなので袖口が開きやすい角切りのカフが助かる。

10.靴のコーディネイト

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靴はどちらもクレバリーのタウンカジュアル。軽さと履き心地の快適さはビスポーク・ローファーならでは。クレバリーではローファーはタウンで履くものと考えべヴェルドウェイストで仕上げてくる。カジュアルといえども見た目はかなりエレガントな雰囲気だ。加えてアリゲータ素材だったりすると履き始めは何となく落ち着かないが、それでもあまり気にせず履く。すると段々足に馴染み、何となく服装にも馴染んでくるから不思議だ。

11.ローファーの比較

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左のハーフサドルと右のフルサドルの一番の違いは素材の光沢。元々の原革は両方ともマットだったが、右は仕上げにポリッシングしたので光沢感がある。一方左は後発のオーダー故に磨きをかけないよう依頼、結果仮縫い時と同じ風合いのままデリバリーされた。マットなワニ革素材の魅力は何といっても自然なエイジングを楽しめるところ。小物でいえばカミーユフォルネのマットアリゲータ製時計ベルトも同じ楽しみが味わえるので機会があれば試されてみては如何だろうか。

2回にわたって紹介してきたフライのシャツ。フルオーダーシャツのようにあちこち採寸することもなく、仮縫いのないパターンオーダーではある。だが、既成のシャツで高い評価を得ているフライのシャツをより自分好みの1枚に仕上げてくれるのだから、出来上がりの素晴らしさは予め約束されているようなもの。お気に入りのメイカーがあるならばビスポークシャツ同様、メイカーが行うパターンオーダーの満足度はかなり高い。

デザインに重きを置くならパターンオーダーでもよいが着心地にこだわるならばビスポークに限るという人もいる。だが、仕上がりがイメージしやすいパターンオーダーの実力は高い。フライ以外にもボレッリやバルバなどいくつかパターンオーダーしてみたがどれも着心地だって誂えと遜色ない。パターンオーダーはビスポークと比べて「妥協の産物」ではなく、お気に入りのメイカーが、自分の為だけにお気に入りのスタイルで作ってくれる逸品と考えると、着こなしの楽しみもぐっと広がるのではないだろうか。

2012年4月 7日 (土)

Order made shirts(FRAYの特注Ⅰ)

久しぶりにイタリアはフライのシャツをオーダーした。前回オーダーしてから随分年月が過ぎていたが最初に注文を出した店ではその後も受注会を定期的に続けていたらしい。他にはバルバやボレッリのシャツを日本でオーダーしたこともあったがリピートしたのはフライが初めてだ。ナポリのシャツはデリバリー体制に不備が多いのだろう、日本でのス・ミズーラは中々定着しにくい(昨年別のデパートでオーダーフェアを復活させていたが…)。その点フライのシャツは北イタリアのメーカーらしく信頼度は高い。

何よりフライのシャツのMTO(Made To Orderの意)には他社にない大きなアドバンテージがある。それはピンホールカラー(襟型)を選択できるというところだ。フランスのシャルベでは微妙な角度の違いや長さの異なる襟型を選べた。ボレッリやバルバはボタンダウンであってもオーソドックスなものからワイド気味のものまで何種類ものサンプルがあった。しかしピンホールカラーを選べるのはフライだけだ。ということで今回は出来上がってきたばかりのフライのシャツをコーディネイトを交えて紹介しようと思う。

1.届いたばかりのシャツ

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前回は既成と同じ黒の箱だったが、今回オーダーしたシャツはフェラーリのような真紅の箱に入れてデリバリーされた。箱を開けるとフライのシャツ特有の機械縫製による精緻なシャツといった雰囲気が漂う。バルバやボレッリのようなナポリの手縫いシャツに見られる甘くしなやかな表情とは正反対だ。前回オーダーしたピンホールがことのほか気に入って今回は2枚ともピンホールを注文した。

2.新旧の比較

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オーダーしたのはバーニーズ新宿店。前回はバーニーズとのダブルネームのタグが付いているが(左側)今回のものは通常のタグが縫い付けられている(右側)。襟の硬さはソフト、セミハード、ハードと3段階選べるが、セミハードをチョイス。ピンホールで襟の先端が反り返らないようやや硬めの方が良い。確か左上のワイドスプレッドだけ前回ソフトでオーダーしたもので、写真で見ても分かるようにフライにしては珍しく襟腰がクタッとしている。

3.ラウンドピンホールカラー

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英国ではカラーピンシャツと呼ばれるラウンドカラーのピンホールシャツ。昔のイラストには襟腰の高いラウンドの襟にピンホール仕上げのシャツを着たスーツ姿の紳士が描かれていて、そのイメージが頭の中に残っていた。それに加えて知り合いから「フライのシャツでラウンドカラーのピンホール仕様というのがある。」とも聞いていたので、いつか機会があったらトライしてみたいと思っていたところだった。

4.ボディへのフィッティング

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MTOシャツなので既成のシャツのボディを選び、レギュラーかスリムフィットのどちらかを選ぶ。襟とカフのデザインを選び、ネックサイズとスリーブレングスを採寸。生地やボタンの選択、前立てや胸ポケット、イニシャルの有無などを決めていく。ビスポークシャツに近い雰囲気が楽しめる瞬間だ。ボディはネックサイズの1サイズダウンが日本仕様とのことだが、今回はネックサイズと同じボディで後ろにダーツを取るよう依頼。出来上がりはブルックスのエクストラスリムフィットに近い雰囲気で快適なフィット感が期待できそうだ。

5.スーツに合わせてⅠ

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オーソドックスなミディアムグレイのスーツにラベンダー色のシャツとパステル調のネクタイを合わせ、淡く春らしいVゾーンにしてみた。ラウンドカラーのシャツはアイビールックやプレッピースタイルが流行しているせいかショップで見かけることはあるものの街中で着ている人はまずいない。どことなく子供っぽい雰囲気があるからだろう。そこでピンホール仕様にしてみるとクラシックな雰囲気になり今までと違う新しい着こなしが楽しめる。

6.スーツに合わせてⅡ

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スーツ生地はスーパー120’Sながらシャークスキンのような織りが見えるもの。合わせるネクタイも織柄を選んで質感を統一してみた。スーツはⅤゾーンの深い3つボタンにトラウザーズの幅が広いクラシックなスタイル。ただしナポリの超絶手縫いスーツ、アントニオ・ラ・ピニョッラ程ではないにせよ手縫い既製服の逸品。襟の返りや肩周りなどハンドならではの柔らかな雰囲気が感じられる。甘く柔らかなスーツとカチッとしたシャツの合わせも悪くない。

7.ダヴェンツァ

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今回紹介するダベンツァは昔服飾評論家の遠山周平氏が書いた雑誌の記事で初めて知った。イギリスの名門チェスターバリー同様ナンバー6のカテゴリーに属する手縫いの割合が最も高いイタリアの名門工場とのこと。最近ピッティにも出店し、日本での扱いもあるようだが写真のスーツは随分と昔のものになる。当時は知る人ぞ知るメイカーだったようで、地味ながら良いものを作ろうとする意気込みがステッチや裏地の処理といった細部に宿っていた。

8.シャツ&タイ

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今回オーダーしたシャツは生地をシーズンものから選択、ストックの多いカルロリーバだと値段は上がるしヘビーユースには向かない。前立てはなく通常のボタンに胸ポケットを付け、袖はラウンドのバレルカフにしたがここまでは別料金の発生しない範囲。うっかりラウンドのターンナプカフやあれこれ我儘を言い続けるとMTOなのに1枚7万円を越してしまいかねない。ビスポーク以上の値段にならないよう心がけた。ネクタイはミラノのステファノビジ。シャツのラベンダー色を拾ったものを選んだ。チーフはポールスチュアートのもの。シルク製のハンドロール・パープルチップを3ピークで挿している。

9.本開きのスリーブ

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手縫い既製服のダヴェンツァらしく袖の処理も手縫いでお願いしている。勿論日本の直し業者が行ったものだが身頃のボタンホールに合わせて密なピッチで縫い込まれた袖のボタンホールを見ると日本の職人の腕も確かなことを改めて実感する。切羽上部の閂止めや星コバステッチ、ホーンボタンなど写真からも手の込んだ作りになっていることがお分かり頂けるかもしれない。

10.ラペルのロール

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手縫いの星コバステッチに手縫いのボタンホール。特筆すべきは段返り部分。ボタンホール部分の真ん中で襟が自然に折り返っている。ここが綺麗に折り返ることは中々難しく、同じく有名なナポリのアットリーニでもキトンでも不自然な段差が出来てしまう。アメリカのブランド(ブルックスブラザーズなど)のように全て折り返してしまうデザインの方が楽なのに、そうしないところにダヴェンツァの手縫い紳士服メイカーとしての意地のようなものを感じる。

11.コーディネイトした靴

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靴は勿論クラシックなイタリアンシューズ。左はミラノのメッシーナで誂えたもので右はローマのラッタンジで購入したもの。イタリアのスーツに英国の靴を合わせることもあるが、イタリアの紳士靴に見られる独特のスクェアトゥ(アヒルの嘴と言われているそうでマンテラッシのものが有名)がスーツの肩線と合うらしい。年月が経ちワックスで磨くと何とも言えない底光りをするようになっている。

12.イタリアンクラシックシューズ

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イタリアの靴はトゥのメダリオンは英国程種類がないのだろうか、注文であっても既成であっても殆どは写真のようなデザインのものになる。それとコバ部分にロウ目付けを施しているのだろうか、出し縫いのステッチが見えないように処理されているものも多い。左右どちらもフルハンドメイドの靴だが並べてみるとやはりラッタンジの方が既成ということでぼってりとした印象を受ける。メッシーナが一穴ごとに手作業で開けた細かなパーフォレーションラインをはじめ引き締まった表情をしているのと対照的だ。

ピンホールシャツを注文できるメイカーは国産でもいくつかあるようだし、英国のウェブサイトでも見かけた。だが、既成のシャツでは最高峰に位置するフライのピンホールシャツは別格だ。ネクタイの納まり具合や襟のロール具合、さらに細かなところでは襟合わせ部分の分量(タイスペース)を指定することもできるし(今回はなしを選択)、ピンも別料金ながら金と銀から選べる(1本ずつ注文)。同じピンホールシャツを同じメイカーにリピートしたのが論より証拠、フライの素晴らしさを物語っている。

前回はお願いしたイニシャル入れや時計を嵌める側のカフ周りを1㎝大きくするといった細かな仕様は今回一切行わなかった。おかげで既成とさほど変わらない値段に仕上がっている。特にミニマム2枚のオーダーでディスカウントというサービスは有難い。それでもシャツ2枚でチャーチズの靴が買える値段ではある。どのアイテムに予算を掛けるかは人によるだろうが、他のどの店にもないシャツを作れるとしたら出来上がりまで3~4ヶ月待つ甲斐のあるシャツ、それがフライの特注ではないだろうか。

2011年9月16日 (金)

British or Italian ?

英国靴が好きで英国の服飾に入ったが、シャツだけはイタリアの甘くしなやかな着心地に見せられ、英国仕立てのスーツにもイタリア仕立てのシャツを愛用してきた。たまにターンブル&アッサーの既成シャツを着るとウェストが絞られたブリティッシュスーツに寸胴で長いスタイルがフィットしない。やはりスーツの下で動きを妨げないと謳うイタリアのシャツのス・ミズーラを選んでいた。

ところが今から約1年半前、トランクショウで会ったテイラーのピーターに「ビスポークシャツは注文できるの?」と聞いたところ「Why not?」と返された。それがきっかけになって次のトランクショウでマテリアルを選び、半年前に仮縫いし、この度ようやくデリバリーとなった。今回は1年半かけて出来上がった初の英国製誂えシャツをイタリア製誂えシャツと比べながらシャツの作りや着心地を考えてみようと思う。

1.Battistoni VS Woods&Brown

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左はローマのコンドッティ通りの老舗バティストーニの誂え、右が最新の英国製誂えシャツでウッズ&ブラウンのもの。タグにサックビルストリート7番地という字が見えるが以前はショーン・オフリン(Sean O'Flynn)という名の新しいシャツ屋が店を構えていた(現在は隣の6番地とのこと)。となるとここで紹介するシャツはショーン・オフリンと関係があるのだろうか。次回ピーターに詳しいところを聞いてみたい。バティストーニが汎用性の高いセミワイドであるのに対してウッズ&ブラウンは純英国調のカッタウェイ。

2.ガウントレット周辺

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カフより上の剣ボロと呼ばれる手首から肘下までの開き口部分は英国ではガウントレット(gauntlet)と呼ばれる。上がウッズ&ブラウン(英)で下がバティストーニ(伊)、ガウントレット上のボタンはどちらもオーダー時に付けるよう依頼したものでハウススタイルではない。英国製の方が剣ボロは小ぶりに作られている。また剣ボロ上のボタンはどちらも小型ながらボタンホールの切り方は異なっている。

3.ボタンホールの仕上げ

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ウッズ&ブラウンの誂えシャツは言うまでもなく機械縫いのボタンホール。もともと手縫いのボタンホールはイタリアのシャツに見られる特徴だと思ったほうが良いかもしれない。一方のバティストーニは如何にもイタリアらしい手縫いのボタンホール、剣ボロ上の小穴も手でかがっている。両者のカフ部分をみるとバティストーニの方がピッチの細かなミシンを使用していることがわかる。こうした違いがイタリアのシャツをdelicateに、イギリスのシャツをboldに見せている。

4.ボタン

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どちらも貝ボタンを使用しているが、バティストーニ(伊)はやや肉厚の高瀬貝4つ穴深カップのスタイル、一方のウッズ&ブラウン(英)はふち付きの平型白蝶貝のボタンのようだ。英国のシャツがトラッドらしくクロス掛けでボタンを留めているのに対して伊太利のシャツは平行掛けと細部に渡って違いが色々あり比べ甲斐がある。シャツの生地はウッズ&ブラウンがエイコーンでバティストーニはカルロリーバ。写真でも生地感の違いが分かるのではないだろうか。

5.袖付け

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右のウッズ&ブラウン(英)ではシャツの袖を身頃と一体に縫い付けている。これはシャツ作りの基本といえよう。ただ、左のバティストーニ(伊)ではテイラードのジャケットと同じく身頃と袖を別々に付けている為身頃と袖のシームがずれている。こうした縫製によって腕が前に出しやすくなるとのこと。このあたりは立ち姿を美しく見せるイギリスのテイラードと動きやすさを求めるイタリアのサルトの考え方の違いと似ている。あるいはイタリアのシャツ特有の手作りを強調したいのかもしれない。

6.ショルダーシーム

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左のバティストーニではミシンによる機械縫いの後折り返して手縫いでいせ込みながら端を縫い上げているので縫合部分が波打たず綺麗に仕上がっている。右のウッズ&ブラウンはどちらもミシンによる機械縫いのためシーム部分がどうしても波打つ。シャツは下着と考えればほとんど他者が見る機会はないのだが、見栄えにも美意識を求めるというイタリアのシャツならではの仕上がりではないだろうか。

7.チェストポケット

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胸ポケットはどちらもリクエストして付けたもの。本来は付かないのが正統だろう。バティストーニ(左)ではポケットを注文すると「それは勧めない、アメリカンスタイルだ」といって顔をしかめた。一方ウッズ&ブラウンではピーターが注文を聞いたこともあってあっさりと「OK、問題ない」とのこと。イタリアのシャツ屋はかなり保守的でガウントレットのボタンは勿論角切りのカフ、胸ポケットや利き腕のカフにイニシャルなどというものは最も嫌う。それを敢えて全部やったのが実は今回紹介するバティストーニだ。

8.スプリットヨーク

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イタリアのシャツにはほとんど見られないスプリットヨーク仕立ては英国シャツ(下)や一部米国のシャツの大きな特徴の一つ。このスプリットヨークには本来左右の肩の肉の付き方や骨の形など注文主の違いに合わせて左右別に仕立てるという誂えならではの意味がある。真に注文者の肩に合わせて別々に仕立てたスプリット・ヨークは実に着心地が良いとのこと。残念ながら己の肩がそれほど左右差がない為、ヨークを別々に仕立てる必要もなく、今回スプリットで仕上げているのは仕立て上の慣習と言える。

9.背ダーツ

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イタリアの誂えシャツにはよく見られる仕様で、背中や腰回りのシャツ生地のだぶつきを取り、ジャケットの下のフィット感を高める効果がある。イギリスの誂えシャツではあまり見られない仕様だと思っていたが、フィッティングの際担当したピーターは後ろを摘みながら「ダーツを取った良いのでは」と薦めてきた。お任せしたところ写真の様な仕上がりになって完成した。ダーツ末端の処理が急なため生地が攣れているようで、あまりこうした仕様をやり慣れていない感じがする。

10.シャツのコーディネイト

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今回のシャツは青のタッターソールということで当初からネイビーブレザーに合わせようと考えていた。そこでファーラン&ハーヴィー誂えの3釦ブレザーに合わせてみた。ネクタイはバーニーズで買い求めたバーバリーだが、スケールの違うチェックオンチェックにネイビー無地で締めくくりVゾーンのビジーさを緩和してみた。胸ポケットにポールスチュアートのコットン製ポケットスクェアを挿してコーディネイトの完成。

イギリスの仕立てシャツはイタリアのように細やかに縫い上げて仕立るというより、既成のシャツと基本的な縫製は変わらず、より注文主の体型に合わせて袖や首回りを調整し、前立てやカフの仕様などを決める感じか。今回は無難なカッタウェイで作ったが、次回はラウンドカラーのピンホールという特別な襟型をオーダーしてみようと思う。そこで初めて英国のシャツ屋の真価を見極めたい。

現時点ではイタリアのシャツに見られる軽さとしなやかさが好みだが、ピーターは暫くはシャツを着込んで汚れたら自分で洗濯し、アイロンをかけることを繰り返してほしいと言っている。次回会うまでの半年間ともかく頻繁に着た後にイニシャルを好みの場所に入れて貰うことになっている。まだまだ暑い日が続くので長袖のシャツが出番を迎えるのは10月の声を聞く頃、そこから来年の2月までともかく愛用しようと思っている。

2011年2月26日 (土)

Bespoke glove part2(誂えの手袋第2回〉

当ブログで紹介したビスポークグローブが好評だったのか、日本から手袋のビスポーク依頼がメイカーに何件か届いているようだ。周囲でも手形をトレースしてメイカーに送り、好きなデザインと色素材で誂えの手袋をオーダーした人もいる。私のように特に親指が短いために手袋を誂えたいと考えている人だけでなく、形や色、素材などを自由に組み合わせて自分だけの手袋に拘る人まで様々だが、チェスタージェフリーズ(Chester Jefferies)はそんな要望にも気軽に応えてくれるメイカーだ。

何より1ペアから作ってくれること、それでいて作りは丁寧、対応は迅速、値段も適正価格である。スーツやジャケット&パンツ、コートなどの重衣料はもとより、シャツや手袋、靴といった身体に近い部分で身に着けるものにも快適なフィット感を求める人には中々良い店ではないだろうか。カタログを見ると用途に応じて様々なデザインがあり素材も豊富だ。今は止めている趣味のバイクや車用、アウトドア用など、誂えてみたい手袋はまだまだある。そんな魅力の詰まったビスポークグローブの第2回を今回は紹介しようと思う。

1 到着した手袋

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今回はホッグスキン(ペッカリーと謳っているが〉でシティ・ジェンツと呼ばれるモデルを選択した。例によって外縫いのステッチは色を指定し、通常のモデルよりハーフインチ手首の部分を長くしてもらっている。ステッチは白かナチュラルか迷ったが、使い込むうちに糸の色も目立たくなると思い、敢えて最初はコントラストの強い白を選択した。

2 ライニング

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ライニングは今回もカシミヤを指定、手の甲の3列のポインツを省略することも可能だがこの3本のラインがあってこそグローブ。フォーマルな内縫い以外はポインツがあった方が良いと個人的に思っている。色目は1枚目の写真とだいぶ異なるがこちらが本物の色に近い。デンツのコークでは黄色すぎて浮いてしまうと思うことがよくあるが、これくらいの茶色だと何にでも合わせ易そうだ。

3 ファーストオーダーとの比較

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1組目はケンジントンと呼ばれるモデルで今回がシティジェンツ。名前から想像すると今回のシティジェンツはその名の通りロンドンのシティあたりのジェントルマンを想定しているのかもしれない。だとすると今回のモデルこそ黒のディアスキンでポインツもライニングンもなしで作る方が良かったのかとも思う。とは言うものの、結局は本人が好きな形で好きな素材で選んだものならば愛着も一番、細かなことは気にせず使っていきたい。それにこの2組の手袋、デザインは共通で裾(アンクル部分〉が長いか否かだけのようにも見える。

4 メローラとの比較

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左がメローラのリアルペッカリー、右がチェスタージェフリーズのホッグスキン。メローラでは表面に3つずつ毛穴が並んでおり、当主のアルベルトさんも言っていたように本物のペッカリー(野生動物)のようだ。一方のチェスタージェフリーズの方は豚かもしくは猪豚の革なのだろうか、毛穴は見当たらない。それにペッカリーは柔らかいがホッグスキンは結構硬く感じる。

5 ディテール

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指の付け根には菱形のマチが付けられている。もちろんDENTSにもついているものでQUIRK(クワーク)と呼ばれるそうだ。この菱形部分が指の運動性を高めると同時にフィット感を強めていると紹介されている。しかし実際は着用時のフィット感こそアップするが、指の運動性はアンラインドのメローラの方が高い。このクワークが付いていないにもかかわらずだ。作りだけでなくライニングや素材の柔らかさで感覚が異なってくるところは靴も手袋も同じといったところか。

6 DENTSとの比較

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8-1/2のサイズのDENTSアンラインドペッカリーグローブと比較してみたところ。アンラインドであるにも拘らずDENTSの方が幅が広い。既成の手袋では様々な場所が余ったり足りなかったりとストレスを感じていたが、こうして自分の手に合う手袋と比較すると改めて既成の手袋がバルキーに見える。友人は既成の手袋のだぶつきが嫌で1サイズ下を買ってきついのを嵌めて伸ばしながらフィットさせたと聞いたが、それならば手袋を誂える方が精神的にもよさそうだ。

7 ステッチワーク

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手縫いの証ステッチワークは前回同様標準的なものだがそれなりにしっかりと縫われている。イタリーの手袋のようにもう少し端ぎりぎりを縫うと綺麗に見えるかもしれない。この辺は見た目の美しさを大切にするイタリアと堅牢性を重視するイギリスの違いととれなくもない。ポインツ部分ではあまり目立たない白のステッチだが、指を動かすたびにクォークを留めているステッチが見え隠れして中々雰囲気がある。

8 コストパフォーマンス

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今回のホッグスキングローブの値段は102£、これに送料が5ポンドで合計107ポンドになる。現在のレートでおよそ14000円程度だろうか。インターネットで調べてみると手のひらと甲側とで異なる素材を使ったコンビのグローブも有るようで、ビスポークサービスならばデザインと素材についてもかなり広い範囲で選択が可能なようだ。寒い季節にオーダーしたこともあり、ライニングについてはどちらもカシミヤを選択したが、アンラインドも含め今後も気に入ったデザインの手袋を季節に合わせてオーダーしてみたい。

オーダーの楽しみを知ってしまうとデパートやセレクトショップ、有名ブランドのブティックを覗いても何かを買おうという欲求があまり起こらなくなる。昔に比べて衣料品を買いに出かける回数はぐっと減った。たまに買い物に出かけても時間をかけるのは消耗品のシャツや靴下、その時々の流行があるネクタイなど限られたアイテムが多い。グローブの売り場からもすっかり足が遠ざかってしまっている。それでも季節の変わり目にはウィンドウショッピングをしようと思う。特にセンスのある品物を置いている店に立ち寄るとオーダーのヒントを得られることがあるからだ。ファッションを追い求める必要はないが、常にセンスを磨くことは大切だと思う。

2011年1月19日 (水)

Bespoke Glove(手袋の誂え)

以前、当ブログで手袋の特集を組んだ時、英国に手袋のビスポークをしている話を書いたが、ようやく完成品が届いた。メイカーの名はChester Jefferies(チェスタージェフリーズ)。ロンドンの西、ソールズベリーとバースの間にあるギリンガムにファクトリーを構え、オンラインによるオーダーを受け付けているメイカーだ。モデルとサイズ、素材やライニング、ポインツ(手の甲にある3列のステッチライン)の有無などをガイドに従って選択するだけで自分だけの手袋が注文できる。

ただし、「既成では中々フィットしない」場合は、よりパーソナルなビスポークサービスも用意されている。最近デンツを購入した際も親指が余るのが気になっていたので、両手形をトレースした紙を送り、パターン興しと細かな仕様を決定するというビスポークならではのプロセスを経てオーダーを確定していった。それから6週間、既成では得られない高いフィット感と拘りが反映された素晴らしいグローブが送られてきた。そこで、今回は小物にもスタイルを追求する人にお勧めの手袋のビスポークを紹介する。

1 手袋の全体(甲側)

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完成したグローブ。モデルはケンジントンと呼ばれるものでサイズはビスポークの為ない。シボの入った柔らかなグレインレザーはディアスキンでライニング付の外縫いのタイプ。手の甲に3本のステッチ(ポインツ)を入れるようリクエストした。昔のデンツでも見られたようだが、人差し指にシームラインが入らない昔ながらのパターンを守っている。それだけ革を広く使うので、最近は主流ではないのかもしれない。

2 手袋の全体(手のひら側との比較)

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手のひら側と手の甲側の仕上がりを並べて撮った写真。手の甲の長さに比べて指がやや短いのでそれに合わせてグローブ全体も既成のものより短めに作られているようだ。人差し指から小指まで、指と指の間には菱形のガセットが付いており、ローマのメローラよりもしっかりと作られている。既に次回のオーダーを入れているが、気になる個所として1点、手首部分をハーフインチ長くするようリクエストした。

3 手袋のフィット感 その1

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10本全ての指にもたつきや余りがなく、完璧にフィットする快感。これは今まで味わったことのない感覚で、既成の手袋では不可能なことだ。ライニングがあるので、手袋を嵌めたまま本の頁をめくることができるかは分からないが、特定のコインをつまんでコインケースから取り出すのは造作なく出来そうだ。大ぶりな時計だと若干窮屈に感じる程、手首のサイズもぴたりと合っている。

4 手袋のフィット感 その2

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外縫いのためシームが指先の感覚を妨げているが、もし柔らかく薄いレザーで、アンラインドの内縫い手袋を作ったら、嵌めていることを忘れてしまうほどの感触かもしれない。ただ、手袋に限らず靴や鞄など、どれも手縫いのステッチが見えるデザインが好みなので、次のオーダーも外縫いのタイプにした。勿論指先だけでなく手のひらや甲のフィット感も素晴らしいのは言うまでもない。

5 ステッチ

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外縫いのステッチは通常はレザーと同色、つまり黒だが、ビスポークグローブということでまずはステッチの色に拘ってみた。こういった細かなことはメールでのやり取りになる。実物の縫い糸の色を見ていなかったので出来上がるまで少し不安だったが、出来上がりははイメージどおりライトブルーの糸で縫い上げていた。ステッチが不揃いなところもあるが手縫いの雰囲気が十分出ている。

6 ライニング

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ライニングはカシミヤ/ウールを選択。最初に「ステッチと同色のカシミヤライニング」をリクエストしたが素材がなく、「代わりにダークブルーのフリースではどうか」と打診があった。フリース素材のライニングは未経験だったがカシミヤの温もりを選び、ストックのベージュに落ち着いた。このライニングだが、防寒の観点からすると完璧にフィットした手袋より指先に多少ゆとりがあるデンツの方が暖かく感じる。手袋と指先の間に空気の層があるからだろうか。

7 手袋の比較

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一番左からデンツのアンラインドペッカリー(黒)、チェスタージェフリーズのビスポーク手袋、メローラのアンラインドペッカリー。ライニングの有無があるので単純に比較はできないが、レングスはデンツのものが一番長く、指の長さはメローラが一番小さい。メローラでは小さ過ぎ、デンツでは大き過ぎることになる。何より指の幅が違っていることが見て取れる。こうした細かな部分のフィット感はビスポークならでは。

初めての手袋のオーダーは、やり取りも含めて全てが快適で楽しかった。メイカーの対応が誠実なこともあるが、値段がリーズナブルなことも大きい。今回のグローブが送料込みで87£だから12,000円を切ることになる。2ペア目として明茶色のホッグスキン(ペッカリーのこと)を追加オーダーしたが、それでも102£と15£のアップである。約14,000円程度だろうか。日本でも既成のモデルが何型か入っているが、価格はだいぶ異なっているようだ。極上のフィット感を味わうために到着までの6週間を楽しめるビスポーク好きの方なら、暫く寒い日が続くこの季節にグローブを誂えてみるのも悪くないのではないだろうか。

2010年10月30日 (土)

Custom Shirt No.2(シャツの誂え第2回)

金曜日は汐留まで出向き、イタリア街で友人達と会食をした。汐留シオサイトと呼ばれる再開発地域は歩いているだけでも中々楽しい。その中の一軒、イタリア人お勧めのピッツェリア&トラットリアで待ち合わせたが、なるほどイタリア人のピザ職人が焼くピッツァは美味しく、よく冷えたスプマンテとともに会話も弾んだ。集まった友人は皆仕事もさることながら趣味も幅広く、装いにも拘りがある人達ばかり、身嗜みに気を配ることで雰囲気が盛り上がることを知っている人達との話は尽きず、帰宅した時には日を超えていた。

本来ならば金曜日はジャケット&パンツでカジュアルに出勤したい方だが、今回のようにスーツでドレスアップして金曜日を迎えるのも良いものだ。オンからオフへの切り替えは思ったよりもスムーズだったし、何より昨日は嬉しいことに一緒にローマのシャツ屋にオーダーしていたシャツが友人宅に届き、わざわざ持参してくれたのだ。そこで今回は、食事会で服飾談義の話題を提供してくれたローマの仕立てシャツ、ミコッチの最新作を紹介しようと思う。

1 届いたシャツ

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届いたばかりのシャツ。今回はストライプのオーダーが多い。手持ちのシャツの傷み具合を見たところ圧倒的にストライプ、それも左側2枚のようなロンドンストライプの傷み具合が早かった。それだけ普段着ていることになる。そこで、今回はカルロ・リーバよりも生地の番手を落とし丈夫なものを4枚注文、カルロ・リーバの生地は一番右下のオルタネートストライプの1枚だけにした。いつものようにエクストラを払って替え襟と替えカフも注文。完成したシャツを並べてみた。左から色目がやや異なるロンドンストライプのシャツ2枚(上・下左)にファンシーチェック(中)ペンシルストライプとオルタネートストライプ(上・下右)。

2 ストライプシャツ 

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ロンドンストライプのように間隔の狭いシャツは無地の上着に合うだけでなく、ストライプのスーツでも同じ間隔になることは殆どないのでストライプオンストライプの着こなしにも使える。今回オーダーしたストライプのシャツにナポリのマリネッラのタイを合わせてみた。マリネッラのタイは何本か持っているが全て7つ折りのもの。このセッテピエゲはタイを2本買うところを1本に我慢しても買う価値がある。右の2本は昔ナポリの本店で購入したもの。今よりも芯地が厚くボリュームがある。一番左は最近日本で購入したもので、芯地が薄くノットも小振りにまとまり締めやすい。

3 シャツと替え襟・替えカフ

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カルロ・リーバで作ったシャツ。手触りが他のものとは違って、しっとりとして滑りのある感じがする。替え襟・替えカフは日本のシャツ屋で交換してもらうと手間がかかるので、快く引き受けてくれるところは少ないかもしれない。地元でシャツをオーダーしている店に持ち込んで付け替えを依頼した時、芯地が2枚重ねられている構造を見て感心していた。最初はかなり硬い襟の感触が洗濯するうちに2枚の芯地どちらも硬さがとれ、全体として程よい感触になり、尚且つパッカリングを起こさないよう襟表全体にテンションをかけ、襟を美しく保っているようだ。

4 ボタンホール

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ボタンホールは昔のものよりも丁寧に作られている。また、昔は第1ボタンのみボタンホールがマシンメイドだったのが、全て手縫いになっている。既成の高級ハンドメイドシャツを研究したのだろうか、ボレッリなど既成のハンドメイドシャツ同様の手仕事を加えながらオーダーメイドならではのフィッティングの良さをアピールしている。前回のオーダーよりも更にクオリティは上がっているようで、当主が亡くなってから紆余曲折を経て、復活を果たしつつある、そんな印象を受けた。

5 身頃

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注文主にはそれぞれ自分の好みがある。自身は角切のカフにポケット、前立てなしのフレンチフロント、胸の下にイニシャルが定番となっている。イタリアでは指定しないとほぼ左胸の下にイニシャルを入れるのが普通なようで、一緒に食事をした友人のルチアーノ・ロンバルディのシャツも同じ場所だった。ただ、もう一人の友人が言うには同じイタリアでもミラノやフィレンツェ、ローマやナポリなど場所(店によっても)によってイニシャルの入る位置は違うらしい。最近になって付くようになったガウントレットのボタンが今回もついているのが嬉しい。

6 フィノッロのタイを合わせる

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左はファンシーチェックのシャツ、右はカルロ・リーバのオルタネートストライプシャツ。どちらにもジェノバの名店フィノッロの名物、ソリッドのワンポイントタイを合わせてみた。左がテントウムシ(レディバグ)で右がヨットのモチーフ。無地のタイそのものは芯地が薄く若干頼りない印象を受けるが、タイを締めてみると独特の雰囲気が出てくる不思議なタイだ。フィノッロ、シャツ屋が作るタイらしく、シャツへの合わせ方を熟知しているのかもしれない。

7 シャツのコーディネイト

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シャツの襟型は色々あるが、試行錯誤を重ねてたどり着いた襟の開き具合、襟腰の高さ、芯地の厚さは滅多に変えられるものではない。結局、前回と今回で合わせて10枚のシャツ、サービスで作ってくれる2枚のシャツも含め、全てがやや大ぶりのワイドカラーで同じデザインになってしまった。次にオーダーする時はボタンダウンやピンホール、タブカラーやラウンドなど違う型のものをオーダーしてみたいとも思うのだが、それにはやはりローマに直接行って話をし、型紙を作って試行錯誤が必要だろう。

フライやボレッリのような既成シャツのパターンオーダーは襟の大きさや高さ、開き具合や芯地の硬さが決まっていて、ボタンダウンだろうが、ピンホールだろうが、タブカラーだろうが思い通りに作ってくれる。だが、真に体に合わせて作られた誂えのシャツはスーツやジャケットに合わせると直ぐに分かる。上着の中でストレスを感じさせないからだ。良いシャツは良いジャケットの着心地を更に軽くし、そうでないジャケットの着心地もよくしてくれる力がある。今回もオーダーから支払い、デリバリーまで色々あったが、シャツのオーダーをやめられない一番の理由がその着心地にあることは言うまでもない。

2009年12月23日 (水)

Christmas gifts

クリスマスまであと少しになった先週、ようやく玄関にリースを掛けた。サンタクロースを未だに信じている家族がいることもあって、ツリーも居間に飾ることにしている。ひと通り飾り付けを終えた後は、自分で自分に贈ったものを包みから出す番だ。クリスマスギフトを開けるようで何となく嬉しい。誰かに贈り物をする時は「気に入って貰えるか」不安だが、自分で選んだものを自分に贈るのだから気に入らないはずがない。綺麗なネクタイを頂いても、自分で買った地味なネクタイを締めることがよくある。本当に欲しいものは自分で選んで、自分で買うのが一番確かだ。

今回紹介するのはカミーユフォルネの時計ベルト。以前当ブログでも書いたが、オーダーした時計ベルトと最近購入した既成の物の2本だ。時計ベルトは今まで靴や鞄と合わせていたが、どうしても茶や黒が多かった。そこで、時計のベルトを指し色にしようと順次交換しているところで、今回は届いた時計ベルトを中心にシャツやネクタイとコーディネイトしてみた。

1 ピンクの時計ベルト

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到着したばかりの時計ベルトはカミーユフォルネのオーダーメイド。アリゲーターの竹斑部分を使用したもの。マットピンクが派手に映るが、着用してみると中々良い。時々袖口から見えるのか周りから聞かれることも多く、話題作りといった点でも重宝している。シャツはフライのMTOでピンクのマルチストライプのクレリックシャツ。着丈、袖丈、首周りとシャツのスタイルを決めて自分だけの1着を作るのは楽しい。合わせたネクタイはパープルレーベルのストライプタイ。どれもピンクが共通のカラーだが、上から羽織るジャケットやトラウザーズは地味な色にするのがポイントになろう。

2 パープルの時計ベルト

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こちらは以前のブログでも紹介したパープルの時計ベルト。パープルはネイビーにもグレーにも合う便利な色だ。特にミディアムからダークグレーに合うので、ネクタイや縁がパープルになっているポケットスクェアを差し色として使ってきた。時計が古いのであまり出番がなかったのだが、ベルトを替えることで身に付ける機会が増えている。合わせたシャツは昔懐かしいアイクベーハーのスプレッドカラー。パープルとブラックのストライプがN.Yトラッドらしい。ネクタイはイタリアのニッキー、ここのタイは色出しや柄など気に入る物が多い。

3 オレンジの時計ベルト

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時計ベルトがクロコダイルの丸斑の場合はカジュアルなジャケットスタイルに合う。ベルトの色は茶色なのだろうが、どちらかというとオレンジに近い。ネクタイもオレンジのものを合わせてみた。ミラノはパーソナリティーのタイで、単体では派手に感じるが上からブラウンのツィードジャケットを羽織れば意外と収まる。シャツはフィレンツェのリヴェラーノ&リヴェラーノのBD。ルイジボレッリが製造しているが、リヴェラーノさんが生地や襟型などをディレクションしているのだろうか、他のショップとは違って素敵なシャツが多い。そもそもオレンジのタイのコーディネイトを薦めてくれたのもリヴェラーノさんだった。

4 バーガンディの時計ベルト

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最近購入した既成の時計ベルトはクロコダイルの丸斑。ボンベタイプだがエッジのステッチはマシン仕上げになっている。勿論カミーユフォルネならではのアビエシステム(ワンタッチでベルトを外すことができる)なので交換は容易だ。合わせたシャツはブルーのチェックシャツでターンブル&アッサーのもの。英国のシャツにしては珍しくホップサック調の生地になっている。ネクタイはリヴェラーノ&リヴェラーノの折柄。これにグレイのトラウザーズとネイビーのジャケットを合わせ、再び同色の靴を持ってくる。合わせた靴は同じクロコダイル素材のクレバリープレーンキャップトゥ。

5 指し色の時計ベルト

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赤、ピンク、オレンジと紫、差し色として使える時計ベルトを少しずつ揃えているところだ。時計ベルトを替えると時計の雰囲気が変わるだけでなく、身に付ける本人の気持ちも変わる。既に次の時計ベルトをライムグリーンのマットクロコでオーダーしている。その後も青系統や黄色、深緑まで欲しい色目が結構ある。ネクタイの色目に合わせて今後も定期的に注文していくことになりそうだ。

カミーユフォルネのコーナーで時計ベルトを注文する人と会った事はないが、時計ベルトといえども仕様によっては既成靴1足分になるし、何色か注文すれば機械式時計1本分にもなる。何よりオーダーしてから到着まで約3ヶ月かかることを考えると、既成の中から自分の時計に合いそうなものを見つける方がよいのかもしれない。ただ、本当に欲しい時計ベルトが見つからないならばオーダーする価値は十分にある。小さな時計ベルトといえどオーダーの醍醐味は靴やスーツと同じ。到着するまでの期間を楽しみ、到着した時に自分だけの逸品に出会える楽しみは何物にも代えがたいし、唯一無二の、自分への贈り物となるはずである。

2009年9月27日 (日)

クロコダイルの小物

昔からクロコダイルで作られた靴や小物が好きなこともあって時々立ち寄る店が3軒ある。まず最初がポロショップ。ラルフローレンほどクロコダイルを上手く扱うブランドは他にない。中でも1990年代のカタログに載っていたクロコダイルモカシンは衝撃的だった。ラフでカジュアルなモカシンに贅沢なクロコダイルを使う発想が凄い。次はJ.M.ウェストン。フランスの靴屋だが、ここのクロコダイルの靴とベルトは上質だ。最近青山のウェストンを訪れたが、茶色のマットクロコを用いたローファーはとても魅力的だった。注文靴1足分と値は張るが、それだけの価値のある既成靴といえる。最後が同じくフランスの時計バンドメイカー、カミーユフォルネ。ここのクロコダイルは発色が綺麗で、時計のベルトという少ない面積だからこそ鮮やかな色目の時計ベルトを注文したくなる。ということで今回はクロコダイルの靴に合わせるベルトや時計バンドといった小物を中心に紹介してみる。

1: 靴・ベルト・時計バンドのコーディネイト

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クロコダイルの靴とコーディネイトしたベルトと時計バンド。(左端)ライトブラウンの靴に同色のベルトと時計ケースの色目を合わせた。代わりに時計バンドは差し色としてパープルのクロコダイル(竹斑)を選択。気に入った色目の時計バンドをもう少し増やして気分によって差し色を替えたいところだ。(中央)ミディアムブラウンのベルトは一番コーディネイトしやすい色目。靴のバックルと時計のケースが金色に対してベルトのバックルが銀色なのが気になるが、クロコダイル素材の統一感は高い。(右端)黒のエラスティックサイドのコーディネイト。ベルトと時計バンドはマットクロコだが靴は光沢のあるタイプ。時計のケースとベルトのバックルを共にステンレスで統一している。

1: ライトブラウンクロコダイル

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靴の素材はイタリアでなめされたアメリカはミシシッピ産のアリゲーター。甲部分の竹斑が綺麗なので、合わせるベルトや時計バンドも竹斑の綺麗なものを選んでいる。バックルに近い部分で革を貼り合わせてはいるが、発色の綺麗なベルトはイタリアのVACCARI製。バックルが大ぶりでややカジュアルな雰囲気が強いがしっかりとした作りだ。パープルが鮮やかな時計バンドはカミーユフォルネでオーダーしたもの。素材はポロサスクロコだったと思うが、バンド中央に膨らみのないフラットなタイプで、手縫いのステッチを「生成り」でと指定した。ステッチが目立ちすぎず、素材の発色のよさが引き立つ。ワンタッチでバネ棒の交換が可能な「アビエシステム」仕様。

2:ミディアムブラウンクロコダイル

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ラルフローレンのクロコダイルベルトは先端にシルバー925のチップが付き、バックルもシルバーのもの。このデザインはポロの定番でウェスタンベルトを彷彿とさせる。昔から好きなポロのアイテムの一つだ。作りはバックル付近でクロコダイル素材を貼り合わせているが、発色の良い本物のアメリカ産アリゲーターを使っている。ただ、昔と違って以前アメリカ国内で作られていたベルトも今は殆どがイタリー製になっている。時計バンドは竹斑ではなく、ケイマンクロコの丸斑部分を使用したボンベタイプ(中央が膨らんだもの)。手縫いのステッチは素材と同色の糸を使用。海外でカミーユフォルネのストック品から購入したもの。

3:ブラッククロコダイル

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レイジーマンと呼ばれるイミテーションシューレースのエラスティックサイドスリッポンはクレバリーの18番。これに合わせたベルトは継ぎ目なしのクロコダイル1枚革から作られたベルト。なぜこのベルトがウエストンのローファー2足分の価格なのか、その答えがこうした贅沢な素材使いにあることは間違いなさそうだ。隣の時計バンドはブレゲ純正、Dバックル使用のクロコダイルバンドで、勿論カミーユフォルネによるOEM。バンドは中央が盛り上がったボンベタイプで素材と同色の糸を用いた手縫い(クチュールセリエ)仕上げ。

4:時計バンド

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並べてみたカミーユフォルネの時計バンド。竹斑と丸斑、マット素材と光沢素材と一本一本違いがあるのがクロコダイル素材の面白いところ。拘ったのはバンド端のハンドステッチで、どれもクチュールセリエ仕上げになっている。左端のみステッチが生成り色になっているが、カミーユフォルネに直接オーダーする時は糸の色目はいつも白か生成りと指定している。エルメスの鞄でもそうだが、丁寧に縫われたハンドステッチが製品全体の存在感を高めるからだ。それにしても、ウェストンといいカミーユフォルネといいフランスはクロコダイルやリザード、オストリッチなどエキゾチックレザー使いが上手い。

5:クロコダイルのベルト

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並べてみたクロコダイルのベルト。上質な素材は並べてみると分かる。一番上のウェストンは革の素材がやはり素晴らしい。中央と下のベルトは共にアメリカンアリゲーターだが中央のポロの方が素材の質感が表に出ている。下のベルトは竹斑が綺麗に入っているものの、革の表面に厚くコーティングがされているようだ。バックルの形もウェストンがビジネスに使えそうな形なのに対して残りの2本はややカジュアル寄りでタイドアップスタイルには合わせづらいかもしれない。

初めてクロコダイルの靴を購入したのはイタリアだったが、やがてJ.M.ウェストンのクロコダイルローファーをNYで購入し、青山店でコーディネイトのコツを教わった。ポロのモカシン同様、カジュアルなテイストにクロコ素材を合わせるのがポイントで、クロコダイルの靴を履く場合はジャケットを着てもタイドアップせず、カジュアルな着こなしを意識している。一方、ベルトや時計バンドはオン・オフ問わず使えることもあってどちらかというと使用頻度は高く、スーツにクロコダイルのベルトとクロコバンドの時計を合わせてもあまり気にならない。そう考えると靴はやはり装いの中で、最も目立つアイテムの一つだということが改めてよく分かる。「お洒落は足元から」はやはり本当なのだ。

2009年6月28日 (日)

Custom Shirts(シャツのオーダー)

以前このブログにも書いたミコッチにオーダーしていたシャツが先週届いた。ミコッチはローマの名所スペイン階段を背に高級ブティックが並ぶコンドッティ通りを歩くこと約30分、途中グローブやタイで有名なメローラのあったコルソ通りを渡り、テベレ川の近くまで歩いた賑やかな場所にあった。ところが店を切り盛りしていたご主人が亡くなり、奥さんが店を引継ぐと、店舗の維持費の値上げに耐えかね、奥まったアパートの一室に店を移転したそうだ。昔の店舗に手紙を送っても『宛名先不明』で戻ってきてしまい、さてどこでカルロリーバのシャツをオーダーしようか迷っていたところ、そうした事情が分かり、オーダーを再開、紆余曲折を経て、シャツが到着したのだった。

1 カルロリーバで作ったシャツ

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カルロリーバの生地は「古い織機で織られていて、昔ながらの生産方法を守ることで生地に独特の柔らかさを持たせている。」ため、生産量は僅かで「幻の生地」といわれているようだ。現在ミコッチでは昔のカルロリーバのストックがあり、ストック生地でオーダーすれば1枚240€(5枚で1枚サービス)で仕立ててくれる。ただしストックの生地ではなく新たな生地を買い付けるとなると一反では高額すぎるのでシャツ1枚分の生地を生地屋から購入するらしい。その生地代だけで180€になるので、当然ながら240€では作れない。到着したシャツは柄物がブロードで160~170番手くらい、白無地がボイル。写真左上のストライプは前回オーダーしたもので残りの5枚に白無地がもう1枚(カルロリーバのシャツを1枚サービスで作ってくれた)の計6枚が今回のシャツということになる。

2 カラーセパレーテッドシャツ

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今回オーダーしたシャツが届いたのが3月頃だったが襟型が全く異なっていたため送り返し、作り直してもらうことにした。ところがどちらも残り少ない生地で作ったため襟の作り直しが不可能とのこと。そこで急遽襟のみ白いクレリックシャツに変更、もともと付いていた襟と替え襟はフレンチカラー(ワイスプレッドより更に襟の開きの大きいタイプ)ならば作り変えられるとのことで目下製作している。左のチェック柄に合わせたタイはメローラのもの。右の縞柄のシャツにはマリネッラのセッテピエゲを合わせている。

3 ストライプシャツ

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ストライプのシャツ生地はバストンティーノのような定番ものは更に在庫が少ないようだが左のようにややカジュアルな地付きで大柄のものはまだ在庫があるようだ。ネイビーのジャケットに合わせると中々よい。合わせたタイはメローラのもの。右の生地は前回オーダーしていたものでカルロリーバの工場で作られたセカンドラインの生地らしい。まだミコッチのご主人が元気だった頃「この生地はいい。カルロリーバと同じ工場で織られている。」 と薦めてくれたもの。合わせたタイはキトンのセッテピエゲ。

4 チェック柄とホワイトのシャツ

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左の白いシャツはボイル生地でさらっとした感触が気に入っている。合わせたタイはマリネッラのセッテピエゲ。白シャツを2枚オーダーしたのはよく着るからで、実際以前オーダーしたシャツも白の傷みが一番早かった。右のシャツはややグリーンがかった直線とボルドーの直線を格子にした凝った折柄の生地。合わせたタイはこちらもマリネッラのセッテピエゲ。今回オーダーしたシャツの襟は芯地が薄くなったこともあって着用した時の感触は柔らかいがタイドアップした時の襟の張りがもう少し欲しい。

5 今回合わせたタイ

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今回合わせたタイはメローラやマリネッラ、キトンといったクラシコイタリアのもの、しかも全て青系統だ。パステル調で綺麗な色目のネクタイも、コントラストの強いストライプ柄のタイも好きだがミコッチのシャツにはこうしたクラシックなタイがよく合う。この前「父の日」ということで久しぶりに最近のマリネッラをプレゼントしてもらったが、シルク生地の素晴らしさは相変わらずだ。同じセッテピエゲでも昔のものより薄めに作られていて締め心地もよい。ただ、昔ナポリの店舗で購入したものよりも長さが短いのが気になる。

今回オーダーしたシャツは襟形や芯地の変更など以前とは勝手が違った。ただ、それは当然のことで、今の店を切り盛りしシャツを作っている奥さんは顧客と話したこともなく、全てご主人の指示を受けて黙々とシャツを作っていたのだから。そう考えるとミコッチのご主人は自身でシャツを縫うことこそなかったものの、襟形や高さ、芯地のセレクトといった細かな指定はもとより、肝心の採寸やフィッティングに優れた手腕を発揮していたことがよくわかる。そのご主人がいない今、昔のようにオーダーすれば後はいつものシャツに仕上がるという訳には行かない。ミコッチのご主人のように「自分のシャツを自分自身でディレクション」しなければならないからだ。だがシャツをオーダーする楽しみは昔よりもあるかもしれない。ガウントレットのボタンも生前のミコッチさんは嫌がって付けてくれなかったが、今のシャツにはしっかり付けられている。

Nuova Camiceria Micocci

Vicolo Del Divino Amore 5
00186 Roma (RM)

Tel :  066896645

2007年5月 5日 (土)

Custom shirts

ドレスシャツは上着の下で邪魔にならないものがよいと思う。そう考えると、既成のスーツ やジャケットであっても下に身に着けるシャツは仕立てたものが欲しい。とはいうものの実際は既成のシャツをよく着る。しかも舶来のシャツからユニクロのBDまで色々だ。ただし、相手があってそれなりの身だしなみが必要とされる時や長い一日をきちっと過ごさなくてはならない時にはやはり誂えのシャツになる。仕立てのシャツには細かく採寸して型紙を起こし、仮縫いの後に完成させるビスポークシャツと、既成を元に首周りや袖丈を採寸して後は生地や襟型、袖口、ボタンを選ぶメイドトゥオーダーとの2通りがある。下の写真の右列ミコッチ・バティストーニ・シャルベがビスポーク可能な店、左側のフライ、バルバ、ボレッリは既成を元にしたMTOが可能な店。

Custom_shirt

1 ローマのシャツ(ビスポーク)

Full_order

ミコッチとバティストーニでどちらもローマのシャツ屋。メジャーと仮のシャツを着てピンワークをしながら採寸。その後仮縫いをして仕上げる。バティストーニでは仮縫いをパスしたが本来は仮縫いがある。ミコッチはいかにも手作りのシャツで細部は荒いが着心地は大変よく、愛用している。一方のバティストーニは細部まで丁寧な仕上げで、かっちりとした着心地だ。特に細かな手縫いのボタンホールが光る。ミコッチのボタンホールも割合細かいが、バティストーニのピッチの細かさは群を抜いていて、既成の手縫いシャツではコストを考えると真似のできないところだろう。生地はどちらもカルロリーバで着心地は申し分ない。特にバティストーニはカルロリーバのよい生地をストックしていた。

2 ナポリのシャツ(MTO)

Napoli

ナポリと言えばボレッリ。手縫いのボタンホールや襟付けなどで有名になった。写真左のものはナポリのショップで1998年にMTOしたもの。生地を選んでから細部の仕様を決めるのに随分時間がかかった。1994年製のボレッリと比較するとボタンホールなど昔の方が凝った作りだ。写真右は同じナポリのシャツでバルバ。日本のショップ受注会でオーダーしたが行き違いの結果か欲しかったシャツが完成せず、生地見本から急遽頼んで完成させたもの。本来は金色のタグがつくハンドメイドラインだが通常のタグというところが注文シャツの証か・・。着心地はどちらも既成のものよりタイトフィッティング。

3 マシンメイドの注文シャツ(MTO)

Machine

最後はシャルベとフライ、どちらもマシン縫いのシャツである。シャルベは既成のシャツを 着て補正値を出し、完成させる。ドゥミムジュールだが、襟型からカフ、裾周りまで仕様の範囲が広く、さすがと思わせる。特に凄いのが生地のストック。小さな博物館のような趣がある。いつかグランムジュールに挑戦してみたい。一方のフライは日本のショップ受注会でオーダーしたもの。首周りや袖丈を採寸するが細かな仕様については制限があった。出来上がりは既成のシャツと際立った違いもなく、好きな生地を選んで自分だけの1枚を作る喜びを味わうのが相応しい。