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カテゴリー「誂え服(Bespoke clothes)」の36件の記事

2016年5月21日 (土)

Huntsman dittos(ツィードスーツの完成)

スーツの事を古い言葉でDittos(ディトーズ)と呼ぶそうだが、Dittoを調べてみたところ「同じこと」「同上」とある。そう言えばスーツはジャケットと組下のトラウザーズや間に挟むウェイストコートが全て同じ素材、だからDittosと呼ぶようになったのかもしれない。

ハンツマンのツィードスーツが完成したのでトランクショウに顔を出してみた。実は3ピーススーツに加えて共布でネクタイとキャップを注文していたので同じ柄物が5つで1セットということになる。そこで今回は出来たての5-piece dittosを紹介してみようと思う。

1.シングルピークトラペル

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完成したスーツはハウススタイルのシングル1ボタン。襟は注文どおり直線的に肩まで上るピークドラペルで仕上げている。袖と身頃の柄合わせは「自然な立ち位置」で腕を下ろした時に合うよう工夫しているとのこと。ハンツマンは柄合わせが特に上手だと思う。

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2015年11月21日 (土)

Tweed Suit(ハンツマンの仮縫い)

前回ブログにハンツマン受注会の様子を伝えたのが9月12日。何と2ヶ月のインターバルで再びトランクショウが開催されるとの連絡が入った。「年に4回来日する。」とは聞いていたが、夏とクリスマス時期を除けば確かに2ヶ月で1度の割合になる。新規参入のハンツマンらしい熱意の表れなのだろう。

生憎今回は出張中ゆえ仮縫いはパス。来日するカッターのロバートには仮縫い前のスーツ写真を送って貰うよう依頼した。すると仕掛り中のスーツの写真と共にハンツマンのウェブサイト用写真まで届いたではないか。そこで今回はハンツマンに注文したスーツの最新情報を紹介してみたい。

1.ハンツマンのカッター

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裁断机の生地はハンツマンのハウスチェック。かなり人目を引くチェックだがハンツマンではスーツでもOKらしい。カッターのパンツ両脇ポケットに注目。意外にもサビルロウのテイラーはスランテッドポケットが多い。英国経由のアメリカントラッドがバーティカルポケットを守るのとは違うようだ。

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2015年9月12日 (土)

Huntsman trunkshow(ハンツマン受注会)

1990年代からいくつかのテイラーで服や靴を誂えてきたが、当時はこれほどまで日本を含むアジア地域で多彩な顔ぶれになるとは思ってもみなかった。比較的早くビスポークの世界にスポットが向いていた日本の顧客達はサビルロウやナポリまで足を延ばし、お気に入りの逸品を誂えていたようだ。

ところが今や日本にいながらにして世界の名店が注文をとりに来る。今回サビルロウでも飛び切りの上代といわれるハンツマンが満を持して日本でのトランクショウを開始した。たまたまシニアカッターとは旧知の間柄ということで、今回はハンツマンでの受注会の様子をお伝えしようと思う。

1.トランクショウの会場

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場所は東京駅至近ながら隠れ家的な趣のあるフォーシーズンズホテル・丸の内。かなり広い部屋はゆったりと客を迎える工夫が随所に凝らされている。バンチだけが並ぶ一昔前のトランクショウとは違い、トルソーにサンプルが着せられている雰囲気は、まるでアトリエがそのまま移動してきたようだ。

もう少し詳しく紹介したい

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2015年3月14日 (土)

Vintage fabric(昔の生地で誂える)

服を何着か誂えると、選ぶ生地にもこだわりが出てくる。既製服の世界ではイタリアの軽くしなやかな服地が人気だが、イタリアのサルト(テイラーの意)達は英国の生地を推す。フィレンツェのリヴェラーノでもセミナーラでも英国製の生地を薦めることが多く、時には昔の良い生地が入ったと喜んで見せてくれることさえある。

これが紳士服の本場英国のテイラーはというと、やはり昔の英国製の生地の方が良いと言う。昔の服地に魅せられた知人から買い求めたビンテージ生地をロンドンのテイラーに預けた時もお墨付きを貰っていたが、先日そのうちの1着分がついに完成した。そこで今回はビンテージ生地で誂えたスーツ紹介しようと思う。

1.用いた生地

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仕立て前の生地。1875年創業の英国ミル、ウィリアムハルステッドによる3PLY(モヘア45%&ウール55%)の千鳥格子。モヘアを3本まとめて撚った糸で作り上げる生地はコシがありかなり重い。テイラーに言わせるとファンタスティックな生地らしい。確かに生地自体の強い張りやシャリ感が感じられる。

もう少しスーツを詳しく見てみたい…

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2015年1月17日 (土)

Bespoke Coat(サビルロウのコート)

新年を迎えた慌ただしさも一段落した頃、ロンドンはサビルロウのデイヴィス&サンから荷物が届いた。厚さはそれほどでもないが平たく大きい段ボール。はて、何だろうと開けてみると紙のトルソーに掛けられた状態のコートだった。仮縫いに中縫い、途中で体型が変わったこともあって細かな変更を経ての到着だ。

早速箱を解体、取り出したコートは皺もなく綺麗に収まっていたようだ。さすがにコートだけあって着丈が長い分、折り返したところが皺になっていたのでスチームを当てて復元、早速トルソーに着せてみたところだ。そこで今回は届いたばかりの英国調シングルチェスターフィールドコートを紹介しようと思う。

1.Davies & Son

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トルソーに着せようと持つとずっしり重い。ホーランド&シェリーでもトップクラスのコート用ピュアカシミアは着慣れたジャケット用のものとは明らかに密度が違うようだ。今回はフォーマルなコートをスーツの上ではなくカジュアルに着ようとシングルにして前を比翼仕立てにしなかった。画面からも素晴らしい生地感が伝わるだろうか。

もう少しサビルロウ仕立てのコートを詳しく見ると…

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2014年7月19日 (土)

週末のTweed(リエントリー)

デジタル一眼レフで写真を撮るようになると、その前まで使っていたコンパクトデジカメの写真がどうにも見栄えが悪い。昔、機械式一眼レフからデジカメに変わった時は「もうコンパクトで十分」と思っていたのに、いざデジタル一眼レフで撮影してみると下手ながらも性能の違いが写真に現れることに気づいた。

操作に慣れて少しはまともな写真が撮れるようになると、以前の写真を差し替えたいと思うようになってくる。オート撮影ばかりでなくマニュアルモードで撮影することも覚えた。そこで今回は新たに写真を撮り直した上で、お気に入りのツィードジャケットの記事をリ・エントリー(再掲載)しようと思う。

1.リエントリー

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前回の掲載は2011年7月23日。今から3年前の夏だから、昔も今も夏のうちから秋冬物を出してあれこれ考えていたことになる。唯一無二のデザインとカッティングが光るジャケットは正にビスポークの真骨頂。秋冬シーズン最初に袖を通す1着として真っ先にリエントリーが思い浮かんだ。

さて、個性溢れる英国仕立てのツィードジャケットをもう少し詳しく見てると…

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2014年4月 5日 (土)

Henry Poole 2nd(続ヘンリープール)

ウィキペディアによればヘンリープールは1806年リネン商として創業、軍服を仕立てながら1846年にテイラーとしてサビルロウに店を構えたようだ。戦前は日本の皇室御用達でもあったが、1961年にサビルロウ再開発を期にコークストリートに移転、1982年は再びサビルロウ15番地に戻り、現在に至るとのこと。

通りにはギーブズ&ホークスやハンツマンが軒を連ねるが、プールは老舗中の老舗であるにも拘らず仕立て代は控えめ、店の雰囲気も穏やかで温かさを感じさせる。今までプールでは3着のスーツを作ったが、その中で、今回は直しを終えてようやく戻ってきた2着目のスーツを中心に着こなしを紹介しようと思う。

1.ブリティッシュスーツ

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典型的な3つ釦中一つ掛けの英国調スーツ。初めてハケットを見た時の衝撃は正にこの写真のようなスーツだった。最近は見かけないがブリティッシュトラディショナルスーツの完成形と言えよう。ヘンリープールらしく、ウェストサプレッション(胴絞りが強い)とチェストを強調するカッティングが特徴だ。

もう少し詳しく紹介したい…

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2013年10月 5日 (土)

Making over a suit IV(モヘア混のスーツ)

トニックといえばジントニック。そのトニックを服地の名前に用いたのが生地屋のドーメルだった。完成した際、開発者がジントニックで祝杯を挙げたことからその名がついたらしい。当時の生地は今とは別物で、ヴィンテージものとして探し求めるファンも多いと聞く。それほど貴重なモヘア60%のオールドトニックを先日友人から譲り受けた。現在はロンドンのテイラーに預け、スーツを注文する日を待っているところだ。

実は数年前、モヘアの入った生地でスーツを作りたいとリクエストしたところ、テイラーのピーターは一年中着られるように「モヘアの混紡率は低く、打ち込みのしっかりとした生地」を薦めた。出来上がったスーツは生地のハリも十分、シャープなシルエットが気に入っていたが、暫くして体型が変化したので直しに出したところだ。そこで今回は直しを終えてよりスマートになった”モヘア混のスーツ”を紹介しようと思う。

1.スーツ全体の比較

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左は直し後で右が最初の納品時。シングル2つボタンにワイドなピークドラペルはトムフォードのスーツに近い雰囲気がある。直し後の写真を見るとジャケットはもとよりパンツも細身に直したことが分かると思う。直し後はまるでスーツを新調したかのようなフィット感が味わえる。補正は池ノ上の名店コーダ洋服工房に依頼。

もう少し詳しく直し後の様子を紹介したい…

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2013年9月21日 (土)

Making over a suit III(誂え服の直しNo.3)

最近久しぶりに友人と会ったが、体型の変化に驚いていた。本格的なジム通いを始めて3ヶ月経ち、体重や体脂肪率はほとんど変化しなくなってきているのでこれから先は現在の体型を維持するようになるだろう。今まで作ってきたスーツはどれも直しが必要だが、幸い肩の直しが必要なものは殆ど無い。ジャケットは脇詰めのみでパンツは全体的な幅詰めをしながらワードローブの直しを進めている。

最近直しに出したのはスーツ2着とブレザー1着の計3着。スーツは勿論パンツの方にも直しを入れている。全てロンドンはサビルロウのファーラン&ハーヴィー(デイヴィス&サン)製。誂えのスーツは仕立てた店に出すべきなのだろうが、テイラーが来日する時しかチャンスがないので一遍に何着も持ち込めない。そこで池ノ上にあるコーダ洋服工房にお願いすることにした。ということで今回は直しが終わったばかりのスーツを紹介しようと思う。

1.スリムフィット

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ジャケットは両脇の詰めのみ、パンツはウェスト回り、ワタリから裾まで細身に直しを入れている。誂えの場合裏地付けも手縫いで仕上げているが、裏地を外して縫い代をミシンで詰め、最後に手仕上げで裏地を縫い合わせている。工賃に比べて手間のかかり方が違うのだが決して手を抜かないところは流石だ。

2.肩から脇のライン

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今回肩は手付かずなのだがウェストを中心にジャケットの下からアームホールまで自然に詰めて行った結果全体的に細身になっているのが良く分かる。これがサルトあたりだと袖筒も詰めたりするのでもっと格好良くなるのだろうが工賃もその分ぐっと高くなる。そこまでしなくともウェスト周辺の補修だけでぐっと印象が変わる。

3.袖下のライン

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アームホール下からウェストまで詰めが入っているので、後ろからに見た時に脇下部分のダキ皺がなくなりぐっとすっきりした印象だ。余分な生地が減ったことで、肩から胸にかけて、あるいは脇下からウェストのかけて以前よりもドレープが綺麗に出ている。受け取り時に試着したが身体にフィットしたスーツはやはり気持ちが良いものだと実感した。

4.胸回り

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脇下から詰めたお蔭で胸回りの生地もその分絞られることになる。今回は両脇を2センチずつ詰めたのでウェスト部分全体で4㎝詰めたことになる。手で2㎝摘まんだくらいでは大したことないように感じてしまうが、実際に直しを終えた服を見ると随分違う印象を受ける。確かポケットチーフを入れる時も直した後の方がポケットが窮屈に感じた。

5.ウェストサプレッション

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元々(下の写真)スラントポケットの上部に不自然な皺があったのが気になっていたが、直しを入れた後は皺も目立たなくなっている。上の写真では袖と身頃の間から綺麗なカーブを描いたウェストラインが顔を出している(上)。スーツが最も格好良く見えるのがこのウェスト部分。ブルックスのⅠ型サックスーツでは味わえない世界だ。

6.ポケットスクェアの印象

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今回の撮影ではTVフォールドで挿してみたが、以前の4ピークと比べると大分顔つきが違う。グレーでまとめたコーディネイト(上)は全体的には控えめなのでチーフの出方も少なめに、ピンクの入ったレジメンタルタイはやや派手な印象なのでチーフも露出部分を多くするとバランスが取れるようだ。

7.シングルピークスーツのVゾーン

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シングルピークのスーツはラペル~Vゾーンがかなりシャープなのでシャツもカッタウェイやホリゾンタルカラーのシャツと相性が良い。両者とも第1釦やカラーの合わせ目からネクタイの結び目が見えてしまうのが気になるところだが、できるだけシャツのタイスペースの上ギリギリまで結び目を持っていくことでかなり見えにくくなる。

8.ブリティッシュスーツにイタリアンネクタイ

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今回選んだネクタイはイタリア製タイユアタイのもの。一時期見られたフランコミヌッチレーベルではなくフィレンツェの本店で展開しているものと同じもののようだ。元々グレンチェックのタイはラルフローレンがホリデー&ブラウン(英国製)に作らせていたものを持っていたのだが古くなったので買い替えたもの。英国スーツに伊太利ネクタイも悪くない。

9.ウェスト回り

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ウェストをかなり詰めたのでサスペンダーで吊らなくとも両脇のアジャスターで十分になった。昔はノープリーツの場合ダーツを入れて立体的に作っていたのだがこのパンツにはダーツがない。一見既成のパンツのようだが履いてみると大違い、やはり誂えのパンツは体にフィットしている。

10.コーディネイトした靴

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今回は黒と茶色の靴を用意、特にミディアムグレーのスーツに焦げ茶色の紐靴はポールスチュアートがよくやる組み合わせだ。ロンドンでは決して見かけない色合わせだがニューヨークではグレーやネイビーのスーツにも茶色の靴を合わせている。何しろ店員からして皆茶色の靴を履いている印象がある。

11.フォスター&サン

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どちらも履き込んだ靴ならではの履き皺が入っている。左が7足目のセミブローグ。シームレスの踵やつま先のパーフォレーションが特徴。右は3足目のプレーンサイドエラスティックデザインオントゥ。マックスウェルのデザインから。誂えのスーツに誂えの靴というと昔ロンドンのクレバリーで見たビジネスマンが何とも格好良かったことを思い出す。

体型が変わる度にスーツを新調したり直したり、あるいは既成服を買っていたりしていてはクローゼットが直ぐにいっぱいになってしまう。若い頃は代謝率が良いので体型の維持はそれほど大変ではないが、年齢が高くなると代謝率が落ちるので殆どの人はウェスト回りを中心に太くなってくるのではないだろうか。

体型の変化を防ぐには食生活の改善がベスト。ただし既に付いた余分な脂肪を燃やすにはジム通いが有効。2週間のサマーバカンスを終えて戻ると直ぐに体型が変わっていて驚いたが、手持ちのスーツを次々と直しに出し、新調するコートやスーツを今の体にフィットさせているので今後もトレーニングに勤しむ日々が続くだろう。

2013年6月15日 (土)

Alteration to a slim(服の詰め)

直しの名店、サルトの原宿店に出していたセミナーラのジャケットを受け取ったのがGWの終わり頃、暦の上ではちょうど立夏にあたる日だった。この日から立秋までの間は夏季と呼ばれるそうで、せっかく直しから上がってきたジャケットではあったが再び秋の深まりが訪れるまで暫しの休養を取ってもらうことにした。秋冬物はクローゼットの奥に掛け、代わりに仕事用の軽いウール素材や綿・麻素材のトラウザーズなどを前面に用意。クールビズ始まってからは手前のジャケットを取ってノータイに半袖のシャツを合わせ コットンパンツを履いて仕事に就く日も増えてきている。

先週末、ふと思い立ったように件のセミナーラを改めて眺めてみた。誂え服だけあってほぼ全てのシームラインにハンドステッチが走っている。いったいどうやって指定したウェスト部分を詰めていったのか興味津々で調べてみた。周りと特に変わった部分がある訳ではないが、確かに両脇部分のくびれが以前よりぐっと深くなっている。既に紹介済みの銀座サルトと比べても修理を担当した原宿サルトの実力は中々のもの。そこで今回は直したばかりのセミナーラのジャケットを中心に手縫い服の仕立て直しについて紹介してみたい。

1.直しの済んだセミナーラのジャケット

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直しから戻ってきたジャケットはまるで別物のようにウェストが絞られたエレガントな1着に生まれ変わっていた。フィレンツェ仕立て特有のサイバラがなく斜めに走るダーツ付近は生地の柄合わせも完璧だ。上手に両脇と背中心を詰めながら直し前と同じ雰囲気に仕上げるのはなかなか大変だったのではないかと想像する。ネクタイは緑と相性の良い紺を、パンツは同じ紡毛系のグレーフラノにして足元はスェードシューズを合わせる。起毛感のあるアイテムを組み合わせると装いも安定する。

2.直し前と直し後のウェスト部分の比較

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直し前(左)のジャケットではウェストの絞りがどことなく緩慢に見える。ところが直し後(右)のジャケットではウェストの絞りがよりはっきりと綺麗にカーブを描き、自然な感じで腰まで降りてきている。以前、既成のジャケットを直しに出した時も同様だったが、単にウェスト部分のみを詰めるのではなく腕下部分から徐々に詰めていくことでアームホール付近の抱き皺も解消されている。となるとウェスト部分のフィット感を高めることこそウェルドレッシングに通ずる早道とも考えられそうだ。

3.直し前と直し後のアームホール周辺

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直し前(左)のアームホール付近を見ると脇下に余分なスペースがあるようで、そのせいか皺も寄りがちだったが、直し後(右)の写真を見るとアームホール下から自然な感じでウェストまでラインがつながっている。加えて左の写真にある皺もほぼ解消されているようだ。仕立て直し後は丁寧にプレスをかけて納品されたこともあって、肩の先からマニカ・カミーチャ仕立ての袖までぴたりとトルソーの肩に沿って乗っているのがよく分かる。

4.直し前と直し後のドレープライン

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直し前(左)の写真ではウェスト部分の一番窪んでいるところに皺が寄っていたのが分かると思うが、体型が変化したたことでウェストを詰めた結果、自然と写真に写っている皺も消えている。今回はウェストを片側で3㎝以上詰めており、直し後(右)の写真ではチェストからそのウェストに降りてくるドレープラインがよく出ている。直しを依頼したのは唯一ウェストの詰め(正確には3方詰めのため両脇に加え背中心にも手が入っている)だが、これほど直し後の印象が違うということを修理前に想像するのは実際難しいかもしれない。

5.コーディネイト

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グリーンのジャケットと相性の良いのはブルー。サックスブルーのストライプシャツに幅広の小紋タイも同じ青でまとめてみた。セミナーラのハウススタイルはラペルが広く着丈の短いフィレンツェ流、ネクタイも最近流行の細身のものではなく1990年代のタイの方がマッチする。ポケットチーフは淡いグリーンと相性の良いクリーム色にやはり青の小紋が入ったもの。トップスはジャケット以下全てイタリア製のアイテムで揃えた。繊細な色目のジャケットには気の利いた色が揃うイタリア物を選ぶのが間違いないところ。

6.脇下~ウェスト部分の直しの様子

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ご覧のように袖の縫い目は勿論のこと、脇縫い部分にハンドステッチが入る作りになっているため、どのように修理するのかあちこち眺めてみた。既成服の直しと基本的には同じようで、アームホール下から一旦解いて脇詰めを行い、余分な縫い代をカット。その後周囲のハンドステッチと違和感がないようピッチを揃えて手縫いによる直しを進め、最後にプレスをして仕上げる。写真の角度からは見えないが背中心にも直しが入った跡が見られる。3方詰めということに加え、誂え品であることから機械縫いの既製品とは違う細やかな手作業が要求されたことと思う。

7.ハンドステッチの様子

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スラントポケットに走るウェルトシームの手縫いステッチ。こうした細かなステッチがほぼ全ての縫い目に走っているのがこのジャケットの特徴。誂え服は体型が太くなった場合を考えて縫い代を多めにとっているが、今回のように注文時より体型が細くなった場合、既に多めにとってある縫い代をより多くるのは難しい。そこで細くなった分生地をカットせざるを得ない。ただ、この時点で注意しなくてはならないことは、一度カットしてした以上、元の体型には戻れないということだ。

8.1990年代のマリネッラ

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このところナロータイを時々見かける。ラペルの幅が狭いジャケットも見かけるのでそれに呼応しているのだろう。ただし、このセミナーラのジャケットは幅広のラペルが特徴、それに合わせるのには最近のネクタイよりも幅の広かった1990年代のタイが相応しい。1998年、ナポリの本店で当主のマウリッツィオ・マリネッラの見立てで買ったセッテピエゲのネクタイは今よりも心地の厚いボリューム感のある1本。流石はネクタイの名門らしく今見ても高い質感の逸品だと分かる。

9.ボタンホール

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手縫いのジャケットらしく、様々な部分に人の手が入っているのが分かるがボタンホールも例外ではない。カシミヤ50%混のデリケートな生地を意識した細かなピッチの穴かがりが見て取れる。今まで一番細やかな手仕事が見られたのは同じセミナーラで作ったカシミヤ100%のシングルチェスターコートだ。その生地は大変素晴らしいもので、生地の質に合わせて腕の高い職人が縫っていることを実感した。このあたりはアリゲータなど高級革素材を用いた誂え靴は腕の立つ職人が担当するといった話と相通ずるところがある。

10.ウェスト周辺

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フランネルパンツは日本のブランドからセレクト。インコテックスやPT01あたりを分解し、パターンを研究しながら作り上げたようでイタリア以上にトリムフィットな1本だ。合わせたベルトはホワイトハウスコックスの英国製メッシュベルト。1980年代終わりラルフローレンのセールに行くと「ラルフローレンのベルトと同じファクトリーで作られたものです」と書かれた輸入元のワゴンがあって安く購入したもの。久しぶりに出して合わせてみた。

11.コーディネイトした靴

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こちらもホワイトハウスコックスのベルト同様久しぶりに出した昔の英国靴。両者ともスェード素材のセミブローグ、お気に入りのデザインだ。左は1991年購入のクロケット&ジョーンズ製タバコスェード。ロンドンはバーリントンアーケードのカシミアショップバークで購入。右は初めての本格的英国靴で1986年製グレンソン。イタリアのフィレンツェにあったセレクトショップ、プリンチぺで買ったもの。今より短い捨て寸が目立つ。それは裏を返せば今の靴がロングノーズ過ぎるのかもしれない…。

12.スェードセミブローグ

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1980年代から1990年代の紳士用既成靴は上の写真のように丸く小ぶりだった。メイカーは違えどレングスやウィズ、キャップの位置やギンピングの有無は2足とも殆ど変わらない。つい最近までこれが基準だったのだろう。ところが1990年代後半からスクェアトゥが流行り始め、つま先も細く長くなっていく。そうした移り変わりを間近で見ているうちに、いつの間にか目の前にあるものを基準にしていた。20年以上前の靴をこうして見ると、変わらないはずのクラシックな紳士靴であっても流行が存在することが改めて分かる。

ふとしたきっかけで始めたジム・トレーニングだが、メディカルチェックの結果からは生活改善(アンチエイジング)も順調、今後は理想的な体型を維持するところまできた。それにしても以前より1~2サイズ体型がスリムになったお蔭で、ぐんとお洒落の幅が広がった。大柄のジャケットや鮮やかなカラーパンツなど昔は選ばなかったものがクローゼットの中で目に付く。反面、大半はまだまだ直しの済んでいない衣類が掛かっている訳で、アンバランスな状態と言わざるを得ない。

直しの済んでいない誂え服については今後、ロンドンやフィレンツェなど本国のテイラーに送り返さず、日本の職人さんに直しを任せるつもりでいる。また、既成服についても同じように直しの程度に分けて、コーダやサルトなど馴染みのお店にお願いしようと思っているところだ。「お洒落のポイントは身体にフィットしたものを着ること」と言われているが、体型が細くなると特に実感できる。今までの緩い服が我慢できないからだ。今後も仕立て直しを進めながら真にフィットした着こなしを目指したい。