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2017年7月29日 (土)

Sartoria Napoletana(ナポリ仕立て)

前回はロンドンのテイラーが作るスーツを紹介した。立ち姿の美しいサビルロウスタイルのスーツは仕事の場において相手に対する信頼や安心感を無言のうちに醸し出してくれる。ここ一番という勝負所で常に、自らを奮い立たせてくれる武器でもある。

その対極にあるのがイタリアのサルト。中でもナポリのそれは手仕事による柔らかな仕立てで着ていることを忘れさせるほどだという。そこで今回はナポリのサルトが作るスーツをコーディネートを交えながら細部にわたって詳しく紹介してみようと思う。

1.アントニオ・ラ・ピニョッラのスーツ

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ナポリの腕利きサルトアントニオ・ラ・ピニョッラ(以下ピニョッラ)のスーツ。僅かな期間日本に入ってきたピニョッラは仕立て服の技術で作り上げた既製服の決定版。ロープドショルダーから吸い付くような上襟にかけての美しいノボリが服好きを魅了する。

2.ミディアムグレーのスーツ

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ナポリの腕利きサルトが作る一見古風な段返りの3つボタンのスーツだが、アメリカのサックスーツとは違うエレガントで柔らかなラインが特徴。イタリアのスーツには珍しく黒靴の似合うシャークスキンのウール素材(恐らく英国製)を使っている。

3.Top to Toe(頭からつま先まで)

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黒靴を履くならばハットも黒のリボンが付いたドレスタイプが基本。ウールのスーツにパナマハットこそ男のお洒落…良質の帽子を用意したい。ここではイタリアの雄ボルサリーノをチョイス。長年愛用すると日焼けしてつばが良い感じにやれてくる。

4.ニットタイをスーツに合わせる

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初夏をイメージしたスーツの着こなし…却って涼しさを感じさせる黒のニットタイがその中心となる。シャツはローマのミコッチ。襟が柔らかくしなるようステッケ(カラーステイ)を外してみた。ネクタイはフェアファックスのイタリア製シルクニット。

5.ハンドの嵐(その1)

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段返りの第1ボタン。左は表側、右は裏側の様子だが綺麗に両面から穴かがりを行っている。このあたりはサビルロウのテイラーでも指定しないと表側のみということも多い中、出来るだけ手仕事を取り入れようとするピニョッラの意地が垣間見える。

6.ハンドの嵐(その2)

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本切羽の表側は襟同様ダブルで星ステッチが入る。見え難いが袖山には片伏せ縫いの星ステッチが入っている。ボタンホールは日本の職人によるものだが身頃のボタンホールに負けない美しい仕上がりでスーツの袖先に華を添えている。

7.ハンドの嵐(その3)

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ナポリのスーツらしく片伏せ縫いが特徴。左は身頃のダーツ、右の写真は肩のラインだが他にもサイバラ部分や背中心、サイドベンツ周辺などいたるところに星ステッチが入る。極めつけは背中のライニング端まで手縫いというのだから驚いてしまう。

8.ハンドの嵐(その4)

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左はポケットフラップの裏側。一見不揃いなステッチがAMF(機械)ではなく手仕事であることを物語っている。右はラペル(下襟)の裏側。ダブル星ステッチの縫い目やハ刺しの跡(見えにくいが)、フラワーホールの下にはシャコ留めによるループも付いている。

9.ハンドの嵐(その5)

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背中心を裏側から撮ってみたところ。背割りで2枚の布を合わせるのではなく1枚の布を用い、写真上にあるイラストのように中央で生地を摘みミシンで背中心を出した後、片側に伏せて手縫いの星ステッチを入れるという凝った作りになっている。

10.アントニオラピニョッラのタグ

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19歳で店を構え、キトンでモデリストの経験もあるピニョッラの情報は少ない。手仕事を追求したスーツ作りに情熱を傾けていた職人に代理店が納期を迫ったため、あっという間に契約が解除されてしまった関係で極端に流通量が少ないと聞く。

11.ナポリのサルトとブレイシーズ

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ピニョッラのスーツにはところどころサビルロウのスーツを意識している様子が窺える。中でもサスペンダーボタンが標準で付けられているのはイタリアのサルトにはとても珍しいのではないだろうか。前回同様黒靴用のサスペンダーを合わせてみた。

12.バルカポケットとチーフ

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綺麗なカーブを描くバルカポケット。挿したポケットチーフはフランスのシモノゴダール(ニューヨークのポールスチュアートで購入)。青と黒のラインが端に入ったもので、シャツとネクタイそれぞれの色を拾っていることになる。

13.イタリアの黒靴を合わせる

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靴好きにとってイタリアの靴=茶というイメージが多いだろう。だが、今回は黒靴が似合うグレー無地のスーツということでイタリア製のセミブローグシューズを用意。家鴨の嘴に例えられるイタリアのクラシックなスクエアトウが今また新鮮に感じる。

14.メッシーナの靴

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ミラノの誂え靴屋メッシーナのアデレイド。竪琴状のレースステイ部分はパーツを上から被せる手法で通常のアデレイドとは逆の作りになっている。今は亡きメッシーナ親方は黒靴の時だけベヴェルドウェイストで仕上げる一徹さがあった。

スーツを着る機会は年々減ってきているが、涼しくなったら今年は少しスーツを着る回数を増やそうと思っている。どんなにオフィスウェアのカジュアル化が進んでもジャケパンスタイルでは何とも頼りない…スーツこそ相応しいという場面がある。

時には立ち振る舞いを意識して英国調のスーツに身を包み、またある時はリラックスしたイタリア仕立てのスーツで会議に臨み…このところすっかりクールビズに染まった我が身を反省しつつ、スーツの着方を目下色々と思い返しているところだ。

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誂え服(Bespoke clothes)」カテゴリの記事

コメント

これで既製服なのですか!!
凝ったつくりの驚きました!

なめらかな曲線がまた優雅で、合わせられているアイテムがよりやわらかさを演出しているような・・・英国服との違いを感じられますね~。

そういえばこのブログに到達できたのがクラシコイタリアを調べていたときだったのを思い出しました。

イタリアのスーツならば自然体で着れそうな・・・それがまたかっこいいなぁと思いました。

えいでん様

週初めのコメントを有難う御座います。

久しぶりに出したナポリのサルトが作る既製服は注文服と全く同じ工程で型紙だけが既成服用のものをモデリストが興し、それを製品化したものなのでビスポークとクオリティは河原にかと思います。

イタリアの柔らかな仕立ては着る者を自由な発想に導いてくれそうで、会議や講演会などにもってこいです。ここ一番の契約に英国スーツが重宝するのとは真逆で違いますが…。

どちらにも得意なフィールドがあるところが欧州の服飾文化の奥深さを物語っているようです。

私は、以前も投稿させていただいたのですが、ガチガチの(笑)英国派です。でも、今回のようなイタリアの柔らかさ、エレガントさに密かに惹かれたりもしています。

数年前にかかって以降、毎年夏はどこかで熱中症にやられてしまいます。なので、夏にスーツでキメたいけれど、暑くてなかなかできません
。少し涼しくなってからチャレンジしたいと思います。

ところで、前回もそうでしたが、私のいる地方都市では、ショップでグレースーツを見かける機会が心なしか減っている気がします。
特に、グレー地のグレンチェックなどは全く見かけなくなりました。
従来からメンズの定番とされたアイテムが見られなくなるのは、少々寂しい感じです。若い人たちにも、もっとトラディショナルの本当の良さを知ってもらいたいと、密かに願っています。

oisan様

暑い日が続きますがコメントをいただき有難う御座います。

おっしゃるとおり英国スーツばかりだと堅苦しくてイタリアの柔らか仕立てになびきますが、その軽さが鼻に付くとアメリカンスタイルの自由さに憧れる、私の場合はそんな感じです。まるで服飾のトライアングルをあっちこっち彷徨っているような…。

そうそうグレンチェックは不思議なもので流行があるようです。店頭に全く並ばない年がしばらく続いたかと思うといきなりブレイクします。そういう意味では定番ながら在庫がなくなると次の入荷までうんと時間がかかるといった感じかもしれません。

私も今年は脱水症状を起こし病院に緊急で行く羽目になりましたので夏は気をつけなくてはいけませんね〜。oisan様もまだまだ暑い日が続きそうですのでご自愛くださいませ。

管理人様。大丈夫でしょうか?くれぐれもお身体お大事に願います。私もここ数日間測量でアスファルト舗装の上を歩き回る日々の連続で右足の底が浮腫んでしまっておる状態です。でもこの暑い中にglen checkのワードで心なしかの清涼感を感じました!この、glen checkのワードを聞きますと、私の大好きなイーストコーストのブルドッグがキャラクターのY大学傍の発祥地のブランドの絵葉書にありました、【兄貴は何時でもglen checkが良く似合う!】を思い出します。この柄の製品、特にパンツに関しましては出来栄えが大きく左右される柄。と思っております。安物ですとベルトループ~股間あたりまではまずまず柄が合っておりますが裾に行くまでの膝あたりでひどいのになりますと、もう、柄が半分近くずれてしまってる製品も見受けられます。私もこの柄が好きで数本のパンツ所有しておりますが、やはり天下の【今泉】膝下どころこか踝まで行っても僅か2ミリ以内の柄のズレ!流石に金色の羊。と痛感致しております。

浦野様

お気遣い有難う御座います。
グレンチェックのパンツはシャープな感じがして春夏のブレザールックの定番ですよね〜。私も猛暑になるまでは時々履いていました。最近はコットンパンツばかりですが…。

ブルックスブラザーズは男性の既製服を世の中に広めた世界最古の紳士洋品店だけあって見栄えや素材、縫製など常に最良のものを適正価格で提供するというポリシーがあったはず…浦野様が納得されるのも確かに〜と頷ける話です。

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