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2016年8月 6日 (土)

Making process(ブーツの完成まで)

久しぶりにパソコンのメールを開いたらスパムメールがかなりある。受信拒否を設定したが雨後のタケノコのようで実に面倒だ…と思って見ていったらクレバリーのフィッターTeemu(ティーム)から最新のブーツの製作状況が写真で送られてきた。

そういえば今春のトランクショウで「30足目のブーツ」だから作っている様子を写真に収め送って欲しいと頼んでいたのを忘れていた。律儀な彼らしくしっかり応えてくれたのだった。そこで今回はメモリアルブーツ、その現在進行形を紹介しようと思う。

1.ラストメイカーMr.ティームレッパネン

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ジョンカネーラやジョージグラスゴーがツアーから引退して以来、東京のトランクショウを切り盛りしていたティーム。「厚手の靴下を履く…」という要望に応え、ラストを僅かに大きく作り変えているところのようだ。

2.インソールを装着する

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左は修正の終わったラストを中底用の分厚い革の上に置いてみた写真。右はラストの外輪を革にトレース、カットしたとインソールを釘でラストに装着中の様子。ブーツを作る時は踵の上部(アキレス腱のあたりり)までラストにパーツを上乗せしているようだ。

3.インソールのシェイプアップとリブ起こし(その1)

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インソールの形は靴のシェイプを決める重要なポイント。左はナイフで余分な革を削ぎ落とし、足へのフィットとスタイリッシュなシェイプの両立を目指しているところ。右は装着し終えたインソールのリブを起こすためのラインを描いているところ。

4.リブ起こし(その2)

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ラインが決まればよく切れる平ノミでラインの内側を削りリブを形作っていくいく。それにしても職人の使う道具はいつも手入れされているなと思う。革にナイフを当てるとまるで果物のように、スーッといとも簡単に切れていくのを見る度に驚いてしまう。

5.リブの完成

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リブが出来上がった状態。ハンドウェルトとの違いはリブが一番外側に来ているところだ。ノルウェジアン(ノルヴェジェーゼ)はウエルトがなくインソールとミッドソールにアッパーが縫い込まれるのでステッチが2本、靴の周りを走るという訳だ。

6.パターン起こし

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今回のブーツはキングスマンで有名になったハンツマンとクレバリーのコラボレーション、アッパーにもハンツマンのツィードファブリックが使われることになっている。前作とは異なる仕様なのでパターン作りも試行錯誤のようだ。

7.サンプルと材料の到着

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左は今回のブーツ作りの見本となったブルックスブラザーズのツィードブーツ(クロケット製)。ツィード部分が多く見えるようくるぶし下を深く抉るラインが描かれている。右は材料となるコードバンとライニングだろう。

8.クリッキングとライニングの装着

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左はコードバン革のクリッキング。パーツに沿って革を切りだしているところだろう。一方右はツィード生地にライニングを貼り合わせているところ。アイロンワッペンのように熱を加えて接着するのだろうか、アイロンを使っている様子が窺える。

9.ダークコニャックコードバン

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こちらは今回の目玉リクエスト、ホーウィン社のダークコニャック、シェルコードバンをアッパーに用いている。左と右の色の個体差が出やすいと言われるコードバンだが、定番のバーガンディより暗いので左右差はあまり目立たなくなるもしれない。

10.パーツの完成とクロージング

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左はパーツが全て揃ったところ、じょうごのような形の革は踵部分のパーツになる。生地の裏側には既にライニング装着済み。一方右はパーツを縫い合わせている様子で、今回は「つま先のメダリオンなし、パーフォレーションのみ」ということが分かる。

10.完成したアッパー

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ラストに釣込む前のアジの開きならぬ「アッパーの開き」状態。ツィード部分にも紐通し用の穴が開いているがここにフックが装着される訳だ。穴飾りを入れるか否か話し合い、ノルヴェのボリュームに負けぬようパーフォレーションのみという結論に達した。

11.ボトムメイキング

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ボトムメイキングの様子。写真5のインソールにアッパーが縫い込まれたところだ。外側に折り返ったアッパーの端とミドルソールが第2のステッチで、更にアウトソールとミドルソールが第3のステッチで留められ、トリプルステッチが完成することになる。

クレバリーの30足目を担当してくれたティームも、ここでクレバリーを離れ、ジョンロブ・ロンドンに移籍することになった。進行状況を見て「これなら安心…」と思ったのだろう。去就と共に写真を送ってきたのも彼ならではの気遣いに違いない。

ビスポークを楽しむには信頼関係が大切。互いに言い合い、ミスを受け止め、厳しい要求を出す中で自然と信頼関係もできてくる。クレバリーを去ったティームの今後を陰ながら応援するとともに、ビスポークの醍醐味を教えてくれたことに感謝したい。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

管理人様

ジョージクレバリーの手による記念すべき30足目のビスポーク。誠におめでとうございます。
また、工房の仕事を垣間見ることができる貴重な画像をありがとうございます。
私も、職人さんの道具の手入れ具合(上手さ)にはいつも関心させられます(私が靴教室で愛用していた包丁は、研ぎが下手だったために全然思うように切れませんでしたので・・・)。
まさに白眉と呼ぶに相応しいこのブーツと、ハンツマンのツイードスーツとの出会いが、自分のことのように今から楽しみでなりません。

スクルージ様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

靴教室に通われていらっしゃったとのことで、私とは違う視点で写真をご覧になられたのではと推察いたします。今回のコラボレーションはどちらも職人繋がりで実現したこと、ハンツマンのロバートとは長い付き合いになりますし、クレバリーのティームとは更に長い付き合いです。

彼等がきちんとこちらの意図を汲み取ってくれたので実現した部分も多いので少しでも彼らの仕事にプラスになるようサビルロウ本店やクレバリーの店舗でのディスプレイの話を出しました。そういったことが早く実現すると良いなと思っているところです…。

毎日暑い日が続く今日この頃、毎年恒例の秋冬物でクールビズを与えて下さる管理人様、一瞬の冷気に感謝申し上げる次第です。このようなブーツ上部にスコットランドのtweedを貼り付けた靴は随分昔にまだリーガルシューズ長崎店が長崎県一番の繁華街浜ノ町商店街、通称、はまんまちにあった時に店の入り口にデスプレイしてあったのを思いました!久々に個人的に縁結びの神社前の老舗旅館の御令嬢の歌をくちぶさみました。私は暑さのせいでサンダル履いております。

浦野様

お休みのところコメントをいただき有難う御座います。

何と、さすがはリーガル、ツィード生地と革素材の靴をずっと前から作っていたのですね。どんな靴だったか見たいですね〜。

今は旅行中なのでお盆過ぎに戻りましたらまた、ボチボチ靴の手入れをして、秋冬に備えようと思っています。こちらはナイキのスニーカーと革靴を車に忍ばせ北日本をグランドツーリングしています。

せっかくに秋冬物の新しいスレッド立ち上げて下さいました管理人様には失礼ながら私のコメントお聴き下さいませんでしょうか。と、申すのも随分以前、書き込みました南半球で購入して航空機の手荷物の関係上泣き泣き置いてきた、VUITTONのサンダルが12年過ぎた先日ついにアッパーと底材が剥がれてしまい以前お話ししました諫早市の例の靴屋さんで修理出来ないかと連絡ありました!そこで私は先ずはリペア可能かと何度か書き込みました博多阪急百貨店の靴コーナーに連絡すると以前リーガルシューズ長崎店に在籍いたしておられた女性スタッフのY様が電話に出られました。博多阪急百貨店内にあるVUITTONのスタッフ紹介してくださりまして、詳しくはVUITTONのインフォメーションコーナー、フリーダイヤルを教えて下さいました。現物見ないとわからないからとのお答え、そこで小倉詣での際に行く小倉井筒屋のVUITTONに電話すると小倉好き同士で話が合い盛り上がりました!今日姉が七十一回目の長崎原爆記念日で亡き母も原爆手帳持っていた関係上式典、い参加しております。そこで例のVUITTONのサンダル持って来ましたので行きつけの靴屋さん、シューズKさんに持って行くとリペア可能とおっしゃいました!アッパーも良く手入れされてる。底材も12年物とは思えないほど素晴らしい!靴のプロの御言葉に感動しまして、早速博多阪急百貨店と小倉井筒屋のVUITTONコーナーにこれを話しますとどちらもたいへんに喜んで下さいました!すみませんいつものわがままな書き込みに。

浦野様

12年もののルイヴィトンのサンダルが、修理可能ということで良かったですね〜。本当はルイヴィトンの店で修理可能です…と言って欲しいところですが、鞄はそうでも靴となると難しいのでしょうね〜。

それを修理可能と言ってくださった行きつけの靴屋さんの心意気と腕前に金メダルを差し上げたいな、なんて偉そうに思ってしまいました。

ブーツは、まだあまり馴染みがないのですが、レッドウイングなどのワークブーツは憧れのアイテムです。ドレスアップというより、機能や機能美に惹かれます。

暑い最中では、なかなかブーツにまでは気が回りませんが、早い段階からオーダーしておけば秋冬に履く事ができるのでしょうね。

ビスポークは、かなりの時間がかかると思いますが、その間の「どんな具合に仕上がるか」「出来上がったらどんな風に使おうか」等々、色々考えるのも楽しそう。
以前も同じような投稿をさせていただきましたが、いつかは靴もオーダーで誂えてみたいものです。

oisan様

コメントをいただき有難うございます。

誂えの楽しみはオーダーするまでの何にしようか迷う嬉しさ、届いた時の世界でただ一つの靴を手に入れられる嬉しさ、履き込んで足に馴染む嬉しさという3段階の嬉しさがあります。

一方、既成の楽しみは完成品を間近に見て買うことができる喜び、買ってすぐに履いていける喜び、履き込んで足に馴染む喜びと3つの喜びがあります。

結論としてはどちらにも靴の魅力があるということです。そしてそこに関わる職人の技を感じるほど誂えて良かった、あるいは買って良かったとしみじみ思えます。

多分職人さんと接することの多かった子供時代の影響で、人の手が入ったものに惹かれる今があるのでしょう。これからもそんなものに出会えたらきっと財布の紐が緩んでしまうんでしょうね〜。

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