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2016年8月20日 (土)

Black beauty(黒靴の変遷)

残暑が厳しくおまけに台風が近づいている荒れ模様の週末。どこへ行くこともなく、夏の間履かずにいた黒靴をせっせと手入れした。こう暑いと秋が恋しい。上質のニットや重厚なコートに合わせる黒靴をイメージしながらひとつひとつ丁寧に磨きをかけた。

初めてロンドンで靴を誂えた時から最後の黒靴まで、ウェストエンドの靴屋では沢山の黒靴を注文した。途中イタリアや東欧、日本の黒靴も合流していつの間にか靴箱の中で一大勢力となっている。そこで今回は男の勝負靴、黒靴の注文歴を辿って行こうと思う。

1.Black Beauty(美しき黒靴)

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14足の黒靴。初めてロンドンで黒靴を注文したのが98年。当時はスーツに黒靴が当然だったこともあり、盛んに黒靴を注文していた。今は職種も変わり履く機会も減ったが、それでもいざという時の勝負靴、黒光りするほど磨くのを常としている。

~クレバリーとの出会い~

2.1足目と2足目の黒靴

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98年春、駐在から帰国後渡英。クレバリーに頼んだのが左のESS(Elastic Sided Shoe)だった。先代のクレバリー時代、顧客はこのESSを最初に注文するのが暗黙の了解だったらしい。2足目は右のスプリットトウ。仕事靴としては異色のシボ革の外羽根だ。

2-1.トムブラウンを意識して…

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2足目の黒靴。黒のグレインレザーにスプリットトウの組み合わせは珍しかったようだ。外羽根もグレインレザーもカントリーのイメージ、それを仕事用の黒で注文するのだからクレバリーもはてな?と思ったはずだ。最近はトムブラウンのおかげで市民権を得ているが…

3.3足目の初挑戦バルモラルスタイル

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履き口の下を一周する穴飾りが特徴のバルモラル。内羽根靴=バルモラルだと思っていたがクレバリーに出入りするうちに色々なことを知った。イミテーションキャップにイニシャル、最も薄い3/16インチのソールなど仕様に凝ったのもこの頃だ。

4.4足目の初レイジーマンと5足目のストロングフルブローグ

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いよいよレイジーマンの登場。イミテーションブローグにモノグラムを付けて赤のライニングで注文したのが左の4足目。柔らかな履き心地を知ると反対に硬い履き心地も知りたくなる…。次の5足目では革が幾重にも重なるストロングフルブローグをリクエストした。

5.クレバリー最後の黒靴

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6足目の黒靴。クレバリーでのオーダーも時を重ね、ジョンカネーラ氏最後の来日となったトランクショウで注文した黒のアリゲーターレイジーマン。この頃は既に黒靴を履く機会の少ない仕事に就いていたこともあり、仕事以外で使える黒靴を考えての注文だった。

~フォスター&サンとの出会い~

6.1足目の王道セミブローグ

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クレバリーに遅れること4年、初めてフォスター&サンに注文した。当時は日本でのトランクショウがない頃で、渡英しては2足まとめて注文するなど血気盛んだった。伝説のラストメーカーテリームーア氏の手掛けたラストは今見ても美しい。靴を見ただけで分かる。

7.ヘンリーマックスウェルネームでのオーダー

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ヘンリーマックスウェルのサンプルを基に誂えたフォスター2足目。マックスウェルのショートノーズとは真逆のロングノーズで美しいプレーンサイドエラスティックだが、スーツルックにはすこぶる相性が良い。あまりによく履くのでヒールを最初に替えた靴だ。

8.フォスター3足目のレイジーマン

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スクエアのラストも茶靴のオーダーが間に入る関係でトウシェイプが毎回変わっている。ここではノーズがやや短く、つま先の幅が少し広くなっている。このレイジーマンもクレバリー同様スーツルックの定番靴として、宴席のある日は欠かせない存在だった。

9.トウシェイプの変化

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フォスターの黒靴のトウシェイプを見てみる。左の1足目がオリジナルで、中央の2足目は革の重なりがない分細く見える。右の3足目はノーズがやや短く、つま先の幅も若干広く取っているのでつま先に一番ボリュームが出ている。

10.ラウンドトウのラストを一から作る

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フォスターの4足目。新たにラウンドトウの木型を作り、ワインハイマーの革を用いて仕上げたパンチドキャップトウだ。コンセプトは「ジョンロブのフィリップを超える靴を…」だった。ディテールを伝え完成した靴は誂え靴に相応しい出来栄えでフィリップを圧倒した。

10-1.フォスター4足目と珠玉のフィット

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アーチラインが見えないくらい抉られているのが分かると思う。土踏まずのフィット感は吸い付くようで、これぞグッドイヤー(機械縫い)製法のフィリップが適わない手縫い靴のアドバンテージ。この靴をきっかけにラウンドトウを盛んに注文し始めるようになった。

11.ジョンロブフィリップとの比較

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左はフィリップⅡで右がフォスターの4足目。8.5Eのフィリップの方が若干長いが切り返しの位置はフォスターの誂えと変わらない。フェイシングの両脇の穴飾りも全く同じだ。フィリップの特徴をイメージスキャンしながら仕上げたのだろうか。何とも感心させられる。

~英国の黒靴からイタリア、東欧、日本の黒靴へ~

12.イタリアの黒靴

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クレバリーで1足目を受け取った帰りにミラノのメッシーナで黒靴をオーダーしてみた。イタリアには珍しいアデレイドスタイルは瓢箪型のレースステイ部分をパーツで表現し、上から革を重ねたもの。黒靴のみベヴェルドウェイストというところが如何にもイタリアらしい。

13.フィレンツェのボノーラとファクトリーのサンクリスピン

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フィレンツェのボノーラが健在だった頃オーダーした黒靴(左)。パピヨンのトウデザインが洒落ていたが、その後ボノーラは閉店。ラストを所持しているのが東欧のサンクリスピンと分かり、オーダーしたのがアデレイド(右)。ウェイストにペイス(木釘)を使用した変り種。

13-1.サンクリスピンの靴

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注文当時は今と同じようにユーロ安。既成のスタイルをマイラストで仕上げる変わった受注方法だった。仮縫いなしのビスポークで出し縫いが機械縫いということになる。スコティッシュブローグが欲しくてアザミを模ったブローギングのデザインをチョイスした。

14.日本の靴屋で黒靴を誂える

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フィレンツェでの修業を終え帰国した若き職人鈴木幸次氏と出会ったのが2001年頃。神戸の石田洋服店で靴を注文した。当時は若く無名だった鈴木氏も今では貫禄十分。その彼が作った3足目の黒靴はアデレイド、遊び心のあるデザインが気に入っている。

14-1.コージスズキの黒靴

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当時はクレバリーやフォスターで黒靴を注文していた頃、鈴木氏も好みを分かった上でイタリアの経験に英国靴のテイストや自身の美意識を加え靴を仕上げていた。横の黒鞄はエルメスのサック、並んでも引けを取らない革質が靴の上質さを物語っている。

15.つま先の変化

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黒靴のつま先。クレバリーとフォスターはラウンドとスウエアで、メッシーナはアヒルのくちばしと言われる幅広のイタリアンスクェアで、ボノーラでとサンクリスピンはラウンドスクエアで、コージスズキはポインテッドスクエアで誂えた。それぞれの特徴が良く分かる。

大切な会議や仕事のプレゼン、人事など幾つもの局面で黒靴が自分を支えてえてくれた。シャツにネクタイを結び、スーツを羽織る。玄関で黒靴の紐を締めたりつま先を軽く一拭きしてから仕事に赴く。そんな頃が懐かしく感じる。

今はクールビズでもウォームビズでもOK、好きなジャケットスタイルで仕事をすることもできる。お気に入りの茶靴を毎日履いても平気だ。だが、時々無性に黒靴を履きたくなる。きっと遮二無二に頑張っていた頃の自分に戻りたいという願望の表れなのだろう。

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コメント

管理人様


同じく、こう暑いと外に出るのも億劫になるというもので、この機会を利用してようやく「キングスマン」を観ました^^
サミュエル・L・ジャクソン扮するIT富豪ヴァレンタインの胡散臭さが最高でしたね(衣装も、成金らしく、カジュアルながら、エルメスかロロ・ピアーナっぽい高そうなものを身にまとっていたのも、何とも絶妙でした)

さて、ハリーはストレートチップを履いていましたが、管理人様はストレートチップのビスポーク経験もおありでしょうか?

PS
「先代のクレバリー時代、顧客はこのESSを最初に注文するのが暗黙の了解だったらしい」とのことですが、ESSだとフィッティングに融通がきくといった理由からでしょうか?

管理人様

ビスポークといえば最初は紐靴が鉄板という印象がありましたので、暗黙の了解の件は驚きました。どうしてそうなったのかとても気になります。
やはり紳士の国。英国の黒靴は他の国には真似のできないオーラーがありますね。例えるならば「無口で有能な主人を立てる執事」のようといいましょうか、分かりづらかったらすみません・・・・。

やまだ様

ストレートチップは残念ながらというか、敢えてオーダーしていません。

よく雑誌などでは基本の1足、ストレートチップを最初にオーダーするべしなどと書かれていましたが、日頃ストレートチップを履く機会が殆どないので「基本の1足」ではないだろうと思ったからです。

それと靴を誂えるより随分前にマスターロイド(E.グリーン製)の黒ストレートチップを持っていたのでもし作ってしまうと恐らくマスターロイドが活躍の場を失うと考えたこともありました。そのストレートチップは自身の結婚式や披露宴でも履いたものなので一生それだけを使い続けたいのです。

個人的にはビスポークの基本は自分の好きなものを好きにオーダーすることだろうなぁと感じています。クロコのローファーが欲しければ1足目からオーダーしてもいいと思いますし、ブーツだってOKです。

クレバリーのESSの件は雑誌からの伝聞ですので真意のほどは定かではありませんが、エラスティックサイドシューズの類い稀なる履き心地を当時の社交界に広げたい思惑があったのかもしれません。

フォト3のトウに管理人様のネームあしらったストレートキャップトウ。バルモラルながら、ブルッチャー見たいにロングピンキンギ。似たような靴に私のコレクションの一つRECCのストレートキャップトウ。ソールには【この製品は米国ブラウン社との技術提供で日本製靴が製造しました。】と今ではレアなシールが貼り付けてありますよ。もちろん色は黒色です。

浦野様

その黄色のシール、よく覚えています。当時はまだブラウン社があったのでしょうか。リーガルのどの靴にもそのシールが貼られていました。

流石は日本製靴のことを微に入り細に入り熟知していらっしゃる浦野様です。思わず懐かしい記憶が読みがえってきました。

御返信ありがとう御座います。よろしければふたりで心の中でくちぶさみましょうか、出雲国あの歌を!。

スクルージ様

コメントを投稿したと思いましたら、アップされておりませんでした。気付かずに申し訳ありませんでした。

まさにおっしゃるとおりで黒靴をオーダーするならイギリスが一番だなと思います。勿論茶色や他の色も良いのですが、英国の黒靴には他の国が真似できない独特の雰囲気があります。

イタリアの黒靴もフランスの黒靴も(拝見しただけで注文はしていませんが)良いのですが、英国のブラックレースアップにはそれを履くのが正しいとされるシティのドレスコードの中で鍛え上げられた実績があるのだろうなぁ…なんで想像しています。

浦野様

今日は見覚えのあ〜る…と口ずさみながら息子のリーガルビーフロールローファーを軽く磨いてみました。

普通ならば息子が父親の靴を磨いてお小遣いをねだる…というのが昔の典型的な家族の中の一コマだったはずですが、いつの間にか逆のことをしていました。いかんいかん…。

リーガルローファー、学生時代に履いた頃とデザインは変わりませんが、時を超えて今も魅力的です。*\(^o^)/*

こんにちは。
フィリップススペシャルが付いた靴を何足かお持ちと思いますが、実際に減りにくさは感じられますか?
ゴムがかなり硬めなので、実は普通に減っていく、との意見を耳にしたもので…

ロマン様

ビスポークシューズを履く機会が少なめだから減りが遅いと勘違いしているのかもしれません。その上で感想を記してみます。

①既成靴と比較して
フィリップスペシャルの方が既成靴のダヴテールタイプと比べて耐久性は高いと感じます。

②ビスポーク靴同士の比較
同じビスポークでもフィリップスペシャルの方が減りが遅いなと感じることがありました。

条件を制御して比較しなければ正確な答えは出せませんがフィリップスペシャルは減りが遅いというのは私も同感です。

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