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2015年12月12日 (土)

Long-cherished hope(3年間の思い)#01

昔はブーツメーカーを掲げる靴屋はブーツからシューズまで、シューメーカーはシューズとテリトリーがはっきりとしていたらしい。最近はシューメーカーがアンクルブーツを作ることも多く、そうした垣根を意識することもなくなってきたが、実際は少数の顧客の為にブーツを作るメーカーが存在する。

靴を何足か誂えるとブーツにも興味が湧く。それもアンクル丈ではない。ロングブーツだ。幸い馴染みのフォスター&サンはブーツメーカーでもある。ならばと自分の欲しいブーツをデザインして注文したの3年前…長い時を経てようやくブーツが届いた。そこで今回と次回の2回に分けて新着のブーツを紹介しようと思う。

1.ビスポークブーツ

04

デリバリーされたブーツ。デザインは古いマックスウェルのノルウェジアンブーツやロブパリのコテージライン、エシュンのハンティングブーツやRRLのラギットブーツなどを参考にした。素材は昔のカールフロイデンベルグ、底付けは前回の短靴を元に更に進化させたノルヴェ製法となっている。

~モックアップの作成とフィッティング~

2.モックアップの製作

Moc01

今回のブーツ作りを依頼したのが2012年春。フォスターからは今までにないデザインなのでモックアップ(本番と異なる革で作り、フィッティングやデザインの様子を見る)を作ってから本番の靴作りを進めたいとの申し出があった。写真は2012年の10月、出来上がってきたブーツのモックアップだ。

3.インソールとアッパーの縫い合わせ

Moc02

モックアップではあるが、ノルウェジアン製法の確認を兼ねているのだろう、セメントによる底付けではなく、本番同様インソールにリブを起こしてアッパーと縫い合わせている。こうして昔に遡ることで、細やかなスモールステップを経て至高のブーツが完成していることに改めて気が付く。

4.モックアップによるフィッティング

Moc03

モックアップによるフィッティング。つま先や踵をチェックする際、よく見られるモックアップの切開は行わなかった。既に完成した短靴の木型を元にしているので必要なかったのだろう。それよりも踝部分からふくらはぎにかけて手で何度も触りながら革の余り具合をチェックしていたのが印象に残る。

~本革による仮縫いとフィッティング・デザイン変更~

5.本番用の革によるフィッティング

Pre03

モックアップによるフィッティングから1年後の2013年。本番用の革で作られた靴のフィッティングを迎えた。前回よりぐっと靴らしい感じがする。インソールと縫い合わされたアッパーの下端が茶巾のようになっているが、底付け時には反り返ってウェルト代わりの薄いソールに縫い合わされるのだろう。

6.フィッティングの様子

Pre02

写真4のモックアップと比べるとフィッティングの精度が上がってきているのが良く分かる。写真では分かりづらいが特に外側の踝部分で余っていた革がピタリと足に沿っている。このあたりはブーツメーカーの経験のなせる技だろう。日本の伝統的な履物、足袋にも似たフィット感に驚いたことを覚えている。

7.デザインの変更と作り直し

Pre04

モックアップによる仮縫い時に確認していた切り返しの間違い(紫の破線)がそのままだったため作り直し(緑の破線)になった。その際、ラインの変更に加えてつま先のスキンステッチや2本のステッチに1本の出し縫いを合わせたトリプルステッチ、ハーフミッドソール、外鳩目など細かな仕様を再度確認した。

~ブーツの完成・Go home(デリバリー)~

8.デリバリーされたパッケージ

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作り直した靴はアウトワーカーの仕事の具合から1年かかるということで、完成したのが2014年暮。その後3ピースのツリーを注文したので全てが終了したのは今年2015年の夏だった。9月のロンドン訪問が叶わずそれならばとクリスマス時に発送するよう依頼。12月に入って無事手元に届いた。

9.アンパッキング

03_2

片足ずつ入ったパッケージを合わせてキューブ状にしてあるので、まずは片足ずつの箱に分けるのが中々大変だった。幾重にも止めてある粘着テープを剥がし、ようやくパッケージを分け、シューバッグから取り出すと仮縫い時のイメージより何倍も素晴らしいブーツが出てきたところ。

10.ブーツを箱から出す

00_2

仮縫いまで行きながら作り直しをすることは、あまりないが全くない訳ではない。単に素材違いならばディスカウント価格で引き取ることもある。しかし今回のブーツは妥協しなかったことで真に望んだものが手に入った。ストラップの穴開けは最後の儀式として残っているが近いうちに自分で行う予定だ。

注文からモックアップ、仮縫いと作り直し、アウトワーカーのスケジュール調整、3ピースツリーの製作。そしてデリバリーと一段ずつ階段を上がるように進んできた至高のブーツ作り。この間、モックアップ作成からフィッティング、アウトワーカーのスケジュール管理まで担当された松田さんには大変お世話になった。

松田さんは最初から最期まで真摯に向き合い、決して妥協することなく依頼主が真に望むものを提供し続けてきた。日本人は靴に限らず工芸品の出来に厳しいところがあると思う。自分も含め、そうした日本人の客の要望を満足という境地に導くことのできる松田さんならばこそ、至高のブーツができたことは言うまでもない。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

Instagram上でも拝見しましたが、やはり言葉に言い表せない格好良さが詰まっていてとても羨ましいです!RRLのバックル&レースアップブーツに一目惚れして以来、このタイプのブーツが欲しいと思っておりましたが、さらにエプロンダービーと靴好き垂涎のデザインを組み合わせた事で、誰が見ても格好良いブーツに仕上がりましたね!Blogを通してモックアップ、仮靴のフィッティング、と過程を拝見していたので、いち読者としても感慨ひとしおです。3年も経っていたのですね!
#01とナンバリングされてますから、穴あけ儀式、コーディネートと続編を作成して下さるのでしょうか。。。楽しみにしております。

シロさん

お休みの朝一番にコメントをいただき有難う御座います。

RRLやロブパリのコテージラインに刺激を受けて注文したブーツでしたが仕上がりは素晴らしいものとなりました。英国はロンドンの誂え靴屋が手掛けるノルヴェ靴だけでも、大袈裟かもしれませんが歴史的な価値があると思います。

加えて、手縫いのレイクエプロン、スキンステッチのスプリットトウ、ハーフミッドソールとビスポークに相応しい意匠を盛り込んだブーツながら、上手くまとめ上げたのは本当に素晴らしいと思います。

次回は靴のディテールやストラップの穴開けの様子を紹介しようと思います。お時間が御座いましたら、お立ち寄り下さいますと幸いです。

いいですね〜

フォスターの靴は欲しくてしょうがないのですが我慢してます。

そんな私にとってこれは眼福すぎて我慢できなくなりそうです。笑

フォスターのブーツなら履き心地も最高でしょう

羨ましいです

管理人様


プロセス及び(ツリーも含めた)出来上がりに関して、写真を拝見しているだけでも、ワクワクしてきました。
実際にご注文され、3年越しにクリスマスプレゼント(?)として受け取られたとは、羨ましいの一言に尽きます。
*浅薄な私は、モックアップで満足してしまいそうですが

ブーツメーカーとしての技術と伝統に加え、日本の方による細やかな工程管理。初の(シューズの)ビスポークは、フォスター&サンで依頼したいと改めて思いました。(来年辺り、是非挑戦できればと)

nn様

お休みのところコメントを有難うございます。

今回のブーツ、今日改めて足入れしてストラップの穴の位置を確認、自分で穴を開けました。その時あまりの履き心地の良さに初めてビスポークシューズやビスポークトラウザーズを履いた時の感動を思い出しました。

未知のフィッティングでしたがこうしてブーツのビスポークを体験することで如何に人の身体に沿わせることが難しいのかということや職人の技と経験の積み重ねが大切なことが良く分かりました。

仕事をリタイアしてもこのブーツならば長く履けそうです(笑)

やまだ様

お休みのところコメントをいただき有難う御座います。

フォスターの真摯な靴作りに感動した今回でした。

やまだ様がフォスターで靴をお作りになる時はどうぞご遠慮なく声をお掛け下さい。このコメントの投稿欄にメールアドレスを入力してもこちらには表れず、私の方からご連絡を差し上げられます。

なにがしかお力になれれば幸いです。

管理人様


上記のお言葉、誠にありがとうございます。

管理人様には、以前にもヘンリープールのご紹介でお世話になり、感謝しております。
おかげさまで、1週間というロンドン滞在期間中に、採寸及び仮縫いまで対応いただくことができました。(採寸から仮縫いまで、実質、中3日という突貫作業でした)

またお世話になるかとは存じますが、どうぞよろしくお願いします。

やまだ様

こちらこそ、ヘンリープールの時はハードスケジュールながら満足いただける対応だったようで安心しました。紹介した時、プールのフィリップパーカーはとても喜んでいました。

欧米特にイギリスは客から客の紹介をとても喜ぶ傾向があると思います。私も世話になった店に素敵な紳士を紹介できて嬉しく思いますので何かありましたらご遠慮なくお声掛け下さい。

今回の靴のメーキングも、興味深く拝読しました。

本当に欲しいデザインや機能を持った靴、足に合った靴を………というなら、やはりオーダーで職人さんに作ってもらうのがベストですね。
 
ただ、私のような凡人かつお洒落音痴には、コストの面、そしてそれ以上に待つ期間が長いのは、正直なかなか敷居が高いです(苦笑)。
 
3年待ちはすごいですね。服飾の神様に、「お前は本当にこの靴が欲しいか、愛せるか」と問われて試練を与えられている感じです。その点からすると、管理人様の、靴に対する情熱や愛情が素晴らしいということだと、私は思いました。

 
私は、エドワード・グリーンのストレートチップが憧れです。
その職人さんにオーダーで作ってもらえたら、生涯最大級の喜びになるでしょう。でも、見果てぬ夢で終わりそう(苦笑)。

oisan様

3年待っても手に入れたい価値あるブーツ、そう考えた時どんなデザインで、どんな革で、どんな仕様でいくべきか、いつもより慎重になりました。途中でデザインの違いから作り直したのも妥協をしなかったためです。

本当に欲しいものが何なのか、そのことに最後まで一緒に考え作品に仕上げてくれたフォスター&サンの松田笑子氏には心から感謝の違を述べたいと思います。

oisan様も憧れの靴がおありとのこと。しかも定番中の名靴エドワードグリーンのストレートチップですので、何年待っても価値ある1足になることは間違いありません。機会がありましたら注文されるのも良いと思います。

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