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2015年12月19日 (土)

Long-cherished hope(3年間の思い)#02

ビスポークは完成を気長に待てる「心の余裕」が必要だと思う。自分でデザインした靴を職人と一緒に創るには長い年月がかかる分尚更だ。エルメスに自分でデザインしたブリーフケース(mallette:マレット)を注文した日本人男性の話は有名だが、その鞄が店の定番となるまでに要した期間はどれくらいだったのだろう…

「エプロンフロントのブーツで上部はWストラップ」のイメージデザイン画をフォスター&サンに手渡したのが4年前。納品までの道のりは実に長かった。それでも件のマレットよりは短いだろうが、買う楽しみを優先したい人には驚かれるに違いない。ともあれ、今回は3年越しのブーツ第2段、その細部を紹介してみたい。

1.穴開けを終えたストラップ部分

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穴は最もフィットする位置に一つだけ開けた。モンクストラップや時計のベルトでも同じだが、ビスポークの場合は真にフィットしている証しとして穴を一つしか開けないことが多いと聞く。自分としてはラフにパンツをブーツインすることも考え、緩い位置に穴を追加したいところだが悩みどころではある。

~穴開けの手順~

2.マーキング

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穴開けの手順としてはまず最もフィットする位置にマークを裏から付ける。ここでは油性ペンを使っているが何でも構わない、なぜなら穴を開けてしまえばマーキングの跡は穴に代わってしまうからだ。ダブルストラップではこの作業を4か所行う必要があるので中々面倒ではある。

3.パンチング

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登場したのは穴開け器具。インターネットで購入したもので台湾製の便利な器具だ。リボルバーを回して6段階の穴の大きさを選べる。選んだのは最小の2㎜。穴がベルトの中央に来るようメジャーでチェックして場所を決めたら、後は躊躇せず、思い切りよく穴開けを行う。

4.ロングブーツの蛇腹タン

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穴を開け終わってブーツの紐を通し直しているところ。せっかくなのでタン部分を写してみた。アイレット上端までベローズタン仕様になっている。ヴィンテージレザーを惜しげもなく使うのに感心する。アウトドアブーツらしい作りに合わせて、紐はクロス(×)ラップから緩みにくいオーバーラップに結び直すことにした。

~ブーツのディテール~

5.ハーフミッドソール

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靴の両サイド。フォスターの前作より更に手間のかかるノルヴェステッチが特徴だ。インソールとアッパーを繋ぐ太い白ステッチ、アッパー端を一番上の薄いソールと繋ぐ細かな白ステッチ、第1ソールから第2(ハーフミドル)を経て第3ソールまで繋ぐ出し縫いの3本ステッチが手縫い靴を強烈にアピールしている。

6.360度のノルヴェジアンステッチ

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踵部分の様子。生成りのステッチが踵部分にも回り込み、どこから見ても靴のアクセントになっている。スクェアウェストに相応しくヒールリフトはかなり大き目だ。ひょっとして手持ちの誂え靴で一番大きいかもしれない。もっとも履いた時の安定感も抜群で、これなら悪路も平気で踏破できるはず。

7.レイク&スキンステッチによるスプリットトウ

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靴の顔部分。ドーバータイプだがU字のモカ部分はライトアングルではなくレイクと呼ばれる手法で仕上げてある。つま先のスキンステッチは作り直す時新たに加えた仕様。これがあるだけで顔つきがぐんと変わる。踵同様ピッチの異なる3本の手縫いステッチに囲まれたつま先の迫力も満点だ。

8.アウトソール

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アウトソールは茶色の半カラス仕上だがソールの厚さやメタルトウチップなどはいつもどおり。踵のフィリップス・スペシャルも既にデッドストックだと言うのにフォスター&サンでは毎回確認することなく付けてくれる。実際に歩いてみると分かるがこのフィリップススペシャルは本当に耐久性抜群だ。

9.凝った作りの3ピースツリー

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3ピースのツリー。写真で分かるように人の足に近い。真ん中をビーバー(のしっぽ)タイプのツリーにしたらしまう場所に困るだろうと金具タイプにしたが正解だった。このツリーかなり重いのだ。素材はヒッコリーのようで、足裏部分を繰り抜いてはいるが、片手で両足分はまず持てないだろう。

10.切り返し部分の画像

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切り返しより上はライニング有りだが実に柔らかい。ストラップを締めると足が優しく包み込まれるようだ。一方、切り返しより下は硬くはないもののストロングな印象がある。上と下で異なる履き心地のブーツを履いてみて、今更ながらフォスターのブーツメーカーとしての実力を見た気がする。

11.穴開け後の画像

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シューレースをオーバーラップに結び直しきつく結んだ後、穴を開けたストラップを留め、ツリーを入れてみた。右足のツリーはきついと感じるほどピタリとはまったが、右足は若干ツリーが緩めのようだ。来年の4月にトランクショウがあるとのこと。その時に相談しようと思っている。

2回に渡って3年越しのブーツを紹介した。実は到着してから、暫くは写真を撮ったり、穴開け器具を用意したりと色々あったのでフィッティングは延び延びになっていた。さて穴を開けとようかとなってブーツを履き、穴の位置を確認していたら、あまりの履き心地の良さに改めて感動を覚えた。

足の形同様くるぶしからふくらはぎにかけても人の足は千差万別。自分の足に合うロングブーツが見つからずにいたが、長く続いた心の隅にかかる薄霧を今回ビスポークブーツが見事に晴らしてくれたことになる。さて、このブーツを履いてどこへでかけようか。今はそんな気持ちの高揚がまた楽しい。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

初めてコメントさせて頂きます。  いつも興味深く記事を拝見させて頂いておりますが、今回誂えられたブーツの素晴らしい姿に、思わずコメントさせて頂きました。 特にシューレースを開いて見えるタン部分、ものすごい迫力ですね。 長い期間をかけて職人さんと共同で製作されたブーツであれば、着用してお出かけされる際の高揚感も一塩でしょう。 ブログを通して、そんな得がたい経験の一部を共有させて頂いた思いです。 どうもありがとうございました。

管理人様


完成までの道のりが長かった分、楽しみにされた時間も存分に満喫されたのはないでしょうか。

しかし、ヴィンテージレザーをここまでふんだんに使ったブーツの値段が、今やシューズの値段と同程度になっているとは、驚きです。

やまだ様

お休みのところコメントをいただき有難う御座いました。

3年の間に価格は一気に上昇したようです。これから注文される方は1足の値段が50万円以上ですから、そう何足も一遍に誂えられないのではないかと思います。

近いうちに履いた印象などを特集できればと思いますので、お時間がございましたらお立ち寄り頂けますと幸いです。

Toshi様

この度は当ブログにお立ち寄りまらびにコメントをいただき有難う御座います。

今後ともお時間がございます時には、お立ち寄り頂き色々なご意見をいただけますと幸いです。

ブーツの中身はとても人の足に優しい作りです。大きくとったタンのおかげで履き口がリアエントリーのスキーブーツのようにすんなりと足入れ出来ます。

また、切り返しより上の部分はアッパーに皺が入っていますがこれは踝を包み込むためのルームで、これがあるおかげで履き心地がすこぶる良好になります。

他にも拘り満載のブーツ、今度近いうちにはいた時の印象を載せてみたいと思いますのでその時はちょっと覗いてみて頂けると嬉しいです。

第二弾のReport、有難う御座います!
べローズタンなどディティールの観察や、穴あけ儀式などを拝見していると、履き下しまでのワクワクを我が事のように錯覚してしまい、勝手に浮足立っておりました(笑)
ちらりと覗く、ブラウンのライニングも素晴らしい質感ですね!滑らかで足滑りの良い革だろうなぁ~と想像しております。

ツリーの調整、気になるところですね。緩いとなると、木型のように革を当てて調整するのか…ポジティブに捉えれば、フォスターのノウハウを体験できる貴重な経験になりそうですね!

余りの出来栄えにコメントが浮かばずうっとりと写真を見てしまいますね。
同じ英国の、ハードアウターと合わせると最高に素敵ではないですか。
現在の英国アウターメーカーにこのブーツに負けない本格的なアウターを作っているメーカーがあるのか不明ですが。

素晴らしい靴の完成、本当におめでとうございます。

シロさん

お休みのところコメントをいただきありがとうございます。

正にシロさんのおっしゃるとおりで、ライニングがあるのにもかかわらず踝の切り返しから上のフィッティングの快適さに感激しています。また、踝周囲の皺は靴で言うルーム、ジャケットではオメロピットあるいはイングリッシュドレープにあたります。

この踝にある空間のおかげで極上のフィット感が味わえる訳で、ブーツ作りはシューズ以上にフィットに対する素材と作りと足の形状のバランス取りが難しいのだろうと素人ながら想像しています。

近いうちに履いた感じを紹介できればと思います。

カメリア様

クリスマスイブにコメントをいただきありがとうございます。

カメリア様の仰るとおり、英国のハンティングウェアを合わせたくなる今回のブーツですが、さて、何を合わせるか…

基本はバーブァーなどのオイルドジャケットやクリサリスなどのツィードアウター、ビスポークのジャケットでしょうか。思いきってアングロアメリカンのブランド、ラルフローレンあたりと合わせるのも良いかもしれません。

近いうちにコーディネートを考えてみたいと思います。

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