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2015年10月17日 (土)

Cordovan Tassel(タッセル靴を誂える)

誂え靴の価格高騰は著しい。1998年に£800だった価格も今や£2950、この17年間で£2150の上昇だ。年平均£126の値上げはデフレの日本では考えられず、「価格は注文時の値段が適用…まとめて何足か注文を…」という囁きに負けて複数注文することも多かった。

昨年春もカジュアル靴を2足(本当は3足と思ったが止めた)注文したが、この秋一遍に2足納品された。昔は2足同時に送られてきたこともあり、予想はしていたがそのとおりになった訳だ。そこで今回は2足同時に納品されたもう一方の靴、誂えのタッセル靴を紹介しようと思う。

1.リボンタッセル

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仮縫い時にボウ(リボン結び)の後付けを頼んだが、納品時に付いていなかったので一旦持ち帰り、満を持して今回の納品と相成った。このあたりのいきさつは前回の特集でもお伝えしたと思う。ブレイズ(組み紐)の付いたタッセルスリッポンは一目で既成のオールデンとは一線を画す出来だ。

もう少し詳しく見てみたい…

2.革の色目

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仮縫い時は生成色だったコードバンがアンバー(琥珀)色に変わっている。ナチュラルコードバンを自分色に染めようと計画していたが既にパティーヌ済となっていたのだ。アリゲーターの時も行き違いがあったが自分の思い描くフィニッシュがある場合は必ず伝えることだ。でないと予想と違う結果になる。

3.ヒールカウンター

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オールデンとよく似たヒール部分。ブルックスブラザーズのタッセルスリッポンはこの部分に摘み縫いの切り返しが入る。カジュアルでもべヴェルドウェイストで仕上げてくるクレバリーの場合はシンプルな踵の方が合うようだ。履き口(トップライン)を囲むブレイズがアクセントになっている。

4.ラストの修正

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ラウンドトウのカジュアルはこれで2足目。写真左は前回アリゲーターで作った時のシェイプで右が今回のものだ。「ラスト自体を長く、つま先はスマートラウンドで…」とリクエストした結果が上の比較写真によく表れている。靴は数ミリ単位の変更でぐっと印象が変わるという良い見本だ。

5.ソールの仕上げ

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クレバリーのソールはそっけない。半カラスでフィドルウェスト…なんて夢想するが、いつも「今までどおりで」となる。それでも最近はつま先の補強を釘2列打ちからトウスチールに変えた。釘打ち推奨派から「歩く時に引っ掛かるのでは」と聞かれるが、つま先のウェルトが反らないので助かっている。

6.靴のスタイル

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ブレイズがトップラインを囲むデザインはE.グリーンのベルグレイブに見られるが、ボウ付きとなるとアンソニークレバリーのDeRedeタッセルスリッポンぐらいか。もっともDeRedeは既成でスクェアトゥ、こちらはスマートラウンドで誂え。「似て非なる靴を注文するのもビスポークの楽しみの一つだろう。

7.後付けのボウ

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前回ボウ(リボン)を後付けするとどうなるか?という疑問が湧いた。クロージングの段階でブレイズは既に縫い込まれているので差し替えは不可能。そこでクレバリーでは新たなブレイズを甲部分に通しタッセルを両端に装着(左)、蝶結びをする(右)というシンプルながら賢い方法で応えた。

8.ロールステッチ

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U字部分のステッチは勿論手縫い。マシンで縫い上げる既成靴のモカステッチと違い、カーブに沿ってピッチを微妙に変化させながら縫い上げたモカ部分はビスポークならではの凄みがある。目付けの美しいコバと生成糸によるロースステッチはこの靴の最大の見せ所だろう。

9.フィッティング

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仮縫い時にタイトだったフィッティングはかなり解消されていた。一旦ウェルトを外し、インソールを付け直して再度釣り込み、ウェルトとソールを付けて仕上げたのだろうか。どうやったのか今度じっくりと聞いてみたい。色目はラヴェロに近い感じだが、微妙な色斑が個性を醸し出している。

10.靴のサイドビュー

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ぐっと絞り込まれたアーチに持ち上げられたウェスト。ヒールも僅かながらピッチドヒールになっており、手仕事の積み重ねが1足の靴を工芸品と見紛うまで美しく昇華させている。コードバンのタッセルローファーは既成で十分…と思っていたのは大きな間違いだったことに気付かされる。

11.コードバン靴の誂え

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今回の納品で3足目揃ったコードバン素材の誂え靴。左からマホガニー色のサンクリスピン特製ボノーラのギリー、中央が今回のコードバンタッセル、右がローマはマリーニのウィスキープレーントゥ。コードバン素材にはスクェアトウよりもややラウンドしたつま先が似合うと思う。

図らずも2足一遍に納品となった今回のクレバリー。初期は注文時に半額のデポジット、納品時に残額支払がお約束だったが、今は頃合いを見てデポジットを払ったり、時には全額まとめて納品時の支払いなど為替の動向を見られるのが有難い。これもクレバリーの粋な計らいだろう。

そのクレバリーの靴も29足となった。予てからブログで伝えているとおり次の30足が節目となる。目下は30足目をホールカットにしようと思っている。ベルルッティのアレッサンドロのようなスタイルに柔らかなグレインレザーを載せてノルウェジアン製法で仕上げたら…などと考えているところだ。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

すごいですね。
印象としてすごく細くモディファイされた様に見えます。
そのためシルエットは細身でオックスフォードにも使えそうな型に見えますが、後付けタッセルがとても可愛いく、ぐっとカジュアルな印象ですね。この靴でのコーディネートがとても楽しみです。クレバリーはこの靴をクロケットで作って市販してくれれば良いのに、と思います。
最近は安い古着などばかりを買い、高い買い物は絶賛自粛中なのですが、ふつふつと物欲が湧いてきました(笑)

管理人様


図らずも琥珀色で仕上がったとのことですが、これはこれで綺麗な色かと思います。

しかし、£800だった1998年に、何足もオーダーしてみたかったですね。。。(もっとも、成長期にあった1998年に作った靴では、今は履けなくなっているでしょうが)


やまだでした。

れの様

お休みのところコメントを頂き有難う御座いました。

確かにこの靴をそのままコードバンでクロケットに作らせたらかなり良いものが出来そうですね。尤も値段は確実に15万円越えくらいになりそうですが…

古着、良いですね。私も最近凝っています。フライトジャケットとかコートとか仕入れています。機会がありましたらそれらと今回のコードバンを組み合わせてみたいです。

やまだ様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

何と1998年当時は成長期にあったのですね。お若いです!!

私もその頃に沢山作っておけばよかった、とはいっても結構作りましたが(汗)そんなことを思っています。

今回の色は市販されているクロケット当たりのコードバン色に近いので、ちょっと残念に思ったわけでして、最初はもっと他にはないコードバンの色を出したいと密かに考えていました。

第二弾のコードバンタッセルも、素晴らしい出来栄えですね!
同じホーウィン社のコードバンでも、AldenやC&Jとは違った革の雰囲気で、きっと経年変化もまた違うのでしょうね。これからの成長を勝手に楽しみにしております♪

モカの摘み縫いは多くの既製品メーカーでも手縫いされていますが、特にコードバンは、どうしても針穴が目立ってしまっています。ところが、今回のクレバリーを拝見するに、ピッチの細かさだけでなく、ステッチ周りの美しさにも目を奪われました。まったく針穴がわからず、恐らく細い針で下穴を空けながら、丁寧に縫われたのだろうな~と想像しておりました。このあたりの仕事にも、トップレベルのクローザーの腕が表れるのですね。

シロさん

お休みのところコメントを有難うございます。

恐らくロールモカ縫いのステッチも、ライトアングルモカステッチ同様猪の毛針を使って縫っていくことにより針孔が縫い糸よりも大きくならずに済んでいるのかと思います。

ビスポークの場合はアウトワーカーの技の競い合いが目に見えないところであって、元請にあたるビスポークメゾンでもアウトワーカーのランク付けをしているようです。そのため、トップランクになると特定のビスポークメゾンの専属をオファーされ、通常よりも高い賃金でアウトワーカーとしての仕事ができるといった話を聞いたことがあります。

何でもそうですが手仕事の世界の奥深さは凄いものがあります。究極はコンプリケーションの腕時計(懐中時計)かもしれませんが、ともかく職人さんというのは本当に尊敬に値する仕事を苦も無くやっているのですから大したものです。

誂え、オーダーメイドは、コストも時間もかかると思います。しかし、自分や職人さんのこだわりを反映できるので、既製品にはない個性やフィット感があるのでしょう。

今回紹介されている靴は、タッセルが靴紐を結んだようなフォルムなので、チロリアンシューズやデッキシューズっぽい味わいを感じました。
なので、スリッポンではあるけれど、ツイードのカントリージャケットやコーデュロイパンツに合わせてみたら素敵かな………と、勝手に想像しちゃいました。

oisan様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

今回の靴、実は既成のオールデンでバーガンディのタッセルローファーを狙っていたのですが中々在庫がないままなのでそれならばとオーダーしてしまったという訳です。

チロリアンやデッキシューズのような可愛らしさがある半面、ドレッシーな部分もあるので仰るとおりツィードジャケットやコーデュロイのパンツと合わせてみると良さそうですね。

着こなしのヒントをいただき有難うございました、もう少し肌寒くなったら試してみたいと思います。

管理人様

タッセルというと私はすぐにアランフラッサーを思い浮かべます。世代でしょうか。
こちらのタッセルは大人っぽさにリボン結びのカジュアルさが加わって、とても合わせ易い一足になりましたね。リボンの色がもう少し濃いとさらにいいと思います。

昨日、メールで届いたラルフローレンのlookbook(カタログ)にポロコートが載っていました。まだオンラインショップには掲載されていないようですが、素材や生産国も含め、とても気になります。キャメル以外の色展開もあるようです。

PMT様

お休みのところコメントを有難うございます。

リボンの色は後付けなので中々色が揃わないのですが時々クリームを塗って濃くしていこうと思っています。

この前、御殿場のラルフアウトレットに大きめのサイズのポロコートがありました。東欧かスペインだったかともかくイタリア製ではなくなっていました。シルエットは変わらず格好良いのですが、昔アメリカ製だった頃に買っておけばよかったと後悔しています。

ブルックスのポロコートは確かアメリカ製かイタリア製だったので、そちらにしようかとも思っています。

どうもご無沙汰しております。
すばらしい靴で思わずコメントさせて頂きます。

いいですね~。
思わずうっとりしてしまいます。
こういうカジュアルでエレガントなものは最高ですね。

最近は既製品ばかりで誂えに全く目が向きませんがこれは
眼福です。
いいものを見させていただきました。ありがとうございます。

おはようございます!
とてもいいものを見せて頂きました。ため息が出そうなほどに完璧なデザイン、革質、細部のつくり、仕上げまでとてもいいです。やや細めなスタイルですが、質量のあるカントリースタイルにピッタリくるのでしょうね、素敵です。

こんにちは。

今回お披露目された靴も、とても素晴らしい靴ですね。
ノーズを少し長く取った判断は、正解だと思います。
私自身ノーズが長い靴が好きですので、美しいと思えました。
(私はウエストンのシグネチャーローファーやチャーチのラウンド靴がとても似合わないのです。他人からも指摘される始末 笑)

それにしてもやはり細かな仕上げの上手なこと。
何とも言えない全体の佇まいやーラというものは、こういった注視しなければ分からない細かな職人仕事によるものだと考えると、
殆ど見えないからといって手を抜くことは全体の風格を損なうものだなと思い、細部の大切さを改めて認識しました。
これは人間でもきっとそうなのでしょうね。

そして管理人様・・ちゃっかりと高級アンティーク家具とのベストショットを狙いましたね(笑)
美しい木目に深みのある色に引き出しの取っ手の金具と、アンティークらしいたたずまいが漂っています。
クレバリーのビスポークシューズとのセット写真がとても素敵です。
ところで靴と同様アンティーク家具のお手入れもなかなか楽しいものでして、私は時折磨いております。
ただ時間と労力が靴よりも遥かにかかってしまうので、数ヶ月に一度する程度です(汗)
召使がいた昔の貴族が羨ましいですね・・(今の執事がいる家庭もそうですが)

nn様

こちらこそご無沙汰しております。

nn様のブログにも立ち寄らせて頂きました。精力的に更新されていらっしゃるので私も見習わないといけません。

最近は既成品が多いとのこと、ショッピングを楽しむならば既製品です。買うという行為の楽しさは誂えでは時間がかかる分、高揚感がフラットな感じになります。

nn様のブログの更新、これからも楽しみにさせていただきます。

Tony様

月曜朝のコメントを頂き有難う御座います。

Tony様に認めて貰って今回の靴及び製作職人ともどもさぞ喜んでいるでしょう。

このところ誂え靴も日々進歩しています。以前と違ってフィッティングだけでなくスタイルも既成靴より遥かに進歩した誂え靴が出回るようになりました。値段は張りますが格好良い靴を作って貰いたいと思っているところです。

カメリア様

月曜朝にコメントを頂き有難うございます。

おっしゃるとおり細部まで手抜きのない靴は独特のオーラがあるようで、神は細部に宿るという格言がぴたりと当てはまります。きっとその神は靴作りの神様サンクレパンのことを指すのでしょうね。

アンティーク家具とのツーショットに気付いて頂き有難う御座います。私も年数回ですが、英国製のアンティーク家具専用ワックスを使って磨きをかけています。

各部屋に一つないし二つのアンティーク家具があるので一部屋ごとにメンテナンスを施すとかなり時間がかかってしまいます。因みにそのワックスは英国製で一缶あれば十年は持ちそうです。

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