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2014年10月25日 (土)

Bespoke Archive(Foster & Son07~11)

初めてロンドンを訪れたのは91年。ジョン・カネーラがまだポールセン&スコーンに居た頃だ。その後長い付き合いになるとは思いもせず、「おのぼりさん」よろしく彼とは色々なことを話した。ついでに近所のロブ・ロンドン前で記念撮影までしたが、おかげでジャーミン界隈はお手のもの。翌年の再訪時にはフォスターで既成靴を買うまでになった。

その後カネーラはクレバリーに移り、ロンドン最古の誂え靴屋マックスウェルも「フォスターに移転…」の張り紙を残したまま閉店した。そういえば昔既成靴を買ったことがあった」ことを思い出しフォスターを再訪。今度は誂え靴を注文した。そこから始まったフォスターのビスポーク、今回は7足目から11足目を紹介したい。

1.職人の技が光る名靴

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左端が前回紹介した6足目でその隣が7足目。そこから注文順に右端の11足目まで並べてみた。このころから担当の松田氏に「職人の技術をできるだけ盛り込んだ靴作り」をリクエストしていったがその都度松田氏はリクエストに応え、こちらの想像以上のものを完成させていった。

職人に技術を盛り込んだ靴とは如何なるものか…

2.ホロスコープメダリオン

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7足目はホロスコープのトゥデザインとシームレスヒールがテーマ。担当の松田氏はさぞ苦労したことだろう。○穴では分かりにくいと判断し◇穴を用いて仕上げた見本写真をメールに添付して送り、お互い確認し合いながら作業を進めた。その甲斐あって仕上がりは完璧。難しいと思われた2つのリクエストを難なくクリアーしてしまった。

3.シームレスヒールの美しさ

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松田氏によれば「テリーはシームレスヒールにはフィッティングの課題があるため良い顔をしない。」らしかったが、そこを松田氏が上手に説得しながら、こちらの要望を素晴らしい仕上がりで実現しくれた。フィッティング上の課題は全くなく、むしろ踵への食いつきはシーム有りの靴よりタイトに感じるほどだった。

4.超絶技巧の靴

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8足目の靴のテーマはノルウェジアン。「ヴィンテージのマックスウェルブーツを短靴で…」とリクエストしたもの。ノルウェジアン製法に加えエプロン部分のリバースステッチや踵内側にずらしたシームのスキンステッチなど見どころ満載。一見ただのエプロンダービーに見えるが一流の職人による見事な仕上がりに感嘆せざるを得ない。

5.ホワイトステッチ

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白ステッチが1周走るコバ周辺。実際はウェルトではなく中板と呼ばれる薄いアウトソールだ。その下に本底を重ねて中底と縫い合わせている。踵の内側にオフセットされたシームはスキンステッチ仕上げ。かくもハイスペックながら、リクエストしたハーフミッドソールがダブルソールで仕上げられたのは唯一残念だった。

6.パンチドキャップトゥ

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9足目のテーマはロブパリのフィリップを超える靴作り。この靴の為に7足目で予めシームレスヒールを依頼していたがようやく辿り着いた1足だ。写真やフィリップの実物を参考にキャップの大きさや○穴のサイズ、ステッチの入り方やコバの張り方まで松田氏の観察眼と技術で再現して貰った。革質がよく光らせ甲斐がある。

7.パターンの変更

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レースステイから両サイドに降りるラインは通常のフォスタースタイルよりなだらかで丸みがある。このあたりも細かな打ち合わせを行った部分だ。シームレスヒールは前回同様踵への食いつきがよく釣り込みも完璧だ。この後木型をさらにシェイプし、スマートラウンドにしたものを最新の12足目に使用している。

8.フォスター&サンのレイジーマン

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10足目のテーマは気軽に履けるフォスターのフルブローグ。テリーの最も得意なスタイルはフルブローグらしい。そこでサイドエラスティックのレイジーマン仕様でフルブローグを注文してみた。お蔭で脱ぎ履きの楽なフルブローグをいつも味わうことができる。ライニングは9足目同様パープルを指定。

9.レイジーマンの魅力

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元々紺色のスーツに黒靴は合わないと思っていたが、ロンドンのクレバリーで見た紳士のネイビーストライプスーツと黒靴の相性は見事だった。その時の靴が正にこのレイジーマン。ラウンドトゥのものを既にクレバリーで誂えていたのにテリー作の名ラストでも欲しくなって誂えたもの。紐靴派の人にぜひお勧めしたいスリッポンだ。

10.フォスターのカジュアル

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最新のカジュアル(ローファー)は8足目と同じクローザーによる仕事が光るスプリットトゥカジュアル。見事なエプロンステッチやスプリットトゥがチャームポイントだ。フォスターの考えるーズの長いローファーは実にドレッシー。反面、履き口が狭くなるため足入れに困難が生じ、完成後のストレッチで対応したこともある。

11.インサイドシーム

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踵に来るべきシームを土踏まず側にずらしスキンステッチで繋ぐ。シームレスのように見せながら食い付きの良い踵を実現したこの作り、ちょっと他の靴では見当たらないだろう。フォスターの松田氏はこうした難題混じりの注文に対しても常にきめ細かく対応しながら見事な靴作りを進めてくれた。その分店のオーナーと顧客との間で色々と苦労されているのではと思う。

現在制作中のブーツでフォスターの靴作りも一段落。1992年にストラップブーツを買ってから22年、奇しくも同じブーツでの区切りだ。その間に古めかしかった店内はモダンに、職人も代替わりし、若き職人の集う店へと変貌を遂げた。だが今も昔もフォスターの作る靴はクラシックでかっこいい。

既に十分な足数があるのにトランクショウに出向くと新しい靴が欲しくなってしまう。今は「仕事中心の生活から悠々自適の生活に入ったら、アウトドア用の靴をテリーのラストで誂えようか、それとも松田氏のラストにしようか…」などと夢見ているが、その時までフォスターには当代一の名靴店で居続けてもらいたい。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

どれも素晴らしい靴ばかり、今回も目の保養になりました笑。
フィリップIIを超えるパンチドキャップトゥ、僕もいつか同じデザインでBespokeしたいと思っていました。フィリップIIよりもボリューム感のあるラウンドトゥがフォスターらしく、また「これぞ英国靴」という感じがして格好良いと思いました。
マニアックな視点ですが、左右のシワの入り方が殆ど揃っていると言う点も流石です。既製靴ではなかなかこうは行きません。既製靴は既製靴で心を掴んでくるものですが、基本的な、モノとしての品質は誂え靴がいちばん、と特集を拝見して感じました。

シロさん

週末のひと時、観察眼の鋭いコメントを有難うございます!

皺の入り方は確かに左右違わないのですが、足は相当違います。(笑)やはり、職人さんの方で左右のラストに違いを付けることで、力の逃げるところ、皺の入るところが同じになるのではないかと思います。

出来上がった靴は微妙に違うのに一見左右全く同じに見えるところは流石で、こうしたところがインディビデュアルなもの作りを信条とするビスポークの凄さなのかもしれません。シロさんが仰るとおり既成靴では辿り着けない領域かと思います。

ビスポークスーツにカスタムシャツを合わせて身支度を整え、玄関で靴を選ぶ時、手にするのは大抵ビスポークシューズになります。自分の体により沿ったものを身に付け、隙のない服装をするとパワーが出てきます。

シロさんの見事なカスタムメイドのポールスチュアートのスーツと合わせる靴もまた、カスタムメイドになるのではと推察しているところです。NYCでもウォルドルフアストリアあたりで英国ビスポークシューメイカーが定期的にトランクショウを行っているようですのでアポを取って見に行くというのも個人的にはお勧めです。もっともアポを取った時点で買う気満々ということになりますが(汗)

英国は国の政策なのか物の値段は毎年上がります(インフレにするため)が、靴のオーダーは入れた時の価格が出来上がり時に反映されますので早めのオーダーが吉ということになります。

ロブロンドンやクレバリー、フォスターやG&GならばオーダーをNYCで入れて仮縫い、あるいは受け取りは日本で、更には2足目以降は日本でということも可能かと思います。私も海外赴任地でロブパリの1足目を誂えました。日本とは違う環境でいい体験ができたと思っています。

いつも楽しいコメントを下さるシロさんのNYCライフが仕事も趣味も一層充実しますよう私もエールを送らせて頂きます!!

管理人さま、

こんにちは、すばらしいで眺めですね。同じ英国靴のクレバリーとは逆のイメージで、どちらも甲乙つけがたい感じです。個人的にはつま先は少々厚めのボリュームがあり、かつコバが狭い細身のシルエットが好きなので、足して二で割ればちょうどいいと言った感じでしょうか。
八足目はたまらないですね。このエプロンダービーはパーフェクトだと思います。野趣あふれるノルベなのにコバはギリギリまでスマートに、なのにダブルソールなのもいいですね。そして赤みの強い革にステッチはホワイト。市販してほしいくらいです。トゥーはスクエア気味なのに、エプロン部分はラウンドという組み合わせにも関わらず、まったく違和感を感じさせないさじ加減はさすがですね。
これがハーフミッドだとどういう姿だったのか見てみたかったです。

れの様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

クレバリーとは逆のイメージとのお言葉。仰るとおりで色々な部分で逆なのですがどちらも英国靴独特の面構えというところに魅力を感じます。クラシックなフォスターに対するモダンなクレバリー。剛のフォスターに対する柔のクレバリー。他にもさまざまな面で良い意味での違いを感じます。


8足目は60足近い誂え靴の中で一番職人の技が光るものです。今のロンドンのく誂え靴に関わるアウトワーカーの技の粋を集めたと言っても言い過ぎではないくらいの1足かもしれません。ハーフミッドのソールで仕上がらなかったのは残念ですが、ダブルソールであってもなくても靴の凄みはきっと変わらないのだろうなと感じます。

現在制作中のブーツも恐らく最も手の込んだものになるかと思います。上手くゆけば今年中の納品。もしくは来年中には手元に届く、あるいは取りに行けるのかなと思いますのでその時を気長にお待ちいただけますと幸いです。

管理人様


ビスポークならではのものから、既成のフィリップを敢えて模したものまで、ビスポークを存分に楽しまれていること、羨ましい限りです。
私は、10足目のレイジーマンに、イミテーションをなくしたような靴を頼んでみたいなと思っていますが、いかがでしょうか?

ビスポークシューズの値段も年々上がっているようですが、これからも上がっていくのでしょうか。。。

やまだ様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

やまだ様の理想形はイミテーションではなく本物のフルブローグをレイジーマンでということでしょうか、それともイミテーションをなくしてパーフォレーションだけのシャドウブローグのようなイメージでしょうか。どちらを選ばれても履き心地は抜群ですので素晴らしい選択ではないかと思います。

クレバリーでのビスポークの値段は1998年で£800でしたが、今年2014年は£2800となっています。16年間で£2000の値上げですから毎年£125きっかり上がっていることになります。2008年の金融危機の時は値段を据え置いたかもしれませんので実際は£125以上の値上げがあったと想像できます。

一方既製品でもエルメスのサックアデペッシュなどは2004年の時にパリで買い、デタックス後20万円台だったものが今や100万円近くすると聞いています。こうなるとインフレターゲットというよりはリッチなアジアの観光客を想定した便乗値上げかも知れません。

誂え、既成に関わらず良いものは買える時に買うのが良いと思いました。

職人技をふんだんに盛り込みながらも、奇天烈な靴にならず全体としてまとまっているのは流石ですね。
管理人様のベーシックなスタイル選びと、作り手側ベーシックなハウススタイルの両方のためなんでしょうね。

最近のいかにもビスポーク技術を取り入れました、的な安直な分かりやすいビスポーク靴がどうにも苦手で。
技術のみではなく、ヴィジョン(感性)も大切なのだと改めて認識。
そういった意味ではやはり歴史と伝統は何者にも勝ると、きっとそうなのでしょう。
技術は失っても再び手に入れやすいが、感性は失うと一から積み上げていかねばならないので、再び手に入れにくい。
この感性を失いたくないものですね・・

それはそうと、管理人様の靴はシューキーパーがピッタリですよね。
ビスポークシューズなのでツリーもその時に一緒に作られたカスタムメイドなのだと思いますが(イニシャルが入っていますね)、正しいシューツリーのフィット感の参考になります。
しっかりと甲が張って、幅などに出っ張った所がなく、何より踝の収まりが凄く綺麗です。
バネ式ではなくネジ式というのも、自分の考えと同じで少し安心。
確かにバネの反発を用いた矯正力は一つの手法としては良いかもしれませんが、正しくフィットしたツリーはそれだけで一定の矯正力があるので、必要以上にバネで矯正せずとも少しぐらいは靴のなりたいようにならせても良いではないか、好きにさせたらええやん(笑)、と考えていました。

ツリーのフィット感には色々な考え方がありどれが正しいのか分かりにくいですが、今回の記事で一つの参考になりました。

最近では木材を調達して自分で作ろうかなと考えてみたり(笑

カメリア様

お休みのところコメントを頂き有難う御座います。

ほんの20年前までは今の状況をどのシューメイカーも想像できなかったに違いありません。やがては滅びゆく産業だと思っていたようです。当時ロンドンの誂え靴は決して活気があるとは言えない感じで、どの店でも似たようなクラシックタイプのレースシューズやブーツが並んでいた印象があります。

ところがルイヴィトンがパリのベルルッティを買収した頃からアーティスティックな靴が出始め、今では客の「人と変わったものが欲しい」という希望や店の「独自性」からでしょうかデザインに振った誂え靴がどんどん出てきているようです。

もっとも自分はトラッドで育った世代故靴は長く履くものという考えから抜け出せず(汗)、オーソドックスな型に作りや素材やデザインのひねりを入れる程度にしています。所有しているビスポーク靴を晩年誰かに譲る日が来ても長く履ける靴ならば第二の人生を歩んでくれそうですし(笑)

そうそう、カメリア様がご指摘くださいましたシューツリーのフィット感、私も同感です。実はシューツリーを作り直してもらったことがありまして、出来上がりが緩くて靴の皺が伸びないためでした。ツリーと言えども誂え、£400と既成靴並みの価格のものもありますのでおろそかにはできません。

管理人様


スリムフィットのパンツをはくことが多いので、それにも合う、すっきりとした印象のシャドウブローグのような靴がイメージです。

老舗メゾンも企業化して、馬鹿正直に製造に手間暇かけるよりも、マーケティングに注力するといった流れになっているのでしょうか。昔ながらの顧客ではなく、新規のリッチ層をターゲットにしているのであれば、(品質に見合わず)価格だけが高騰していく流れが続くかも知れませんね。。。

やまだ様

本当にリッチな顧客層はどれだけ値段が高騰しても意に介さないので、クレバリーではいっぺんに数十足オーダーする客がいますし、エルメスで600万のポロサスクロコバーキンが売れ残る心配など全くないわけです。

ただ、材料と原皮の希少性、手間暇を考えてもポロサスクロコのバッグが600万円というのは大部分が付加価値と思われます。希少性のあるものが欲しい心理を上手く付いているようで、レベルが違いますが私も、コードバンの新色限定などと聞くとおおっとなってしまいます。

ロンドンの靴屋に関して言えば値上げは職人の人件費を施策によって毎年上昇するようにしていることと関係がありそうですが、エルメスの商品の値上げはプレステージ性を高める戦略かなと思います。傘下のジョンロブの値上げも驚く程でしたが、クオリティの反比例には更に驚きました。

再生グッチがスタートするにあたって当主は「昔の顧客は皆死んだ」と言ったそうです。馴染み客は欲しいものが揃えば段々買わなくなりますが、新規の客はどんどん買うわけです。顧客を大事にというのは昔のやり方、今や如何にお金を払ってくれるかが大事になってきているのはある意味事実かなと思います。

確かに管理人様のクレバリーの靴の方が華麗でゴージャスな色気が一目瞭然ですがフォスターは逆に主張し過ぎない渋いクラシックの外見の下にマニアックさがありますね。

趣向の違う英国靴を具現化するため二つの工房を上手に使い分けているのがカッコいいです^_^

因みについ先日フォスターへ靴の代金全額を支払ったので後は待つのみです^_^

アラキ様

次は8月の仮縫いですね(^^)

クレバリーの靴は見た目の美しさが目に飛び込んできますが、昔は意外にも結構朴訥な靴を作っていました。当時の仕上がり靴は如何にも古き良き英国靴といった趣でしたがハリウッドセレブや映画とタイアップするようになって見た目にシフトした感があります。

その点フォスターは全く変わらないスタンスで靴を作り続けているのがすごいです。どこからみても隙のない靴、作りの確かな靴という点では納得のビスポークメーカーだと感じますので1足目の完成を楽しみにお待ちいただけると幸いです。

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