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2013年9月14日 (土)

ピッグスキンのローファー

先日靴仲間と久しぶりに会食したが、「年々紐靴を履くのが億劫になる…」という話で盛り上がった。流石に誰もオフィシャルでスーツにローファーを合わせるようなことはしないが、クールビズの影響かスーツを着る機会そのものが減っている。代わりにシャツ&パンツルックにノーネクタイとなると、紐靴では足元が重すぎるようだ。年々暑くなる日本の夏は靴のドレスコードも変えつつあるのを実感した。

前回のブログで紹介したクレバリーのトランクショウ。仮縫いに臨んだ靴もやはりローファーだった。毎回持参する紐靴のサンプルを見ると「次は紐靴でも…」と思うのだがどうも実現しない。今年も5月の中頃から殆ど紐靴を履かず、ローファーで毎日を過ごしている。これでは紐靴に触手が伸びないのも無理はない。ということで今回も最新のローファー、その仮縫いの様子を紹介しようと思う。

1.Pigskin Loafer for Alexis, Baron De Rede

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今回のローファーはアンソニークレバリーがAlexis, Baron de Rédéの為に作ったピッグスキンローファーを参考に注文、ライニングのみダークグリーンに変更した。サンプルはU字型のモカ部分が先端まで届くほど長めのスタンスだが、仮縫い靴は短かめにしている。素材は明るいピッグスキンを選択。肉厚な革だが思ったよりも柔かい。

2.靴の全景(その1)

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バンド部分をやや前方に配置し、代わりにタンを長めにとることで、一見ロングノーズだが実はショートヴァンプという靴が出来上がる。おかげで足入れは楽々、履き心地もアンラインドローファーのような吸い付きぶりだ。他の誂え靴屋はあまり試したことがないが、クレバリーのローファーはいつも快適な履き心地を提供してくれる。

3.靴の全景(その2)

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試着後の撮影なのでヴァンプ部分に履き皺が残っている。アッパーの柔かさが上手く伝わるだろうか。この後底付けが済むとアッパーにもテンションがかかるため、多少きつく感じるかもしれない。それでもソールは3/16(1/4クォーターインチよりも更に薄い)と一番薄いものを指定しているので、返りの良さと合わせて最もソフトな靴に仕上がるだろう。

4.靴の全景(真上)

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仕上げについてはアンティークフィニッシュをリクエスト。現革の色よりも一段階濃い色で仕上げてくることになる。ウェルトの色は濃茶色、ブラインドウェルト気味で仕上げ、出し縫いは生成りステッチでピッチを一番細かくとお願いした。ついでに前回グラスゴーとのセッションで2列の釘をリクエストしたつま先を今回メタルプレートに替えるよう要望した。

5.靴のインサイド

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クレバリーではカジュアルは通常べヴェルドウェイストで仕上げる。加えて写真のように明茶色のアッパーに薄めのソールとくればイメージは「軽快」そのもの。正に春夏用の靴に相応しい。初春~晩秋まで長い期間愛用できそうだが、軽やかな履き心地に合わせて服の方も薄手のジャケット&パンツを用意したいところだ。

6.靴のインサイドとアウトサイド

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甲部分のバンド(フルサドル)をサンダルの鼻緒、靴の両側から踵に伸びるバンドをヒールストラップに見立てると、サンダルに靴ごと足入れしたように見える。2つのバンドが足の甲と踵を支える役割を担っているのがよく分かる構図だ。オリジナルのサンプルよりも短く幅広でバルキーだが、上手なパターン取りで見た目よりもぐっとスマートに見える。

7.ローファーの誂え

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フィッティングの難しいローファー。ウェストンのようにきついものを薦められて購入、我慢して無理やり伸ばす難行は伝説となっている。誂えでも難しさは変わらないはずだが、不思議とクレバリーの場合は最初にきついと感じても直ぐに足にフィットし、それ以降は伸びずに踵が抜けることもない。実によくできていると感心させられる。

8.ヴァンプ部分(その1)

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ノーズが長いローファーは足入れが難しい。フォスターのローファーも納品時に足が入らず再調整をお願いしたことがある。クレバリーでもそのへんを考慮して、ノーズを短めに仕上げてきたのかもしれない。怠け者を意味するローファーだけに足入れのし易さは重要なポイント、加えて踵が抜けないことも求められる…ローファー作りが難しい所以か。

9.ピッグスキン

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ピッグスキン独特の毛穴が開いた表面。ワックスを入れると更に革の表情が豊かになる。U字型の摘みモカは勿論手縫い。確かロールドステッチと呼んでいたが、この幅が狭いとドレッシーに、広いとカジュアルに見える。ロブ・ロンドンはかなり細かったがイタリアのものはやや広い。クレバリーでは丁度その中間といったところか。

10.誂えのローファー

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靴の誂えは紐靴が中心。ローファーの場合は「誂えでなくとも既成で十分。」と後回しにされがちなのだろうか、最近までクレバリーでも紐靴やエラスティックの注文が多かった。ところがここでローファーの注文が急に増えている。ローファーも既成と誂えでは全く違うことが分かり、個性的な1足を求める客が増えてきているのかもしれない。

これでローファー(スリッポンを含む)は7足揃った。そのうち6足がクレバリーで1足がフォスターとどちらもロンドンの靴屋だが、アメリカの顧客が多い両店だけにローファー作りも経験がある。特にクレバリーはサンプルを多数揃え、ローファーの注文も順調なようだ。もしローファーを誂えるならばクレバリーを一度覗いてみては如何だろう。

今年の夏はロンドンに1日しか滞在せず、ヘンリー・プール以外はどこにも立ち寄らなかった。だが、来年もロンドンに行く用事があるので、次はクレバリーをぜひ訪問したい。今でも1週間に1回はジョン・カネーラが顔を出すそうだ。初めて彼に採寸して貰った1998年当時を懐かしみながら、彼と一緒にローファーをもう1足注文できたらと思っている。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

今回も素晴らしい靴ですねピッグスキンと言えば、どうしても大塚製靴。今オーツカのハッシュパピーを思い出します。トラッドの基本的な靴をピッグスキンで製作してましたね。中でもデザートブーツは日本製靴の製品より上代が高かったと言うのが今でもしっかりと覚えております。

浦野亮祐様

早速のコメントを有難うございます。3連休中日の日曜日は大雨の東京です。

ハッシュパピー、イラストがプリントされた靴箱が目印だったような記憶があります。日本製靴よりも上代が高かったというのは初耳ですが、それだけ商品に自信があったということでしょうか。

台風一過で来週の東京地方は晴れが多そうです。浦野様のお話の通り、10月には涼しくなるのを待ちわびつつ、秋冬への衣替えを少しずつ始めています。

ご無沙汰しております。
素敵なローファー、完成が待ち遠しいですね。ピッグスキンというと丈夫で硬いイメージでしたが、とても柔らかそうで、質の高さが窺えます。

茶と緑の組み合わせがとても好きなので羨ましい限りです。これまで糸の色で遊んだ事はありますが、ライニングの色を指定した事はないので、いつか僕も実践してみたいです。

シロさん

こちらこそご無沙汰しております。

NYでの日常は如何でしょうか?毎週末にマンハッタンでウィンドウショッピングができるなんて最高ですね。

江川さんのところで作られたレースアップの靴が確か緑のステッチで、「遊び心のある正統的な靴だなぁ」と眺めていました。合わせて作られたベルトも素敵です。

当方が今回アップしたピッグスキンの靴、その柔らかさに感心いたしました。特に革の表面がカーフのように細かな履き皺が入らないのが嬉しいです。注文して正解でした。

そうそう、NYでもクレヴァリーのトランクショウが開かれています。もし興味がありましたらグラスゴーに一言伝えておきます。

これからも現地のファッションやアウトレット情報などブログの更新を楽しみにしています。

素晴らしい靴ですね。ローファーは足に合わせるのが難しいと聞き、どうしても誂えまで行きませんがクレバリーならばさぞかし素晴らしいフィッティングでしょう。
ピッグスキンもビスポーク素材で存在するとはさすがです。

私も年明けにはフォスターが上がってくるのですがどうなることやら。。。

いつも素晴らしいブログありがとうございます。

管理人様、ご無沙汰しております。
日本では比較的流通量の多いピッグスキン。丈夫で水にも強い性質を持ち、日本では最も安価な革のひとつですね。安価であるが為に、いまいちカーフなどより付加価値が低く見られがちで、高級な革製品では絶対見かけないように思います。ヨーロッパなどではそういうイメージではないとか、、実際どうなのでしょうか?
管理人様、ロンドン滞在時にアンダーソン&シェパードのClifford Streetのお店には行かれませんでしたか?既成のパンツ屋さん(他にもシャツ、ニット、アクセサリー類を取り扱っているとのこと)を最近始めたようで少し気になっています。

nn様

コメントを有り難うございます。

欧州ではピッグスキンはカーフ同様高級皮革素材として扱われているようです。特にグッチのバッグではよく使われる素材のようです。

フォスターの出来上がり、楽しみですね。到着後の感想などお教え頂けますと幸いです。

れの様

コメントを有り難うございます。

そもそもピッグスキンの流通量は決して多くないような気がします。それと、昔ウェストンで出していたブリーフケースがやはりピッグスキンでした。表情が独特で皺になりにくく素材としてはローファーやカントリー調の外羽根靴に向いているように感じました。

ロンドンは生憎ヘンリープールに15分程しか滞在せず、目抜き通りの散策すらできませんでした。尤も、車を飛ばして郊外に行ったりクリエイターの住む街を訪問したり違う楽しみがありましたが…。

A&Sが既製品を扱い始めたとのこと。知りませんでしたが、パンツから始めたということは自社の誂えジャケットに合わせることを想定しているのでしょうか?中々興味深い話です。


NY在住の貝島と申します。いつも楽しく拝見させて頂いております。クレバリーも所有しておりますが、残念ながら誂えの経験はなく(専ら資金面の問題によるのですが...笑)、アンソニークレバリーばかりという状況です。

先日そのアンソニークレバリーのForteというフルストラップのローファーを色違いで2足購入し、その足入れのよさと履いた際のバランスの美しさに惚れ惚れしております。但し、ある一点を除いて...

皮質が良く柔らかいためか、ライニングが踵の内側も含めて滑らかな表側を使用しているためか、ジョンロブやグリーンの同種のローファーに比べヴァンプ部分が少々短く足入れ口がやや広いためか、捨て寸があまり無いにもかかわらず歩行時に少々踵が浮いてしまいます(踵が全て抜けるほどではありませんが)。

日本のように良い修理屋がありませんので、暫くは我慢して着用してゆくつもりですが、何か簡易な対処法をご存知でしたらご教示頂けると幸いです。

初めてのコメントにもかかわらず厚かましいお願いとなってしまい大変恐縮ですが、お知恵を拝借できますと大変助かります。よろしくお願い致します。

貝島夏樹様

初めまして。
当ブログへの訪問並びにコメントを頂き有難う御座います。

さて、アンソニークレバリーのローファーを色違いで2足購入されたとのこと。いろいろな場面で履かれていることと推察いたします。踵が抜けるようですと当て革を踵の内側に貼るのかと思いますが、NYですと日本のような靴修理店はないかもしれません。

時間はかかりますが、日本のリペアラーに送るか、クレバリーがNYでトランクショウに来た時に預けて直してもらうという手が考えられます。ただし、この場合は修理代もかなりかかりそうですが。

あまり役に立つ答えではなく、申し訳ありません。またお時間がある時にでもお立ち寄り頂けますと幸いです。

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