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2013年9月 7日 (土)

G.J.Cleverley Fall Trunk Show 2013

9月に入ってから目まぐるしく変わる天候に翻弄された日本列島。遠いアメリカの出来事でしかなかった竜巻の被害や記録的な集中豪雨など地球温暖化の影響と思われるような自然災害が相次いだ。厳しい残暑と言われた9月最初の週末、天気を気にしつつ久しぶりにジャケットを羽織り、注文靴を履いて街へ繰り出した。このところノーネクタイで半袖シャツにオールデンのローファーというスタイルに慣れていたので少々違和感がある。

朝早く人影もまばらな有楽町を過ぎて帝国ホテルに到着。恒例のデイヴィス&サンとクレバリーのトランクショウに顔を出してきた。ディヴィス&サンの方はコートの納品だったが、体型がスリムになったので再補正が必要となり、納品は次回2月までお預け。一方クレバリーのフィッティングは良好、直ぐに終わったが、今回のサンプルが素晴らしいので、思わず担当職人ティームに色々と質問、暫し靴談義の花が咲いた。そこで今回は最新のクレバリーサンプルを紹介しようと思う。

1.グレインコードヴァン使いのフルブローグ

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一見ロシアンレィンディアにも見える素材はホーウィンのグレインコードヴァン。初めて見たが中々良さそうな素材だ。個性的な素材を生かして仕上げたフルブローグはクレバリーには珍しいカントリータイプ。エドワード・グリーンのファルカークとよく似たものだ。スマートラウンドのトウや生成りでピッチの細かい出し縫い、レースステイ部分の鳩目などチャームポイントが光るスタイルは注文したい誘惑に駆られる。

2.トゥデザイン

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トゥから両サイドまでメダリオンが散りばめられたデザインはかなり人目を引くはずだが実際はアッパーが深みのあるバーガンディだからだろうか、さほど目立たない。ところでこの靴をどんな服に合わせたらよいだろうか。ツィードのジャケット&パンツスタイルが定番だろうか。それも少々ファンシーな色使いの地厚なチェックが思い浮かぶ。きっとこの靴をオーダーしたら合わせるジャケットもオーダーしたくなる、そんな個性的な1足だ。

3.スコットランドの紋章アザミ

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フルブローグは元々ハイランドで履かれていた編み上げ靴(ギリーシューズのことだろうか)に端を発するそうで、大小の穴飾りも靴の湿気を逃がしやすくするためと書かれている。靴の両横に配された意匠はThistle(シスル)。スコットランドの国花であるアザミを模ったもので、この靴の由来を物語っている。またヒールカウンタは途中にピークのあるデザインで、昔フォスターで注文した時のことを思い出した。靴のオーダーに参考になりそうな仕様が散りばめられた靴といった雰囲気がある。

4.サイドシューレースホールカット

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色とその素材感に驚かされる1足。完全にパーティウェアの一環として履くことを想定したようなこの靴、素材はスティングレイ(エイ)だ。しかもやや紫がかった青く小さな丸い斑がところどころで光を反射して、スパンコールで飾られた女性のドレスのように見える。担当のティームに聞いたところやはり珍しいものの好きなシンガポールでオーダーが入ったそうだ。食材としてのエイしか身近に感じられないせいか皮革素材として製品化された靴を間近で見ると中々インパクトがある。

5.サイドシューレース

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シューレースもジョンロブは「ガルニエ」のようなリボンタイプのものが結ばれていて華やかな雰囲気を醸し出している。この靴を履く場面を想像するとプライベートなパーティやナイトショーの鑑賞など着飾って出かけようか…といった時だろうか。それ以外はコーディネイトが難しく着用回数は自ずと限られるだろう。履いてみたことがないので分からないが、手の感触からすると素材は思ったよりも硬いように感じられた。

6.フィドルウェイスト

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クレバリーの納品靴でもときどき見かけるフィドルウェイスト。ウェイスト部分を山型に成形するため予め三角に削られたシャンク(革製?)を入れて上からたたき仕上げるらしい。履き心地にあまり関係ないが見た目の美しさを追求した仕様と捉えればよいだろうか。ヒールトップは珍しいフルラバー。あくまでもサンプルなので実際この靴を注文するとしたらレザートップかダヴテールになろうか。

7.ロシアンレィンディアのエプロンダービー

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ドーバータイプの靴は上手いクローザーが一時期仕事を休んでいたので、注文できなかったがここで復活したと聞いた。この靴も熟練した職人が仕上げたような見事なライトアングルモカステッチがチャームポイント。レースステイ上部にはやや珍しいデザインのタンが付いている。一見カントリーシューズを強調しているようだが、実はコバの張り出しが少ないエレガントな仕上がりだ。

8.ロシアンレィンディア

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プリマス湾に沈んだロシアの貨物船から引き揚げたといういわくつきの革、ロシアンレィンディアだが、沈没船にはまだ3分の1の革が眠っているそうだ。ただしがかなり深い部分にあるのと潜るためにはプリンスオブウェールズの許可が必要とのことで、目下のところ革の在庫状況は少なめになっているらしい。とは言うものの、ダイバーが定期的に潜って引き上げたものが時折出回るそうで、その時に注文するのがグッドタイミングだろう。

9.ヒールカウンタ

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ヒールカウンタ部分をよく見るとつま先のステッチと同じ手法でラインを表現している。踵のカーブに合わせたピッチドヒールやカントリーシューズとは思えない薄いソール、おまけにヴェベルドウェイストで仕上げてある。職人の技が感じられる見事なサンプルだ。友人が同じ仕様で注文した靴もまた見事で、つい自分も注文したくなるのをこらえてトランクショウを後にした。

10.ノルウェジアンブーツ(ゴイザー)

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既に同じ仕様のブーツが納品されたばかりだが、こちらのサンプルはハーフミッドソールに加えてノルウェジアンステッチがアーチ部分までで終わり、その後はヴェベルドウェイストで仕上げている。横から見た時にスクエァウェイストでない分よりグラマラスに見える。また素材はカーフとマウンテンラムのコンビでクレバリーらしい組み合わせ。そろそろブーツをオーダーしたいという顧客に見せるサンプルに最適な仕様だ。

11.ノルウェジアン・ステッチ

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どのように縫い込んでいくのか一見しただけでは分からないがストームウェルトに3本の太いステッチが入ったコバはかなり迫力がある。これも従来のエレガントな靴を作っていたクレバリーにはないスタイルで、ティーム・レッパネンが入ってからクレバリーの靴作りが大きく変化していることを感じる。ロンドンで一番繁盛している注文靴屋らしく、アグレッシブで顧客の気持ちを引き寄せる提案を欠かさない姿勢を感じた。

12.ブーツの全景

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ウェイスト部分のくびれが強調される角度からみたブーツの全景。自分の注文したブーツを見てみると360度トリプルステッチの入ったブーツとはだいぶ印象が違う。サンプルのブーツはそれほど無骨さを感じないので合わせる服の幅も広がるかもしれないが、その分カントリーブーツが本来もつ武骨でタフなイメージはやや薄れるかもしれない。

クレバリーのトランクショウも世代交代が進み、ジョージグラスゴーもいよいよトランクショウから引退するようだ。次回2月はグラスゴージュニアとティームが来日するようでファーラン&ハーヴィーのピーターに続いて大事な友人と会う機会がまた一つ減ってしまったような寂しさを感じる。そして近いうちに我々顧客側もリタイアや世代交代が進むのだろう。

それでもクレバリーは新規の顧客獲得に向けて着実なステップを踏んでいる。9月中旬に新宿のデパートでアンソニークレバリーのプロモーションイベントがあるそうで、ティームは再来日することになっている。素材の提案、新しいサンプル、既成モデルの拡充、ボンドストリートを少し入った小さな靴屋だったクレバリーに勢いがついているのを感じた今回のトランクショウだった。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

管理人様

グレインコードヴァン、これまた魅力的な素材ですね。通常のコードヴァンとのコンビのサドルシューズとかも良さそうですね。

ロシアンレインディア、沈没船から引き揚げられてから、もう40年経つので、管理人様の以前紹介されたものは、それとは別の革と勝手に勘違いしていました。失礼しました。

もうとっくに無くなっていると思っていたので、まだ3分の1も残っているとは驚きです。

管理人様

ご無沙汰しております。その間も毎日更新を楽しみに、いつも読ませていただいております。

グレインコードヴァン、とても魅力的だな、と思いました。このフルブローグ、そしてそこに散りばめられたメダリオンなどの数々の意匠がとてもうまく調和していて、素敵です。

クレバリーのトランクショーには出向けないので、他でこんな雰囲気の靴が作れないか、食指が動いてしまう一足です。

ロシアンレインディアもまだまだあるのですね。私もとっくに無くなっているものとばかり思っておりましたので、驚くと共に、ある内に一足手にしたいもの、と思いました。

お久しぶりです。今回拝見いたしましたフルブローグのWT素材のちょっと変わったコードヴァンにあえて表鳩目で仕上げられたのがカントリーぽいですね。また記載されました、ロシアンレインデイアは以前リーガルトウキョウの二階のパターンメイドコーナーにおいてありました素材を入れた箪笥と言おうか引き出し【長さ約、1,20M 奥行約、0,50M 高さ約0,10M】より出して見せてくださった事を思い出しました。

管理人様

ご無沙汰しています。4月にロンドン、パリへ行く前に色々と教えていただきました。パリでエルメス本店ロブ、シャンゼリゼのウェストン、ロンドンではメイフェアのトム&スウィーニー、サビルロウのガジアーノ(番地んくは合ってるのに地下にあるため靴を置いてるようには見えず暫くうろうろしてました。)ヘンリープールでは日本人スタッフがいて、4月のトランクショーにアポイントしてる事を告げると親切にも工房の中を色々説明して案内してもらいました。ファーランハーヴェィでも管理人様の事を話すとすぐ分かったようでしばし管理人様の話を。
お礼が遅くなり大変失礼いたしました。ファーランでは親切に提案もいただいたのに。その節は本当にありがとうございました。
その後調子にのって8月にはANAに松田さんに会いに行き、昨日は原宿に行ってきました。(ひょっとしてお会いできるかなと思って)
それが、管理人様は帝国ホテルへ行かれたと聞いて驚いてます。ビームスとは別のトランクショーなのですか、それともプライベートなものなのでしょうか。
クレバリーは暫く新規のオーダーは受けないという事でした。日本でのトランクショーは暫くないのでしょうか。
長々と失礼いたしました。またよろしくお願いします。

PMT様

ご無沙汰しております。

仰るとおりグレイン・コードヴァンはなかなか魅力的な素材でした。独特のシボ感はロシアン・レインディアによく似たダイアモンド状で、1足作りたくなる衝動に駆られます。

そのロシアンレインディアですが、今後も少しずつ引き揚げられて市場に出回ることがあるかもしれませんが、希少な革であることは間違いないようです。

鈴木章史様

こちらこそご無沙汰しております。

今回は、珍しい素材にスポットを当ててサンプルを紹介しましたが、私自身グレイン・コードヴァンやロシアン・レインディアで機会があれば1足作りたいものです。

鈴木様もぜひ、作られてはでしょうか。

浦野亮裕

早速のコメントを有り難うございます。

そうなんです、浦野様、私もふと、昔リーガルでもロシアンレインディアの素材を使って靴のオーダーを受けていたことを思い出しました。

何しろリーガルと言えば日本を代表する既成靴メイカーですし、VAN時代の思い入れもあってその名を聞くとあれこれ検索しています。

Hawk様

春の欧州旅行では名店巡りをされ、楽しまれたのですね。
当方も夏はパリとロンドンに行ったのですが何も買い物しなかったので、羨ましい限りです(笑)

さて、どういうわけでビームスが新規の顧客を受けないのか分かり兼ねますがビームスでのトランクショウガなくなることはないと思うのですが…。

私はロンドンで直接オーダーしているので、いつも彼らが来日して帝国ホテルに滞在中アポをとって直接会いに行っています。ですのでプライベートと言っても良いかと思います。

いつかお時間がございます時にHawk様の旅行の様子などお聞かせ頂けますと幸いです。

管理人様

大変ご無沙汰しております。前回のトランクショーに続いて今回もと思っておりましたが、私用が重なってしまい滞在時間10分ほどの慌ただしいトランクショーになってしまいました。
その時間の中でも、グレインコードヴァンの靴は非常に魅力を感じました。他にも新しいサンプルが並んでおり、クレバリーの提案に感心しておりました。
次回はぜひ、よろしくお願いします。

すみません。名前の記入を忘れてしまいました。

なんと管理人様もリーガルシューズ数寄屋橋店近くのRTでオーダーをなさったんですね!!!。私は以前お話いたしましたようにATCのVAN好きと言おうか、何とも表現出来ない九州支部長より一般の世界では通用しなされない仕打ちを受けまして今ではVANが疎遠になりました。しかしRTでのお話をお伺いして改めまして銀座にあります日靴の旗艦店RTを思い出しました。そしてもう一つサイドに施されましたアザミのメダリオン。RECCのギリーシューズ【正確にはギリー風】改めまして見てしまいました。

管理人様

ご丁寧にコメントありがとうございます。

hiro様

今回はお会いできず残念でしたが、次回はぜひお会いしたいと思いますのでいつかお時間がございます時に連絡先等をお教え頂ければ幸いです。

次回は翌年の2月、やはり今回と同じティーム・レッパネンが来日するようです。

浦野亮祐様

残念ながらリーガル東京でのオーダーは機会がありませんでしたが、日本でロシアンレィンディアを扱うというので雑誌に載ったこともあり、とても興味をもっていました。

カントリーシューズの横に配されたアザミの紋様、昔は何か分からなくってツリガネソウかな?まさかプランクトンのツリガネムシ?などと妄想していました(汗)

靴の出自が分かってからはフルブローグやギリーシューズが以前よりも好きになったのは言うまでもありません(笑)

管理人様

コメントありがとうございます。
メールアドレス送らせていただきました。
次回もティームに会えるのは嬉しいですが、グラスゴーさんに会えなくなるのは、寂しいですね。

hiro様

メールアドレスの件了解いたしました。

次回は情報交換できますよう早めにご連絡差し上げますので、よろしくお願いいたします。

グラスゴーもかなり歳だから有事的でリタイア生活を楽しみたいのかも知れません…。

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