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2013年6月22日 (土)

Bespoke archive04(Cleverley16~20)

クレバリーのビスポーク・アーカイブも16足目~20足目になる。昔は20足を節目としていたが、ちょうど20足目あたりからポンド安が来た。毎年オーダー価格が上がるロンドンの誂え靴業界だが急激な円高はオーダー価格の上昇を相殺するに十分。暫くは実質値上げなしでオーダーを続けられたので、結果としてそのまま注文を重ねていくことになった。他にもサビルロウのヘンリー・プールやデイヴィス&サン、靴屋のフォスター&サンにもオーダーを入れていたので、仮縫い時期や何を注文するかなど悩ましいこともあった。

最近は逆に円安傾向が一気に進んでいるので、ポンド建ての注文価格もまたたく間に割高になっている。富裕層の増加で高級衣料品が売れていると聞くが、有名ブランドなのだろう、誂えの世界までその波は押し寄せていはいないようだ。寧ろビスポーク靴を好んでオーダーしてきた友人達の注文も一段落し始めている。そこで今回はここ数年続いていた円高当時に贅沢な素材で誂えた靴を中心に、その時々を思い返しながらエピソードを交えて紹介していこうと思う。

※ Cleverley Bespoke Archive 16 to 20

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今回紹介する靴の中心は何と言ってもアリゲータ。全てミシシッピー産の鰐革をイタリアで鞣したものを使用している。右端は16足目のバンドオーバーカジュアルで初のスリッポン。左端の20足目だけがここでは例外のバックスキンを使用している。アリゲータの斑を楽しむにはプレーンなトゥが良いとのことで18足目以外はシンプルなデザインを選択。またこの頃はアリゲータ革の種類が増え始めた頃で、オレンジ色など派手な色も注文できた。

16-01 Brown Alligator Band-over Casual

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友人のオーダーと合わせて違う素材で注文したもの。アンソニークレバリーモデルの中からのチョイスだったと思う。左右で微妙にバンドの位置がずれているなど手縫い靴らしいおおらかさはあるもののデザインは唯一無二。最初の履き心地はきつめだったが、本来締め付ける部分はバンドだけなので慣れた後のフィッティングは快適そのもの。手袋のようなフィッティングと例えられる感覚が気に入って、やがてアリゲータのスリッポンばかりを立て続けに注文するようになる。

16-02 Inside shoe appearance & the part of buckle.

A

靴のインサイドを見ると1本皺が大きく寄っているが、これはバンドによる締め付けのせいかもしれない。つま先からインステップにかけて低く抑えられたノーズが格好良い。一方バンドストラップとバックル部分を見ると当然とはいえ穴は一つしか開けられていない。注文靴だから当たり前なのだろう。余談だが時計バンドもオーダーものは同じように穴ひとつで仕上げてくるとのこと。バックルは真鍮製らしく時々緑青がうっすらと浮くのをふき取ってメンテナンスをしている。

17-01Orange alligator Plain toe Barmoral

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この頃はシャツの生地見本のようにアリゲータの革片が張られたサンプルシートが用意されていた事もあった。なぜか女性の鞄をオーダーする時のような派手な色見本で、友人はグレーを、自分はオレンジを選んだのもその中からだった。丁度光沢の無いマット仕上げの素材が入り始めた頃で、クレバリー側では試しに導入したのではないだろうか。その後派手な色は姿を消してしまった。この靴は斑の大きな部位をつま先に持ってきているが、パターンとの関係なのだろう。

17-02 Inside of barmoral shoe and toe style

B

オレンジ色ととらえると派手に思うが、チェスナッツと考えれば気にせず履けてしまうから不思議だ。尤も履いていける場所は限られる。ただ週末に敢えてタイドアップするならば、グレー無地のウールパンツにネイビージャケット、青系統の柄シャツとオレンジの入ったネクタイを合わせると抜群の存在感を発揮する。横からの写真ではインサイドアーチ部分の皺がなくなり綺麗なアールを描くようになった。フィット感も向上し、晴れた初夏にコットンパンツと合わせて街に繰り出すと気分は最高だ。

18-01Panched cap toe Adelaide lace-up

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この靴のみ、つま先をプレーンなものからちょっとした切り返しのあるデザインにしたかったこともあって、パンチング入りのキャップトゥに変更した。アリゲータ素材なので同じバーガンディであってもカーフ素材のそれのように深みのある色ではない。バーガンディ=ブルゴーニュの名の通りワイン色のような光沢と透明感のあるアッパーが特徴だ。グレーやブルーとの相性が良いバーガンディだが、黒のジャケットに濃いグレーのパンツという最も地味な合わせに履くと俄然存在感が光る。

18-02 Inside of the shoe appearance & toe finished.

C

今回は残念ながらアーチ部分に1本皺が寄ってしまっているが、靴の完成度としては前作とほぼ同じでフィッティングも問題ない。やや小ぶりなキャップが気に入ってウール素材のパンツだけでなく、ベージュやアイボリーのコットンパンツともよく合わせてカジュアルに履くことが多い。もっとも紐靴なのでラフ過ぎず、カジュアルドレスやドレスカジュアルを意識した装いの方が似合う気もする。

19-01 Anthony Cleverley model  3-eyelet plain toe derby

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アリゲータ素材で作った最後の紐靴になる。デザインはアンソニークレバリーモデルからの引用で切り返しのみのシンプルな1足。1ペア作るのに3枚のベビーアリゲータを使うとのことで贅沢な1足になったようだ。デリバリーされたときは左右の革の色目がかなり違っていたが月日が経つにつれて差がなくなってきた。退色が進んだのだろう。つま先の小さな斑が踵に向かって徐々に大きくなるのは定石通りの作り方。

19-02 Inside of the shoe appearance & toe finished.

D

ギンピングのある切り替えしが唯一のアクセントになっているデザイン。つま先はプレーンなトゥにアリゲータ素材のアッパーが綺麗に乗っている。出し縫いは生成り色を指定したのでエレガントなデザインの中にもカジュアルな雰囲気が漂う。そうはいってもアイレットの少ない靴ゆえジャケットにデニムやコットンパンツといったカジュアル色の強い装いよりもリネンスーツやリネン・シルクのジャケパンスタイルなどドレスを意識したカジュアルな装いが似合うような感じだ。

20-01Buck skin Adelaide semi-brogue

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記念すべき20足目はバックスキンのアデレイド・セミブローグ。レースステイ部分の縁取りがスクェアなデザインはやはりアンソニークレバリーラインからのもの。元々マスタードイエローのバックスキン素材があったのだが、在庫が捌けたために濃茶のバックスキンに変更になったもの。色目が違いすぎるのでキャンセルしようと思ったが、破格値のオファーを受けたこともあって納品と相成ったいわくつきの1足。明るめのバックスキンが元々は好みだったが、明るめのツィード素材には濃い色目の起毛靴も悪くない。

20-02 Insaide shoe appearance & the part of lace stay

E

レースステイ部分のスクェアなザインは他のビスポークサンプルでも見かける。昔のデザインの引用なのだろうか。三味線のバチのような形状は従来のひょうたん型と比べて、スクェアなつま先にはあっているデザインだと思う。このところ特に在庫がなくなってきたバックスキン素材だが、数年前にそれを聞いた友人が当時僅かに残っていたホワイトバックスキンとアリゲータでコンビのローファーを作った。それが中々良かったのだが今でもホワイトバックスの在庫はあるのだろうか。最近はマウンテンラムやヒッポなど新たなエキゾチックレザーが増えたクレバリーだが、新境地を築こうとしているのだろうか。

この20足目の後、同じバックスンで色違いのアデレイド(21足目)を最後にブーツ以外紐靴は注文せず、ローファーばかり注文することになる。今やクールビズは6月~10月と5ヶ月もある。ジャケットはおろかネクタイもなし、半袖シャツ&パンツが標準となれば、紐靴より軽いローファーが必須なのも当然だろう。そう言えば自宅に出入りするクリーニング業者も最近はシャツのクリーニング需要が少なく、「商売あがったり」と嘆いていた。よほどの暑さならばジャケットを持って外出することもあるが室内ではジャケットを着ているのでローファーを履く機会はかなり多い。

現在27足目を注文中でこちらもローファー。クレバリーへの注文も残すところ3足と考えている。最後の3足は紐靴からサドルオックスフォード、後はブーツとスリッポンを1足ずつ、などと考えてみたが予定は未定。いざ職人と話し合うと大抵は最初考えていたのと違うものをオーダーすることが多い。スロー・ビスポークという訳でもないがこれからは年2回のトランクショウの内、1回は参加しながら職人と築いた関係を大切にしていこうと思っている。次世代に引き継ぐまで暫くはトランクショウ詣でが続くだろう。

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コメント

管理人様

どれも素晴らしいですが、特に19の3アイレットは素材と形が見事にマッチして秀逸です。色も素晴らしいですね。

今までアリゲータの靴はあまり興味が無かったのですが、管理人様のブログも見て、やっぱりいいなぁと思いました。

PMT様

コメントを有り難うございます。

アリゲータの靴はゴージャスですが、カジュアルに履くのが私にとっての定番。まずスーツに合わせることはなく、ジャケパンスタイルか更にカジュアルな装いに合わせる事が多いです。

夏はポロシャツに501のホワイトデニム、足元はウェストンのアリゲータローファーという合わせも良くやります。

用途は広くありませんが独特の雰囲気がある、それがアリゲータ靴の魅力かと思います。

しかし溜まりに溜まりましたね!アリゲーターの靴は一足だけトニーにEG時代に作ってもらった物があります。やわらかくて履きやすいですよね。インソックをG&Gに交換しなければ(笑 G&Gになってから2足しか作って無いです・・・・MTOも5足くらいだったりして・・・・さすがに足りないので先週4足MTOを頼みました。3足がサイドガセットで一足がタッセルローファーです。もう靴紐結ぶのが面倒で・・・・・・病的ですね。

住職様

英国交通事情では貴重な情報を頂き有難う御座いました。

さて、靴の注文ですが住職さんの仰るように紐靴は殆ど履かなくなりました(汗)ウィークデイの5日間全てがローファーです。ジャケットを着ないビジネスマンが殆どですからブレザーを着ているとかえって浮いてしまうのが今の東京の現状です(悲)

ともかく日本は暑いので私も殆どスーツを着ません。そこでジャケパンとなりますが、紐靴を履こうと紐を結ぶ動作をするだけで蒸し暑い日本では一汗かいてしまいそうなので結局ローファーの方を選んでしまいます。

紐靴の出番は秋以降まで待って貰うことになりそうです(笑)

住職さんも仕事柄靴を見ていると自分の注文は後回しになるのでしょうか。それでもここでいくつか作られているとのこと。いつか機会がございましたらそんな靴談義ができますと幸いです。

いや~自分の靴はどうしても後回しというか、食傷気味になっているのが正直な所でしょうか(笑 衣料の方は相変わらず好きなのですが。小売業に関わってくると、アウトレットもそうですが、ファミリーセール等に行くと怖くて吐き気がしてくるんですよ。在庫に圧倒されて。最近は大分耐性がつきましたが、ファッション”ブランド”は特に凄い量ですね。アメリカは特に仕入れが盛大なので。

紐靴は紐を結ぶのが億劫で、スニーカーでも子供用のようにヴェルクロの物があれば良いのにと思ってしまうくらいです。

グリーンとロブの靴は人前で履けなくなってしまったので全てヤフオクで売り払ってしまいました。何故かオールデン少しとコルテのセルジオ3足とアルカ1足だけは処分しなかったというか出来ませんでした(オークションでは人気が無い?)ロブのビスポークは置物になってしまいました(あしが入らない!)が残しました。

住職様

靴を見ていると(特に格好良いビスポーク)オールデンのような無骨な靴が気になると言われますが、コルテが残っているのは不思議ですね。きっと普段見慣れている靴たちと違う何かがあるのかもしれませんねコルテには…。

グリーンとロブ、既成靴の2代巨頭も処分されたとなるとスカルビエーラ(靴箱)はかなりスッキリしたのではないでしょうか?私ももう一段既成靴を処分して行く予定なのですが思い入れが多い靴ばかりなのでつい手元に置きっ放しになってしまいます。

服の方もここでもう一段身体が絞られてきたので本当にフィットした服が殆どない状態です。尤も、今はコッパンやチノパン、ウールパンツに半袖シャツが中心の服装なので今は良いのですが、秋まで今の体型を維持しつつ、今直しに出しているスーツ2着とジャケットを秋冬もので済ませようと目論んでいるのですが。そんなことで、既製服もあまり食指が動かない状況です。

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