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2013年5月11日 (土)

Bespoke Archive (Cleverley01~05)

1996年に初めてジョンロブ・パリに靴を注文してから来年でちょうど20年、このところスリッポンばかり履いていることもあって誂え靴の注文も随分と緩やかなペースになってきた。それに最近は完成した靴を履きこなす方に忙しいこともあって、オーダーするのも躊躇しがちになっている。これからは2年に1足くらいのペースでお気に入りの靴屋に注文を入れ、旅行がてらに受け取りに行くといったライフスタイルを楽しみたいと密かに考えているところだ。

ここでビスポークシューズをアーカイブとしてまとめようと思う。誂えた靴を見ると履き込まれてエイジングの進んだものから履く機会が少なくソールも殆ど減っていないものまで様々だ。大体は昔の靴の方が皺が寄っているがそうでないものもある。あれだけ注文時に用途を考えたのに頻度に差がでるのはどうしてなのだろうか。そんなことを考えながら記録して、最後の数足に何を注文するのか考えるのも悪くない。そこで今回はクレバリーの初期の誂えを掲載してみることにした。

1.クレバリー初期の作品

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もう少しノーズの長い靴を要望していたが、当時は今のようにロングノーズの靴が主流ではなく、クレバリーは中々こちらの主張を受け入れようとはしなかった。頑固な英国人気質が良く出ていたと思う。最新のクレバリーと比べると捨て寸だけでなく全長そのものが短い。それでも15年の長い付き合いの中で靴の形も少しずつ変わっていくもの。特にカネーラ・グラスゴー体制が終わった頃からかなり柔軟になった。右から左に向かって1足目~5足目。

01-1 Elastic sided shoe,semi-brogue

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記念すべき1足目。カネーラ氏による採寸とオーダー。ジャーマンカーフ(恐らくカールフロイデンベルグ)を用いたチゼルトゥのエラスティックサイドガセット。流石に1足目だけあってよく履いたのでソールを1回張り替えている。リソールの際元の職人と違うところに修理を出したので同じピッチのウィール(ウェルトの目付用)がなく、目付けなしの状態でも戻ってきたようだ。こういったところも含めクレバリーはアバウトなところがあるが、履き心地は良い。

01-2 Side view & shoe tree

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リソール後戻って来た時に驚いたのが靴のシェイプだ。ソールの付け方一つで靴のイメージががらっと変わることを改めて知った。靴の良しあしはボトムメイカーによるところ大という訳だ。ツリーのヒンジ部分に打ち付けられたプレートは開業当時のクレバリーのロゴ、この後も暫くはツリーのヒンジ部分にだけ張られていたが既に靴の中敷のスタンプは現行の月桂樹の葉が取り囲むようなデザインのものに替わっている。

02-1 ImitationFull Brogue Adelaide

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1足目を受け取りに行った1999年夏に注文した2足目。丁度パリを経由した後だったのでジョンロブパリの靴を履いて訪問したところ、対応したのが現在のG&Gのトニー・ガジアーノで彼はロブ・パリの靴をじっくりと眺めていたのを覚えている。つま先のイニシャルは彼のデザインでその後も新しい靴の注文時に使わせてもらった。イミテーションのつま先にしては珍しく皺があまり寄っていない。それだけ上質な革を使っているのだろう。

02-2 Side view & design on toe

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この頃のクレバリーの靴は履き口からインステップまでとシューレース下部からトゥまでの長さが短く、どうしても寸詰まりの感がぬぐえない。この後ダービーシューズの注文を経ていよいよ職人につま先を長くと要望するようになる。アデレイドはパターンを足に乗せるのが見た目よりも難しいそうだ。つま先のイニシャルは自分では決して考えないスタイル、故加藤和彦氏も同じデザインのものをトゥに乗せた靴を履いていたようだ。

03-1 Norwegian shoe(Apron derby)

03_2

昔からエドワード・グリーンのドーバーが好きで注文したかったので思い切ってブラックスコッチグレインで注文。数少ないグレインレザーの注文靴だが、割合初期に注文したことになる。既成靴のグレインレザーよりも上質なアッパーは磨くと綺麗に光る。スキンステッチやライトアングルモカステッチなど職人技が満載の靴が好きなこともあって満足度の高い1足になったが、その割にはソールの減りが少ない。この秋冬はグレーのヘリンボーンツィード素材のスーツに合わせて履き込みたい。

03-2 Side view & toe

04_2

捨て寸の少なさが気になるものの、こうしたカントリーダービーの靴の場合はさほど気にならない。ハーフインチソールを装着したボトムスは堅牢そのもの。昔、ニュー&リングウッドの#33ドーバーと履き比べた時は正直って市販のドーバーの方がハーフミッドソールの効果もあって断然歩きやすかったことを思い出す。つま先部分のスキンステッチはグリーンのように糸が波打つことなく綺麗に割れた線がうっすら見えるのみ。誂えとは技術が異なるのだろうか。

04-1 Rounded Semi Brogue Adelaide

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4足目のアデレイドを担当したのは当時クレバリーに在籍していたポールデイヴィス。その後はポールとグラスゴーが交代で来日、時々カネーラが参加していた。いつだったかポールにつま先を5㎜ほど長くしてと頼んだら「何ミリ長くするとは言えないが全体のバランスを見ながらベストなものを作る。」と言われたことがある。注文靴とはそんなものなのかと思ったが、その後ポールがいたフォスターのテリーによってロングノーズの靴を作って貰ったのだからロンドンの靴業界は実に狭い。

04-2 Side view & Toe

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この頃は大抵アーチ部分上のアッパーに皺が寄っていた。同じ注文靴でも同時期のロブ・パリやメッシーナには見られないものだったことを考えるとクレバリーのアウトワーカーの技量はそこまで及んでいなかったことになる。それでも履き心地はよく、この靴も愛用した。つま先のイニシャルは例によってトニーガジアーノによるデザインのもの。シンプルながら人の注目を集める不思議なデザインだ。

05-1 Elastic Sided shoe Imitation Full Brogue

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5足目の注文は今も付き合いの多いグラスゴーとの共同作業。つま先のイニシャルをスクリプトに替えてオーダー。確か帝国ホテルのメモ帳に二人で書いて決めたと思う。革はチェスナッツ色といえばよいのだろうか手持ちの中では珍しい色目。丁度茶色のバリエーション中間の色ということもあって使いやすい。つま先はラウンドになっているが下の横から見た写真で分かるようにつま先はしっかりとチゼルトゥになっている。このあたりのトゥシェイプは誂えならでは。

05-2 Side view & Toe

10

この写真でもアーチ部分上部に皺が寄っている。ここが綺麗にRを描くようになるのは随分先で、恐らくはアーチ上部にも芯をしっかりと入れることで皺を解消していったのではないかと想像している。つま先のイニシャルは中々ユニークでグラスゴーのアイデアが生かされている。当時は今よりももっと職人然としていたグラスゴーだが今やすっかり経営者の顔としてクレバリーを取り仕切っている。

初期のクレバリーを見ると今のように優秀な職人が沢山いる日本では大したことはないと思われるかもしれない。但し、値段も当時は800£(14万円くらい)くらいでエドワードグリーンのドーバーが360£だったことを考えると約2倍、ビスポークシューズは今よりももっと気軽で気楽な存在だった。それがいつの間にかどんどん価格が跳ね上がり、今では2600£にもなっている。特に日本で多いそうだがこれではクオリティに対してシビアになるのは仕方がないとも思う。

それでもクレバリーとの関係が続いているのは、新しい提案をしてくれたり融通を利かせてくれたり、何より履き心地が良いことが挙げられる。今までのところ紐靴は多少窮屈だがスリッポンの履き心地は正に手袋のよう。クレバリーの真価を味わいたいならばエラスティックかスリッポン、これが長年付き合ってきての結論だ。今後もオーダーを重ねていくとなるとやはりブーツ以外はスリッポンが中心になるだろう。そんな気がしている。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

管理人様
素敵な靴ですね♫
エラスティック・シューズは、靴の脱ぎ履きの多い日本でもっと普及してもよい靴だと思います。
また、話は変わりますが、
ヨーロッパの諺に「良い靴は、履き主を素敵な場所に連れて行ってくれる」という諺がありますが、管理人様の靴達は、管理人を素敵な場所に案内してくれましたか⁈
返信、頂ければ幸いです。(笑)

グレート・ギャツビーより。

時代と共に、変化しているのに気付きます。素晴らしい宝です!
この頃、靴は既製品ばかりです(最近オールデンを購入しました。海外通販です。・・・オーダー価格の高騰で私には無理です(*_*)
管理人様の言われる通り、私もスリッポンが良いです!クレバリーでオーダーしたいですね・・・

管理人様

どれも素晴らしい靴ですね。
特に04のアデレイドの色はとても魅力的です。

私は既製靴しか持っていませんが、昔買ったものはやはり少し寸詰まりに見えます。若い頃はややキツめで履いていたせいもありますが、最近購入した靴よりアウトソールは1cm以上短いです。
初めて買ったトリッカーズのパンチドキャップトゥはヒドゥンチャネルになっていて、革もつくりもとても良いのですが今はイマイチ履く気がしません。

服ほどではありませんがベーシックな靴でも時代によって変化があり、そういう点も服飾の難しいところだと痛感しています。

管理人様は時代の流れやご自身の年齢によるフィット感の変遷をどのように捉えていらっしゃるでしょうか?

うわぁ。時代と、生きてきた時間を感じるいい靴ですねー。

90年代制作の靴はホントにEG202を思わせるような、寸詰まり気味でどっしりとした印象を受けますね。EG202もひとつの時代を象徴するラストって言ってもあながち嘘ではないのかもしれませんねw

私は現在福田さんに靴の制作をお願いしているのですが、全体的にどっしりとした印象にしてくださいとお願いしたところ。
ちょうどこのようなバランスで木型を制作してくださいました。
彼いわく、ある古い制靴教科書にある、靴制作のお手本のようなラストを参考に制作したのだとおっしゃっていたことを思い出しました。

どの時代に重きを置くかによってクラシックの定義はかわってゆくのかなと思いますが。もしかしたらどの時代にも通ずる、基本になるバランスが木型にも隠されているのかなーと素人ながら思わされましたね。

グレートギャツビー様

早速のコメントを有難うございます。

エラスティックシューズは本当に良くできた靴です。日本のおじさん靴にならないようなデザインならばブリティシュでもクラシコでも何でも良く合います。もっと普及しても良い靴の代表だと思っているところです。

さて、ご質問にありました良い靴は素敵なところへ〜のご質問ですが素敵な場所ではありませんでしたが素敵な人との出会いを授けてくれました。良き出会いに感謝している毎日です。

てつ様

ご無沙汰しておりました。

昔のクレバリーは今よりももっと朴訥としていました。てつ様のようにスマートな靴を作るようになったのは割合最近のことだと思います。

それにしても靴の代金は随分と上がりました。オーダーを躊躇する気持ち、私も同感です。それにオールデンの魅力は誂えとは別の魅力がありますし。

PMT様

確かに昔の既成靴をみると今のものよりもずっと小ぶりです。逆にいうと今の靴が捨て寸を多めにとっているのだとも言えます。

時代の流れと共にクラシックの規定も右や左に振れながら今に至っているのでしょうし、今でもスーツならば紐靴という基本は抑えていますがタイトフィットの靴はすっかり苦手になりました。

今はローファーのゆるいフィット感がすっかりお気に入りで、それに合わせてジャケット&パンツルックが主流になりつつあります。若い頃と違ってかっちりとしたブリティッシュトラッドというよりは少しアバンギャルドなサビルロウスタイルが気に入っていたりもしますが…。

通りすがりのチワワ様

コメントを有難うございました。

クラシックの定義は時代によって多少ぶれたりもしますが基本はそう変わらないとのかもしれません。それでも靴などは少しの違いが全体に与える影響はかなり大きいのでパッと見た目、昔の靴が寸詰まりに見えるのではないかと想像しています。

これからも時々クレバリーの靴を紹介しようと思っているところですが、長きに渡って一つの店と長く付き合うのも得難い貴重な経験ができてそれはそれで良かったと思います。

ギャッビー様。素敵なワードですね(笑)良い靴は、履き主を素敵な場所へ連れて行ってくれる。逆に申せばよい靴を履いていないと良き場所へは行けない。ではないでしょうか?私、ギャッビー様を始めゲストの皆様のようにインポート靴は持ってはおりませんが日本では少しは名の売れました靴メイカーの高級ラインナップ、イーストコースト、ブリコレ、RL、AFなどを少しだけ所持しておりますのでウエーブ上では御座いますがこのような素敵な場所へ連れていって下さったと思っております。

管理人様、私もECCのforエクゼツチブソサエテーのカーフ素材のチョコレイトカラーのWT持っております。管理人様と比べる事おこがましいですが似たような履き皺が見受けられます。どうしてもキップでは出しえないしなやかな皺と申しましょうか?

浦野亮祐様

チョコレートカラーのECCウィングチップ、良さそうですね。リーガルの上級ラインということで当時盛んにメンクラなどでも広告が載っていたことを思い出しました。

変な話ですが皺の入り方こそ素材の良さが出るところなのかもしれませんね。皺もチャームポイントの一つ、丸ごと受け止めて愛着をもって履きこなす。これが靴好きの基本ということでしょうか。

管理人様

ジャケット&パンツにローファー、前回紹介されたように、ソックスも含め、色使いも楽しめてとてもいいですね。

ローファーは私も好きなのですが、既製靴だとサイズ選びが難しく、きついのは嫌だけど、踵が抜けるのも嫌なので、中々苦労しています。

銀座のサルトに行ってきました。大幅な直しというものでは無かったのですが、お店の方の対応がとても良く(原宿店も良いですが)、とてもいい気分になりました。

管理人様

名前の記入を忘れておりました。すみません。

サルトは6月はお直し10%オフだそうです。

PMT様

良い情報を有難う御座いました。

まだ幾つか直しに出したいスーツがありますので6月の10%オフ時にぜひ行きたいと思います。銀座店の対応は確かに大人の街に相応しく心地良い空間と時間が流れる感じがします。

ローファーは確かにフィッティングが難しいのですが、意外と柔らかでまとわりつくようなアンラインドのものが履き心地もいいし見た目も軽快そうで重宝します。今は専らブルックスのコードヴァン(アンライインド)が活躍中です。

ジャケット&パンツルックが徐々に主流になりつつあるので、色合わせの楽しみは増えました。イタリア人の気持ちになって着こなしを楽しんでいます。

拝見させて頂きました。

確かに2017年の英国ビスポークシューズの設定価格でクレバリー初期のアーチの皺がここまで顕著な状態で納品されたら酷く落ち込みますね。

ただ履き心地が良いとはラストメーカーが優秀な職人であった証なのですね。ロブパリのように全て工房内で賄うとコストがかなり高騰するのでしょうし、難しいところですね。

しかし一癖も二癖もあるクレバリー、特に最近の管理人様が誂えたシューズは正直一番洒落ているように見えます。難産の末逞しく成長した人間のようです^_^ 個人的には目の保養のためこれからもご注文された革靴を鑑賞していきたい気持ちです^_^

アラキ様

今ではクレバリーのこの辺りもすっかり解消されましたが、当時は1000ポンドくらいでしたから…ただその頃のグリーンは260ポンドくらいで誂えとの価格差は約4倍、それが今ではロブパリの既成靴と比較すると3倍弱ですので、既成靴の価格上昇が上回っている感じです。

ラルフローレンのブティックで今のコードバンウイングチップが12万弱、次からは16万弱とのこと。物価上昇率など関係ない値付けになりそうでした。

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