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2013年5月25日 (土)

Bespoke Archive02(Cleverley06~10)

ビスポークアーカイブの2回目は前回に引き続きクレバリーの初期の作品を紹介しようと思う。もともとジョンロブ・パリからビスポークの世界に入ったものの、当時はロンドンに行く機会が圧倒的に多かったこともあって、ロブパリを都合3足注文する間にクレバリーでは半年か一年に一足という早いペースで注文し続けた。時には一遍に2足注文したことさえある。「注文は一遍だけど送る時は2足まとめて送らないよう…」と念を押したが、不安は的中、2足まとめて送られてきたこともある。

ところで今回の靴のラインナップだが、よく見ると黒靴と茶靴が一つ置きに綺麗に並んでいる。恐らく当時は仕事で使う黒靴が十分ではなく、かといって茶靴も重宝するのでどちらも充実させたかったのだろう。オンとオフの靴を交互に頼んでいたことがよく分かる。前回の1足目~5足目に比べるとシェイプが洗練されただけでなく、アウトワーカーも確かアンドリュー・ガットという有能な底付職人が請け負っていたと記憶している。そこで今回は徐々にシェイプアップされていくクレバリー・ビスポーク靴の変化を記録しておこうと思う。

* Cleverey Bespoke shoes 06 to 10

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いよいよ6足目からノーズの長い靴作りに向けた職人とのセッションが始まっていく。とはいっても実際はそれほど極端ではなくほんの数㎜長いくらいなのだが、レースステイの位置を変えるといったパターンの変更や木型のシェイプアップによってだいぶ見た目が良くなってきた。一番右から6足目のバルモラルで一番左が10足目のフルブローグ。ソールの厚みは返りの良さを期待して6足目、7足目、9足目で3/16(1/4インチよりも薄いもの)を採用している。

06-01 Balmoral immitation semi brouge

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初めてシャロウ(低い)でロングノーズ風に出来上がったジャーマンカーフ素材のバルモラル・イミテーションブローグ。これを履いてフォスター&サンを訪ねた時にテリー・ムーアが「良い靴を履いている、誰が作った?」と聞いたのが懐かしい。尤もこの靴がややきつめのフィッティングだったことを、手に取って中を真剣に覗きながらテリーは言い当てていた。恐らくはインソールに付いたフットプリンティングから不自然さを感じたのだろう。

06-02 Balmoral inside of the shoe and toe

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ここで初めてアーチ前部の皺がなくなり、アーチ全体が綺麗な弧を描くようになった。同時に真横から見たラインもずいぶん変わった。チゼルトゥから低い甲部分を経てレースステイに至るS字ラインも実に綺麗だ。靴の出来栄えはこうしたラインに出てくるもので、仕上がりの良い靴は一つ一つの曲線だけでなく曲線の合わさる部分や曲線が分かれる部分すなわち曲面が美しいのが特徴。つま先はイミテーションキャップの上にスクリプトタイプのイニシャルを載せている。

07-01 Stag suede immitation full brogue

04_2

6足目に続いてオーダーしたイミテーション・フルブローグ。素材は毛足の長いスタグ・スェード、既に廃版となっている素材だ。ソールの仕上げなど基本は前回の6足目と同じで、勿論つま先のイニシャルも同じ。この靴をたまたま持ってパリのコルテを訪問。靴をオーダーすることになって、対応したクリストフ(弟)にこの靴を見せながら、コルテ特有のベグデーグルと呼ばれるつま先にどんなイニシャルを入れようかとあれこれやり取りしたのが懐かしい。

07-02 Inside of the shoe and

04a

イミテーションは革の重なる部分が殆どなく、唯一レースステイ下部から左右に伸びるブローギングラインのみ革が重なる。但しイミテーションのステッチに合わせギンピング仕上げにしないので、フルブローグとはいってもストロングな印象はない。この靴も綺麗で皺の無いアーチ部分が特徴で、実際クレバリーの紐靴の中ではかなり履き心地が良い。つま先部分の写真は毛羽立たせた状態(左)と毛を寝かせた状態(右)を比較してみたが写真からも毛足の長さが想像できるだろう。

08-01 Lazy-man full brogue elastic side

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当時、加藤 和彦氏がオーダーしていたイミテーションのシューレースが付いた靴が話題になったことがある。そこでグラスゴーにオーダーしたところ、彼はその靴をレイジーマン・シューズと呼んだ。「怠け者の靴、つまり紐を結ぶのは面倒だが紐靴のようなスリッポンが欲しい怠け者のための靴。」ということなのだろう。この時もジャーマンカーフでオーダーしたが、皺の入り方からすると1足目のエラスティック・サイドよりも革の質は落ちているようだった。その後レースステイ部分に羽根が閉じたように見せるステッチが入ったり履き口トップがV字になっていたりする改良版が次々と出てきた。

08-02 Lazy-man inside & toe

07a

今回は初のラウンドトゥ。スクェアな木型からつま先を修正することでラウンドの靴も作れるとのことでラウンドをリクエスト、仕上がりは中々良い。但しラウンドからスクェアに戻す時が少々厄介で、元のスクェアとは微妙に異なる場合もあるとのこと。インサイドのアーチ前分にうっすらと皺が寄っているが仕上がりは概ね良好。今回もイミテーション仕上げでギンピングなしのすっきりとした印象のフルブローグに仕上がっている。ソールは通常の1/4インチで注文。

09-01 Elastic tab full brogue slip-on

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既成では唯一E.グリーンが扱っているウィグモアと同じモデル。クレバリーでもレギュラーのカタログにはなく、昔のイラスト集から注文したと記憶している。恐らくグリーンでもカスタムメイドの靴から意匠をとったのではないだろうか。軽い履き心地を期待してソールを3/16にしたがあまり薄いソールは歩くのに適していない。これを最後に最近までソールの厚さは常に1/4インチに固定することになる。裾の短いスリムパンツによく合うやや尖った印象の靴だ。

09-02 Elasti tab inside, tab & elastic band

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僅かに皺が見えるもののアーチ部分の仕上がりは充分。初期の靴よりずいぶん良くなっている。つま先はラウンドの後のスクェアだが仕上がりは元とほぼ同じで違和感はない。横から見るとノミでそぎ落としたようなチゼルトゥがよく分かる。下の写真はタンをめくったところ。センターに持ち出し(タブ)があり、両端をエラスティックベルトで繋ぎ留めているのが分かる。これがフィッティングの重要な役割を果たす部分で、僅かな部材が履き心地に与える影響が大きいことがよく分かる。

10-01 Strong full brogue

10

久しぶりにオーダーしたギンピング有のストロング・フルブローグ。ウィングのラインや羽根下から伸びるライン、更にはヒールカウンター部分など革の重なる部分が多い。それが力強い印象を靴に与えるのだろう、ストロングとは実に上手い表現だと感じた。つま先のパーフォレーションは久しぶりに初期のラムズホーンに戻し、革も1足目と同じカールフロイデンベルグの黒を注文した。但し仕上がり後のフィッティングはその名の通り屈強さが感じられて未だに手強い。

10-02 Strong full brogue inside & lining

10a

ストロング・フルブローグの名に相応しく、インサイドのアーチ部分もテンションがかかり、皺一つない。つま先のシェイプも9足目と同じチゼルトゥ。この靴ではライニングに赤を指定。履いてしまえば誰にも判ることのない密かな楽しみではあるが、当時はサビルロウのテイラーよろしく靴のライニングも好みの色を選ぶことができた。勿論今でもオーダー可能だが最近はあまり凝らなくなっている。他にクレバリーでは緑を、フォスターでは青や紫などを選んだことがある。

今回の靴は2001年頃から2004年頃までの注文だが、丁度2002年頃BSE(狂牛病)問題がEU域内でピークに達した時と重なっている。大量の牛が処分され、原皮の確保が問題になっていた時期で、皮革製品、中でも牛革の品質低下が囁かれていた頃だ。既成靴は直ぐにその影響を受けたようだが、ビスポークシューメイカーでも上質な革の確保に苦労したのではないだろうか。中でも良質の黒革が不足していたと思うが、自分としてはクレバリーでの黒靴は卒業しつつあったのでさほど気をもまなかったのは幸いだった。

一方同時期にフォスター&サンでは黒靴を立て続けに注文していた頃でシルエットは完璧なものの、ジョイント部分の履き皺が抜けないなど黒革の質は気になっていた。ビスポーク級の革でも良質のなものが少なくなった頃なのかも知れない。その後黒靴の注文は止めてエキゾチック系や茶系の革で注文を重ねたが、最近久しぶりに黒靴2足を同じフォスターに注文したところ、黒革の質も良くなっていることを実感した。いずれにしても、良い靴は良い素材と良い職人から生まれるということを改めて実感している。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

管理人様、

ご無沙汰しております。これだけビスポークシューズが並ぶと圧巻ですね。特に10足目は全体のシルエット、ブローギングともにすばらしい。革の質も良く、履きしわの付き方もいいですね。理想的なオックスフォードの黒靴だと思います。
一枚の平坦な革をつり込んでしわ一つない立体にする。まさに魔法ですね。特につま先からアーチ部分にかけては、つり込みののテンションの具合等非常に繊細な力加減が必要かと思います。それに革自体も全て均一な組織となっている訳ではないはずですし。
私は、最近CC41のスタンプが押してあるビンテージシューズを買って観察してみたりしています。やはり技術的にはかなり微妙で、素材も有り合わせのもの、といった様相ですが、全体から出る雰囲気は独特で魅力的です。もう少しビンテージシューズを集めてみようか、と思わせてくれました。
話は変わって、、、ヘンリープールのスーツが上がってきたので、次は靴を、と思うところなのですが、なかなか注文出来ません、、、スーツの価格に妻が衝撃を受けており、私の一挙手一投足を監視している為です。ホーランドシェリーのウーステッドで3ピース約2500ポンドでした。年二回のトランクショーだと時間がかかってしまうのが難点ですが、今のレートでも非常に安価だと思います。妻にはそう感じなかったようですが。。。
また隙をみて次のスーツやそれに合わせる靴をオーダーしてやろうと画策しています。

れの様

こちらこそご無沙汰しておりました。

ビスポーク特集へのお褒めの言葉を有難うございます。仰るように10足目のストロングフルブローグはかちっとした正にビジネスの為の黒靴といった趣で手強いながらも愛着のある1足です。

れの様はビンテージシューズに興味を持たれているとのこと。昔の靴の凄いところはミシンステッチの細かな所など今では再現できない部分が多いと聞きます。それが独特の魅力になっているのではと推察いたします。

ヘンリープールの完成おめでとうございます。恐らく次に作る時は3000£を超えているかもしれないですね。リーズナブルな時に作られたと思います。奥様と楽しく語らいながら追加でプールのスーツに合う靴のオーダーができるといいですね。

管理人様

段々と靴の完成度が高まっていくのがよくわかります。ビスポークは根気強さと心の余裕も大切なのですね。

革の品質低下をよく耳にしますが、残念な事です。優良なタナーの数も少なくなったそうですね。
ウール製品も羊の飼育状況等の変化で品質も変わってきたと言われています。綿製品もこの例にもれません。

「服も靴も昔の方が良かった」と以前は私も思っていました。しかし、現在は考え方が変わり、今作られている物の中で、時代を超えていくような逸品を探したいと思っています。

PMT様

早速のコメントを有難うございます。

靴にしても服にしても、シャツにしても全て昔の方が良かったと言われることがありますが、私もそれは本当だなぁと思います。

まず手間暇かけて整えられた革や毛織物、綿織物など素材が昔の方が良かったことに加え作り手も丹精込めて仕上げていました。

ただ私の場合は、昔のものを探し求めても自分に合うサイズということは稀ですし、昔のままのクオリティを保っていはずもないので、それならば現在の誂え品や既製品の中でベストのものを後世に残せたらと考えています。

PMT様の時代を超える逸品を探したいとの言葉、感動しました。私もそうありたいと思っています。

管理人様

いよいよ暑くなり、靴泣かせの梅雨到来ですね。
クレバリーでの注文の変遷を大変興味深く拝見させていただきました。どの靴も素晴らしい出来ですが、中でも10足目のストロング・フルブローグは圧巻ですね!ブローキングのライン、バランス、言葉になりません。いずれ自分も注文したいです、その時はまた参考にさせてください。

良い靴は良い職人と良い素材から生まれることを改めて実感なさったとのこと。いつものブログの記事からも十分に感じさせていただいています。以前よりも注文靴の世界が広がってきている分、良いお店、職人、売り手、と出会えることは、この上なく幸せなんですね。

笙一郎様

特集へのコメントを有難うございました。

今までアップした中で10足目のフルブローグは他の方からもお褒めのコメントを頂戴するなど受けが良いみたいです(笑)。

ビスポークの世界では良い職人とよい素材、それに加えて良い人間関係がとても大切だなと改めて実感しています。これからも参考になる記事を時折ご紹介させて頂きますのでご参考になれば幸いです。

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