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2013年3月 2日 (土)

Cricket Slipover(チルデン ベスト)

最近久しぶりに白のニットを買い求めた。Vネック周りと裾部分に赤と青のストライプが配され、身頃がケーブル編みになった昔懐かしいテニスウェア。だがよく調べてみるとどうやら英国ではクリケット・スリップオーバー(以下クリケット・ベストと記す)と呼ばれるものらしい。素材は湿度の高い日本では楽しむ期間が短いと言われるコットン。3月から5月いっぱいが旬の素材だが、穏やかな晴天ならば上にジャケットかスプリングコートを羽織って一足早く春の装いを楽しむのに適したアイテムのようだ。

クリケット・ベストは昔アイビー好きの間ではチルデン・ベストという名で覚えていたはずで、VANやマクベス、ミツミネといった国産のメイカーがこの手のベストや長袖のセーターを出していた。調べてみたところアメリカのテニス選手ウィリアム・チルデン選手の名に因んで名付けられたそうだが、VANが作った和製英語とのこと。正しくクリケット・スリップオーバー(ベスト)と言わないと英米のショップでは通じなさそうだ。ということで、今回はワードローブに加わったばかりのクリケット・ベストを中心に春の着こなしを提案してみようと思う。

1.スぺクテイターズルック

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春のスポーツ観戦を思わせるコーディネイト。カジュアルドレスの着こなしを考えてみた。故加藤和彦氏の著書「エレガンスの流儀」によれば「感心しないのは、アメリカ人に多いコットンのチノパンツにこのブレイザー・コウトを合わせるという例のカジュアルなやつ、別に間違っている訳ではありませんがセンスが感じられません。」とのこと。氏は代わりに「コットンのトラウザーズで白のものするとよい。」と記している。それに倣ってホワイトのコットントラウザーズを用意してみた。

2.

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白の分量を多くするのが春夏の着こなしの定番。ネイビーブレザーと帽子以外はどこかしら白が入っているアイテムで揃えてみた。シャツも白無地より白襟に青地の所謂クレリックシャツの方が着こなしに映える。ストローハットはP.スチュアートのもの。チーフの赤とネクタイの赤の色調を揃えたり、ヴェストの青い帯と色調の合うブレザーを用意したりとある程度色のフレーム内に収まるようアイテム同士を組み合わせている。

3.Vゾーンの組み合わせ

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クリケット・ベストの下はクレリックのフレンチカフシャツ、ポロラルフローレンのものだ。合わせたマドラスチェックのネクタイはベスト同様コットン製でこちらもP.スチュアート製。白ベースに赤のチェックが洒落ている。3ピークで挿したポケットチーフはリネン製でイタリアはフィナモレ。前述したように白の分量が多いことに加え、一番上に羽織ったブレザーのネイビーが全体を引き締めているので、多少小物の色選びで遊んでも散漫な感じがせず引き締まって見える。

4.エンブレム

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今回購入したベストは本場スコットランド製。本格的なケーブル編みが施されたものはマシンメイドだろうがリブ編み部分に人の手が入るなど丁寧な作りが窺える。コットン素材でありながらバランタインのカシミアベストに近い定価というのも納得してしまう。左胸のエンブレムは金糸を用いた本格的なもの。ジャケットの下に着てしまうと滅多に見る機会がないので、時々はわざとジャケットを脱いでベスト姿になるのも良さそうだ。

5.ネイビーブレザーとの相性

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トップに来るブレザーはロンドン・サビルロウのテイラー、ピーターハーヴィーによるもの。故加藤和彦氏も贔屓にしていたカッターで、段返り3釦タイプのブレザーを極めて英国的に仕上げてくれる。胴絞りの強い上着はベストを着た状態では前開きを閉めるのも大変なくらいだが、チノパンツではなく、白のコットントラウザーズを合わせたことで加藤和彦氏が提案したように、今までとはぐっと違った大人の雰囲気が漂うカジュアルドレススタイルに仕上がる。

6.ウェスト部分

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久しぶりに締めたエルメスのベルト。バックルを目立つH型から楕円のものに替えたが、あまりブランドを意識することなく普段から使い慣れておくと、いざ合わせる時も特段意識せずに組み合わせることができる。パンツはイタリアの専業ブランド、ヴァレンティーニのサルトリアーレシリーズ。快適な履き心地の為にコットンにライクラを3%混紡してストレッチ機能を高めたもの。PT01やIncotexよりも断然履き心地がよい。流石はサルトリアーレと銘打つだけのことはある。

7.カフリンクのコーディネイト

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フレンチカフの場合ダブルカフを留めるのにカフリンクかゴム製のノットを使う方が多いのではないだろうか。ここでは小物同士の色合いを考えて赤と青のエナメル仕上げの金属製ノットを合わせてみた。こうした小物類も手を抜かないことでコーディネイト全体も締まってくるもの。因みに加藤和彦氏はクレリックシャツはカラーだけが白で袖口は身頃と同じ生地であるべき(写真のように)と述べており、また同じクレリックでもブレザーに合わせるものは身頃がストライプのものの方が良いと記している。

9.クレリックベスト姿で

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ブレザーを脱いでベスト姿になったところ。両脇から腕回り部分(アームホールといった方が分かり易いだろうか)にも細いストライプが配されたベストは単体で着てもそれなりに様になる。特にエンブレムがワンポイントになっていて、クリケットセーターよりもベストの方が着る機会や期間が多そうだ。数年前からのプレッピーブームでクリケット・ベストも見直されたのだろうか、インターネットで検索すると色々なブログやサイトで紹介している記事を見かける。

10.ライル&スコット

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今回のニットは懐かしいブランド、ライル&スコット製のもの。80年代フィレンツェのプリンチぺという英国調のセレクトショップで見たカシミア製品がライル&スコット社のものだったが、英国調を好むフィレンツェらしく、発色の綺麗なマフラーやセーターだったことを思い出す。写真のベストもスコットランドで作られたもので、大切に保管されたライル&スコット社のアーカイブから取り出されたデザインをモダナイズしたコレクションの中の1品。1874年にホーウィックで創業されたライル&スコット社はロイヤルワラント〈英国王室御用達〉をもち、かつてクリスチャンディオールの生産を手掛けていたとのこと。

11.コーディネイトした靴

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スポーツ観戦といえばスぺクテイターズルック。右はスポーツ観戦の定番コンビシューズでコレスポンデントとも呼ばれるもの。茶/白や黒/白でフルブローグかセミブローグが一般的だろう。黒/白はジャズマン御用達でウールのピンストライプスーツと合わせるイメージだが、茶/白ならば麻や綿素材のスーツあるいはジャケット&パンツとマッチする。左はこちらも白パンツに合わせて薄茶色のアリゲータースリッポンを用意、ゴージャスなアリゲータ素材とカジュアルの代表コットンは思ったよりも相性が良い。

12.ジョージ・クレバリー

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どちらもジョージ・クレバリーの誂え。コンビ靴の方は10足目のオーダーでスリッポンが22足目。2つの靴の間には7~8年の開きがあるが変わらず履き心地の良い靴を作ってくれる。どちらもお気に入りだが、コンビの方は合わせる服が少ないので履く機会があまりなかった。だが今年は麻かコットンのスーツを新調しようと思っているので、出番が多くなるはず。逆にアリゲータスリッポンは納品以来最もよく履く靴の一つ。これから春を迎えると週末はジャケットスタイルに合わせて当番回数がさらに増えそうだ。

昔ケント&カーウェンで本場英国のクリケットセーターを買ったのに、1年を通じて着る日が殆どないのでクローゼットの奥に眠らせたままいつしか廃棄してしまったことがある。そういえばヴェネツィアで買ったネイビーの手編みセーターもラルフローレンのラベンダー色のコットンセーターも全て古着回収に出してしまっている。ということは今回購入するまでクローゼットからコットンニットが全く消えていた訳で、年々夏の暑さが来るのが早くなり、厳しい残暑が長く続くという温暖化の影響が大きいからだろう。それでもブラックフリースの影響だろうか、セレクトショップに立ち寄ると今回のようなチルデン・ベストが店にディスプレイされているのをよく見かける。

何しろユニクロのオンラインショップでも見かけるくらいだから着こなしのワンポイントとしてクリケットスリップオーバーはちょっとした流行りなのかもしれない。今回は英国調の組み合わせを紹介したが、濃い目のブルーBDシャツに勿論ノータイでホワイトデニムと合わせ、アイビー好きらしくチルデン・ベスト風に着こなすのも楽しそうだ。長袖のコットンニットでは着る機会も回数も限られてしまうが、ベストならばコーディネイトの幅が広がりそうだ。今日は早速白の「コットンパンツと合わせて着てみたが、明日も天気が良ければ今度はホワイトデニムと合わせて出かけてみようと思っている。

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コメント

管理人様

クリケットベストいいですね。コーディネートも素敵です。

ブレザーにはニットタイを合わせる方が多いようですが、この場合、ニットXニットになってしまうので、マドラスタイが大正解ですね。

私は今シーズン、ブレザー用にとマドラスタイとコットンシャンブレーのタイを購入しました。
春夏用のブレザーを着るのはかなり先と思っていましたが、コットンベストを加えればすぐにでも着られそうですね。
 


管理人様

ご無沙汰をしております。
英国Webオーダーのパラブーツは未だですが、今月中には片付けようと存じております。

ライル&スコット、懐かしいです。
カシミヤ、ジャコウ牛のニット、ゴルフウェアとして有名でした。
私も20年以上前に購入しましたバーディーマーク無しのローゲージカシミヤセーターを、久しく着ていませんが所有しております。

この春夏はチルデンベスト、セーターが出ているようですね。
VAN全盛時、またブルックス、J.プレス等の2次アイビーブームの頃を懐かしく感じます。

グレンフェルのシングルコートは、以前おりました会社の元後輩が最近購入していました。
バーバリー以外の英国レディメイドコットンコート扱いブランドは混迷してしまい、とても残念です。

またブログを拝見させて下さい。
宜しくお願いいたします。

管理人様


ともすれば野暮ったくなりがちなスタイルも、白のパンツに変えるだけで、随分しゃれた雰囲気になりますね。(汚れが目立つのが困りますが)

私も昨年、イタリアのパンツメーカーのものを購入しました。春先以降は、ネイビーのリネンシャツとスリッポンに合わせて穿きたいと考えています。
(実はシャツはこれから購入しようと考えているので、お勧めがおありでしたら、ご教授ください)

こんにちは、
爽やか合わせ方ですね。クリケットニットはとても好きなニットなのですが、首から上が悪人面なので、良いとこの子が着ているイメージのクリケットニットはどうしてもチグハグな感じになってしまいます。着たくても着れないものの一つです。
クリアの仕上がりの生地でネイビーブレザー、ドレープのラインが良いですね。ウエストのサップレッションから裾にかけてフレアになっているようですので、パンツはあまり細身過ぎない方がバランスが良いような気がします。
靴はアリゲーターに一票。コーディネート全体のクリーンなイメージを壊さず、上品さを格上げ出来ているように思います。
いつも管理人様の合わせ方は勉強になります。ありがとうございます。

チルデンベスト。セイターは持っておりましたがベストはあまりにも目立ちすぎて持っておりませんでしたが管理人様のコーデネイト拝見しますと流石!!と感じました。随分、昔の話ですが真夏でもVベスト着るのが流行っていた時がありましたね。特に真っ赤がメンクラに記載されていたので真っ赤をよく着てました。VANの製品でたしか上代が2,500円でした。翌年にネイビーを購入いたしましたら3、200円に値上がりしてました。

PMT様

早速のコメントを有難うございました。

PMT様もマドラスチェックのネクタイを買われましたか。コットンのタイは黄ばんだり汚れが付きやすかったりと旬の時期が短いのですが値段はそれなりにします。

ネクタイとしてのパフォーマンスはシルクやウールのネクタイよりも低いかもしれませんが、他のどのネクタイにもない魅力があるので定期的に買い足してしまいます。

これからコットンやリネンの爽やかなネクタイの出番が多くなりそうで、楽しみです。

Shige様

オンラインショップでのトラブルは解決まで気をもむことが多いのですが、無事解決できますことを祈っております。

Shige様が仰るように英国のアウター(コート)メーカーは色々大変なようで、中国市場にシフトしたバーバリーはブランドイメージを上げているようですが、その分昔からのファンは離れてしまったかもしれません。

かつてグッチがトムフォードをデザイナーに迎えた頃、当主は「昔のグッチの顧客は死んだ」といって刷新を自ら指揮したそうですがブランドなりメーカーなりが生き残るというのは私などが想像するよりもはるかに大変なことなのかもしれません。

やまだ様

ネイビーのリネンシャツに白のコットンパンツ、足元はスリッポン。とても素敵なコーディネイトで自分も思わず真似したくなります。参考にさせて頂きたいと思いました。

白のパンツの格好良いものというとやはりイタリアのパンツメイカーの出番で、他には中々見当たりません。もう少し英米の既製服メイカーにも頑張ってもらいたいのですが…。

ネイビーのリネンシャツ、最近は色物のシャツ(特に濃い色目のもの)を見かける機会が少ないのですが、この際1枚オーダーされてみては如何でしょうか?満足するシャツが出来上がるような気がします。

剝いません、自分が注文する訳でもないのに、銀座の注文シャツ屋やバーニーズのフライ受注会などあれこれと思いつきました。

れの様

コメントを有難うございます。

ご指摘の通り、イタリアブランドのホワイトコットンパンツは目下主流のトリムフィットで裾幅が19㎝台とトラッドの王道22㎝から比べると大分細身です。

英国の誂えブレザーならばあまりタイトな物ではない方が良いのではないかというアドバイス、その通りだと納得いたしました。

また靴にしてもアリゲータローファーの方が合いそうだとのご指摘、ブレザーを着てネクタイを結んではおりますがあくまでもカジュアルドレスと考えればレースアップよりもスリッポンの方がマッチしそうです。

今回も貴重なアドバイスを有難うございました。もう少し裾幅の広い白のコットントラウザーズを探してみようと思います。

浦野様

早速のコメントを有難うございます。

赤のチルデンベスト、懐かしいです。自分では決してい選ばない色目だと思いますがメンクラなどではキーカラーであるレッドということで盛んにプッシュしていた記憶があります。

街アイでも赤のヴェストを着て出てくる方(もっと強者は赤のブレザーなど)が居て凄いなと感心することが多かったことを改めて思い出しました。

年齢が上がるにしたがって昔は選ばない色を選ぶ傾向がありますので、そのうち赤のウェアも買うのではないかと自らを想像しています。

管理人様

ご返答有難うございます。

私が買ったマドラスタイは管理人様と同じ配色ですが、もう少し格子が小さいものです。ちょっと似ていたので嬉しいです。

管理人様のブログに触発されて、昨秋クレストタイを買って以来、ネクタイへの興味が復活し、冬物セールではシーワード&スターンのカシミア/シルクタイを、最近ではドミニックフランスのタイも購入しました。

ドミニックフランスは2011年にパリ本店が閉店になったようですね。経営も代わっているのでしょうか?
高校生の頃(77年頃)、書店で立ち読みした世界の一流品大図鑑でドミニックフランスのタイを見て以来、いつかは買ってみたいと思っていました。

リネンのタイもいいですね。ちょっと探してみようと思います。

PMT様

ドミニクフランスのネクタイ懐かしいです。確か新宿伊勢丹での取り扱いがあったと思うのですが価格も他のネクタイより飛びぬけて高かった気がします。

パリ本店が閉店したということはどこかのネクタイ会社が商標権だけを持って作っているのでしょうか?ドミニクフランス同様、ベルルッティやアルニスなど老舗と呼ばれたフランスのブランドも時代の流れに翻弄されているようで残念です。

シーワード&スターンのネクタイは発色が独特ですが私も良いなと思っていたブランドなので気に入って頂けて嬉しいです。それにマドラスのネクタイも似たものとお聞きして益々嬉しくなりました。

ドミニクフランスは、生産だけは続けていると記憶しています(間違っていたらすみません)

フランスで昔ながらの経営形態を守っているお店として思い浮かぶのは、有名どころではシャルベぐらいでしょうか?前述したリネンシャツ、シャルベでの仕立ても検討しています。
ただ、シャルベのシャツは裾がスクエア型なので、パンツから出すと、おかしいでしょうか。。。?

やまだ様

おととい伊勢丹でドミニクフランスのネクタイを見てきました。独特の雰囲気は健在ですが1本4万円台というお値段も流石でした。

シャルベのシャツ1枚だけ仮縫いなしのドゥミ・ムジュールで作りましたがいい経験になったと思います。仰るように裾がスクェアですので出して着るとあまり様にならないかもしれません。

やはりドレスシャツのメイカーですのでスーツやジャケットと合わせるのが良いのかなと想像しております。

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