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2013年3月23日 (土)

コーチ今昔物語

アメリカントラッド世代が知っているコーチと若い女性に人気のコーチではブランドに対するイメージはがらりと変わるのではないだろうか。1941年、革小物メイカーとしてニューヨークのマンハッタンで創業を始めたコーチは、使い込むほどに手になじむ野球のグローブを参考に革そのものの味を生かしたバッグ作りをスタート。「グラブタンレザー」と呼ばれる優れた素材を武器に1988年には日本にも進出する。当時はメンクラでも紹介され、トラッドの本質である「優れた物を長きにわたって使う」を地で行くグラブタンレザーのバッグや小物類を自ら購入したことが懐かしい。

ところが、2001年「C」をモノグラムでキャンバスに織り込んだ「シグネチャー・シリーズ」が世界的ヒットになると、優良バッグメイカーからファッションブランドへの脱却を徐々に加速していく。2009年には「コーチ・ポピー」と呼ばれるカラフルなバッグを登場させるなど、よりパワーアップした姿を示しつつ、旧来の顧客に対してはトラッドからファッションへと180度のイメージチェンジを迫った。そしてわずか10年あまりでメイカーからブランドへと一気に地位を築いていった。そこで、今回は旧世代と新世代のバッグを比べながら、生まれ変わったコーチの魅力を探ってみたいと思う。

1.新作と旧作

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どちらもカウハイドレザーを使用したバッグだが左は最近国内で購入した新作。一方右は1995年海外のコーチストアーで購入した旧作。当時は今のようにファッションブランドではなくバッグメイカーとしてのイメージが強かったが今や写真のようなグラブタンレザーの商品は店の片隅で、Cマークのシグネチャーシリーズがディスプレイの中心となっている。2つのバッグの共通点といえば何といってもその色目。グラブレザーはネイビーやコーヒーなど他にも何色かあったがこのタンカラーが最もコーチらしい。

2.旧作のブランドロゴ

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製品一つ一つに付けられた製造番号は当時のコーチがバッグメイカーであることの証拠ともいえよう。英文の最終行にはMade in the United Statesと刻印されている。マンハッタンで創業されたというルーツをを受け継ぎアメリカ国内で製造していることをさりげなくかつ誇らしげに主張していた。このグラブタンレザーには専用のポリッシングクリームもあって、常にしっとりした革質を楽しめるよう行き届いた配慮があった。

3.新作のブランドロゴ

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新作になって最も変わったのが製造場所。世界のファッションブランドの多くがそうであるようにコーチもアメリカ国内での製造を止め、生産の殆んどを中国で行っている。もはや製造場所に拘る必要もないのだろうが、トラッド世代はメイドインUSAに対する憧れがあってつい調べてしまう。バッグの取っ手付け根の処理からもわかるようにこのバッグ、リバーシブルになっていてタンカラーとキャンバス地の両方を楽しめるのが嬉しい。

4.ニューヨーカーのイメージ

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マンハッタンを行くアメリカのビジネスマンをイメージしたコーディネイト。流石に当時のアイテムは殆んどないので1996年にこのバッグを買った頃を想像しながら組み合わせてみた。当時はニューヨークトラッドが好きでよく着ていたが、ラルフローレンの英国調スーツよりもポール・スチュアートのコーディネイトの方がコーチのタンレザーとの相性は良かった気がする。明るい茶色の扱いが上手かったのがポール・スチュアートという印象がある。

5.グラブタンレザーのブリーフケース

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当時のアメリカは防犯上バッグはたすき掛けということで必須の付属ストラップ、バッグと同素材で着脱式だが、肉厚で良質な革はそれ自体ともかく重い。何か入れっぱなしかと思って開けて見ることが何回もあった。フェリージやルイヴィトンの方が遥かに使い易い。今の時代は軽いバッグが主流のなのだろう。コーチがシグネチャーシリーズにシフトしたのも当然の帰結かもしれない。シャツはラルフローレン、ネクタイはE.フォルミコラ、チーフがポールスチュアートで上着がデイヴィス&サン。

6.合わせた靴

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ポール・スチュアートの靴売り場には昔からブラウンシューズが置かれていた。チーニー製、クロケット製、グリーン製とランクごとにファクトリーを使い分けて展開していたが、やはりトップレンジのE.グリーン製ポールスチュアートの靴が素晴らしかった。写真はどちらも旧グリーンの靴を作っていたオリバーStの工場(現在はジョンロブ)製品。ジョンロブのセイムールとブルックスブラザーズのセミブローグ。今から15年前、高級既成靴と言えばE.グリーンと呼ばれていた時代の傑作だ。

7.コーチの新作トート

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こちらはコーチの新作。ファッションブランドへと変身したコーチの製品はアメリカのトラッドな装いよりも旬なイタリアのカジュアルクラシックの方が合うようになっていた。ここではストライプの入ったバッグの色を拾ってグレーのトラウザーズと赤のネクタイをコーディネイト。勿論週末でカジュアルな装いが許される場合の組み合わせだ。シャツは同じクレリックながらネイビーブレザーとグレーのコットンパンツにローファーを合わせ、カラフルなネクタイを締めればトートバッグの持つカジュアルな雰囲気とマッチしてくれそうだ。

8.ドレスカジュアル

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ネイビーブレザーはテイラードな雰囲気のあるシングルピークドラペル。ブルネロクチネリのものだ。パンツはヴェネツィアで買ったザネッラのスキンフィットパンツ。目下主流のシルエット。ネクタイはアンティークな雰囲気のエルメススカーフタイ。エミリオプッチよりも発色が抑えられているので重宝する。肝心のバッグの使い心地だが、蓋のないトートなのでとっさに雨が降った時などは困ってしまうが、物の出し入れは断然しやすい。何よりリバーシブルというところが気に入っている。

9.合わせた靴

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ローファーの両横綱といえばウェストンとオールデンになるだろう。どちらも王道のメイカーで左のオールデンはアンラインドの日本代理店別注品。右側はパリ本店で買い求めたアリゲータスキンのシグネチャーローファー。ジャケパンスタイルならばローファーで十分。ビジネスには紐靴だろうが、仕事用の紐靴が一通り揃ったら、脱ぎ履きのし易いスリッポンが重宝する。勿論履いている時も甲部分への締め付けがないので、履いていて楽なところも支持する理由の一つだ。

10.リバーシブルバッグの楽しさ

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ここではバッグを裏返してキャンバス地が見えるようにして同じように肩から下げてみた。このところカラフルなウェアが色々なショップに置かれている。地味なネイビーのコットンコートにベージュ1色のトートバッグだけでは色目が寂しいので、他のアイテムで色を足してみた。ウォッシュがかかったような雰囲気ながら発色の良いピンクのチノパンを合わせ、ブルーとレッドのストールや白と紫のドライビングシューズなど小物に変化をつけて色を楽しんでみた。

11.コーディネイト

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こちらはファーストファッションの組み合わせ。コートはギャップでチノパンがユニクロ、ただしシングルでたたき上げのユニクロの製品をそのまま合わせたのではチープっぽさが残ってしまう。そこで一度解いて改めてダブルカフに仕上げるだけで一気に格上げした雰囲気になってくるから不思議だ。ストールはイタリア製ながら価格の抑えられたクリケット製、リネンとコットンのミックス素材。シャツは伊勢丹別注6ボタンのブルックスポロカラーシャツ。

12.合わせた靴

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これからの季節に素足で履きたいドライビングシューズ。左はバーニーズ別注の珍しい紫のドラシュー。白のコットンパンツに合わせて購入したがピンクのパンツとも相性は悪くない。一方右はパープルレーベル別注の白いドラシュー。こちらはカラーパンツだろうがデニムだろうがカジュアルならば何でも合う。勿論パステル調のパンツとの相性が悪いはずもない。余談だが白の靴は汚れが目立つので定期的にサドルソープなどで洗って奥などメンテナンスが必要になる。その分明るい日差しの下で履くと最高に気持ちが良い。

かって、イタリアのグッチがトムフォードを迎え大胆なイメージチェンジを図った時、グッチの当主は「古い顧客は皆死んだ」といって改革を断行したとある雑誌に書かれていた。コーチのバッグも同じように「質実剛健、長きに渡って愛用できる堅牢なバッグメイカー」から「カラフルでチャーミングなファッションバッグメイカー」に変身を遂げた。確かに昔のグラブタンレザーのバッグを手にとって、最近のアイテムと合わせようとするとどことなく違和感を感じる。それは時代の流れなのかもしれない。

それでも久しぶりに新生コーチのタンレザー・バッグを買って、その魅力を探る機会にできたのは嬉しい。何しろ今のコーチ製品は昔よりも軽くて洒落ていて、しかも使いやすい。毎日使いたくなるこの感触こそ商品自体の魅力。この20年で服はもちろん革製品も軽く、薄く、スリムになってきた。バッグと言えども例外ではなく、英国調のブライドルレザー製ブリーフケースのように魅力的であっても重さを敬遠する人も多いだろう。物へのこだわりだけでなく、使い勝手の良さも今や重要なファクター。今回のコーチの新旧バッグ比較で色々なことが分かったのは大きな収穫だった。

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小物(accessories)」カテゴリの記事

コメント

管理人様

コーチがそういうブランドであったことを、今あらためて思い出しました。若い頃、革で編んだキーホルダーを愛用していました。

リバーシブルトート素敵ですね。縦横の大きさ、持ち手の長さなどバランスがとても良いですね。

私はトートバッグはグレンロイヤルのレザートートとチャップマンのキャンバストートを愛用しています。
グレンロイヤルのブライドルレザーはびっくりするほど軽いです。

今日、ラルフローレンのセールに行ってきました。グレンプラッドのジャケット、チャコールグレーのフラノパンツ等を買いました。セールこそベーシックなアイテムをという考えなので中々いい買い物が出来ました。

パープルレーベルのコーナーは格安でしたが既に戦いの跡といった感じであまり残っていませんでした。サイズが合えはかなりお買い得と言った感じでした。
ブーツは英国製、米国製ともにかなりの量がありました。

PMT様

早速のコメントを有難うございました。コーチのトート、昔だったら重くて頑丈な感じだったでしょうが、今回購入したものは軽くてストライプが洒落ているのでカジュアルな装いにとても重宝します。

スーツでない限りほぼどんな服装でも合いそうですので、これから使い込んで味を出していこうかと思っています。尤も価格から考えるとエイジングを楽しむほどの耐久性はないかと思いますが。

明日ラルフのファミリーセールに行ってこようと思っています。何が買えるのか分かりませんが久しぶりなのであの混雑した会場を思い出してます。

昔ルーズソックスが流行っていた頃ラルフローレンのルーズソックスを袋一杯に買っている高校生がいて驚いたことが懐かしいです。

今日は仕事の合間に自宅でPCを開いておりましたらまた素敵な新スレの展開。レイスアップの靴はメイカーがわかりませんでしたがローファーはピッタシカンカンで大当たりでした。コーチと申しますと姉(例の細ワイズ)の自宅で飼っている犬(黒シバ犬)に首輪をこのコーチ製を付けていました。話は脱線しますがその犬に餌をやろうと下駄を履いてでたら右足首をねんざ(昨年10月)そして今月電話あり、今まで履いてきたハイヒール(すべてインポート製)もう足が痛く履けないので全て処分したいと言います。それじゃネットオークションに出品したらと言っても面倒くさい只でやるからあんたの知人でサイズあればあげると言いましたがなんといってもサイズが小さい22,5センチ。その上ワイズがBとくればまずは合う女性はいませんね。25足ほどありますとの事

管理人様

ご返答有難うございます。

ネットでコーチのメンズを検索してみましたが、なかなか充実したコレクションですね。
今度ショップも行ってみようと思います。

先入観にとらわれると視野が狭くなってしまいますね。
またひとつ勉強になりました。有難うございます。

浦野亮祐様

返信が遅くなり申し訳ありませんでした。

御姉様の靴、ためしにネットに出されてみてもいいかもしれませんね。きっとそのサイズを探されている女性がいるのではないかと思います。

PMT様

今日御殿場のアウトレットに行ってきました。

コーチのファクトリーストアは中々盛況で、男物のトートには欲しくなるものも結構ありました。

それからグッチにも行きました。こちらのトートバッグも中々素敵でした。後はバーバリー例のチェックのトートは人目を惹きますが中々これも良いものでした。

やはり老舗は商品作りが上手いなと思います。

管理人様、「コーチ今昔物語」大変興味深い内容でした。
私も鞄で良いものがないか、ずっと探していました。
素材が上質であることは勿論の事。道具としての機能性にも優れた鞄をずっと探していました。
その結果、私はMADE IN JAPANで良いものを発見しました。
それは、アニアリです。
今、誂えているコートのシルク生地も確かにイタリアにも優れたものがありましたが、私は日本人なので、出来るだけ日本の良いものをアピールしたい気持ちもあって、敢えて米沢織を選びました。
私も舶来品に対する憧憬が強い方なので、管理人様のMADE IN USAに対する思い入れも分かります。
洋服は「西洋に一日の長がある」事は否定出来ませんが、しかし、日本人には日本人にしか創り出せない美があると思う今日この頃です。
話は変わりますが、ユニクロのパンツを一工夫加えることで、より洗練された装いに仕立て上げるというところは、流石だと思いました。^_^

グレートギャツビー様

アニアリの鞄、雑誌で拝見しましたがとてもよさそうですね。そして鞄もコートも日本人であることを意識してオーダーされているとのこと。とても良く分かる気がします。

海外に駐在していた時期はインターナショナルなブランドに囲まれて暮らしていましたから、日本の製品を見つけたり、買い求める人を見たり、日本人としてのアイデンティティーをずっと意識していました。

今はコーチの鞄がチャイナ製であっても良ければ買うようになりましたので、ポパイのMade in USAは卒業しましたが、同時に餅は餅屋というのも分かるようになりました。

洋服に身を包む以上は西洋のメイカーなりブランドに肩を並べるのは時間がかかるもの、日本のサッカーがそうであるように届くまでまだ間があると思っています。その間はフラットな気持ちで物を見比べて良いものを購入できたらと思っています。

ユニクロは日本が世界に誇れるブランドだと思うので応援していますが、ファストファッションの宿命、そのまま着ると他との相性で苦労します。そんな時は一工夫、自分で裾を解きダブルカフ仕上げにします。意外と簡単で効果は抜群です。

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