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2011年12月26日 (月)

Foster's Black Shoes(フォスターの黒靴)

ジャーミンストリートの中ほどに店を構えるフォスター&サン。マスターラストメイカーのテリー・ムーア氏にラストを作って貰いたくて店を訪れたのが2002年の夏、ロンドンにしては珍しく蒸し暑かったが、スーツ姿でクレバリーの靴を履き、店を訪問したことが懐かしく思い出される。あれから間もなく10年目を迎えるが、その間デリバリーされた靴も丁度10足になった。1年に1足ずつ誂えた計算になる。

素材はカーフが多く、他の素材といえば唯一グレインレザー(インパラ)で作っただけだが、その分縫製やディテールには細かな注文を出させて貰った。ロンドンの注文靴屋はどんな注文に応えられるのか確かめたかったのだが、その都度最高の職人技で仕上げた靴を納品してくれた。だが最近はクロージングやツリーメイキングなど心配なことも出てきている。そこで今回は最新のものを含めて全10足の中から黒靴4足を選び、色々比べながら注文靴の今後を考えてみたい。

1.The Black Qartette

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このところコンサバティブなスーツを着る機会が増え、黒靴を履くことが多かった。出がけに靴を選ぶときは履き易さを優先するのでどうしてもエラスティックサイド(左から2番目)が多くなる。それでもチャコールグレーの地味なスーツにパンチドキャップトゥ(左端)を選んだり、ストライプのスーツに負けない靴(右端)を選んだりすることもあった。ここに最新の黒靴"Lazy-Man"(右から2番目)が加わってローテーションも変化していくだろう。靴の完成順で行くと左から3→2→4→1の順で右端が一番古い。

2.Toe Shape

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つま先の形状は左端のみ新ラストを使用している。他の3足と比べるとやや幅広な印象があるのでよりポインティな形状を依頼しているが、モディファイ後のラストを反映させる肝心の靴作りの方がクローザーの休業で進んでいない。ハンドステッチの得意という優れたクローザーの復帰を待つか別のクローザーでできるようなデザインに注文そのものを変更するか、近いうちに答えを出す必要がある。

3.Comparing former and current elastic-sided shoe

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紐靴が紳士の身嗜みの基本と教わってきたが、エラスティックサイド・スリッポンの靴としての完成での高さに改めて驚かされる。まずフィッティングそのものが紐靴より断然ソフトだ。次にエラスティックに合わせて靴の構造がシンプルになるので足に馴染みやすい。そして何より脱ぎ履きが楽なことが挙げられる。現在クレバリーのものと合わせて黒のエラスティックサイドが4足、1週間分に後1足欲しいところだがどのメイカーに頼もうか迷っている。

4.The difference between each toe design

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ラムズホーンのデザイン。基本は全て同じだが、インステップ側のラインが一重か二重か、その付近に丸穴があるかないか、よく見るとどれも少しずつ違っている。メイカー側のディレクションなのか、クローザーのセンスなのか分からないが、履いてしまえば誰にも気づかれることのない細かな違いを敢えて作り分けているのだとすれば心憎い仕掛けだ。尤もまったく同じデザインのものを欲する顧客もいるかも知れない。要は客が何を好むか知っていることが大切ということか。

5.Comparing square last to rounded last

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ジョイント部分から後ろはほぼ同じ2足。元々テリー作の基本ラスト(下)をコピーして前部分のみラウンドに変えたのがキャップトゥ(上)なのでよく似た雰囲気をもつ。製作時に依頼した「スマートラウンド」では木型を削る職人のイメージと注文主のイメージが異なっていた。現在ジョンロブ・パリスのラウンドトゥをイメージにモディファイをお願いしている。思えば1足目の注文時に履いていたクレバリーを基に「この靴よりロングノーズで」と依頼して出来上がったのが写真の基本ラスト(下)だ。イメージに近い靴を作って貰うには具体的な靴の実物を見せて伝えるのも有効な方法だと思う。

6.A transition of shoe trees

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今回のデリバリーで大きく変わったツリー。左から古い順に2足目、9作目、10足目(今回のレイジーマン)となる。2足目の頃は手作業で底面を繰り抜き軽量化と湿気を逃がす工夫があった。その後次第にツリーが重くなり、9足目(中)ではドリルで穴開けしただけの簡素な肉抜きに変更されている。それでもまだ取っ手はヒンジだったが、今回ついに取っ手もねじ込み式の鋲に変わってしまった。ツリーが緩いので(これも問題だが)鋲部分を引き出すのは容易だが、ツリーを入れたまま持ち運ぶには掴む部分が小さすぎるのと、持ってもツリーの踵部分が靴から抜けてしまいそうで厄介だ。今後靴をオーダーするとしても今のツリーは必要ないので付けずに注文することになるだろう。

7.Toe shape

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横から見たつま先の形状。2足目のセミブローグが最も好みだが、今回のレイジーマンもやや厚みがあるものの(イミテーションなのでより低くなるかと思ったが違っていた。)中々良い出来だ。手前のスマートラウンドはスクェアラスト同様低く平らなものをリクエストしている。今までは返りの良さを考えてメタルトゥチップを付けていなかったが付けるようになってつま先の減りがなくなりコバも綺麗に保たれている。今後注文する場合はメタルトゥチップを標準にしてもよさそうだ。

8.Matching shoes & trees

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それぞれの靴にマッチしたツリーを入れたところ。仕事を除けば海外旅行ではスーツや靴など入れずに荷物を最小限にできたら最高なのだが、期間と訪問先によってはジャケットとパンツ、革靴が必要になる。ロンドンなら黒靴を持っていく可能性も高い。そんな時は付属の布製バッグにツリーを入れた靴をそのまま旅行鞄に放り込む。だから軽くて持ち易く、靴の皺をとるジャストフィットのツリーが重要になる。客が望むツリーができないのだとしたら「何のための誂えなのか…」と思わざるを得ない。

9.Shoe heel

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ヒール側から見たツリーが収まった状態。左2足のツリーは木の材質が違うこともあってともかく重い。もし旅行に持参するならば右2足の軽量なタイプと入れ替えて持参することになるだろう。ここで、暫く前にこのブログで紹介したフォスター初のローファーが完成したとの連絡を受けた。ツリーがどのようなものか確認していないが今回デリバリーされたのと同じ形状ではないかと心配だ。余談だが右から2足目のサイドエラスティック、踵部分がオールレザーなので2列の釘を打ち込んではいるが極端に踵が減ってしまった。さて、これもどこに修理をお願いすべきか迷うところだ。

10.Lovely shoes

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分業制の誂え靴と、名職人が1人で全てを仕上げる誂え靴のどちらが良いか話を聞いたことがある。写真の靴はまさしく分業制で作られたものだが、ラストメイキングもクロージングも、そしてボトムメイキングも一流。各パートを担当する職人の長い経験が積み重なって完成した靴は名職人が一人で作る靴に勝るほどのLovely shoesに仕上がっている。分業制も悪くないと思っているが、どうやらその分業制が上手く機能しなくなってきているようだ。

今回のツリー変更が示すように、ロンドンの誂え靴業界ではアウトワーカーと呼ばれる外注職人の高齢化や世代交代、後継者不足の問題が起きている。ロンドンの靴業界は狭く、注文先を変えてもアウトワーカーがクロスしている状況では同じ結果が待ち受けているだろう。ロブ・パリのように1つのメゾンの中で職人を養成し、分業制をとるならばこういった問題は起こるまいが、それだけ多くの職人を抱えることになる。1足の価格がロンドンの誂え靴以上になる(既にそうなっている)のは必然だろう。

では日本の靴屋はどうだろうか。一人で全てをこなす若い職人が着実に出てきているようで、精緻なステッチや丁寧な仕上げ、日々技量を磨き日本らしいきめ細やかさの溢れる靴を見る機会も多い。あとは自分の好みである英国風の靴を作ってくれるところを探すだけだ。ところがこれが中々大変で、日本の靴は端正で隙がないが、英国の靴は色気があって、どこかちょっと隙がある。その独特の雰囲気を上手く表現できるところを探すのが実に大変なのだ。

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コメント

ロンドンのビスポーク業界も大きな転換期に差し掛かっているようですね。
アムリックジャガーという職人は作業を一人で処理しているようですが、
腕前はどうなのでしょうね。
フォスター&サンで働いていたこともあるようですし。

福田洋平さんはもうご覧なられたでしょうか?
基本お一人(2人)で仕事されてるようですし。PO用のラスト見ると、日本人に合うように少し幅広ですが、凄く英国らしい雰囲気もった形だなと思います。

たまさん

コメントを有難うございました。

福田洋平さんの靴は友人がオーダーしたのを見させて頂きましたが英国調の作風に日本人の丁寧さが感じられてとても良かったです。ただ、POですのでフルビスポークは未知ですし、価格面でロンドンはウェストエンド界隈の誂え靴店と比較すると高額という印象があります。

アミーゴさん

コメントを頂き有難うございました。

アムリックジャガーさんはフォスターに居た時に会った事があります。大変器用な職人で、凝ったツリーを作っていたかと思います。

昔の様に年に3回欧州に出向いていた頃ならば、チャレンジしているかもしれませんが、最近は渡欧の回数も気力も昔程ではないので、理想としてはロンドンの靴屋で年1足、日本の靴屋で年1足というのを考えています。

Londonへ毎年数回行けるなら、
アムリックジャガーに依頼してみたいです。

日本でも注文してみたい工房ができたのでしょうか?
そうだとしたら、楽しみですね!

私がフォスターにお願いしたタン色のレイジーマンは次回仮縫いです。上手くいけば管理人様のような黒色もほしいと思っています。私は3ピースのツリーをお願いしましたが、仮縫い時に細かな仕様を聞いてみようと思います。

jubilee39msさん

年の瀬のコメントを有難うございました。

次作は黒のレイジーマンとのこと、フォスターならば質の高い靴を作ってくれるでしょう。靴については、一貫して上質な物なのですが問題はツリーです。トータルで考えてみると毎年値上げして、ツリーがどんどん簡素なものに置き換わっていくのだとしたら質の低下ととらえられてしまうと思います。

年明けのトランクショウ時に注文がストップしているブーツの詳細をにつめようかと思っていますが、そこで一区切り付ける予定です。

アミーゴさん

残念ながら、日本でオーダーしてみたい靴屋は未だ新たには現れていない状況です。以前オーダーしたコージスズキは中々良い靴を作っているようですし、1足だけ、しかも9分仕立てではありますが、山長の靴も大切に履いています。

今後オーダーするならば東京近辺の誂え靴屋がいいのです。ともかく今は焦らずじっくりと探そうと思っています。

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

大変ご無沙汰しておりましたが、管理人様のおかげで無事にピーターにミディアムグレーのフランネルで注文する事が出来ました。ライニングはボルドーです。次回の仮縫が非常に楽しみです。

フォスターのレイジーマン出来上がりも素晴らしく羨ましいです。個人的にレイジーマン大変気に入っており、管理人様の靴を拝見しておりましたら、バーガンディで次回のクレバリーの際、注文してみたくなりました。

hiroさん

開けましておめでとうございます。
こちらこそ、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

ライニングをボルドーにしてのフランネルスーツ、出来上がりましたら着心地や感想等お教え頂ければ幸いです。きっと素敵な1着に仕上がることと私も楽しみに待たせて頂きます。

また靴の方もお褒め頂き有難う御座います。レイジーマンの履き心地はとても良いものですので、ぜひ今回のフランネルスーツに合わせて誂え、コーディネイトを楽しまれることをお勧めいたします。

はじめましてNNと申します。
いつもすばらしいコレクションにため息がでます。
やはり、フォスターやクレバリーは雰囲気が日本の靴屋には出せない物がありますね。テリーのラストはやはり別格なのでしょうか??
すばらしいブログ今後ともよろしくお願いします。

NNさん

初めまして、当ブログへのご訪問並びにコメントを頂き有難うございました。

テリーのラストの凄さは同じようにコピーしたはずのラウンドやカジュアル用の新ラストと比較するとよく分かるのですが、独特の色気があります。

これからもテリーが作ったラストで作りたいと思う靴は幾つもありますのでいつかご紹介できればと思います。

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