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2011年12月18日 (日)

Christmas Gift from London

12月も下旬、相変わらずユーロの経済不安が収まらず、米国同様欧州でも円高が一段と進行している。ところが日本国内の輸入品は一向に値段を下げる気配がない。それならばと最近は個人輸入に勤しんでいるところだが、何と言っても便利なのがアメリカのオンラインショッピング。総じてヨーロッパのブランド〈英国はかなり便利だが〉よりも使い勝手が良く、デリバリーも安心できる。ダブルRLやラグビー、ブルックスブラザーズなどアメリカの知人経由のものも含めこの2か月でかなりの量を個人輸入した。勿論安く物が買えるということが大きな理由なのだが、そもそもジム通いでボディが締った為、緩くなった衣料品をスリムなものに買い換えるという目的が背景にある。

今月はクリスマスギフトがあちこちで配達されているようで、我が家にもプレゼントならぬ通関手続書が届いた。中身を見るとロンドンから関税付きの荷物が届いているとのこと。送り主はジャーミンストリート83番地、フォスター&サンだ。通関に必要な書類や料金の確認、電話でのやりとりなど忙しい最中の煩わしさに辟易したが、ようやく配達されたのが4日前。ボクシング・デイには早いがクリスマスの贈り物を早速開けてみると中身はエラスティックサイド・スリッポンの「レイジーマン」だった。今回は届いたばかりのフォスター&サン製の靴を早速紹介しようと思う。

1.Fine black box calf  "Lazy-man"

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ここで紹介するレイジーマンは引退したテリームーア氏のラストから作られたもの。今ではラウンドにカジュアルと3つのラストを用意して貰っているがやはり最初のラストが一番馴染みが良い。勿論1足目から完璧だった訳ではなく、2足目にかけて木型の修正をお願いしてはいるが、最初から美しさと履きやすさを兼ね備えた木型をテリーが完成させていたことは大きい。後で比較写真が出ているが、3足目の同じエラスティックサイドプレーントゥと比べるとつま先がやや幅広になっているようだ。

2.Inside of the shoe

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靴の内側を真横から見たところ。ラストだけでなく、巧みなパターン取りや乱れのないステッチ、熟練したボトムメイカーの技など全てが高次元で完成している。端正な中にもある種の色気を感じさせる仕上がりがは英国の誂え靴ならでは。この感じは日本の靴メイカーが中々出せない部分かもしれない。また、べヴェルドウェイストの美しさは毎回担当している底付職人が今回も担当しているようで、素晴らしい仕上がりだ。ところでクレバリーと比べるとヒールリフトが小振りなのがフォスター。男らしくヒールのしっかりとした靴が好みのテリームーア氏とはやや方向の違う靴なのかもしれない。

3.Outside of the shoe

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靴の外側を横から見たところ。外踝の下に骨が出ている部分があるので外側の履き口ラインを特に下げるよう採寸時に頼んでいる。元々ビスポークシューズは外側が低くなるように作られているが、特別にお願いしたこともあってパターンに組み込まれているのだろうか、フォスターでは骨が当たって痛い思いをしたという経験はあまりない。特にこの靴の場合はサイド・エラスティックということでフィッティングも柔らかいので全く気になる部分もなく快適な履き心地だった。

4.Lamb's horn design on toe

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ラムズホーンの定番デザインがつま先に散りばめられている。ところがよく見ると今まで頼んだものとはどれも少しずつ異なっている。履いている本人でさえ近づいて比較してみなければ分からない差異ではあるが、1足ごとに微妙に異なるところが手作りの誂え靴の真骨頂かもしれない。それにしてもイミテーションというのが信じられないほど精緻なWウィングのステッチが目を引くつま先部分。熟練したクローザーの技が光っている。

5.Imitation  shoelace

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内羽根がぴたりと閉じた様子を表すツィンステッチがVオープンのトップからインステップにかけて縦に走っている。その上を通る5本の革紐。実際のレースステイ同様のバランスでこのイミテーションシューレースが縫い込まれているようだ。見た目に不自然さがなく周囲に溶け込んでいるように感じるのもその辺りが理由かもしれない。アイレットがフレアータイプ(下に向かうにつれて間隔が広がるものを指す)になっているのはフルブローグによく見られるスタイル。尤もシンプルなパンチドキャップトゥでも見られなくはないので要はバランスの問題かもしれない。

6.サイドガセット部分

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エラスティックのゴム板にカバーとして細長い四角革(ガセット)が縫い合わされたサイド部分。エラスティックのゴム板がむき出しという仕様もあるが、カバー付きの方が紐靴に近い雰囲気が出る。このあたりは注文時に細かなリクエストをしたが、4枚に分かれたガセットやその前後を走るブローギングライン。プレーンなエラスティックサイドシューズに比べて随分と手間のかかるアッパーになったようだ。ジョンロブ・パリのビスポークがフルブローグやセミブローグの価格を高めに設定しているのも分かる気がする。勿論フォスターでは同じ値段で作ってくれるはずだ。

7.Imitation heel counter

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つま先同様イミテーションのヒールカウンタ部分。ブローギングラインのみで、革が重ねられていないヒールは柔らかくソフトに踵を包む。エラスティックの引張りでは革を縫い合わせたストロングなフルブローグの革がもつ反発に負けてしまうのだろう、イミテーションがデファクト・スタンダードになっている。フルブローグのように見えてプレーンなエラスティックサイドと同じ履き心地はスーツスタイルに重宝する。勿論脱ぎ履きが容易という日本の習慣にもマッチするこのレイジーマンは名靴中の名靴、クレバリーと合わせて2足持っているのが何よりの証しだ。

8.Outsole

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黒の靴の場合はフィッシュテールフィニッシュの半カラス仕上げが通常のようで、これは全ての黒靴に当てはまる。ファンシーウィールで筋を付けその上にワックスを塗り込み仕上げたウェイスト部分。歩いている靴の裏を見る時、この部分が黒だとスーツ姿としてはバランスが良い。サンケンメタルトゥチップとクォーター・ラバーティップはフィリップスペシャルのもの。驚異的な耐久性で有名なこのフィリップ・スペシャル、何時でもあるという訳ではないらしい。

9.Comparing formar elastic side shoe to "Lazy-man"

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3足目のエラスティックサイド(下)と最新のイミテーションフルブローグ”レイジーマン”(上)。下の靴はヘンリーマックスウェルネームだが当時はライニングを指定してもブランドマークが印刷されたインソックがないと刻印を押したものを貼っていた。ただし全く目立たない。全体のパターンはほぼ同じだが、3足目の方がつま先がより細くなっている。今回の紫色のライニングはとても発色が綺麗なので今後の注文は全て「同じパープルのライニングで。」と頼むのも良さそうだ。

10.Comparing the previous shoe to the latest shoe

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こちらは同じ紫のライニングで仕上げた2足。ラストはテリーの作の最新作(下)とデータを基に新たに作り上げたラウンドのラストで作った前回作(上)。フォスターネームとマックスウェルネームの違いはあるが細かなバランスはほぼ共通している。ラウンドの方はつま先をもう一段細くポインティに仕上げて欲しい旨を伝えてあるが次回作となるブーツのクロージングに問題があり改善は進んでいない。

円高のお陰で海外の誂え品もだいぶ身近になってきたが、フォスター&サンの現在の価格は2550£、このところ毎年のように値上げしている。これだけの円高分を相殺しても以前より高いのだから驚く。靴の仕上がりは素晴らしいが、今回シューツリーの取っ手がハンドカーヴによるヒンジから金具だけの簡素なものになり、そのツリーも手でくり抜き軽量化を図っていたものがドリルで穴を開けただけの重いものに変わっていた。

顧客が増えてきたら値上げをするのか、あるいはツリーは簡素化しているのかと思われるのは本意ではないだろう。だが、日本でのトランクショウを続けるには一見の客が顧客に変わり長く付き合っていきたいと思える関係作りが大切なはず。日本に欧州の誂え品が根付くためにはどうあるべきか。どのメイカーも答えをもたずに取り組み、大半は尻切れトンボのように終わっている現実があることを忘れてはいけないと思う。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

 久しぶりに書き込ませていただきます。今回も靴の出来がすばらしいですね。管理人さんの発注する靴は、クラシックな雰囲気と独自の色気が混在していて、惚れ惚れします。靴好きのビスポークのベンチマークになっています。

フォスターはすばらしいけれど、どんどん毎年値上げされるといつかロブと変わらぬ価格になりそうですね。

フォスターは顧客に対しディスカウントはしないけれど、クレバリーは2足目からは少しディスカウントしてくれるということを聞きました。日本のビスポークでは同じラストを使うケースに限り、ラスト作製代金を2足目以降はとらないところが多いですがイギリスではどうなんでしょう。

またGGはマイラストを売ってくれると聞いています。、フォスターやクレバリーはマイラストを売ってくれたり、自分で保管できるのでしょうか。

ご存知の答えられる範囲で結構です。教えてください。

 

北海道さん

出来たての靴へのコメントを有難うございます。

ビスポークをされる方の参考に少しでもなれば幸いです。ブログを続けていて良かったと思える嬉しい一言を有難うございました。

さて、フォスターの件ですが靴の出来はいつも通りですが、今回は昔のツリーと差し替えて写真を撮影しています。

近いうちにツリーの方もご紹介できるかと思いますが、持ちにくく重いもので、何のために2ピースでヒンジタイプをとお願いしているのか分かって貰えないようです。

旅行鞄に入れて旅をする時なるべく軽いものを、そして靴からツリーを出しやすいものが欲しいのです。ところが今回は靴に対して緩くピタリと沿っていないばかりかツリーの取っ手が金属の鋲だけの抜きにくい物でしかも重たく正直失望しました。

以前ビスポークと手製のシューツリーはセットで買う方が望ましいと書きましたが、今回デリバリーされたようなツリーならば必要ありません。フォスターでツリーを作る時はどのようなものを作るのか確認し、必要なければオーダーしない方が良いと思います。

クレバリーのツリーは悪く言えば大雑把な作りですがそれでもヒンジツリーの先端を金属に置き換えるようなことは今まで一度もありませんでした。靴の代わりにツリーを手抜きしているのだとしたら今後の注文も考えようと思います。

イギリスではラストの製作代は最初のオーダーに含まれています。2足目以降少し安かったかどうかは随分昔のことなので覚えていませんが、確か同じだったような記憶があります。尤もクレバリーの最初の1足目は850£の時代でしたので(今では考えられませんが…)。

フォスターがマイラストを売ってくれるという話は聞いたことがないので分かりませんが、ラストだけでなく今まで作った靴のパターンが全て一緒に保管されている(ロブパリなど)のではないかと思います。そして肝心なのはこのパターンで、いくらラストが良くてもそれに乗せるパターンの出来栄えが靴の顔を決めるのでラストはパターンと一緒の店にあることが望ましいのではないかと個人的には思います。

ご返答ありがとうございます。

美しい靴の秘密はラスト+パターンですか。勉強になりました。

管理人さんのオーダー靴はフォスターもクレバリーも毎回の出来映えがすばらしいので今後のビスポーク注文の参考にさせていただきます。

北海道さん

靴の出来が素晴らしいのは、店のディレクションが良いためで、「いい靴を作ろう」という気持ちになってくれることが不可欠かと思います。

今後ともペースはゆっくりですが出来上がった誂え靴は順次アップして参りますのでお時間がございましたらお立ち寄り頂きご意見など頂戴できれば幸いです。

管理人さん、紀です。先日は取り急ぎの書き込みで失礼いたしました。

毎年の様に価格が上がるのは仕方が無いですね。イギリスでの人件費も部材費も上がり続けているので仕方がないと思います。パリのロブもジリジリと上がってきていますし、どこも同じかと思います。クレバリーの新規客の価格も確実にあがっていますしね。

ツリーですが、もう手造りでツリーを作る職人さんがいなくなってしまったんです。というか、いるのですが、ロンドンのロブに引きぬかれてしまったので、ロブ以外では以前のようなツリーが作れなくなってしまいました。最近のツリーは味気が無くて重いですが、木型からレーザーでコピーをするので、完璧なラステッドツリーになっているのがせめてもの救いです。

ディスカウントに関しては、やはり経営者に直接やり取りするのと、雇われの店員さんに交渉するのとではやはり権限等の問題で難しいのでしょう。トップに合って注文をすれば魚心あれば水心かと思います。やはりビスポークはグラスゴーさんのような経営者と話し合いながら注文した方が有意義なのかと思います。

紀さん

色々な情報を有難うございました。

価格の上昇の件、確かにどこも値上がりをしているようですね。ただ上がり方には各メゾンによって違いがあるようです。

シューツリーの職人さんの引き抜きで以前のものが作れなくなってきているということですと、今後はフォスターではツリーをオーダーしないことにします。フォスターで10足目完成しましたので毎日履いたとしても昔のツリーで間に合いますし、昔のものの方がぴたりとフィットするので。

今回デリバリーされたものもラステッドツリーかもしれませんがサイズは全然合っていません。何よりただの鋲ではなくせめてリングの付いた取っ手か踵部分を小高く作って指を入れる穴を開ける(ロブパリ既成のスタンダードツリーや旧ボノーラのような感じ)などの工夫が欲しいところです。

価格のことは別にしても、オーダーの仕様やデリバリーその他色々な点で決定権を持った職人(経営者)と話を煮詰める(ビースポークン)ことがポイントであることは間違いのないところだと思います。

ツリー合わなかったのですか。それはいけませんね。それでしたらおやめになられた方が良さそうですね。

経営に関わっていないスタッフとビスポークするのはいろいろな意味で難しいと思います。例えば仕様違いが有った場合でもその場での対応が出来ないので、お客さんの方はイライラしてしまうし、事が穏便に済まない事になる事が多いと思います。ロブパリなんかはもう論外ですね。ロブセントジェームスはまだジョナサン・ハンター・ロブがいる時交渉すれば話しが早いです。ツリーとシューバッグ以外は欲しく無いですが(笑)

上ですが、紀です。

紀さん

そうですね、まずは今後注文するとしても少なくともツリーはオーダーしないようにと考えています。尤も以前のような真のハンドメイドツリーが復活するのならば別ですが。

それから昔のようにロンドンの本店でオーダー、本店で受け取りという基本スタイルに戻そうと思います。その方が経営者と話ができる可能性が高いようですので…。

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