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2011年9月12日 (月)

Bespoke Casual

毎年9月初旬はクレバリーとファーラン&ハーヴィーのトランクショウがある。参加するようになってから10年以上経つが、今まで1回も欠かさず、年2回必ず会いに都心まで出向き続けてきた。会っている時間は僅か数時間のことだが、年月と回数を重ねる中で少しずつ「客と店のいい関係」が築かれてきてたことは間違いない。昔は細かな注文を出していたが、今は好みを分かったのか、細かな注文をしなくても期待以上のものが出来上がる。

90年代終わりはG.グラスゴーとP.ハーヴィーのコンビが定番だったが、20周年を記念してJ.カネーラが一緒に最後の来日をしたことが懐かしい。若手職人のアンドリュー・クックが来たことやキースの急逝でピーターが来なかったこともあった。最近ではT.レッパネン(クレバリーの職人)が2回に1回来日するようになったり、グラスゴー・ジュニアが来日したりと職人の交代も進んでいる。しかし世代交代を迎えようと彼らとの関係は着実に醸成している。今回はそのことを改めて教えてくれたクレバリー最新のビスポークカジュアル、アリゲータのローファーを紹介してみたい。

1.Bespoke Casual(誂えのスリッポン)

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今回はシューバッグ(写真の靴の下にある袋)の作りや豪華なブローシャー(パンフレット)を一緒に紹介してみた。こうした付属物に手間暇をかけられるのは注文靴屋としてのクレバリーが順調であるということなのだろう。ビバリーヒルズにビスポークギャラリーを構えたり、アジアの都市にトランクショウを拡大したりと忙しいようだ。肝心の靴の仕上がりも1足目から美しい仕上がりのものが多く、隔世の感がある。

2.Half-band loafer

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ジョンロブ・パリのビスポークシューバッグを思わせるバーガンディ色の靴袋はアルカンタラ(人工スェード)のような風合いのものでスナップボタンが付けられている。高級感があるが個人的には巾着型の方が持ち運びするときに靴が出てこないので好みではある。ただこのバッグ、何色か作っているようで靴の色に合わせて黒や青のものを用意していた。因みに前回は黒の袋だった。

3.マットアリゲータ

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今回は希望どおりマットな質感で仕上げてきたローファー。青系や紫系のコットンパンツからグレー系のウールパンツ、勿論ネイビー系のドレスパンツまで合わせ易い色目にもかかわらず、ちょっとない色出しの1足になった。カーフ素材では出せない色調と質感、ここにアリゲータ素材の魅力がある。サンプルでは茶色のようにも見えたが、完成品を見るとあずき色(Reddish Brown)に近い。

4.竹斑

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エプロン部分からフロント両サイドに広がる綺麗な竹斑紋様。この竹斑と呼ばれる部分はワニ革1枚から取れる部分が限られているため、1足作るのに2~3枚使用するとのこと。素材1枚ごとの微妙な色の違いが仕上がりにパティーヌの様な効果を与えるだけでなく、斑という字はまだらと読むように、鱗一つ一つの中が微妙なまだら紋様になっている。こうしたことがアリゲータという素材に他の素材に見られない特別な個性を与えている。

5.スケールのマッチング

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既成靴ではウェストンのクロコダイルローファーが左右のスケール(竹斑の紋様)を合わせるので有名だが、クレバリーではエプロン部分とフロント両サイドの紋様をぴたりと合わせている。というより恐らくは、もともと1ピースのワニ革をフロント部分とエプロン部分に裁断し、裏打ちを行った後改めて縫い合わせて仕上げているのだろう。ここが誂え靴ならではの手間暇の掛け方の違い、一緒に並べるとウェストンのクロコダイル靴が後れを取っているように見えるのもいたしかたないところか。

6.靴のインサイド・アウトサイド

A

べヴェルドウェイストのアーチ部分はインサイド側から見るとかなり強烈だがアウトサイドから見るとそれほどでもない。ソールの厚さはクォーターベア(1/4インチより薄いもの)のためトゥスプリングはあまりない。ローファーの中ではシンプルなデザインのため、カーフ素材ならばアンティーキングを施してアクセントを入れるかアリゲータやピッグスキン(サンプルがそうだった)、スェードなど素材に凝るのがよさそうだ。

7.ソール

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今回もナチュラルで仕上げてきたソール。たまには茶色のフィッシュテール仕上げでと思いつつ、前回伝えるのを忘れてしまったのでいたしかたない。もっとも、細かな仕様を伝えても出来上がりが違うこともあるので、つま先に2列の釘で踵はクォーター・ラバーチップをスタンダードにしている。フィドルウェストでも頼もうかと思うこともあるのだが、結局はマイ・スタンダードに落ち着いてしまう。

8.ヒール部分

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クレバリーのヒールリフトは他のメイカーより大きい。最も小さいのが日本のコージ・スズキでジョンロブ・パリもかなり小さい。反対にコルテはクレバリー同様大きめである。このあたりはメイカーの考え方なのだろうが、個人的には大きめの方が疲れないような気がする。斑の小さな部分が踵に来ているが、つま先同様複雑な曲線が入り混じる踵故、スケールの小さな革の方がよいかもしれない。

9.比較(その1)

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前回初めてデリバリーされたアリゲータのローファーと比較してみる。仕上がりは殆ど変わらず、今回デリバリーされた靴(下)の方がつま先のシェイプがよりスクェアなところが違うくらいだろうか。ただ履き心地についてはフルサドル(上)からハーフサドル(下)に変わったためより柔らかな履き心地を味わえる。それでいて踵が逃げることなく足の動きについてくるのはソールの厚さや履き口、月型芯など様々な工夫がなされているのだろう。

10.比較(その2)

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アリゲータ素材のスリッポンを比較してみた。右からオーダーの古い順に並べたが、ロングヴァンプのローファーが欲しいことを伝えているので、左2足のように最近は全長を長めに仕上げてくる。もちろん既成のアシュレイ(8-1/2E)よりは短いのだが、出るところと絞るところがはっきりとしているので全体的にグラマラスな印象があり大きく見える。

今回のトランクショウでは以前よりもアリゲータ素材の色目が増え、中でもマットなものが目に付いた。アリゲータを注文する客が増えているのと、選ぶ際光沢のあるものよりマットな素材の方が合わせやすく、顧客の要望が多いからなのかもしれない。カジュアルラストの次作はタッセルスリッポンの予定だが、今回新たに入ったブラックとタンのマット素材を見てどちらを選ぶか迷った。結局はカジュアルということでタンにしたが、どちらも上質なミシシッピアリゲータ素材ということで選択肢が増えるのは大いに結構、こんなところにも「客と店のいい関係」が少しばかり窺える。

これから秋の終わりまで、天気のいい週末はアリゲータのスリッポンを履いてウィンドウショッピングにでも出かけたい。夏の暑さも和らぎ秋風がそよぐ陽気には、カーフにはない色遣いと素材の軽快感がマッチする。インビジブルソックスにデニムやカーゴパンツと合わせ、ネクタイはせずに背抜きのジャケットを羽織って出かける。スニーカーとまではいかないが足取りも一層軽やかになりそうな気がする。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

素敵な靴の完成、おめでとう御座います。
クレバリー独特のスクエアトゥはいつ見ても惚れ惚れしてしまいます。他のメイカーに"クレバリーのように"とオーダーしてもこの雰囲気は恐らく出せないのでしょうね。

洗練の極み…老舗の風格が漂う逸品ですね!何よりも日本の受注会を管理人様が永年支持されてこられた熱意が英国の職人さんと日本の顧客を繋ぐ原動力となっているのではないですか?…恩恵を受けられた日本の顧客の方々も多いはずです! 若手職人の台頭が持て囃される英国靴ですが…老舗の真髄を見せて頂き、誠に勉強になりました!

シロ(adagietto72)さん

コメントを有難うございます。

確かにシロさんの仰るように、同じスクェアでもそれぞれのメゾンによって違う雰囲気で仕上がるのはラストの違いやトゥパフの形状の違いなのでしょうか。

今回友人はラウンドトゥのローファー(別木型)での初めての仮縫いでしたが、そちらも中々良い出来でした。今やクレバリーはスクェアだけでなくラウンドもかなり上手くなっています。日本人の好みと合わせ方を掴んできているのかもしれません。

愛用者様

コメントを有難うございます。

最初の5年くらいはロンドンでオーダー、日本で再会というパターンが多かったので実際はかなり会っていたことになります。

オーダーミスや仕上がりの不備などトラブルもありましたが、ヒューマンエラーは起こりうること。その先にものを誂える至福があると実感しています。愛用者様が若手の職人を応援されるお気持ちと近い部分があるかもしれません。

シューメイカーもテイラーも職人達が世代交代を迎えていますが、客である私もこうした至福の関係を息子の代に引き継げたらと考えているところです。

管理人様

 ご無沙汰しております。
 今回も素晴らしい仕上がりです。伺った時に管理人様の靴と思える物をあり、惚れ惚れしておりました。

 今回のトランクショウは、初めてのアリゲータの仮縫でした。さすがに、きれいな仕上がりで問題なく仮縫を終えました。アリゲータの魅力にはまってしまい、次回もお願いしてしまいました。管理人様所有のサイドエラスティックのアリゲータです。

 また、ファーラン&ハーヴィーもピーター氏と出会えオーダー出来ました。管理人様は、今回完成品の受取と次の注文でしたか?
 今後も管理人様からいろいろ教えていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

hiroさん

ご無沙汰しておりましたが、さっそくの暖かいコメントを有難うございます。

まずはhiroさんにとって初めてのアリゲータ靴の仮縫が問題なくフィッティングを終えられたとのこと、おめでとうございます。カーフの素材よりぐっと値段の張る靴です。色々と気にしてしまうのは当然、店もまた、より慎重に作っていることと思います。

ところでhiroさんは1足目のアリゲータをどのようなタイプと色目で注文されたのでしょうか、また、今回次のサイドエラスティックもアリゲータで注文されたとのこと、こちらもどんな仕様で注文されたのか興味があります。お時間がある時にお教え頂ければと思います。

アリゲータの魅力にはまっているとのお話に、同好の士に会えた嬉しさを感じました。それにピーター氏とのアポもとれたとのことでスーツについても情報交換が出来そうです。ピーターにはhiroさんのことをメールで伝えておきます。

さて、当方はスーツを受け取って次の注文をしてきました。次回は3ピースにしました。ホーランド&シェリーのブラックストライプ(紡毛系)スーパー140's(280mg)と中々いい生地です。比較的軽めなのでラペルドヴェスト〈英国風ではなく米国のラルフローレン風〉付きのシングルピークドラペルにしました。

またお時間がありましたら情報交換をできたらと思います。それから次回2月のトランクショウではご一緒できるといいですね。

管理人様

こちらこそ暖かいコメントをいただきありがとうございます。

今回仮縫いのクレバリーですが、プレイントゥバルモラルでカラーはダークブラウンです。
管理人様の3足目と同じになります。
少しだけ写真を撮ってきましたので、ご覧いただけると幸いです。
また、今回オーダーしましたサイドエラスティックは管理人様1足目と同じで、カラーはミディアムブラウンを選んでおります。
管理人様7足目のローファーと同じカラーかと思います。
今回のオーダーでは、カラーを選ぶ際にマットアリゲータにも惹かれて、この色を選ぶまでにかなり迷いました。
レッパネンさんには、2足同時に作る事を頻りに勧められました。
もちろんそんな事は出来ませんでしたが・・・。

ファーラン&ハービーは、スーツでシングル3Bの段返りでノッチドラペルです。
生地については、ミディアムグレーのフランネルですが、帰国後バンチとライニングの見本を送ってもらう事になってますので、生地についてはこれから選択となります。
見本到着後、生地を選ぶ際にアドバイスいただければと思います。
また、ピーターさんへの連絡大変助かります。

次回2月のトランクショーでは、ぜひご一緒させていただければと思います。

hiroさん

写真を拝見しました。プレーントゥにすることでつま先のアリゲータ素材のスケールが途切れることなく徐々に大きくなっていてとても綺麗な仕上がりだと思います。

またつま先の形状もクレバリーらしいスクェアトゥでプレーントゥバルモラルにぴたりと合っています。私も大好きで誂えたデザインですので余計に贔屓してしまいそうです。素晴らしいものを見させていただきました。ことのほか半年後の納品が楽しみではないでしょうか。

F&Hではフランネルの3ピースを注文されたとのこと。私もフランネルで作って貰いましたが実にオーソドックスで飽きのこない1着です。生地とライニングの件、何かありましたらご連絡ください。

ピーターにはすでにメールを入れていますので、次回2着目を作られるときは来日前に「○○の生地見本が欲しい」と具体的に言うと用意しておいてくれます。今回黒のストライプをお願いしたところ10種類ほど持参してきてくれました。

管理人様

 クレバリーは納品がとても待遠しいです。
 かなりの期待をしております。

 ピーターさんへの連絡ありがとうございました。次回注文の際は、事前に連絡をして生地を持参していただこうと思います。
 自分のコメントが悪くて申し訳なかったのですが、フランネルは3ピースではなく、ジャケット&トラウザーズの2ピースです。フランネルでしたので、軽い方が良いと思い2ピースにしてしまいました。
 生地とライニングの選択の際はぜひよろしくお願いします。

hiroさん

次回のクレバリートランクショウは2月ですので約5か月間、完成した靴にどんな服を合わせようか考えるのも楽しいと思います。

F&Hのスーツは2ピースとのこと、こちらこそ勝手に3ピースと思い込んでしまいました。申し訳ありません。私もフランネルの2ピースを所有しているので好みが近いようです。

フランネルの生地はお好みがあるかと思いますが、合わせるライニングはブルー、ボルドー、パープル、グリーンなど、意外性のあるものを選択するのも楽しいと思います。

ピーターはストライプスーツの時は大抵ストライプの色目に合わせてシルバーかグレー、ベージュなどを薦めますが、ソリッドなスーツではふとした仕草でサイドベンツの端から裏地が覗いた時にオッと思わせる仕掛けがあってもよいのではないでしょうか。

およそ紳士的ではないのかもしれませんが、裏地に凝るというのも時には楽しいと思います。ボルドーのライニングに合わせたバーガンディの靴、グリーンのライニングに合わせたソックスの選択など着こなしにちょっとしたアイデァをくれるからです。

此方のオールドスタイルと言われる ピッキングステッチのモカ縫いは通常のモカとどう異なるんでしょうか?
前作のクレバリーのアリゲーターのローファーもモカも此方と同じモカ縫いなんですか?
このありそうで中々無い小豆色のマットアリゲーターとクレバリーシェイプ本当に美しいですね。

敦也様

前作とこの小豆色のローファーは同じステッチが施されていますがその後はロールドステッチ(いわゆる摘みモカでしょうか)ですしその後のローファーはステッチが違っていますので、職人さんが違うのでしょう。

ライトアングルモカステッチとも違う雰囲気のピックステッチですが、フィッターのティームに言わせると難しくて大変な作業らしい昔のやり方らしいです。

アリゲーターの色目は本当に素晴らしく、こういったエキゾチックレザーのストックが多いカミーユフォルネのサンプルを見ても出てきませんのでごく少数のみ存在したのかなとも思っています。

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