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2011年5月31日 (火)

Casual Last(ローファーの木型)

台風の影響で雨の終末となった5月最後の日曜日、震災の影響で延期されていたフォスター&サンのトランクショウに友人とともに出向いた。いつもならば主催者に敬意を表してスーツとはいかないまでもジャケットスタイルにフォスターの靴を履いて訪問するところだが、折からの強い雨、スニーカーやマウンテンブーツ、サンダルウッド素材の紐靴など皆防水性の高い靴を履き、カジュアルな装いでの参加となった。

既にフォスターにはベースとなるスクェアトゥをもとにラウンドトゥの木型で1足作って貰ったが、前回のトランクショウでは新たなカジュアルラストの削り出しとローファーの製作を依頼していた。そこで今回はフォスター渾身の1足目、初のローファーの仮縫いの様子を紹介しようと思う

1.クレバリーのカジュアルとの比較(その1)

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まず、フォスターの方が短いと思われるかもしれないが、トゥが反り返った状態での撮影によるものでありほぼ同じ長さと考えていただきたい。どちらもフルサドルローファーではあるが、エプロン部分の長さを比べるとすぐ分かるように、フォスターの方がロングヴァンプになっている。

2.クレバリーのカジュアルとの比較(その2)

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上から見るとほぼ同じ長さであることが見て取れる。むしろ底付けされた後はアッパーの反りがある程度修正されるフォスターの方が長くなるかもしれない。ヴァンプの長さのバランスはフォスターの担当に聞いたところ特に長いわけでもなく通常だそうだ。フルサドル部分は足の甲部分かなり上から踵あたりまでカーブを描き、足をホールドするようデザインされている。

3.つま先部分の比較

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ジョイント部分を見るとクレバリーよりもフォスターの方がナローに見えるが、ジョイントから先が長い為、つま先に向うラインが緩やかに収束するので全体的に細長く見えるのだろう。このあたりは両者ともベースとなる最初のラストの影響を受けており、短めのクレバリー対長めのフォスターといった感じか。どちらも美しいローファーを作ってくれていることに感謝したい。

4.ピックステッチのエプロンとスキンステッチのトゥ

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エプロン部分のピックステッチは職人がオールドスタイルと呼ぶアッパー側から縫い上げたものを今回もリクエストした。ノルウェジアンの短靴と同様、エプロン部分のステッチが一番上手いクローザーに出しているとのことで今回も素晴らしい仕上げだ。もともとサンプルのエプロン部分はロールドステッチ(つまみモカ)だったが、ピックステッチに変更したついでに手縫いの魅力を引き出そうと考えつま先にスキンステッチも入れた。

5.テンポラリーヒールのつかない仮縫い靴

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以前アップしたRound toeでも紹介したが、フォスターでは仮縫い時にテンポラリーのヒールをつけずに、この靴を履いてヒールの高さに相当する段差部分に足を置きフィッティングの様子を見る。まず靴を履くのだが、バンド(フルサドルの意)部分がタイトなこともあり、中々足が入らない。もっとも一度足を入れてしまえば中は快適なフィット感を味わえる。脱ぎ履きをどうし易くするか、完成を待って再度報告したい。

6.ハンドソーンウェルテッドのインソール。

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これも以前書いたがフォスターではローファーのようなカジュアルシューズは基本的にスクェアウェイスト(ベヴェルではない)だそうだ。ソールは今までの1/4inch(クォーター)より薄いものになるだろうとのこと。軽快な折り返しのローファーを期待している。ところで、仮縫い靴によくみられるペンのようなもので書かれた斜めの線は何を意味しているのだろうか。今度の仮縫い時に聞いてみようと思う。

7.アウトサイド

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サドル部分はヴァンプから両サイドへ向って幅が広くなっている。このあたりのデザインはかなり大胆だが、スクェアウェイストのソールが付くとヒールリフトもやや大ぶりなものになるはずで、ウェルバランスの靴が出来上がるものと期待している。つま先はテリーが手がけたスクェアラストのようにエッジやサイドウォールが立たないもの。角のないシェイプがテリームーア氏のラストメイキングということで、その神髄は着実に若い職人に受け継がれているようだ。

8.シームレスヒール

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ヒールはシームレスに見えるがよく見るとアッパー同士を踵部分で縫い合わせるのではなくインサイドに振って、スキンステッチで仕上げている。エプロンダービーやノルウェジアンで依頼済みだが、こうした手縫いの様々な技術を誂え靴に盛り込むことで優れた職人の技術が次世代に受け継がれていけばという思いもある。

9.インサイドクォーター

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スキンステッチの走るインサイドクォーターはトゥと対でお願いした部分。ボノーラの手縫いローファーがアウトサイドにシームを入れていたのを見て、反対のインサイドに、かつ英国らしいスキンステッチでと我儘を言わせてもらった箇所だ。ところで、今回の仮縫いは足入れ同様、足を抜くのも結構時間がかかる。ともかくヒールカップ部分が踵を強力にホールドしているのだ。スリッポンとしての着脱の容易さと踵の抜けを防ぐという相反する2つの課題をどう折り合わせるのか、完成品を履き込んで答えを探っていきたい。

10.仮縫い靴のインサイドビュー

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写真で見ても分かるように仮縫い段階でつま先が結構反り返っている。十分なトゥスプリングが期待できそうだ。先述したインサイド部分のスキンステッチは踵のRを出すためだろうか、弧を描いて縫い合わされている。エプロン部分のステッチは生成り色で、ボトミング後はステッチの色が変色しない程度にアンティーキングをお願いした。「ソールのコバは色を濃くせず、ウェルトの出し縫いはエプロン部分のステッチに合わせた色目で…」と思っているが、そこまで細かくお願いしなかった。後は全てお任せしてもよさそうだ。

クレバリーで注文したローファーはフィッティングの時から軽く快適な履き心地を感じさせるもので、今仕上げ中のハーフサドルなどは頼りないとさえ感じるフィッティングだ。一方のフォスターはローファー(怠け者)と言えどもルーズではなく靴のフィッティングを重視した仕上げを追求しているようで、ローファーに対するメイカーの考え方の違いを感じる。だが、どちらもメイカーとして培った経験は豊富で、納得できる靴を提供してくれる。これから先、どちらにどんなスタイルのスリッポンをオーダーしていこうか迷うのも贅沢な悩みだ。

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コメント

管理人様

いつも素晴らしい情報ありがとうございます。
今回のローファーも素晴らしいですね。
仮縫状態とは思えぬフォルムです。
管理人様のサイトを拝見しており、ローファーに非常に興味がありますので、近いうちにクレバリーでスエードでお願いしようと思っております。
その時は、アドバイス等よろしくお願い致します。

初めてコメントさせていただきます。
私も日曜日の雨の中フォスターの仮縫いにお邪魔しました。
貴殿の素敵なローファーも見させていただきました。完成が楽しみですね。

管理人様

こちらのヒールには驚きました・・
そしてそこから派生する曲線美・・
参考にさせていただきます!

hiroさん

コメントを有難うございます。

hiroさんもローファーに興味があおりとのことですので、次回9月のクレバリートランクショウ前にはぜひ情報交換をしましょう。

スェードのローファーならばさぞ柔らかく履き心地の良いロングヴァンプの1足が出来上がるのではないかと想像しています。

Dさん

当ブログへの訪問並びにコメントを頂き有難う御座います。これからもお時間がございましたら時々お立ち寄りいただけますと幸いです。

さて、同じ日曜日のトランクショウに参加されたとのこと。注文された靴の仮縫いは如何だったでしょうか。

当方は初めてのローファーの仮縫いでしたがフォスターの考えるスリッポンのフィッティングは既成は勿論の事、クレバリーとは色々な点で異なっていてとても勉強になりました。

camileさん

初めまして、当ブログへの訪問並びにコメントを有難うございました。これからもお時間がある時にお立ち寄りいただければ幸いです。

さて、camileさんのブログも訪問させていただきましたが、仮縫い状態の2足のフォスターどちらも素敵です。特にコンビのバルモラルはフォーマルっぽいのですがデニムにも合っていて「なるほど」と思いました。

紐靴を中心に注文されているようですが、ローファーを注文される時は多少なりとも参考になれば幸いです。

管理人様

初めてコメントさせて頂きます。
私も日曜日にフォスターの仮縫いを初めて経験しました(ビスポーク自体も初)。仮縫靴の多くが黒色で、色味とローファーのシェイプは大変印象に残っていました。

茶色のセミブローグをお願いしていますが、完成が今から楽しみです。

将来的には、ローファーにも挑戦したいと思います。

スキンステッチさん

当ブログへの訪問並びにコメントを有難う御座いました。またお時間のある時にお立ち寄りいただければ幸いです。

さて、日曜日にフォスターのトランクショウに行かれたとのこと。茶色のセミブローグのフィッティングは如何だったでしょうか。良い靴が出来上がるといいですね。

また当方のローファーの仮縫い靴をご覧いただいたようで、恐縮します。ローファーを注文される祭には情報交換が出来ればと思います。

お初におめもじ。でも、たぶん全記事読んでます!

それにしても10のフォトはもう圧巻ですね。
インサイドにシームを振る意匠はあまり好みではなくて頼んだことがないのですが、
これはさすがに。デザインに組み込まれてるんですね・・・
このバンドってヒールの前方のラインと接続するのかな・・・薄いソールが船底型でないとしたらトウスプリングはあまり目立たなくなるかもしれない・・・
なんて思い回らせて至るところ、たぶん完成後だったら、きっと自然すぎてこのデザインのすごさに気付けなかったんです(まだ完成したものを見てないのに/笑)。貴重!
(底のラインは革シャンクの位置なのかなあ)

あと、バンド前方の合わせの部分、より薄く削いであるのでしょうか、どの角度から見てもとても綺麗に寝ているように見えます。サンプルを眺めてもこんなにクリーンじゃない。

興奮にまかせてのコメント、ご容赦ください。
今後も楽しみにしています。

通りすがりではない さん

当ブログへの訪問ならびにコメントを頂き有難うございます。また全記事お読み頂き大変恐縮しています。

もともとサンプルはつま先にスキンステッチがなく、摘みモカでヒールにシームのあるオーソドックスなものだったのですが、ピックステッチにしてつま先にスキンステッチをリクエストした際、インサイドにシームを振って、尚且つスキンステッチで仕上げることもお願いしました。

フォスターの担当からのアレンジもあったのだと思いますが、担当のクローザーがデザインに組み込まれているように仕上げてくれたのだと想像しています。

そのクローザーは前々作のノルウェジアンダービーのを担当してくれた際、素晴らしい仕上がりに感激しましたが、今回も同じ職人さんということで一見して靴から感じる雰囲気が違いました。

底のラインはシャンクとの御推察、なるほどと思いつつ、そういえば今回の靴は「シャンクを…」と言っていたのを聞き漏らしていましたが、要するに靴の返りが良くなるようにするための何かだと解釈しています。届きましたらトゥスプリング共々改めて訊ねてみます。

それから、バンド部分は確かに薄く梳いているように見えます。ともかく一目見て丁寧な仕上げが感じられるアッパーでした。

またお時間がありましたら色々とお教え下さい。

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