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2011年5月26日 (木)

Bottier à Paris

久しぶりにディミトリ・ゴメスやピエール・コルテのウェブサイトを見て回った。一時期ほど日本のファッション雑誌がフランスの誂え靴屋を特集することはなくなったが、パリのボッティエ(靴職人)達は益々意気盛ん、ロンドンの靴屋とは異なった新しいクラシックな靴を創造し続けているようだ。パリでも別格とされるジョンロブSAのサイトではあめ色のクロコダイルロペスが特に印象に残った。

パリのセレクトショップのオーナー、マーク氏がいつだったかディミトリを紹介してくれようとしたことがある。「ビスポーク靴のシューツリーから靴を作る。」というものだったが、未だ試してはいない。しばらく英国のビスポークシューズに傾倒していたが、久しぶり出したパリの誂え靴にはロンドンの靴職人も驚いた程の仕事ぶりが詰まっている。そこで今回はジョンロブ・パリやコルテからパリの誂え靴の魅力を紹介してみようと思う。

1.グラン・ムジュールの靴達

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グランムジュールはSur mesure(シュ・ムジュール)とも言われ、英語でBespokeと同じ誂え靴のことを指す。1997年に初めてジョンロブ・パリで靴を誂えてから2003年にコルテを受け取るまでの7年間、パリには靴を誂える為に何回も訪れた。特にジョンロブ・パリ1足目の靴(一番右)は誂え靴の基準ということもあって、パリは勿論、内外を問わずよく履いて出かけたものだ。ビームス銀座で店員さんに「日本のオーダー靴ですか?」などと聞かれたことや渋谷パルコのバセットウォーカーで「ジョン・ロブから独立したピエール・コルテを知っていますか?」と教えて貰ったこと、ロンドンのクレバリー本店で接客した店員に靴の中まで見られたこと。様々な出来事を思い返しながら自分の誂え靴のスタートがパリのボッティエによるものであることを再認識した。

2.BOSTON

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いつのパリ博覧会だったか失念したが、ジョンロブパリが博覧会に出品した靴がモデルになっている。パリ店ではどの靴にもペットネームが付けられているが、この靴はBOSTONという名前になる。新世界(アメリカ)の原点となる地名が付けられていて、その名の通りビスポークの原点としてその後のオーダーの指標となった。どのヨーロッパの靴屋でも興味深く眺められ、職人と話がはずんだことを思い出す。

3.ダブルウェルト

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この靴がどのようにして作られるのか間近で見たいと思う気にさせる重厚なソール。2重の出し縫いが特徴のウェルト部分は階段状になっていて両方共に上からウィールをかけ、目どめを行っているようだ。見本を見て一番気に入り、注文したモデルだが、これと同じ作りの既成靴を同じフランスのウェストンが作っていて、所有していたことも影響している。フランスの靴にはイタリアの靴ほど装飾的ではないが、イギリスの靴よりも凝った作りのものが多いと感じる。

4.REMY

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2足目に作ったプレーントゥ・デザインオントゥ。REMYというペットネームのドレスシューズ。モデルのサンプルからつま先をスクェアに、メダリオンをラムズホーンに変えたところ、新たに木型を製作したようだ。ただ、エッセヤージュ(仮の素材で作った靴の試着確認:仮縫いの意)なしのストレートスルーだったこともあって、完成品はタイト過ぎだった。その後ストレッチしてフィットするようになったが、ともかくジョンロブ・パリのグラン・ムジュールには気になる点がある。

5.Heel Lifts(ヒールリフト)

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REMYはドレス靴ということで、綺麗な仕上がりのべヴェルドウェイスト、丁寧な手仕事がなされたヒール部分が光る。以前ビスポークのアトリエを訪ねた時のブログを参照して欲しいが、他のメゾンよりも積み上げる革の枚数も多く、S字を描く踵部分からトップピースまでのピッチドヒール。ともかく手作業の一つ一つに手間暇をかけて作られているのがジョンロブ・パリの誂え靴だ。

6.BARAL

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ジョンロブ・パリ3足目のオーダーはBARAL、同名の既成靴をクロケット&ジョーンズが請け負っていたと思う。この靴を受け取ってしばらくして担当だったラストメイカーのパトリス・ロックと連絡が取れなくなり、不思議に思ったが、ちょうどベルルッティに移籍する直前だったのだろう。その後なんとなく縁がなくなり、ジョンロブ・パリとコンタクトをとっていない。

7.履き口後ろ(カウンター上部)の処理

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踵部分のアッパーの縫製を見てロンドンの靴職人がその丁寧さに感心していた部分。革が重なる部分は薄く梳いて段差を減らしてから縫い合わせるが、このBARALではインサイド(内側)はアッパーの耳(持ち出し部分)が回され3重構造になっている。ところが左右の段差を感じさせないよう極限まで厚みを減らしてから縫い合わせているようだ。

8.CORTHAY Sur mesure

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2001年にコルテを初めて訪問してから約2年間かけて完成させた1足。シューツリーの精度は一番高く、一度靴に入れると中々出せない程だ。内側の刳り抜きも芸術的でジョンロブにいた職人らしい丁寧な仕上げが光る。エッセヤージュによる仮縫い時にクレバリーの納品を見せながらつま先のイニシャルを依頼したところ、「もっと小さく、穴はやや大きめにはっきりとわかるように作ったほうが良い」ということになり、直接ラストに書き込みながらデザインを決めていった。

9.ラバーソール

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コルテの最も素晴らしい点がこのハーフラバー。レザーソールの一部を薄くくりぬき写真のような形状のラバーを貼り付けている。既に何回も履いたがこのラバーのおかげでコバの減りも少なく、靴底のコンディションを良好に保ってくれる。これだけ優れているのにもかかわらず、他のメゾンがこうした仕様を積極的に取り入れないのはコルテの特許なのだろうか、それとも需要が少ないのだろうか。

フランスの誂え靴はイギリスのそれよりも華やかさがあるが、イタリアのものほど華美ではない。また、製法については英国靴の殆どが通常のウェルト靴なのに対してノルウェジアンウェルトや今回紹介したダブルウェルトといった昔からの製法をイタリアの靴よりも控えめに盛り込みながら靴作りを行っているようだ。イギリスとイタリアの間に位置するフランスは誂え靴においても丁度両者の中間といった感じだろうか。

特に職人による一針一針手間暇のかかった靴が好きなこともあって、フォスターにエプロンダービーを、クレバリーにセミブローグブーツをどちらもノルウェジアンウェルトでオーダーしたところだが、近いうちにパリでもノルウェジアンの短靴やブーツを作ってみたいと思っている。パリの靴屋が作るクリエイティブな誂え靴は恰好よいが、どちらかというと古式豊かで無骨なハントシューズを誂えたい誘惑にかられている。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

どの靴もそれぞれに個性溢れていて格好良いですね!
Bostonのダブルウェルトは、出し縫いも2重なのでしょうか?
だとすると凄まじい手仕事ですね…

adagietto72さん

コメントを有難うございます。

間違いなく手縫いの出し縫いを2回行っていると思います。となると、ボトムメイキングでは通常のウェルト靴の倍かかることになります。

なぜか昔から手縫いのステッチが好きで、靴もそうですが、エルメスのサックやカミーユフォルネのクースマイン(手縫いの時計ベルト)など、正にステッチに惹かれて購入しました。

実はジョンロブSA(パリの方です)とコルテが手掛けるノルウエジアンウェルトのハントダービーが物凄く格好良いのです。ドレスシューズの誂えがもうすぐ一段落するので、その時はパリまで行って両者にオーダーしたいくらいです。ただ、その時はどちらも今の靴を履いて行って木型の修正を願いする必要がありますが。

 管理人様、はじめてコメント致します。
いつも拝見し、勉強させて戴いております。
この度ご紹介されている靴も、皆見事なシェイプで素晴らしいですね。

>コルテの最も素晴らしい点がこのハーフラバー
 この仕様は始めて拝見しました。
これはレザーソールに接着剤等で貼付してあるのでしょうか。
剥がれることが無ければ、おっしゃられるようにとても便利そうですね。

Shizumaさん

この度は当ブログへのお立ち寄り並びにコメントを頂きありがとうございました。

Shizumaさんのブログも拝見させていただきました。特にクレマチスは革質も仕上げも素晴らしそうでした。

さて、頂きましたコメントにありました「コルテのハーフラバー」ですが、昔のステファノ・ベーメルでも同じ仕様のものがあるようです。ただ、ベーメルと違ってコルテのラバー素材はオリジナルなのか、他で似たような素材を見たことがありません。

問題の作りですが、ハーフラバーの端が見えていないことから、レザーソールの中央を薄くくり抜き、ヒドゥンチャンネルソールのように革を起こしてラバーを入れ込み、接着後元に戻して仕上げているのではないかと想像しています。

実に便利な機能で他のメゾンも真似してほしいくらいです。

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