最近のトラックバック

« Shirt jacket(シャツジャケット) | トップページ | 40pairs live in history(後世に残す40足)  第2回 »

2010年12月21日 (火)

40pairs live in history(後世に残す40足)  第1回

随分前から手持ちの既成靴を少しずつ整理してきたが、最近ようやく40足にまで絞り込んだ。勿論靴棚にはこれまで世話になった靴やスニーカー、アウトドア用の靴など、まだまだ多くの靴が残っている。しかし、限られたスペースや手入れにかかる時間を考えると、今後も少しずつ整理を続け、目の届く範囲で靴を履く楽しみを味わうことが必要になる。そうなれば40足が精一杯だろう。

選んだ40足は履き込んでリソールしたものから未使用のものまで様々だが、手を入れながら出来るだけ後世に残していきたい。耐用年数が20~30年と言われる既成靴だが、最も古いウェストンのローファーは1987年製、既に23年が経過している。多少形は崩れたがまだまだ現役だ。そこでこれから何回かに分けて今回選んだ「後世に残す40足」を紹介していこうと思う。

第1回 British handcrafting shoes in 1990's (1990年代英国靴)

No.1: Peal &Co Semibrogue by Edward Green

08

服飾評論家のアラン・フラッサーは著書の中で、かつてマディソン街のブルックス・ブラザーズ本店で扱っていたピールネームの靴を引き合いに出しながら、エドワードグリーンのクオリティの高さを紹介した。写真のセミブローグがそのエドワードグリーン製ピールの既成靴。べヴェルドウェイストやピッチドヒールといった誂え靴の意匠が1990年代から取り入れられていた。70%がハンドクラフテッド(釣り込みやウェイストの処理、ピッチドヒールのこと)と言うフラッサーの説明が納得できる程の仕上がりだ。

No2:Dover made for Loyd footwear by Edwarsd Green

05

既成靴の中で最高の履き心地を実感できるのが1989年製のラスト#32ドーバー。写真の靴はロイドフットウェアネームのものだが、他にビームスFがポールセン&スコーンネームとして扱っており当時の定価は48,000円、だが価格以上のクオリティを誇っていた。肉厚のフュームドオークタンカーフのアッパーと植物鞣しのハーフミッドソールのマッチングは抜群で、アーチ部分のフィット感やソールの返りのよさ等、これこそ英国紳士靴の傑作といえる。

No3:Dover made for Paulsen Skone by Edward Green

06

こちらはNo2のロイドフットウェアネームと木型違いのドーバーでラストが#33を用いたポールセン&スコーンネームの1足。皺の入り方から分かるようにアッパーの素材はやや薄手のカーフで、この頃既に上質のブラックカーフは手に入らない状況だったのだろうか。ラストの違いが殆どないにも関わらずかかわらずロイドのものより若干履き心地が固いよいうだ。ビームスが扱いを止める頃、購入した最終期のドーバーで、その後新生工場になってからのドーバーは通常のダブルソールになってしまった。

No4:Chelsea made for Loyd footwear by Edward Green

12_2 

ロイドで購入したエドワードグリーン製マスターロイドの最終期の1足。一時期もう一足#808の黒キャップトゥ、グラッドストーンを所有していたが、専らこれ1足で慶事・弔事全てを賄っていた。表記はEウィズだが、英国のFウィズに相当するようで、フィット感はやや緩い。ただしその分内羽根が殆ど閉じる状態になるなのでフォーマルな場では重宝する。1991年ロイドで購入、定価は59,000円だったと記憶している。

No5:Harrow made for Paul Stuart by Edward Green

13

プリンセスアーケードの老舗、今は廃業したワイルドスミスがジョージⅤ世の為に製作したハンドステッチハウスシューズがオリジナルデザインらしい。アンラインド仕上げのアッパーにエプロンフロントとつま先部分がスキンステッチで仕上げられている。ドーバーと同じ手間暇をかけた作りのローファーはひたすら柔らかく、その履き心地は他に類をみない。1990年、当時のポールセン&スコーン(ニュー&リングウッド2階)で260£(62,400円程度)だったが、翌年NYのポールスチュアートで購入、セール時期だったせいかロンドンより随分と安価だったことを覚えている。

No6:Glenlivet by Edward Green

10

エドワードグリーンがエルメスの資本に入る時期に初めてMTO(メイドトゥーオーダー)した1足。グリーンネームの靴をグレンソンが請け負っていたという噂が出ていた時期だ。旧の工場(現ジョンロブのファクトリー)にファックスを送ったが音沙汰なく、随分経ってから完成したとの報告がファックスで届き、代金がカードにチャージされた事を思い出す。完成してから請求が来るという今からは考えられない程のんびりしていた時代だった。出来上がりはソールに(Made in ~)の刻印がなく、アンティーク仕上げもあっさりしているが、#33のスクェアトゥとアーモンドカントリーカーフの組み合わせは今見ても抜群に恰好よい。

No7:Cadogan made for Harrods by Edward Green

07

1991年コッツウォルズの中核都市チェルトナムにひと夏ステイした。週に数回コーチ(バス)でロンドンに買い物をしに行ったが、当時は今より情報量も少なく、エドワードグリーンのブティックがどこにあるのか分からなかったので、まずは最も大きなハロッズに出向いた。目当てのグリーンは豊富に揃っていたが、その後に訪れるブティックよりも40£も高かった。同じものが店によって値段が違うjということを初めて知った英国滞在だった。余談だが、このハロッズ特製セミブローグはライニングの色が通常の金茶色より1段濃い茶色でエクスクルーシヴなのが特徴で、アンティーク仕上げの陰影も濃い目である。名ラストの#202を採用した最もグリーンらしい1足。

No8:Westminster made for Wildsmith by Edward Green

09 

Harrowの解説で触れたワイルドスミス、そのショーケースに飾ってあったサンプルのがこのウェストミンスターだ。ダブルバックルの靴は好みではなく、ロブのウィリアムも、ヴィンテージ2000も全て手放した。シングルモンクも手元にはない。だが、このウェストミンスターはロイドでもオーダーを入れていたという#201のDウィズという珍しいラストに加え、アッパーは今やビスポークでも存在しないという毛足の長いスタグスエードを使った逸品として後世に残す価値がある。履き心地はアッパーに比例して柔らかく、ツィードの上着やオイルドジャケットに合わせて履く楽しみがある。

1980年代終わりから1990年代にかけて、丁度ブルータスが特集を組んだ頃からだろうか、英国靴に脚光が当たるようになる。当時はまだジョンロブ・パリがノーザンプトンに自社工場を所有する前で、既成靴の最高峰といえばエドワードグリーンだった。その手仕事の確かさを工場丸ごと手に入れようとエルメスが考えたとしても不思議ではない。1995年頃にはエドワードグリーンの工場もついに買収され、それまでクロケット製のみだったジョンロブ・パリのラインナップに自社工場の靴が加わる。手仕事を生かし、丈夫で確かな作りのジョンロブオリジナルの靴はまたたく間に英国製既成靴の最高峰と呼ばれるようになった。実際1週間の海外旅行を新生エドワードグリーン製のドーバー1足で過ごすとエプロンのステッチがほつれてしまうのに対して、同じデザインのジョンロブ製シャンボールドは僅かな変化も見られなかった。それほど当時のジョンロブ・パリのクオリティは高かったのである。

残念ながら、最近のジョンロブ・パリは革の質感も、コバの張り出しも昔とは違う。そして、エドワードグリーンもまた、かつてのグリーンではなくなってきた。日本での値段はロンドンの誂え靴と殆ど変わらない価格まで高騰している。だが、どちらも大量生産のグッドイヤーウェルテッドシューズであることを忘れてはいけない。アッパーの色付けや変わったデザインで付加価値を加えても、本来の英国靴らしい頑丈さや価格と品質のバランスが崩れてしまえばマーケットは縮小していくのではないだろうか。

« Shirt jacket(シャツジャケット) | トップページ | 40pairs live in history(後世に残す40足)  第2回 »

靴(Readymade shoes)」カテゴリの記事

コメント

今回の記事、大変興味深く又、懐かしく拝見致しました! 20年前と言えば、海外旅行の土産にチャーチやウェンストンが人気のあった時代ですね(笑)私にとって当時のグリーンは、軽く、しなやかで異色の英国靴だった事を思い出します、又現在の様に国内で修理する環境が整っておらず苦労しました!私も誂え靴が中心となり既製品はほとんど処分しましたが古いグリーンやラッタンジは今でも大切に保管して下ります!

追伸 管理人様が危惧される通り、英国靴の価格と品質のバランスは完全に狂っております!グリーンが六万台(国内価格)の時代は今となっては遠い過去ですね、私は逆に、英・伊のDNAを受け継ぎ真摯に靴作りに取り組む日本の(工房・工場)に期待して下ります! 今の様に物が溢れていない時代の英国靴は本当に素晴らしく、今回の記事で当時の想いが蘇りました、ありがとうございました。

春琴様改め愛用者様

ご無沙汰しております。

古いグリーンやラッタンジを今でも保管していらっしゃるとのこと。やはり同じ思いを感じている方がいることを知って嬉しく思いました。
日本の靴作りですが、確かに色々な工房や工場が出て来ているようですね。工場は適正価格をしっかりと打ち出しているようですが、工房の方は高いところが多いような気もします。近いうちに日本の誂え靴にも挑戦できればと思っているところです。また、色々とお教え下されば幸いです。

続けて失礼致します!おっしゃる通り国内の工房(年間生産100足以下)では、職人の言い値で価格と品質は必ずしも合致しません、消費者が自分の目で確かめる必要があります(メディア等に頼らず)又、国内工場は下請での生産が多く、依頼側の制約(多くの場合コスト)に縛られ実力が発揮出来ない(潜在能力は英・伊を凌駕する工場も在ります)管理人様のような目利きの方々が素晴らしき時代の英国靴に注いだ情熱をメイド・イン・ジャパンにも是非、注いでいただきたく、失礼を承知でコメントさせて頂きました。管理人様の影響力は御自身が考える以上におありです、私も含め靴好き達を是非、よき方向へお導き下さいませ!

愛用者様

日本の工房を選ぶ場合、メディアに頼るのではなく消費者として自分の目で確かめる必要があるという言葉、心に響きました。
まずは先達、すなわち消費者の方々の声を聞いて、次に自分で訪問する工房をいくつか選び、直接出向いて作りを見て、話をして、注文を決定する、このようなステップを踏んでいくことにします。

靴好きの皆様を導くなどと恐れ多いことですし、甚だ役不足ですが、少しでも情報提供の場としてご覧いただければブログを書いている者として嬉しく思います。これからも愛用者様のご意見、ご感想をお待ちしております。

今回の記事で、グリーンとパリ・ロブにまつわる話しは大変勉強になりました、当時は両者の、御家事情等知る術も無く、記憶が確かではありませが、85~6年頃から急にヨーロッパのセレクトショップにロブの既製品(クロケット製?)が並び始めた理由が理解出来ました、当時、シボの入った赤いローファー(ロブ既製品)が、あまりに細く足に合わず、購入を断念した記憶があります!又グリーンも、91年を最後に購入しておらず、ブランドにも様々な理由から管理人様のご指摘通り「品質の旬」がある事を改めて実感致しました! 悲しい事ですが、ある意味、英国靴(既製品)自体の旬は過ぎてブランドイメージ(名残)となって行くのでしょうか?

愛用者様

確かに、1980年代の終わりにはクロケット製のジョンロブが並び始めました。今よりもずっと手軽に扱われていた感じがします。最近は高級感を出そうと無理をしているのか、ブティックに行くと何ともいたたまれない気持ちになるので滅多に行くこともなくなりました。(パリのフランソワプルミエ店もロンドンのジャーミンSt店も構えは同じですがフランクな感じなのですが・・。)

ロイドの青山で見たのはロペスとバロッスで、既成はこの2型からスタートしたのではと想像しています。
その後エドワード・グリーンがジョンロブの靴を作るようになり、ジョンロブが工場を買収した後は、逆にジョンロブがエドワードグリーンの靴を作っていた時期があるようです。

1990年代終わり、ジョンロブの工場を見学する機会に恵まれ、更に後日工場内の日本人デザイナーの方と話をする機会を得ました。ミリ単位に拘って靴作りを行っているジョンロブの姿勢、それを実践する現場の仕事ぶりから、ジョンロブの高品質さを体感できたことは貴重な財産でした。

ブログでも書きましたが、ベルルッティが流行った頃からジョンロブも変わりました。デザインも、革質も、作りも。作る現場やデザインの最前線を自身で体感したことで「あの時のジョンロブと違う」と肌で感じるのかもしれません。

長文失礼しました。また機会がありましたらそのあたりの話をご紹介できればと思います。

その頃からでしょうか?ファッション界に大量の資金(銀行やファンド)が流れ込み日本企業がイタリアのファクトリーを買収、これを皮切りに以降、ご存知の通り現在に至る世界的再編(ファッション界)の煽りをロブ・グリーンも喰らったのでしょうね!大量の資金(他資本)が入った工場は能力以上の生産数を求められ品質ましてや信念までも失って逝くのが常でしょう、悲しい現実です。数多あるファッション・ブログは、メディアに踊らされ、まるで主婦のお買い物日記状態、その中にあって管理人様は読むに値する見識ある内容、何より服・靴に対す本当の意味での愛情を感じ敬服致して下ります、これからはロブ・グリーンの品質問題の様に普段口に出し辛い話しも是非ご指摘下さいませ(世間様の為にも)私のコメントは大変失礼を承知で書き込ませて頂いております、今回御返事は結構でございます、後世に~の特集の続き楽しみにしております!

ピールのエドワードグリーン素敵ですね。私はピールのグリーンがあることを知らなかったので新しい発見です。質問ですが、テーラーのギーブス&ホークスのエドワードグリーンは見たことがありますか?

jubilee39msさん
コメントを有難うございます。
1990年代初め、サビルロウ本店にディスプレイされていましたので、間違いなく、存在していたはずです。

こんばんは。お世話になります。
お聞かせいただきたいです。
Peal &Co Semibrogue by Edward Greenの靴は520ラストと推測いたします。
現行の202ラストとのサイズ感の差異を、お分かりであれば教えて頂けないでしょうか。
答えにくい質問をしてしまい、申し訳ありません。

ロマン様

お尋ねの#520と#202の違いについてですが、週末にじっくり試してみますので少々お時間を下さいますと幸甚です。

こんばんは。
旧グリーンの201ラスト、珍しいですね。
存在は知っていますが、実物を見たことがありません。
写真を見ると旧202よりもトウが丸め、甲が高めのようにも見えます。
履き心地はいかがですか?

浪漫様

返信が遅くなり、すみませんでした。

201ラストはブルックスラストだと聞いたことがありますが手持ちのピールネームブルックスbyエドワードグリーンとはちょっと違って寧ろポッテリとした印象です。

つま先は高さがあり、若干角のあるラウンドといった感じでした。写真のダブルバックルは8-1/2ですがこれでもDウィズなんです。

ありがとうございます。
季節柄か、最近ダブルバックルの靴にはまっております。
春夏よりも秋冬が似合う靴の気がします。
写真の靴はこれからが活躍の場ではないでしょうか。

管理人様は201グリーンの他にもダブルバックルの靴をお持ちですか?

浪漫様

昔はロブのウィリアムやロイドのダブルバックルを持っていましたが処分したので今はこのワイルドスミス製のみです。

ダブルバックルはアクセントになるので格好いいのですが甲高な私にはシングルのモンクの方が合いそうです…と言いながらシングル文句も処分してしまい、バックルスリッポンのみになってしまいました。

どうも得手不得手が靴の嗜好にもあるようです。

靴の嗜好にも得手不得手がある…、非常に面白い表現だと感じました。
私ですとフルブローグに余り縁がありません。

また、参考までにお聞かせ願いたいのですが、管理人様は旧グリーンの202はサイズいくつを履かれていらっしゃいますか?

浪漫様

私はフルブローグが好きですので浪漫様と反対かも知れませんね。

グリーンのバーリントンアーケードに合った直営店舗ではやや羽根が開くものの、8-Eを勧められました。羽根の閉じ具合から思うに、8-Fではまたは8.5-Eで良いかとも思います。

ありがとうございます。
旧エドワードグリーンのスタグスエードですが、いつ頃まで存在していたかご存知でしょうか。
旧グリーンのスエード=全てスタグスエードではないんですよね?
何度もお聞きしてしまい申し訳ございません。

浪漫様

ウェストミンスターのスタグスエード自体は1991年夏の購入ですが作られたのはもっと前だと思います。何しろサンプルですので。

その後日本では90年代中頃、ちょうどジョンロブによるファクトリーの買収あたりまでドーバーのスタグスエードを見かけましたがロブ買収と時を同じくして在庫切れだったのかスタグは姿を消しました。

一時期は女性もののグリーン靴にも採用されていた素材だけに、現在復活していると聞き、もっと一般に出回らないかな…何で夢想しています(^_^)

ありがとうございます。
知人が旧グリーンのスエードチャッカブーツ(Made by期)のものを持っているのですが、スエードの質が何となく違うなあと思い、聞かせていただきました。Made by期ですと80年代あたりでしょうか。

旧グリーンの靴は、スエードとカントリーカーフが特に魅力的と思います。

浪漫様

多分のその時代からスタグスエードといわゆるスエードの2種類があったもではないかと思います。

毛足の長さが違うので見分けることは出来るのですが、後にスタグスエードが幻の素材になるとは当時思いもしませんでした。

管理人 様

知人のそのブーツは、よく知っているカーフスエードのものに比べ毛足が長めでどこか荒々しい印象でした。それがまた非常に魅力的にも映りましたが・・・。

知人によると、オークションで買ったやつだから詳しいことは知らん。と素っ気無い対応でしたが・・・汗

浪漫様

毛足が長いものとなるとやはりスタグスエードのような感じもします。現物を見ればわかるのですが…いずれにしてもグリーンの旧のスタグスエードは所有者が恐らくはかなり少なくなってきているので滅多に観られない素材となりそうな予感がします。

最近ビスポークでスタグスエードが復活してきているようです。まだ現物を見ていないので何とも言えませんが、既成靴にスタグスエードが使われていたという事実からすると旧エドワードグリーンの凄さが改めて良く分かります。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/205243/50342689

この記事へのトラックバック一覧です: 40pairs live in history(後世に残す40足)  第1回:

« Shirt jacket(シャツジャケット) | トップページ | 40pairs live in history(後世に残す40足)  第2回 »