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2010年12月26日 (日)

40pairs live in history(後世に残す40足)  第2回

デパートに買い物に行くと用はないのに靴売り場に立ち寄ることがよくある。最近は殆どの有名靴ブランドを扱っているし、イベントや受注会、誂え靴のコーナーまであってどんな新作が出ているのか見るのも中々楽しい。勿論、デパートの狙いは客の消費を喚起することだろう。だが、これだけ情報がある時代、客の選択眼も選択肢も昔とは違う。中々商売繁盛とはいかないと聞いた。賢い消費者は価格を予め調べ、デパートに行かずオンラインで欲しいものを手に入れる、そういう時代になっているのだろう。

「後世に残す40足」特集、前回は英国既成靴の最高峰として名を馳せたノーザンプトンはオリバーSt時代のエドワードグリーン(所謂旧エドワードグリーン)を紹介したが、今回はその工場を買収したジョンロブ・パリと、同じノーザンプトンで最も大きな工場、「英国の良心」と謳われたチャーチの靴を紹介する。これらの靴を買った1990年代はほんの少し前のような気がするが、価格と品質のバランスが取れた靴が今よりも手に入る時代だった。

第2回 Britsih handcrafting shoes made in Northampton.

No:9 John Lobb Paris Chambord

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ハバナカーフのエプロンダービー、ファクトリーのリジェクト品だが侮ってはいけない。10年前の製品なのに今も当時のまま凛としている。特にコバの張りを抑える為、出し縫いをアッパーの端ぎりぎりで縫うなど靴をスマートに見せる「攻め」の作りが素晴らしい。尤もその結果マシンの針がアッパーに当たり、小さな傷がついた為にリジェクト品になっている訳だが、今のシャンボールドが何ともバルキーな顔つきになってしまったのを見ると残念でならない。忘れてならないのがスペードソール(ハーフミッドソール)仕上げだ。新生グリーンがドーバーに採用できなかった仕様(後にリクエストによって復活するが)をジョンロブがシャンボールドに採用していたことから、ジョンロブの靴作りに対するフィロソフィーを感じた。

No10:John Lobb Paris Seymour

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メレーゼカーフのセイムールはジャーミンストリートにあるブティックで購入したもの。当時の価格はVAT引後6万円ほどだっただろうか。ラストは#8695、その履き心地の良さから、かれこれ10年以上愛用している。アッパーの皺が年月を感じさせ、ソールも大分減ってきてはいるが、スーツにもジャケットスタイルにも合う万能靴で、何を履こうか迷った時は大概この靴を選んでいる。「履き込む程に足に馴染む」というグッドイヤーウェルテッドの靴本来の良さを実感できる名靴だ。

No:11 John Lobb Lopez by Crockett & Jones

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「グッドイヤーウェルトの既成靴は量産品、適正価格のものを」という気持ちがあるせいか、セールやアウトレットを利用する事が多いが、このロペスは例外。新年を記念してNYのエルメス店で購入したもので現地価格は7万円くらいだったと思う。クロケット製だがジョンロブは特別の革を使うのだろうか、良質で写真のように手を入れ磨くとよく光る。ただしフィット感は独特の硬さがとれず、中々馴染まなかった。それでもバンドオーバー(サドル部分)中央に開けられた楕円の窓が格好良くて大切に履いてきた1足だ。

No:12 John Lobb prestige line Philip II

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フィリップIIのパリジャンスェード。革の質はジョンロブらしく他の既成靴よりも良い。#7000のラストの足入れは快適だが若干緩いのとノーズが長く感じる。Dウィズかハーフサイズダウンも試してみたいところだがオンラインショッピングでは仕方がない。1£が130円を切った2009年、ジャーミンStのロブ店から購入したもの。今は個人輸入に応じていないが、送料込で9万円程度だった。日本の定価が約21万円だったから内外価格差は2倍以上、エルメス・ジャパンが掲げていた内外価格差1.5倍以内はジョンロブには当てはまらなかったらしい。

No:13 John lobb Ashley

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セール品のローファー「アシュリー」。アルディラカーフのアンラインドローファーはジョンロブ・ジャパンのリクエストらしく、前回紹介したE・グリーンのアンラインドローファー「ハーロゥ」を参考に作られている。双方共にエプロンフロントでライトアングルステッチとスキンステッチが盛り込まれたドーバー似の顔つき。作りの違いはグリーンがエプロン部分のみ薄いライニングを当てているのに対し、ロブはタンまで厚手のライニングが貼られていることだ。グリーンの華奢な作りとは反対にロブは堅牢な作りを重視することで評判を上げていったのだろう。ヴァンプが長くジャケットスタイルに最適な1足としてよく履いた。最近オールソールしたばかりだ。

No:14 Church's Custom Grade Grafton

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1990年代中頃、海外駐在時にナイツブリッジのチャーチズブティックから個人輸入したもの。価格は覚えていないが4万円程だったと思う。名ラスト#73を用いたブックバインダーカーフのダービー。アメリカ市場を意識したウィングチップブルッチャーといった方が分かりやすいかもしれない。ストームウェルトにダブルウェルト(360度の出し縫い)を施したカントリー仕様。ブックバインダーカーフは古くなると裂けやすいと教わったが、幸い傷みもなく15年が経過している。靴墨を塗ると思ったより色乗りが良いので、最近時々パレードグロスで磨いている。

No:15 Church's Custom Grrade Diplomat

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1994年、NYのチャーチズブティックで購入。以来雨の日も履くなど随分酷使してきたが、未だリソールを行わずに済んでいる。チャーチズの頑丈さは定評があるが、写真を見ても分かるように履き込んで手入れをした靴の感じは中々のもの。友人がチャーチズを購入するきっかけになった1足だ。サイズ選びではFウィズをEウィズに下げている。その分羽根がかなり開いているが、細身の靴が欲しかったので満足している。余談だがこういう時の店員の対応は、これがロンドンのブティックだと中々首を縦に振らない。だが購入場所はNY、店員は実にあっさりしたもの。要望通りに靴を出し、履いている間もフィッターとしてチェックする訳でもなく、購入して終りと実にスピーディだった。欲しいものが決まっている場合は、この方が楽だったりもする。

No:16 Church's Custom Grade Chetwynd

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こちらは1991年、バーリントンアーケード内のチャーチズブティックで購入したフルブローグで、正規の値段で購入。スーツを着た中年のフィッターが勧めたのはGウィズの8だったが、色々と試させてくれと言い、最終的にFウィズの8.5にした。上のディプロマットと同じ#73ラストだが、ウィズが広い分写真の靴の方が羽根が閉じている。そのかわりヴァンプ部分のルームが多くなり、細かな皺が入ってしまった。チャーチズの革は最高級ではないが、手入れを怠らなければ、アッパーは徐々にワックスが乗り光るようになってくる。

前回、今回と紹介してきた靴はセール品やリジェクト品も含まれているが、どの靴も品質と価格のバランスがとれている。今よりも価格はずっと低く、それでいて品質の高い靴が買えたこと、そうした靴の値段がここ10年で異常に高騰していることに改めて気づいた。リーガルのローファーやウィングチップを履いて社会に出て以来、グッドイヤーの靴に拘り続けてきた。その昔、大卒の初任給とチャーチズが同じ値段だった時代からようやく身近になった英国靴は再び遠いものになろうとしている。これから店先に並ぶのはどんな靴なのだろう。今暫くはデパートの靴売り場に時々立ち寄ってみようと思う。

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コメント

初めまして。

素晴らしいモノを沢山お持ちですね。
今回の靴は毎日の様に眺めています(笑)
残す数が40と言う事は、もっと沢山有ると云う事ですね?
全部出して見せて下さい。

musselwhite様
当ブログへのお立ち寄り、コメントを頂きありがとうございました。musselwhite様のブログも早速拝見させて頂きました。ラルフやブルックス、ビルブラスのシャツなど懐かしい物をたくさん拝見し、失礼かとは思いましたが似た嗜好の方ではないかと想像いたしました。
さて、当方の靴ですが、以前はスニーカーなどのカジュアルな靴を含めると相当数あったのですが、処分したり、整理したりしたので「残す40足」以外は、現在30~40足くらいまで減りました。これらはお見せできるような靴ではありませんが、何かの機会に少しばかり紹介できればと思います。
またお時間がございましたら、お立ち寄りいただければ幸いです。

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