最近のトラックバック

« トランクショウ | トップページ | Cashmere Jacket(カシミヤのジャケット) »

2010年9月17日 (金)

濃茶の靴

ずいぶん前に紹介したダークブラウンのバックスキンがようやく出来上がった。元々オーダーした色目が違っていたのだが、取り急ぎ仮縫いだけ行った時の事をこのブログで紹介したところ、評判がよかったこともあって、次のトランクショウでグラスゴー氏がリダクションを申し出てくれた時に製作の続行をお願いしていた1足だった。

当初は4月頃に出来上がるとメールを貰ったが職人による手作業は時間がかかるもの。気にしないでいたらいつの間にか4か月遅れ、ようやく今回のトランクショウで受け取ることができた。出来上がった靴は前回紹介したクレバリー20足目のものと全く同じデザインで色違い。贅沢な注文靴が出来上がった。

1 完成した靴

00

出来上がった靴を2足並べてみた。既成靴でも同じデザインで色違いというのは滅多にない。E.グリーンのドーバーとウェストンのシグネチャーローファーくらいだろうか。それにしても見事に同じデザインだ。もっとも、グラスゴー氏によればアメリカのトリップの際、ある顧客がやってきてクロコダイルの革見本を見ながら端から端まで指し「全部同じ型で作ってくれ」とだけ言って数分でトランクショウの会場を去って行ったことがあるそうだ。それに比べればささやかな贅沢かもしれない。どちらもこれからの季節にマッチしそうで履くのが楽しみなのは間違いない。

2 素材の質感

15

出来上がった靴は肉厚のバックスキン(ケープバック)。ブラシをかけるとそこだけ毛足が寝たりあるいは逆に逆立ったりして周囲と色目が変わる。この柔軟な毛足がソフトさを生むのだろうか。レッパネン氏によればバックスキンは今や非常に珍しい素材ということだ。通常のスェード(リバースカーフ)と違って鹿革(ディアスキン)そのものが流通していないため、ストックしてある昔の素材がなくなれば終わりということになる。肉厚のホワイトバックもあったりしてコンビの靴を作りたい衝動に駆られる。

3 靴の比較

12 

明るい色目と比べて暗い色目のバックスキンは特にパーフォレーションが目立たないようだ。むしろ飾りのないシンプルなトゥで仕上げた靴の方がダークブラウンのバックスキンを堪能することができるかもしれない。知り合いの顧客が同じダークブラウンのバックスキンで3アイレットの外羽根式プレーントゥバルモラル(以前クロコダイルで注文したものと同じデザイン)で注文したが、プレーンなつま先とマッチしてエレガントなカントリーシューズが出来上がるのではと想像している。

4 ソール

07

ソールはいつもの通りで変更はない。つま先に打ち込んだ2列の釘は、補強には十分ではなく、メタルトゥチップに比べると減るのもぐっと早いが、歩いた時に地面を蹴る際、つま先部分がどうもひっかるような気がして殆どクレバリーではオーダーしたことがない。その1足もソールの張替を行っていることもあり、クレバリーは全てつま先部分が釘による補強ということになる。ただ、手袋のような履き心地と謳われたクレバリー、ソールもソフトな感触を楽しもうと思ったらメタルトゥチップではない方がよいかもしれない。

5 シェイプ

06

靴を上から見たところ。インサイドストレート、アウトサイドカーブの英国的なラインに大きめのキャップトゥが印象的なシェイプ。角ばったアイレット周辺のパーフォレーションはスクェアトゥならでは。コバの張り出しも少なく、エレガントなカントリーシューズとしてツィードのスーツやネイビージャケット、グレイフランネルののチョークストライプスーツに合うだけでなく、イタリアンなデニムスラックスにブルネロクチネリやマーロなどのカシミアのニットを合わせたイタリアンカジュアルにも合うと思う。

6 靴のシェイプその2

08

ヴェベルドウェイストやピッチドヒールなどビスポークシューズならではの手仕事や、ヴァンプ部分からインステップにかけてS字に登るライン、エッジを寝かせた低いつま先などクレバリーには独特の美しさがある。ロンドンのビスポーク界を代表するショップとしてロブレポートでベストオブベストを受賞したのも頷ける。肝心の履き心地はいつも同様足入れの際の「プシュと空気の抜ける音」が快適なフィッティングを連想させる。

通常はヒールカウンター内側のライニングに丸窓を設け、靴のナンバーと注文年月を手書きするのがクレバリーのやり方だが、今回紹介した2足はチャーチのようにライニングに直接手書きで記されている。最も新しいローファーが丸窓付であることを考えると、ちょうどバックスキンの靴をオーダーした頃に色々と行き違いがあったのだろう。「ものは考えよう」というが、こうした手違いも時には丸ごと楽しんで見ようと思う。お気に入りのデザインでお気に入りの素材の誂え靴が2足揃うことはこれから先中々あるものではない。

« トランクショウ | トップページ | Cashmere Jacket(カシミヤのジャケット) »

誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

管理人様
 
 同じデザインで色違いとは、確かに贅沢な注文靴です。管理人様のダークブラウンの靴を見ますと自分の靴の仕上がりも楽しみでなりません。

 ファーラン&ハービーですが、ピーターさんがいつも1日早めに帰国されているとは知りませんでした。次回は早めに訪問してみようと思います。
 いつもいろいろと教えていただきありがとうございます。大変助かります。

hiroさん
こちらの方も早速ご覧いただきコメントを有難う御座いました。今回の方は恐らくhiroさんのオーダーされたものと同じ革かと思います。

当方の靴ですが、今まで同じデザインで色違いの靴を所有しようとは考えてもいませんでした。ただ、自分の足に合わせて作られたものだと思うと、素材違いとはいえ愛着が湧きます。仮縫い状態からソールを付けて完成後は他の誰かに引き取られるのは可哀そうに思えて、結局は引き取ることにしました。

hiroさんの出来上がりは1年後でしょうか?完成しました暁には感想等お聞かせ願えればと思います。

ピーターさんとのアポイントメントはデイビス&サン経由で事前にとられると良いかと思います。

管理人様

 この度も貴重な情報ありがとうございます。
 次回のトランクショウが近づきましたら、ピーターさんとのアポイントメントをデイビス&サン経由でしてみます。

 クレバリーにつきましては、次回が仮縫ですので完成は1年後になります。仮縫の日も楽しみでなりません。

hiroさん
次回の仮縫いは来年の2月頃になりましょうか。
寒い季節ですので、バックスキンの靴に合う装いで仮縫いをされる事と思います。きっと期待を裏切らない素敵な靴が出来上がることでしょう。その時は感想など色々と教えて下さい。
ピーターさんの方は今回オーダーが順調だったようでトランクショウに付き合って10年近くになりますが今までで一番オーダー数が多いようです。今年のポンド安とロンドンはサビルロウスタイルのビスポークスーツやジャケットが新鮮に映るのかもしれません。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/205243/49473290

この記事へのトラックバック一覧です: 濃茶の靴:

« トランクショウ | トップページ | Cashmere Jacket(カシミヤのジャケット) »