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2010年9月12日 (日)

トランクショウ

9月も2週目に入り台風一過、秋の気配が感じられるようになってきた。久しぶりに長袖のシャツを着てジャケットを羽織り、銀座・丸の内方面を散策したが、残暑の戻る週末だったようで、周りは半袖姿の人ばかりが目につく。もっとラフな服装にすれば良かったと少し後悔したが、ビル街の影は思ったより涼しく、8月の異常な暑さは感じられなかった。来週からはぐっと気温も下がるとのことで、着こなしを楽しむ季節まであと少しの我慢のようだ。

久しぶりの更新となったブログ。今回は帝国ホテルで行われたクレバリーのトランクショウでの仮縫いの様子を紹介しようと思う。本来ならばレンズのしっかり付いたデジタルカメラを持参するのだが、うっかり忘れて出てきてしまった。しかたなく携帯のカメラで撮った画像なのでいつもより色目や解像度等ものたりないものだが、雰囲気を味わっていただければと思う。

1 ローファーのオーダー

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今回オーダーしたのはマット仕上げのクロコダイル(正式には北アメリカ産のアリゲーターとのこと)で、クレバリーでは2足目のスリップオンになる。クレバリーのウェブサイトに掲載されているNEW STYLEの中から、エプロンが青のスェードで黒のクロコダイルローファーを参考にオーダーしたもの。フルサドルでコインローファーのようにバンド部分がカットアウトされたスタイルだ。前回のバンドオーバースリッポンが1足目からのラストを用いていたのに対して、今回は初のローファーということで、専用のラストを新規作成し、釣り込んだ状態での仮縫いとなった。

2 竹斑の入り方

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エプロン部分は斑の入り方が左右対称になるようベビークロコダイルの原革を見比べてカットしている。また、つま先部分はスクェアなトゥに釣込む際にアッパーが裂けないよう斑の小さいスキンを持ってきたり、サドル部分から後ろには斑の大きい革を持ってきたりとクロコダイルの革を余すことなく上手に使いきっている。いつもながらパターンをよく考えながら仕上げているようで、1足の靴を仕上げるのにベビークロコダイルの革を2~3枚使うことからも、最初のパターン決め(クリッキング)が肝心ということになる。

3 スキンステッチ

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この靴の一番の見どころは、クロコダイル素材ながらエプロン周囲をピッキングステッチで仕上げているところだろう。担当したレッパネン氏によればクロコ素材の場合は特に難しいようだ。しかもエプロン側からでなく、アッパー側から縫い込んでおり、奇しくもヘンリーマックスウェルのカントリー短靴同様の仕上げだ。こうした職人の技が感じられる靴が好きなことを知っているクレバリー側が気を利かせて指定したのだろうが、今回の靴にはショップとしての気合が強く感じられる。

4 フィッティング

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アメリカの顧客はヴァンプ部分の短いローファーが好みのようだが、英国のビスポークメイカーはヴァンプ部分を長くとって足に合わせ、踵で支えフィットさせるスタイルが主流のようだ。仮縫い状態での履き心地は思ったよりも柔らかい。前回のバンドローファーはもっときつく履き始めの頃は爪に血豆ができたほどだったが、それに比べるとずっとカンファタブルだ。ただ、ボトムがつくとアッパーにテンションがかかるので、最終的にはややタイトな感じに仕上がってくるのではないかと想像している。

5 スクェアトゥ

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つま先部分はチゼルではない緩やかなスクェアでアンソニークレバリートゥと呼ばれるもの。ロングヴァンプなローファーの場合、つま先はラウンドよりもスクェアの方がマッチすると思う。ジョンロブパリの既成靴アシュリーを日頃好んで履くのもそうした理由からだ。履き口の部分や特にタンの部分に細革でトリミングを施すなど丁寧なクロージングが光る。日本では靴の仕上がりに対する要求が厳しくクレームも少なからずあると聞く。クレーマーではなく、誂えならではの職人技を絶やさない視点で注文を出していきたい。

6 ディテール

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この後ソールを縫いこんでヒールを装着していくが、今回は珍しくソールの厚さを聞かれた。今まで同様クォーターをと考えていたところ、ローファーなのでやや薄めの方がよいだろうとのこと。結局ライトクォーターということになった。従来の1/4インチ厚のソール用部材を梳いて若干薄くしてから装着するのだろうか、靴のスタイルに合わせたソール選びはビスポークならでは。こうしたこだわりもいいものだ。もちろんつま先に2列の釘とヒールにクォーターラバーは定番だ。

レッパネン氏と同行した友人とのやり取りを小耳にはさんだが、アメリカで黒靴のソールをオールブラックで仕上げた顧客から「明るいカーペットに色がついてしまうので入り口で靴を脱がなければならない。」といったようなコンプレインがあったようだ。クレバリーではトランクショウの度に一人一人の顧客の要望に応え、注文をまとめ上げ、アウトワーカーに指示を出し、仕上げた靴を再びデリバリーしなければならない。10年以上のクレバリーとの付き合いの中では小さなエラーもあったが注文靴ならではの素晴らしい靴に出会える楽しみもたくさん味わった。今回キャリーされた仮縫い靴や仕上がった靴がそれぞれの顧客に満足をもたらすことを願うとともに、この小さなトランクショウが与えてくれる感動に様々な人が関わっていることに感謝したい。

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コメント

管理人様

 この度のクロコダイルの靴も素晴らしい雰囲気です。今回もクロコダイルの靴を注文されましたでしょうか?自分は、今回のトランクショウで、前回管理人様が受け取られたバックスキンのセミブローグをダークブラウンのスェードで注文しました。
 次回は、管理人様の靴を参考にクロコダイルの注文をしようと思います。いろいろとお伺いするかと思いますが、よろしくお願いします。

hiroさん
ご無沙汰しておりました。
1か月ぶりのブログ更新ですがコメントを早速頂き有難うございます。

ダークブラウンのスェードでセミブローグを注文されたとのこと。ひょっとして素材は肉厚で柔らかそうなケープバックでしょうか。当方も4月に郵送で受け取る予定だったオーダーミスのダークブラウンバックスキンセミブローグが届きました。ゲストの皆さんから評判の良かった色目の起毛素材でしたが、完成品を見ると確かに色々な服装に合いそうです。近いうちにブログで紹介する予定です。hiroさんも出来上がりましたら感想等色々と教えて下さい。

さて今回の仮縫い靴です。ローファーの場合通常よりハーフサイズ小さなラストで作るそうですが、「できるだけ今までのラストに近い大きさで」と頼んでいました。自身初めてのローファー注文なので、クレバリー側も力を入れてくれたのでしょう、鼻先の長い洒落たローファーが出来ているようです。同じデザインのローファーをカーフでフォスターにもお願いしていますが、フォスターのフィッターさんも「ヴァンプを長くとって足に合わせるのでそれほど小さくならない」と話されていました。

最近はゆっくりとオーダーしていきたいと常々思っているのですが今回も仮縫いが終わって色々と話している中であずき色に近いマットクロコ素材のサンプルを見つけてしまい、ハーフサドルのローファーをオーダーしてしまいました。hiroさんも次回はクロコでオーダーされるとのこと、ぜひ情報交換させて頂ければ幸いです。

管理人様

 今回もクロコを注文をされ、カラーバリエーションがさらに充実されますね。自分も徐々に増やしたいと思います。
 ダークブラウンのスェードですが、素材は肉厚でしたがケープバックか確認してなくてすいません。
 レッパネンさんはバーガンディのスェードでの注文を薦めていました。完成した状態によっては、バーガンディのスェードを注文してみようと思います。

 ファーラン&ハービーでスーツを注文するつもりでしたが、ピーターさんはすでに帰った後のようで注文は出来ませんでした。管理人様は、何か注文されましたか?

hiroさん
ダークブラウンでしたらおそらくケープバックだったのではないかと思います。
バーガンディのスェードというのもおしゃれですね。秋冬もののツィード素材やコーデュロイに合いそうな感じがします。

次回参考になればと思いますが、ピーターさんはいつも1日早めに帰国されます。F&Hでは今回、ジャケットの受け取りと新たにマーティンソン&サンズのフレスコで春夏用のグレーストライプスーツをピークドラペルのシングルでオーダーしました。出来上がりは1年後と気長なオーダーです。

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