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2010年7月 8日 (木)

Round toe No.2(ラウンドトゥ第2回)

アイスランドの火山灰の影響がまだ残っているのだろうか、それともペリカン便とゆうパックの統合問題への対応に追われたのだろうか、いつもより1週間も遅れてロンドンから小包が届いた。差出人はフォスター&サン。前々回のトランクショウでオーダーを入れてからフィッティングを経て約1年半、ようやくラウンドトゥの靴が届いたのだった。

箱を開けると、いつにも増して丁寧に梱包されている靴が見える。片足ずつシューバッグに入れ、さらに靴専用の気泡緩衝材に包まれていて、こうした細かな心遣いはフォスターならでは。日本人のスタッフがいる強みだろう。靴を取り出してみるとキャップ部分が鏡面仕上げされた端正な顔立ちのパンチドキャップトゥが現れた。ということで、前回このブログでも紹介したラウンドトゥに続く第2弾として、届いたばかりの靴を紹介してみたい。

1 靴の全体

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さっそく届いた靴を撮影してみた。出来上がりはスマートラウンドよりも通常のラウンドに近く、エドワードグリーンの#202ラストと良く似た印象を受ける。つま先がもう少しポンティだとロブ既成のフィリップⅡに近い感じになるだろうか。革は前回お伝えしたとおり、皺になりにくそうな肉厚の素材で、しっかりとした印象を受ける。初めてシンプルなパンチドキャップトゥ、しかもラウンドトゥでオーダーしたこともあって出来上がりをイメージしにくかったが、届いた靴は典型的な英国の紐靴といった趣で、暑いこの時期が早く過ぎて、グレーのスーツに合わせて出かけたくなる出来栄えだ。

2 靴の前面

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この角度からはあまり判らないが、アッパーは捻られてラストに釣り込まれている。もう少し横から近づいて見ると分かるのだろうが、いずれにしても複雑な曲線のラストに手で釣り込むことでこうしたひねりやねじれを加えることができるとのこと。手仕事の場合は「革の状態を見極めながら、最高の状態で最良のテンションを加えて引くことができるので、足に優しい履き心地の靴が出来上がる」と、あるブログに載っていたがなるほどと頷ける。殆どの人は写真のような角度から靴を見ることが多いと思うが、この角度から見ると綺麗なラウンドトゥが目を引く。

3 シームレスヒール

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今回の靴のために既にシームレスヒールをオーダーしてきたが、出来上がった靴をみて、改めてシームレスヒールはフォーマルな黒靴に合うと思った。フィッティングに関して言えば踵のホールドが甘くなるといった話を聞くし、技術的に難易度が高いというものでもないと聞く。だが、やはり見た目の美しさが光るし、イタリアの古い注文靴屋は長年履くうちにシームからアッパーが裂けるのを防ぐためにシームレスにしていると聞いたこともあるので、この仕様は意味がないというものではないだろう。尤も綺麗と分かっていていも履いている本人は殆ど見ることができないので、自己満足と言われればそうなのだが。

4 ライニング

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ライニングは今回もパープルを指定した。インソックの刻印については特に指定しなかったのだがマックスウェルが押されている。古色豊かなツリーはヒンジ付きの軽量タイプ。たぶんビーチウッド製ではないだろうか。メイカー側ではこうした旅行用の軽いタイプも用意しているが、もちろん3分割タイプのものもある。ところで以前も書いたかもしれないが、パリのディミトリゴメス氏はビスポークのツリーからデゥミムジュール(パターンオーダーのフルハンドメイド靴の意)の靴を作ることができると、マークグィヨ氏から聞いたことがある。試したことはないが、この靴のツリーも中々精度が高そうでぴたりとはまる。

5 比較その1

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参考にしたフィリップⅡとの比較。出来上がってみると一回りフィリップⅡより小振りに作られていることが分かる。全長はもとより全幅、キャップ部分など様々な部分で既成靴の大きさが目立つだけでなく、シェイプの甘さも見えてくる。一方マックスウェルの方はうまくフィリップⅡのスタイルを受け継いでいる。既成靴をサンプルにすること自体、非礼だったかもしれないが、それを上手く仕上げてくれたフォスター&サンには感謝したい。偶然だろうか、レースステイの長さは誂えも既成もほぼ同じであり、このあたりはビスポークのデータを既成靴に反映させているジョンロブ・パリのバランスのよさと言えよう。

6 比較その2

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2足目にオーダーしたセミブローグとの比較。オーダーの際、あまりキャップ部分が大きくならないようにリクエストしたこともあって、パンチドキャップの方がキャップ部分が若干短い。レースステイ、アイレットの幅、履き口などいずれも同じで、別のラストで作られているとは思えないほどだ。新しいラウンドのラストが先代のスクェアのラストを忠実にデュプリケートしていることがよく分かる。正直なところ、黒のパンチドキャップトゥはデザインがシンプル過ぎて今までオーダーする気になれず、ブローグやエプロンばかり注文してきたが、ようやく仕事向きの黒靴が揃ってきた。

7 ソール

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ベヴェルドウェイストの仕上がりは今回も素晴らしい。写真では見えないがヒールリフトの処理も素晴らしく、トップクラスのボトムメイカーならではの仕上げに、いつも感心させられる。写真では分かり辛いが、ウェイスト部分の中央にヘンリーマックスウェルの刻印が施されている。新しい試みなのだろうか。つま先にはメタルトゥチップ、ヒールトップにはフィリップスがセットされていて、手持ちの黒靴の中ではもっとも耐久性の高い仕様になっている。歩くときの引っかかりが気になって、今までは釘を2列打つ方法ばかり選んできたが、仕事で頻繁に履くにはつま先に金具があった方がよいので、これから黒靴は金具をつけるようにしようと思う。

8 比較その3

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踵部分を比較してみる。手前が届いたばかりのマックスウェル、後ろがサンクリスピンだが、アッパーの踵部分とソール終りのヒール部分の接合に着目して欲しい。手前のマックスウェルではアッパーの踵下部分とソール側のヒールリフト上端が一体化して、隙間なく密着しているが、後ろのサンクリスピンは踵とヒールリフト部分に段差があり、踵がヒールにただ乗っているように見える。ここがボトムメイカーの腕の見せ所で、しかも横から見ると踵のカーブの終わりから流れるようにピッチドヒールへつながっている。注文靴といえども通常はサンクリスピンのように仕上げているところが多いことからも、美しい靴を作る技術が極めて限定的であることが判る。

9 レース部分

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キャップ部分は到着後パレードグロスの黒で更に鏡面磨きを施している。小さめのパンチングが入ったキャップ部分、ストレートのアイレット、小さな穴のみ一列に配されたレースステイ両脇のパーフォレーション、黒のフィッシュテールに仕上げられた半カラスのウェイスト部分。全てがリクエストどおりのパーフェクトな仕上がりになった。この後は室内で慣らしをしながら盛夏の時期をずらして本格的に履きこんで行こうと思う。

今回届いた靴を含めて今までラウンドトゥをオーダーしたのはわずか5足、経験が少ない分理想のラウンドトゥを見つけるのはスクェアトゥよりも難しそうだ。これから暫くはオーダーの度に試行錯誤を重ねるかもしれない。だが、今回スクェアとは別のラストを新たに作ってくれたフォスター&サンならばじっくりと話し合う中で気に入ったラウンドトゥを作り出してくれるはずだ。レースアップブーツやフルブローグと、作りたい靴はまだまだある。一歩一歩ならぬ、一足一足ビスポークを楽しみたい。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

はじめてコメントさせていただきます。
いつも更新を楽しみに拝見させていただいております。

ほれぼれする靴ですね。英国の伝統的な美意識が凝縮されているように感じます。特に底面の仕上げが大変美しく、手製靴ならではのオーラがあります。この辺りはクレバリーとは違いますね。クレバリーは良く言えば味のある仕上げといいますか、、、

ところで、よろしければシューツリーについて一つ質問させていただきたいのですが、このような靴にピッタリに合わせて製作されたタイプは、履き込んでいくうちに緩くなってしまうことはないのでしょうか?

管理人様には到底及びませんが、私もこれまで国内で3足ほどビスポークの靴を製作していただきました。
しかしシューツリーは全て既製品をモディファイした物で、ネジ、もしくはスプリングの前後スライド調整機構が付いております。
私の場合、ネジのタイプだと履き込んだ後に少し前方にスライドする必要がありました。
英ビスポークのようにヒンジタイプだと、調整機構がありませんので、どうなのか疑問に思った次第です。

長々とすいません。よろしくお願いします。

ピンクパンサー様
当ブログにお立ち寄り頂き、コメントまで頂戴しまして大変有難うございます。これからもお時間のある時はお立ち寄り頂ければ幸いです。

さて、フォスターのボトムメイキングですが、仰るように大変丁寧でクレバリーとは異なります。ツリーの出来映えもフォスターはよりフィット感が強く、パリのジョンロブと似た雰囲気があります。

それからヒンジタイプのツリーのフィット感は履き込んでいくうちに変化するのかというご質問ですが、ヒンジタイプに限らず、3ピースタイプのものもネジでスライドするタイプのもののように長さの調節は出来ませんが、靴の長さが変わることはないからなのでしょうか?
ただ、ある程度靴を履きこんでいくと、初期の頃よりツリーのフィット感が若干緩くなるように感じます。アッパーの皺の伸び方を見たり、入れたときの感触を判断したりするとそう感じます。

もっとも、今のところそれほど緩くなっているとは感じていませんので、もし許容量を超えたと感じたらツリーもきっとメイカー側で調整してくれるのではと思っています。

管理人様
いつもながらのすばらしい出来栄えの靴ですね。英国の伝統的なラウンドトウで、わたしは、ロブの7000ラストの少しポインティーなトウより好きです。私は、黒く底光りする黒靴が大好きなのですが、上質な革で、磨きがいがありそうですね。私もそろそろ、ビスポークを考えていますが、外国のメーカーならフォスターかなと思っています。クレバリーはエレガントすぎて自分にはちょっと似合わないかもと思っています。管理人様は今年のトランクショーでもオーダーをされるのでしょうか。されましたら、ブログでのご報告楽しみにしておりますので、よろしくお願い申し上げます。

管理人様

早速ご丁寧な解説、ありがとうございます。

なるほど。確かにもともと精度の高いシューツリーでしたら、多少革が馴染んでも問題ないのでしょうね。
実は本日偶然、知人のシューメイカー(既成工場ですが)と話す機会があったので、同様の質問をしてみたのですが、適正な方法で作られたハンドソーンウェルテッドの靴は元々コルクの沈み込みが少ないから、特に問題ないはずとのことでした。
しかし、グッドイヤーウェルテッドの靴はハンドソーンよりコルクの充填量が多いので、ヒンジタイプだと問題のあるケースが多々見られるそうです。
底付製法とシューツリーの構造にも相性があるのかと考えさせられました。

ところで、管理人様はシンプルな黒のパンチドキャップトゥのオーダーは今回が初めてですよね?これだけ素晴らしい靴をたくさんお持ちでありながら、少々意外な感じがいたします。

などと言いながら、私は基本中の基本である、黒のキャップトゥを所有していないことに改めて気付かされました。
社会人失格でございます。

一年中3ピーススーツやダブルを好んで着用している為、パーフォレーションやメダリオンの入った、少しデザインにボリューム感のある靴をついつい購入してしまいます。

度々、長文失礼いたしました。

あんぽんたん様
コメントを有難うございます。

フォスターで注文をとお考えとのこと。コメントからはラウンドトゥを注文されるのかな、と想像してしまいました。いずれにしましても、フォスターならばお気に入りの靴を作ってくれるのではと思います。オーダーされましたら印象やご感想などお寄せ頂ければ幸いです。

当方は今回のトランクショウで初のスリッポンをオーダーしようと思っています。また新ラストを作成することになりそうですが、ローファーを何足か欲しいところなので。
後はスクェアのラスト、ラウンドのラストでそれぞれ1足ずつオーダーを入れようと思っています。ただ、合計3足になると一編に出来上がった場合大変なことになりそうですので、作成時期をずらして依頼しようと思っています。オーダーだけならばメールでも済むかもしれませんが、細かなニュアンスは職人さんと直接話した方が良いのでトランクショウの時に注文しようと思います。

ピンクパンサー様
ハンドソーンウェルテッドとグッドイヤーウェルテッドの違いのお話、なるほどと頷いてしまいました。特にロンドンの靴屋の場合、インソールとアウトソールの間にはコルクとは別のものを敷き詰めているメイカーもあるので、沈み込みの量も既成のグッドイヤー製法で作られた靴とは違うのかもしれませんね。

それから黒のパンチドキャップトゥですが仰るとおり初めてで、茶色のものをボノーラ(サンクリスピン)でオーダーしただけです。もっといえば、シンプルな黒のストレートチップを未だにオーダーしていない有様です。

ピンクパンサー様と同様足元にボリュームのあるブローグシューズがお気に入りということもあって、シンプルな靴はオーダーしなかったのですが、ある時ショップの店員さんが綺麗に磨きこまれた黒のフィリップⅡを履いているのを見て「いいなぁ」と思いオーダーした次第です。

ただ、恐らく最後まで黒のストレートチップやプレーントゥはオーダーしない様な気がします。正直なところ、黒のストレートチップは冠婚葬祭や慶事以外全くといっていいほど履いていません。ですので唯一の手持ちであるE.グリーン製マスターロイドの黒ストで足りてしまう現状があります。

黒のストレートは、頻度こそ少ないものの必修ですね。私は日本特有の様式に耐え兼ね、紐付きとサイドエラスティックの二足、誂えました。それと仏事には、やはり黒のスーツを使われますか?当方、手持ちの黒スーツ どうも気に入るらず控え目な光沢の生地で新しく誂えるか迷っています。どうぞ、ご助言を!それと黒靴は 光沢を抑えたマットな革で誂えました。

春琴 様
コメントを有難うございます。

なるほど、仰るとおりサイドエラスティックのプレーントゥならば冠婚葬祭にも使えそうです。その場合、木型自体の美しさがポイントになりそうですね。以前オーダーしたジョンロブパリの木型が気になっていたので、そろそろ何とかしようと思っています。

仏事は立場上日本の習慣に合った服装をしなくてはならない場面が多いですが、それでも急な場合はダークグレーのスーツで参列する時もあります。

お気に入りのスタイルでブラックスーツを誂えるかどうか迷っておられるとのこと。春琴様ならば素敵な1着を作られるのではないでしょうか。私も日本の習慣に習いつつ、せめて気に入った素材で、気に入ったスタイルのブラックスーツをと、英国のテイラーで誂えたことがあります。カッターは日本の習慣を理解するのが難しそうでしたが。

御返事ありがとうございます。
夜はミッドナイトブルー昼はダークグレー。いずれも、タイのみブラックで参列致しておりましたが、やはりスーツも黒が日本的ですね。吊しは光沢があり派手な黒が鼻持ちならず、諦めて潔く誂えます。装いに気を使われる方々は皆さん悩まれてますね。いっそ紋付き袴の和服も考えましたが手入れが面倒で。ご助言感謝致します。

フォスターとは関係ありませんが、ついにカーネラさんがクレバリーの持ち株を売却したそうですね。何しろ韓国系の方が買ったとか。なんだか複雑な気持ちです。

わざわざ売るなんて。なにかあったんですか?

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