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2009年10月 9日 (金)

Round toe(ラウンドトゥ)

9月最終の月曜日、秋らしい爽やかな日の中を都心まで出かけ、フォスター&サンのトランクショウに参加してきた。平日の都心は休日と違って買い物客で混雑することもなく、気持もゆったりとする。トランクショウでは、今回日本では初めての仮縫いということもあって、いつもより長居をしてしまった。

「なぜ、フォスターで今更仮縫いを?」と思われたかもしれないが、実は前回の注文でつま先をラウンドトゥに変更したところ、フォスター&サンでは従来の木型(スクェアトゥ)とは別にラウンドトゥの木型を新たに起こして作成する方法を採用したためである。このあたりは以前、当ブログでも紹介している。今までの木型がベースとはいえ、新たな木型ということになれば仮縫いは必要だろう。同じようにスクェアとラウンド両方の木型を作成しているジョンロブ・パリでは後から作ったスクェアの木型の仮縫いをしなかったために、フィッティングに課題の残る靴が出来た経験があるので、フォスター&サンのやり方は安心できる。

1 仮縫い状態の靴

06

前回、新たにラウンドトゥの靴をオーダーするにあたって、フォスター&サンには「ロブ・パリのフィリップⅡよりスマートなパンチドキャップトゥを作って欲しい」と依頼していた。そして今回、期待が高まる中、フィッティングがスタート。クレバリーのように仮の踵付きではなく、写真の状態の靴を履いて、踵の高さだけ厚みがある平板の上に両踵を乗せた姿勢でフィッティングの状態を診た。インステップからヴァンプ、つま先、アーチ部分まで、フィッティングは申し分なく、ソールが付いた後は更にフィッティングが高まるとのことだった。写真を見ると分かるが、フォスター(英国注文靴屋はどこもそうらしい)ではキャップトゥを製作する際、プレーントゥの上にキャップを被せている。つま先部分の革が2重になるが、その分頑丈になる。これが英国の注文靴であり、他所の国ではキャップとキャップより後ろの部分を縫い合わせて2ピース構造のままラストに釣り込む工房もあるそうだ。昔からの方法で手間暇かけて作っていることが分かる画像だ。

2 靴全体の比較

A

フォスター&サンのラストはインサイドストレート、アウトサイドカーブのイングリッシュラストだが、フィリップⅡの#7000のラストはインサイドもカーブしている分つま先がフォスターのものよりやや尖った印象を受ける。ただ、つま先はトゥパフのデザインによって印象が違うので、まずは1足目を完成させてから担当の方と相談しようと思っている。パターンはフィリップⅡを十分参考にしながら作ったようで、この角度から見るパンチドキャップの端の位置、そこからレースステイ下部までの長さ、ストレートなアイレットの並びなど「フィリップⅡを超えるパンチドキャップトゥを」というリクエストに応えるべくリサーチをした様子が伺える。やはりフォスターにラウンドトゥの靴を注文してよかったと思う。

2 靴上面の比較

C

上から靴のシェイプを見比べたところ。フォスターの方は仮縫い状態なのでウェルトの幅が広いままだが、この後ソールをつける際にかなり削られるので、写真下のフィリップⅡ同様上から見た時にほとんど見えなくなるだろう。それにしても、上から見たキャップの大きさといい、アイレットの間隔といい両者は殆ど同じバランスに見える。もっとも、これから注文靴の方はアーチ部分のフィットやベヴェルドウェイスト、小振りなヒールリフトなどフィッティングと見た目の美しさの両立に向けて手仕事が加わるので両者の違いははっきりとするだろう。フォスターの方はフィッティング直後に撮った写真だが、ヴァンプ部分に入るかすかな皺が良質の革を使っていることを物語っている。

3 靴側面の比較

D

この角度から見るとビスポークならではといったシェイプの凄さがよく分かる。ジョイント部分からつま先まで、そこから反対の踵に至るラインは人の足に近い。靴のスタイルを決定づけるアイレット下から両ウェイスト部分に伸びるダブルステッチのラインだが、本来フォスターのそれはややカーブがきつく直角に近い感じでウェルトにつながっていたと思う。そこで、注文時に「フィリップⅡのようになだらかなカーブを描いて」とお願いしたところ、写真のようにイメージどおり作ってきてくれた。これだけイメージに近い感じで仕上げてくれるところがフォスター&サンの魅力の一つだ。

4 つま先部分の比較

E

つま先部分を比べてみた。フィリップⅡの方がややポインティだが、その分捨て寸が若干長い。パンチングの穴の大きさは最近のフィリップⅡ同様小さめを依頼しているので控え目な印象だ。トゥはウェルトが付いた状態のままカットされていないので全体的にボリュームがあるように見えるが、アウトソール装着後はスマートラウンドの名のとおりスタイリッシュな靴が完成しそうだ。受け取ったらつま先部分を鏡面仕上げにして黒靴のコントラストを楽しみつつ、グレースーツやネイビージャケットに合わせてみたい。

5 レースステイ周辺の比較

F

レースステイ両サイドのパーフォレーションは大きくフレアーしていて、小さな穴が等間隔で細かく並んでいるのがフィリップの特徴だが、フォスターでは抜かりなく基本のパターンに調整を加えている。注文時には、正面と斜めからの写真を印刷して渡し、全体のイメージを掴んでもらったが、ステッチやパーフォレーションの入り方、穴の大きさといった細かなディテールについてはロブ・パリのウェブサイト等を参考に今回の注文の担当である松田さんのほうで調整を加えて下さったそうだ。どちらかというと日本のお客さんは細部にこだわることが多いそうだが、ここまでしてくれるとなると脱帽である。

6 踵部分の比較

G

極めつけがシームレスヒールの部分。前回に続いて要望どおりシームレスヒールにで仕上げている。本来はシームを設けて踵部分のフィッティングを高めるのがフォスターのやり方かもしれないが、顧客のリクエストを上手くアレンジしてくれる。写真をみると分かるがフィリップⅡの方は履き口上部に間隔のあいたステッチが2列入っていて、下の一列は踵を半周取り囲むように途中で終わっている。注文時にこのステッチの入り方について話題にしたものの、正直なところ細部についてはお任せしようと考えていたが、何気ない会話から客の望みを見極め、作品に反映させるプロセスは正にビスポーク。

今回、申し分なく仮縫いが終わり、これからボトムメイキングを経て年明けには素晴らしいパンチドキャップトゥが完成することだろう。フォスター&サンでは現在注文が増えていて、新規の注文、継続の注文を問わず、通常よりも完成まで時間がかかっているようだ。靴屋に限らず仕立て屋でも顧客の注文数が減る中、フォスター&サンが順調ということは、今後エクスクルーシヴな革やデザイン、デッドストック素材が集まるといった嬉しいニュースが増えそうな気もする。そう思うと完成まで多少待つ時間が増えることも全く苦にならない。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
惚れ惚れするシェイプですね。本当にきれいです。
私も次は、ラウンドにするつもりですが、これからのオーダーはラウンドの割り合いを多くされるんですか。フォスターに限らず、クレバリーもですか。気になります。CRESTさんのスピーゴラの最新作も、ラウンドの靴でした。私自身も、最近、既製はラウンドばかりで、特にアメリカの外羽根を面白がってよくはいてます。

deibu95さん
これから先のオーダーはまだ考えていませんが、ラウンドトゥのラストでフルブローグ(黒)カントリーブーツ(茶ノルウェジアン)、セミブローグ(ロンドンタン)あたりを漠然と考えています。
ただ、フォスターのスクェアラストは大変気に入っているのでオーダーを入れ続けるつもりです。また、クレバリーではスクェアの靴をお願いしていこうと考えています。
既成の靴では私もラウンドトゥのものが気になっていて、オールデンのタンカーやウェストンのクロコダイルローファーが欲しいです。

管理人さん

やはり、フォスターだけにするんですね。
実は、アメリカの外羽根を最近良く履くようになって
ウェストンの外羽根のダブルソールが履きたくなって
問い合わせたら、もう廃盤なんですね。あるときはトリプルソールのほうが気になっていたんですが、ないとなるとほしくなりますが、廃盤で、新たにオーダーすると、18万くらいになるそうです。あきらめました。

とても素晴らしい出来栄えですね!完成品の画面アップが今から楽しみです^^

deibu95さん
ウェストンの定番品もだいぶ少なくなりました。何より新しいロゴはなんとも頂けません。もしリクエストできるならばインソックのロゴスタンプだけは昔のものにして欲しいくらいです。

てつさん
ご覧頂き有難うございます。完成品が出来ましたら感想などを頂けるとありがたいです。

ご無沙汰しております。
ラウンドは良いですね、私も スリップオン ブーツ それぞれに、スクェア ラウンド と オーダーの度に、木型は増える一方です、職人任せで、実際の所 自分の木型が幾つ在るか把握して無い有様です。最近は、春夏の軽い服に合わせて、マッケイを オーダーしております。 管理人様は、マッケイのビスポに御興味 ございませんか?

春琴さん
訪問有難うございます。
ご自身の木型が幾つあるのか把握されていないとのこと。それだけスタイルごとに木型を作り分けるということですので、きっと素晴らしい靴屋とお見受けしました。
ところで、マッケイのビスポークとは流石ですね。私は考えたこともありませんでした。
何せ男の靴はグッドイヤーと教わってきたVAN世代ですので。

お疲れのところ、お返事ありがとうございました。私も四十半ばに、差し掛かる所ですが、始めて マッケイを試し 久々に目から鱗でした。学生時代に経験した ミケーネ・ネグリ別注の KITON カシミアJKを思い出しました。共に 理屈抜きに軽く快適で、ある意味 頼り無さは残りますが 先出の JKの時も、そうでしたが こうゆう時代が くるのかと痛感しました。 スリーエスティツ 18OZには、ウェルト式を アイリッシュ リネン 12OZには マッケイを使い分けて楽しむつもりです。

春琴さん
確かに仰るとおりで、既成ではありますがグッチのビットローファーやタニノクリスチの靴は爽快だったことを思い出しました。
服のウェイトやTPO(これは和製英語だそうですがメンクラに良く載っていました)で履く靴の作りを変えて楽しむというのはとても素敵ですね。

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