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2009年3月29日 (日)

イタリアンクラシックシューズ

イタリアのクラシックシューズというとスクェアトゥが代表的なスタイルで、実際靴屋のウィンドウにはいつも流行に関係なくスクェアトゥの靴が飾られている。誂え靴でいえばミラノのメッシーナも幅広のスクェアトゥがハウススタイルだ。そのメッシーナだが、初めて訪問してからもう9年が経つ。ミラノ市内へは空港からリムジンバスで中央駅に入ることが多く、駅前のホテルをよく利用した。メッシーナは中央駅とドゥモのちょうど中間あたりに位置し、地下鉄でも行くことができるが、駅前のホテルからだと歩いていくことも可能で、店の開く時間に合わせて散歩がてら歩いていくことも多かった。ボルタ通りに面した店はとても小さく奥には工房もあるが、気が付かずに店を通り過ぎてしまうほど目立たない店だ。店を切り盛りしているのは親方のガエタノさんと息子さんで、二人とも英語があまり通じないので近所のバールのお姉さんを呼んで通訳してもらうこともあった。時には靴を受け取った後にそのバールで親方とコーヒーを飲んだこともあって、懐かしい思い出が沢山ある。アラン・フラッサーが著書(Style and the Man)で、故ジョージクレバリーが在籍したクリフォード街の名店タックゼックのような靴と例えたミラノの小さな靴屋メッシーナ。前々回のブログ「ライトグレーのスーツ」でも少し紹介したメッシーナの靴を今回はもう少し詳しく紹介してみたい。

写真1:メッシーナの靴

Top02

事前にアポイントメントを取った際、日本から「一番足に合う靴をもってきてほしい」と言われたため、あれこれ迷ったが「ロイドネームの#32ドーバー」を持参した。採寸後、マスターロイドを預けて帰国。親方は採寸データに基づいて木型を作り、それをドーバーに入れたり、インソールのフットプリントを見たりしながら微妙な修正を加えて木型を完成させたようだ。ミラノにいる顧客の場合はプレフィッティングを行って修正することもあるそうだが、海外の顧客ということで最もフィットする既成靴を参考に木型を作り、プレフィッティングなしで靴を仕上げた。1足目は一番右側のノルヴェジェーゼでやや緩めだったが、2足目は左端のクラシックな茶のフルブローグを注文、履き皺の入り方が左右同じことからフィッティングがの精度が上がってきていることが分かる。3足目は中央の黒のセミブローグだが更に快適なフィッティングを提供してくれる。

写真2:内羽根の靴

Inside

メッシーナの靴は幅広のスクェアトゥがハウススタイルで、実際インサイドもアウトサイドもストレートに近いような印象を受ける。トゥデザインの種類はさほどなく、殆どの場合は写真のように一番オーソドックスなメダリオンで仕上げてくる。また、茶色の靴の場合は通常左のフルブローグのようにベベルドウェイストに仕上げてこない。一方ミラノで黒の靴を注文するということは殆どイブニング用〔つまりフォーマルに近いということ)と考えられるのでよりエレガントなベベルドウェイストで仕上げてくる。メッシーナのタンは写真を見ても分かるように履き口よりも長めに作られていて、履く時にこれを引っ張って足入れするとスムーズに足が納まるので重宝する。またメッシーナではコバをロウで目付けしているのでウェルトの出し縫いが見えず、一見するとマッケイのように見える。

写真3:靴の長さ

Length

メッシーナの靴を上から見てみると、外羽根のノルヴェジェーゼはダブルウェルト(つま先から踵まで一周360度縫われているもの)のため靴の長さがやや長い。一方内羽根の茶と黒の紐靴ははどちらもほぼ同じ長さとなっているが、黒のアデレイドはレースステイの部分も他の2足より若干短くできているように見える。黒という色のせいだろうかそれともフォーマルな靴は小さめに作るからだろうか。そのアデレイドだが、インサイドのカーブとアウトサイドのカーブがほぼ同じ角度でつま先に向かって細くなっているようで、確かにタックゼックのハウススタイルと似ている感じがする。

写真4:ライニング

Lining

ライニングを見ると通常ミシンで縫われているライニングの継ぎ目がハンドで縫い合わされている。これはライニングの段差をなくして履き心地をよくするための手間隙だろう。ここまで丁寧な靴作りを行っているのはメッシーナ以外に知らない。ロンドンの靴屋はライニングに関してはあまり気を使っていないようで結構段差があるし、フランスの靴屋でいえばロブパリがライニングの継ぎ目の段差を極力少なくするように剥いてからミシンで縫っているが、それが精一杯だろうか。メッシーナの工房には機械が殆どなかったことを覚えているが、その分手仕事で名靴を作り出しているのだろう。

写真5:ヒール

Heel

メッシーナの特徴といえばシームレスヒールが挙げられる。ガエタノさんは「長年愛用しているうちに革が古くなってくると、ある時突然シームの部分でアッパーが2つに避けてしまうことがある」とのことでシームレスにしていると話してくれた。1足目のノルヴェジェーゼはアッパーパーツを縫い合わせるためにシームが必要なのだがその場合でもインサイドのカウンター内側に縫い目をずらして仕上げている。アッパーの縫製は別の場所で作ってもらっていたのかもしれないが、靴作りの工程の殆どを小さな工房で仕上げ、永く愛用することの出来る誂え靴を適価で提供するメッシーナは素晴らしい店の一つだ。

写真6:レースステイ

Lacestay

レースステイ両脇のパーフォレーションラインは小さな○が続くスタイルでヴァンプ部分で左右に大きくフレアするタイプである。これはローマのガットと同じ靴のスタイルだがガエタノさんはガットの職人さんの下で修行したことがあるそうで、このフルブローグはガットのものと非常によく似た仕上がりになっている。また、通常レースステイの下は羽根が開き過ぎないよう革の半月で覆われているか糸で留められているがメッシーナの場合は服飾に用いられるような閂留めが施されており一つ一つの部分で丁寧な作りが光る。

メッシーナの靴はミラノのショッピングゾーンから外れていることもあって日本人の客が訪れることも殆どない知られざる名店だが、親方がリタイアする前にもう何足か注文しておきたい店の一つだ。近いうちに必ずやミラノを訪問して気に入ったデザインの靴を注文しようと考えている。

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誂え靴(Bespoke shoes)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
メッシーナ!とても素敵ですね。これぞイタリアのクラッシックという感じですね。
私は90年代のマンテラッシ セミブローグ 茶を所有しております。
幅広クラッシックなスクェアトゥは大好きなのですが、
最近日本国内で手に入れる事は難しくなりましたね。
イタリア本国にはメッシーなのようなクラッシッックなスタイルを守り続けているメーカーがまだあるのですね。
いつかイタリアへ行ってみたいものです。

jubilee39msさん
早速のコメントを有難うございます。
マンテラッシのスクェアトゥはイタリアンスーツにピタリと合うところが流石だと思います。そのマンテラッシ、何回か日本で展開されているのですが中々定着しないようでそこがちょっぴり残念です。
メッシーナの靴は作りもデザインンも履き心地もよいので、近いうちに再訪して2~3足まとめて注文しようと真剣に思っています。

メッシーナは丁寧な造りで素晴らしいです。メッシーナで修行した古幡氏が赤坂で工房をオープンしましたね!

てつさん
コメントを有難うございます。
古幡さんのウェブページを早速見させていただきました。見本として掲載されている靴はガットやメッシーナの雰囲気とはやや異なる気もしましたが他のウェブサイトで見た靴は確かにメッシーナの雰囲気を感じます。

こんばんは、メッシーナの靴いいですね。イタリアらしいLASTで素敵です。自分も是非所有したい靴です。

最近、古幡氏の靴が気になっています。イタリアにはなかなか行けないので。

タカタカさん
メッシーナの靴、イタリアンスーツとの相性はとてもよいと思います。何より作りの丁寧さが光ります。
ただ、仰るとおりメッシーナの店はミラノのショッピングゾーンから外れているし、英語が通じにくいこともあって、メッシーナだけのためにオーダーに行く機会が中々ありません。
ミラノでスーツやシャツを誂えていれば行く機会も増えるのでしょうが・・・。

はじめまして。
楽しく読ませていただいております。
私も靴好きで、フィレンツェに行く際は、マンテラッシの靴を買うようにしています。
差し支えなければ、メッシーナでオーダーする際の平均的な金額を教えていただけないでしょうか。

totomさん
はじめまして、当ブログへの訪問ならびにコメントを頂き有難うございます。
さて、ご質問のメッシーナの件ですが最初にオーダーした頃はリラの時代でした。3足目の受け取りの頃ユーロになり当時のユーロを日本円に換算してで16万円程度だったと記憶しています。今は新規のお客を受けているのか、1足いくらなのかといった事も分かりません。
役に立たない情報で申し訳ありませんが何か分かりましたら逆にお教えください。

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