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2009年1月 2日 (金)

Norwegian welt

ノルウェジアンウェルト、イタリア語でノルベジェーゼと言われる製靴方法は、元々登山靴やスキー靴などで用いられていたものをタウンシューズに応用し、独特のスタイルに仕上げたもので、本家ステファノブランキーニやサントーニの靴などは大胆なウェルトの張り出しやステッチが当時流行していた細身のパンツとよく合っていた。

最近のパンツのシルエットは膝や腿のあたりが一層スマートになってきていて、コバの張っていない靴の方がマッチするようだ。それでもノルウェジアンウェルトの靴はウェルト周辺に走るステッチがハンドメイドを主張するアクセントになっていて、今見ても魅力的だ。そこで今回はノルウェジアンウェルトの靴達を紹介してみようと思う。

1:ノルウェジアンウェルトの靴

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写真左側の2足がラッタンジの既成靴、右側の2足がメッシーナとアルカンドの注文靴。ラッタンジは靴のトレンドを取り入れるのが上手いメーカーで、写真の靴より一層コバの張っている靴を展開していたこともある。その後ベルルッティが流行り始めるとミラノにあるラッタンジのショップによく似たモデルがディスプレイされていた。ただ、フィレンツェのショップ「マウロボルポーニ」の店員によれば「ラッタンジはハンドウェルト製法、ベルルッティはブラック製法、ラッタンジの方が手間がかかっている。」とのことだったが、確かにラッタンジの靴は今見ても魅力的だ。

一方、注文靴の方は(アルカンドはサンプル品)長く履くことを前提としていることもあってコバはあまり張っていない。もちろんアッパーとウェルトを縫う糸目(掬い縫い)もチェーンステッチではなくシシンプルなステッチとなっている。ある時、メッシーナのノルベ(イタリア語のノルベジェーゼの略)を専門家に見せたところ、「出し抜いの後、ウェルトにロウを盛って目付けを行い、糸が見えないようにしている。」との説明を受けたことがあるが、こうしたことからも注文靴のノルウェジアンウェルトは全体的に控えめな仕上がりとなっている。

2:シルバノラッタンジ セミブローグ(写真1)

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何回も登場するこのラッタンジだが、それだけ今もよく履いているということになる。このチェスナッツ色はイタリアでアランチャと呼ばれる色目からも分かるように殆どオレンジ色に近い。アッパーとウェルトが接する部分にのすぐ上にステッチが見えている。更にウェルトの凸の部分に細かなステッチが入り厚めのソールを留めている。

シルバノラッタンジ セミブローグ(写真2)

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木型がややスクェア気味のショートノーズということもあってコバの張り出し方はチャーチのグラフトンやトリッカーズのカントリーといったグッドイヤーの靴と殆ど変わりない。それでも2本のステッチがコバ周りを華やかにしてグッドイヤーの靴にはない存在感を放っている。

3:シルバノラッタンジ ヴェンティベーニァ(写真1)

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もう1足のラッタンジは4アイレットのダービー。箱にはヴェンティベーニァと書かれていたものでミラノの直営店で購入。以前日本の雑誌でベンティベーニァ製法と書かれていたが、昔の靴屋の名前とのこと。前半分にチェーンステッチが施され、その下の凸の部分にウェルトを縫い付ける糸と更にその外側にウェルトとソールを縫いつける糸が見て取れる。

シルバノラッタンジ ヴェンティベーニァ(写真2)

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賑やかな靴の前半部分はそれだけに留まらず、精緻なU字型のつまみ縫いやつま先中央のシャドーステッチと合わさって圧倒的な存在感を見せる。それに比べて靴の後半部分はシングルステッチだけとなっており実にあっさりとしたものだ。アイレットも4つと、甲まわりのシンプルさが印象的なスタイルとなっている。

4:メッシーナ ノルウェジアンダービー(写真1)

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つま先のスプリットが朴訥とした雰囲気のミラノはメッシーナの注文靴。ガットの職人と同じ職人の下に弟子入りしたこともあってブローグシューズなどはとてもよく似た雰囲気だ。ウエルトの凸の部分からアッパーに向けてステッチが入っているがウェルトを縫う糸はロウを盛って目付けされているので見えない。

メッシーナ ノルウェジアンダービー(写真2)

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ここの靴底は納品の際にナイフで革の靴そこに網目模様をつけて滑りにくくしてくれる。昔の注文靴屋の手法なのだろうか、遠く離れたニューヨークの注文靴屋でも同じ処理を行っている写真を見た。1足目ということもあってフィッティングはやや緩めだが、独特の雰囲気があって今も履いている。

5:アルカンド ノルウェジアンダービー:サンプル(写真1)

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サンプルということもあって、丁寧で精緻なステッチが光る。ウェルトとアッパーを縫い合わせる糸とウェルトとソールを縫い合わせる糸が整然と並ぶウェルト周辺は特に美しい。ウィールによる目付けが外側に縫い付けられたウェルト上部に施されており、洋書「ハンドメイドシューズ」に載っている「オーナメンテーション」の項と同様、手の込んだ仕上げだ。

アルカンド ノルウェジアンダービー:サンプル(写真2)

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アッパーに施されたU字型のつまみ縫いのステッチも大変細かい。ヒール周りまでダブルステッチが施されており、職人の優れた技術を余すことなく結集して作利上げたという趣だ。見本ゆえ注文靴のフィット感は望めないが、靴単体として見ても、後世に残しておきたい素晴らしい見本の一つである。

ノルウェジアンウェルトの靴を履く人は殆ど見かけなくなったが、コバの張り方が極端でなく、手仕事が感じられるものはグッドイヤーの靴と同様あまり違和感なく履けると思う。むしろ足元に重量感やアクセントが欲しい時はグッドイヤーの靴よりも向いているように感じる。

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コメント

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

ラッタンジのヴェンティベーニア、すばらしいですね。日本で、鈴木氏が、してくれないかなと思います。

アルカンド、やはり名店といわれただけのことはありますね。この技術が受け継がれなかったのは、残念ですね。

deibu95さん、明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。また、早速ブログを訪問して下さいましたこと、有難うございます。

ヴェンティベーニヤ、鈴木氏ならばやってくれるのではないでしょうか。それからアルカンドですが、掲載したサンプルの靴はともかく丁寧な作りです。ぜひとも1足作ってもらいたかったのですが・・。近いうちにメッシーナさんに頼んで同じ物を作ってくれないか聞いてみようかとも思います。

明けましておめでとうございます。

早々、ノルウェジアンウェルトの説明をしていただきありがとうございます。今まで敬遠していましたが、こうして見ると魅力がありますね。
次は所有したいと思います。ラタンジの物が欲しいのですが、恐ろしいほど高額なのでちょっと無理です。

本年も宜しくお願い致します。

明けましておめでとうございます。アルカンドの靴はとても魅力的です。羨ましいです^^
金欠なので既製靴をバーゲンで買いました。トリッカーズのブローグブーツです。
オーダーしたいです^^
今年もよろしくお願いいたします。

タカタカさん、てつさん。
明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。また正月早々ブログを訪問頂き有難うございました。
タカタカさん
確かにラッタンジの靴の値段はかなり高くなってしまいました。ただユーロが20%以上下落している今は幾分値段も安くなっているかもしれません。ラッタンジのサイトからオンラインで注文してみるのも手ではないかと思ったりしています。ただ、今もラッタンジはノルヴェの靴を作っているのか分かりませんが。
てつさん
アルカンドの靴、手持ちの注文靴で一番長いレングスです。ウィズが細いのですが靴作りの技術が見て取れる貴重な1足となっています。そうそう、トリッカーズのカントリーブーツを購入されたとのこと。いいですね、実は私もぺディウェアのサイトでセールをチェックする際、真っ先にトリッカーズを見ました。最近レッドウィングやダナー、トリッカーズなどごつい靴が気になっています。

はじめまして!!
ブログを楽しく読ませていただいています。
特に靴のコレクション、すごいですね!!!

特に興味を持ったのはメッシーナです!
このメゾンについてあまり情報がなかったので、どんな風なのか知りたいと思いました!
ぜひ教えていただけるとうれしいです!

ペイントさん
はじめまして。当ブログへのお立ち寄りならびにコメントを頂き有難うございます。
ご質問のありましたメッシーナですがミラノの中央駅とドゥモとちょうど中間ぐらいのところにある小さな誂え靴屋です。詳しくはアランフラッサーのスタイルアンドザマンのミラノ編に載っていますが、靴のスタイルはローマのガットと同じ流れを汲むスタイルで、ソールが平らで反っていない(トゥスプリングがあまりない)タイプの靴です。幅広のスクェアトゥが特徴ですがラウンドトゥも中々のものです。
最新のブログにもメッシーナを載せましたのでぜひご覧下さい。

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