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2008年3月 8日 (土)

サンクリスピン(Saint Crispin's)

今回はウィーンに会社を設立し、ルーマニアのファクトリーでハンドメイドのビスポークシューズやプレタポルテを作っているサンクリスピンを紹介しようと思う。サンクリスピンとの出会いはフィレンツェのボノーラでビスポークをしたのが始まりである。

サンクリスピンの靴(左4足はボノーラネーム、一番右だけがサンクリスピン)

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実はボノーラの下請けがサンクリスピンであることを知るのはずっと後になるのだが、当時ファクトリーであったサンクリスピン内部で様々なビジネス上の課題があったようで、最初の靴の仮縫いのために2度フィレンツェを訪れなくてはならず、結局納品まで2年近くかかったことや、出来上がった1足目の靴(写真一番左)の内羽根が閉じ気味で2足目のオーダーと一緒に修正に出したことが思い出される。

1足目と2足目の違い

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2足目では捨て寸を長く取ることとつま先をスクェアにすることを当時のフィッター、ダニエレ氏に依頼、完成したのが上の写真右側のセミブローグアデレイドである。1足目かと2足目を比べると靴自体のシルエットが美しくなっているだけでなく、甲を中心にフィッティング上の課題も解消されている。素材は左のミディアムブラウンがデュプイのカーフ、右側はイタリアンカーフをブリーチしたものにバーガンディを塗りこんで色をつけている。このやり方はロンドンのフォスター&サンと同じようで自然な感じの色むらが楽しい。

2足目から3足目の変化

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3足目になると注文から納品まで全てがスムーズに運ぶようになり、ダニエレ氏と細かく打ち合わせることもなく、気軽にフィレンツェに立ち寄り、受け取ることができるようになった。3足目はボックスカーフのフルブローグを注文し、つま先のデザインはダニエレ氏に任せたのだが、その結果出来上がってきたものは、NYのオリバームーアのサンプルにあるバタフライのパーフォレーションであった。

3足目から4足目の変化

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これまで注文した3足はアーチ部分こそ絞り込まれているものの、アーチの反対側のウェルトはべヴェルドウエストではなかったので、4足めではウェスト部分へのリクエストとシームレスの踵を依頼した。最初はスェードで作る予定であったが、旅行の最後に急遽気が変わった。年末欧州旅行、12月30日の夜だったが、ローマからフィレンツェに電話をかけ、ダニエレ氏に出てもらい、コードヴァン素材の有無を聞いた。革のサンプルを全く見なかったが、電話の向こうでダニエレ氏が「アメリカはホーウィン社のいいものがある。ただし料金はやや高くなるけどよいか。」と聞いてきたので全て了解し、素材を変更したこともよき思い出の一つである。こうしてて出来上がったのが上の写真右側のギリーシューズになる。

4足目から5足目の変化

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1足目のころのように納期が遅れることもなくなり、デリバリーがスムーズに行くようになると、やがて日本でも青山にボノーラの路面店が開店し、ダニエレ氏も来日、再会を果たした。ところが今度はサンクリスピン側ではなく、ボノーラ側に課題が起こり、ダニエレ氏がボノーラを辞めることになる。辞める直前だったのだろうか、フィレンツェから直前メールで5足目の完成品(ウィングチップブーツ)を「東京に送ろうか」とのオファーが届いた。ダニエレ氏がその後ボノーラを辞めるとは知らず、「取りに行く。」と伝えた。その年の瀬に訪れたフィレンツェのショップには既にダニエレ氏の姿は見えず、見知らぬ店員が2名いた。ようやく探し当て、奥から出してきた5足目は仕上がりも代金も違っていたため、受け取らずキャンセル扱いとなった。この時点でボノーラに来ることは二度とないだろうと確信した。

その後気になっていた自身の専用のラスト#B027についてウィーンのサンクリスピンオフィスに確認したところラストを保管していること、好みのデザインでビスポークすることやプレタのモデルの中から同価格で細かな仕様を変更した9分仕立てのハンドメイドシューズを注文することも可能ということがわかった。

そこで注文し、デリバリーされたのが上の写真右側のフルブローグアデレイドである。プレタのサンプルからリクエストしたもので、素材はボックスカーフでライニングは赤、ベベルドウェイストの仕様を頼んだ。注文がプレタのサンプルからということで、ウェスト部分は木釘仕上げ、出し縫いはマシン、コバを機械で削ったプレタベースの注文靴が届いた。

プレタベースとビスポークラインのソール形状の違い

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上の写真を見ると分かるがやはりビスポークライン(下)とプレタ(上)ではウェスト部分の絞りが大きく異なる。サンクリスピンの靴はボノーラの時からビスポークラインでもウェルトのコバは機械で削って平らに仕上げている。さらにプレタは出し抜いも機械で行っているとのことで、ハンドメイドシューズとしての迫力がやや足りないと感じる。ただ、オーダー価格はロンドンのビスポークシューメイカーより手頃であり、注文する価値のあるシューメイカーである。

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コメント

こんばんは、サンクリスピンは昨年アローズで既成靴ですが初めて見て、デザインとラストの形が美しいと思っていました。
素晴らしいオーダー靴、いいですね。自分もお金に余裕があれば・・・・。

海外の職人と、お話ができるのは羨ましいですね。
いつも、様々な事を紹介してくださり助かります。
今後もお時間あれば、宜しくお願いします。

タカタカ様
コメントを有難うございます。
今は分かりませんが、5足目をオーダーした頃のサンクリスピンの靴は作りが丁寧で、価格は1足15万円しなかったように思います。
もっとも、その頃から比べると今はユーロのレートが5割り増しになっていますので、当時のままの価格だったとしても20万円を超えるようになっていると思うのですが・・。

サンクリスピンの靴、美しいですね。今度ウィーンに行く機会があるのですが、ウィーンにはオフィスの他に、ショップのようなものはあるのでしょうか?ご存知ですか?

しんいちろうさん
当ブログへの訪問ならびにコメントを有難うございます。
サンクリスピンの靴ですが、あいにくフィレンツェにあるボノーラを通じてのオーダーと日本からのメールオーダーですのでウィーンの実情は分かりません。
オフィスやショウルームだけでプレタを販売するショップはないかもしれませんので、サンクリスピンのウェブサイトからメールでお聞きになるとよいのではないでしょうか。
サンクリスピンにはマイラストがあるので近いうちにもう1足オーダーをいれようかと思っています。その時は前回がプレタベースでしたのでぜひとも今回はビスポークベースでフルハンドメイドで行きたいものです。

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