2012年5月26日 (土)

Trim fit(細身のジャケット)

ブルックスブラザーズと並んでアメリカントラディショナルを代表するJ.プレスの110thアニバーサリーモデルをご存じだろうか。今までのサックスタイルを見慣れたトラッドファンの間では色々な意見が出ているようだが、ウェスト周辺がぐっと絞られた中々エレガントなスタイルだ。J.プレスのウェブサイトでは110thモデルをTrim-Fitと表現しているが、調べてみたところTrimという言葉には「すらっとした。ほっそりとした」という意味がある。目下主流のSlim-Fitと同義語なのだろう。

麻袋のように寸胴なサックジャケットはこのところタイトシルエットが主流とあってか、ブルックスブラザーズの路面店を訪ねても殆ど見かけることはない。そんな中で冒頭に述べたJ.プレスのトリムフィットが今の時代に適応(フィット)したデザインとしてとても興味をそそられた。そこで、今回はアメリカントラッド調のネイビーブレザーを工房に出し、トリムフィットに補正し直したものを紹介しながら、ニュー・アメリカントラディショナルを考えてみたい。

1.トリムフィットブレザー

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日本別注のブレザーはイタリアはベルヴェストのもの。2ツ釦ながらウェルトシームにセンターベントというアメリカントラッドの雰囲気満載だ。コルト丈で仕上げたところなどトム・ブラウンの雰囲気も取り入れているらしい。今回の直しではウェスト部分を3㎝ずつ合計6㎝詰めたのでかなりトリムフィットになっている。ただしトラッドならではの約束、ボタンダウンシャツとレジメンタルタイにノープリーツのパンツには拘ってみた。

2.ジャケットのシルエット

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手持ちのジャケットがどことなく古臭いと感じたら、ぜひウェスト部分の直しをお薦めする。ボタンを留めなくともウェストにフィットしたジャケットは、後ろから見ただけでぐっと恰好よくなるからだ。ゴージラインやラペルの幅を修正するとなると料金も上がるがウェスト詰めならば決して高くはない。昔の服は大体がウェストが緩めなのでここを直すだけでも見違えるようになる。

3.Vゾーン

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ラペルの端、ウェルトシームの幅は4㎜で、ゴージの高さではイタリアのファクトリーらしさが出ているもののアメリカントラッドらしい仕上がりのブレザー。ボタンダウンももちろんイタリア製、1990年代初期のルイジ・ボレッリを合わせてみた。シャツの襟が開き気味で一時期はかなりワイドなものが主流だったイタリアのボタンダウンシャツだが、この頃のボレッリはオーソドックスで手仕事の多い真面目なシャツを作っていた時代だった。

4.ウェストサプレッション

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ウェスト部分を身体に合わせて絞りを入れるだけで、横から見たときの服のフィット感がぐっと違ってくるのがよくわかる。レディメイドと言えども直しに出して自分の体にフィットさせるだけで、既製服特有の万人向けシルエットから誂え服に近い雰囲気に変わってくる。装いのポイントは既製服であるか仕立て服であるか、機械縫いであるか手縫いであるかということではなく、よく言われることだが「如何に自分の体にフィットしているか」ということなのだろう。

5.タイ&チーフ

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ネクタイはプレッピースタイルを盛んにプッシュしているポロ・ラルフローレンのもの。アメリカのブランドらしくレジメンタルタイはお得意だが実はジャケットやシャツ同様イタリア製。オレンジとレッドの中間に近い独特の色目はVゾーンに活力を与えてくれる。一方ポケットチーフはナポリのフィナモレ。こちらもリネン製品ながら綺麗な色出しに惹かれて購入。タイとチーフの色目を近いものにしてみた。

6.ジャケットの縫製

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ジャケットはベルベストに都内デパートが別注をかけたもの。品揃えと企画品の面白さに定評がある大型店だが、ここには以前6釦のブルックス復刻ボタンダウン でも紹介したとおり、買ってみたいと思わせる商品がよくある。このジャケットも大身返しでアンコン仕立てに近く、軽い着心地ながらがテイラードジャケットらしさを保っているところが気に入っている。アメトラ好きにも受け入れられるイタリアものといった感じだ。

7.ジャケットの素材

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ジャケット素材は繊維と繊維の間に隙間のあるメッシュ調。ウール100%だが織りとの関係だろうか、生地自体に伸縮性があるようだ。イタリア製らしく胸ポケットはバルカ気味だが、薄い肩パッドのみの肩と袖付け部分はナチュラルショルダー風に見える。着心地はブルックスのオウンメイクよりも快適で、このあたりはイタリアのメイカーが最も得意とするところ。特にベルヴェストは商品改良や着心地、見栄えに力を入れていると感じる。

8.ウェスト部分とプレーンフロントパンツ

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コードヴァンのベルトは国産。KTルイストンのものとよく似た作りだ。今回は黒のコードヴァンベルトを選択、靴は黒のスリッポンを合わせている。パンツはプレーンフロントでスリムフィットの代名詞ともなった元祖美脚パンツのインコテックスのJ35。強撚糸の生地なのだろうか、コシとハリがあって皺になりにくく、しクリースも消えにくい。グレンチェック柄は春夏の定番1本あると便利だ。

9.本切羽

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最近の直しは技術が高くなっている。写真右を見ると分かるが、袖を詰める際に切羽が足りなくなった場合、根元部分に切羽を継ぎ足してボタンスペースを確保している。お蔭でボタンホールが4つとも全て本開きにできる。ボタンは随分前にベンソン&クレッグから取り寄せた英国製のブレザーボタン。最初はクロームボタンだったが、金ボタンにすると華やかさが増すようだ。

10.ブラック・スリッポン

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黒のスリッポンはブレザールックにこそ最適ということで、前回紹介したリザード・スリッポンと30年近く現役のカーフ・ローファーを用意した。こうしてみるとカーフの方が光沢があって、寧ろリザードの方が控えめに見えなくもない。久しぶりに合わせてみた黒のスリッポンは思ったよりも新鮮で、これならば時々履いてもよさそうだ。

11.英仏傑作シューズ

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左のローファーはJM.ウェストンのシグネチャーローファー。1980年代のもので間もなく30年を迎えようという古参靴。一方右のリザードスリッポンはレストア後新品同様になって返ってはきたが1990年代中頃のもので、間もなく20年を迎えようという靴。20~30年経っても履ける靴は鞄と同じように身嗜みの中で投資するに値するアイテムの一つ。既成靴といえども材質がよく作りの丁寧なものを選ぶのが結局は賢い買い物になる。

このところエクストラスリムフィットのシャツやスリムフィットのトラウザーズ、ウェストの絞りが強いジャケットを着る機会がぐっと増えた。そうなると今まで着ていたものがどれも緩く感じられる。特にトリムフィットのジャケットの下では、昔ながらの生地をたっぷりとったシャツではもたついてしかたない。かといってシャツやトラウザーズを直しに出すのは量的に大変なので、ジャケットやせいぜいスーツをトリムフィットに直す程度だろうか。

それでも購入した既成服をそのまま着るのではなく、身体にフィットするよう直しを入れるだけで、新しい服が1着増えたかと思うほど新鮮になって甦る。誂えのペースが限られているので、新しく既製服を買い足してはいるが、クローゼットの中に入るワードローブの量には限度がある。手持ちの服を直しに出すことで有効活用ができるのではと目下3着の服を直しに出しているところだ。近いうちに続編を紹介できたらと考えている。

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2012年5月19日 (土)

Lizard Slip-on(リザード・スリッポン)

日本で欧米の本格紳士靴が手軽に買えるようになったのは80年代中頃、パリでJM.ウェストンのローファーを初めて買って帰ったあたりからだったと思う。その頃日本では靴屋よりもセレクトショップが輸入靴を数多く扱っていたが、今でこそ名の知れたクロケット&ジョーンズも当時はポールセン&スコーンやロイドフットウェアを作るファクトリーとして知る人もあまりいなかった。それより昔は、限られた靴屋に輸入靴というよりも”舶来靴”として並べられていたようで、60年代のチャーチはそれこそ「背筋が寒くなるほど高かった」と記されている。

ノーザンプトンの老舗トリッカーズも80年代はカントリーコレクションが有名で、ドレス靴を扱うお店は殆ど無く、だからという訳でもないが、ロンドンへ行ってもトリッカーズ直営店にだけは立ち寄らずにいた。ところが1998年夏、駐在を終えて久しぶりにロンドンを訪問すると、トリッカーズの店先に並ぶ黒のリザード・スリッポンに一目惚れしてしまう。その場で購入するも、長い間ディスプレイされていた為色抜けが激しく、衝動買いかと後悔した。それでもいつかは復活させようと思い続け、先月ようやく重い腰を上げて靴をレストアに出したところだ。そこで今回は15年のブランクを経て新品のようになって帰ってきたリザード・スリッポンを紹介してみようと思う。

1.トリッカーズのリザード・タッセルスリッポン

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タッセルリボンが履き口の周囲を通らない珍しいタイプのタッセルスリッポン。他にはまず見当たらないデザインだ。ヴァンプ部分とヒール部分に走るロールドステッチは手縫い、釣り込みも手仕事で行うなどベンチメイドシューズの名に相応しい。定番のスタイルではなく90年代の初めにごく少数作られたものらしいが、リザードの斑の細かい部分をつま先に、大きい部分を踵部分にもってくるなど作りは確かなようだ。

2.レストア前とレストア後の比較

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レストア前(左)とレストア後(右)を見比べてほしい。一番の違いは靴のヴァンプ部分で、レストア前は紫色に近い色だったものがレストア後には本来の黒色になっていることが分かる。黒の顔料は退色が進むと特に紫色に変色し易いようだ。今回レストアをお願いしたのは「レザーサロン」というお店で、購入後15年が経過した靴を①まず革に栄養分を与え柔らかくした後②トカゲ革の表面をエナメル仕上げではなく元と同じようにあまり光らせないよう色入れを行い完成させたとのこと。全体の色合いを均一に仕上げ、新品同様になって戻ってきた靴からは、店の確かな技術を感じさせる。

3.オールデン製タッセル・スリッポンとの比較(その1)

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英米のタッセルスリッポンを比較してみる。左がブルックスネームのオールデン製カーフ・タッセル、右がトリッカーズのリザード・タッセル。トリッカーズのほうがタッセルが付く位置がやや低いが外見はほぼ同じようだ。イギリスの靴メイカーであるトリッカーズがアメリカのマーケットを意識して作った靴で、どちらもドレス靴らしくコバがスマートだが、オールデンの方は特に張り出しが少ない。一方出し縫いのピッチは機械縫いながらトリッカーズの方が細かく、どちらも昔の靴らしく今より丁寧な作りが光る。

4.オールデン製タッセル・スリッポンとの比較(その2)

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最近のタイトでスリムなイタリアンクラシックのパンツは別だが、クラシックなダブルカフのトラウザーズはヴァンプ上で軽くワンクッションするのがオーソドックスな仕上げ。オールデンだと裾にタッセルが引っ掛かるが、トリッカーズは裾にかからない。それを意識してタッセルの位置を考え、なおかつタッセルを小さく仕上げたのだとすれば流石は英国の老舗靴メイカーと言える。ウィズやレングスなどほぼ同じだが、トリッカーズの方がやや小さい。

5.ヒドゥンチャンネル・ソール

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ヒドゥンチャンネルになっているソールは大変丁寧な仕上げだ。特に印象的なのがトップリフト部分。現行のドレスラインと違って釘が細かく打ちこまれている。最近のものはクォーターラバー部分を除いて18本だが、写真のタッセルではより密に26本も打たれている。多ければよいというものでもなかろうが、それだけ工程に手間をかけられる時代だったのだろう。オークタンでなめした革底は堅牢さと返りの良さが特長だそうで、見ただけで上質さが伝わってくる。

6.靴のアウトサイド・インサイド

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靴のパターンがよく分かる横からの写真。どちらもアーチ部分で革をつなぎ合わせて仕上げている。表面のトカゲ革を無駄なく使うためだろう、チャーチズのリザードタッセルもほぼ同じ作りだし、お隣のフランスはJ.M.ウェストンのシグネチャーローファーもこの部分に切り返しを設けている。そう言えば、確か昔ポロショップに並んでいたリザードのタッセルスリッポンは上の写真のような革の継ぎ目は一切なかったと思う。日本製靴の作るライセンス品だったが作りはこのトリッカーズ以上に凝った素材使いが光る名靴だった。

7.靴のヴァンプ・モカステッチ部分

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右足つま先部分に入る皺はハンドラステッドの証。トリッカーズのHPを見ると確かにアッパーはラストに手で吊り込まれて釘で留められると書かれている。また摘みモカの部分はアメリカのオールデンよりもやや幅が広いがステッチの糸は細く、ビスポークサービスも受け付けているトリッカーズならではの繊細な仕上げだ。試し履きの印象ではヴァンプ部分のフィッティングはオールデンよりも硬く、ウィズはDに近い。全体的にオールデンよりもドレッシーな雰囲気と言ったらよいだろうか。

8.メーカーズ・インソック

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インソックの刻印は今も基本的には変わらないが、最新のものは一番下の2行が省略されているようだ。一番上に付く紋章が有名なロイヤルワラント〈英王室御用達〉。これはプリンスオブウェールズ即ちチャールズ皇太子の許諾ということになる。現在スローンと呼ばれるタッセルスリッポンが後継としてラインナップされているが、そちらはかなり今風な作りだ。一方こちらのリザードスリッポンはトリッカーズらしい質実剛健な雰囲気がある。

9.サイズ表記と釣り込み跡

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上の写真は手書きのサイズ表示。下段には8.5と書かれているだけでウィズの表記はない。それでいてUSサイズのオールデン8Eのタッセルスリッポンととほぼ同じレングスである。トリッカーズのフィッティングイメージはサイズ表記だけでは中々掴みにくい。もしオンラインで購入する場合は特に注意が必要だろう。一方下の写真はインソールを履き口から撮影したもの。釣り込み時に釘でラストに留めた跡が見られる。The upper is pulled over the last by hand and nailed to the leather insole.と紹介されているとおりの作りだ。

10 .ヒール部分

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ヒール部分のハンドステッチ。この意匠はブルックスのタッセルスリッポンがオリジナルと聞いたことがあるが、英国の靴メイカーではこのトリッカーズやエドワードグリーンが作るタッセルスリッポンに見られる。今回の靴は特にタッセルのリボンが靴の履き口に飾られていないシンプルなデザインということもあって、踵部分にステッチが入ることで前後や全体のバランスが取れているような気がする。

11.靴の全体像

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ロンドン本店で購入後、15年ぶりのメンテナンスを経て甦ったタッセルスリッポン。ノーザンプトンの靴メイカーが作るエキゾチックレザーの靴は珍しく、リザードのもので言えばグレンソン、チャーチズそして今回のトリッカーズあたりだろうか。メンテナンス後試し履きをした状態ではブルックスのタッセル・スリッポンよりもタイトでナローな感じがする。どう考えてもUKサイズの8.5では小さすぎるようで、当時トリッカーズ本店で試着したのだが、素材の珍しさに惹かれてやや小さめのものを買ったとも考えられる。

今回既成靴のコレクションに加わった黒のリザードスリッポン。今の季節ならばグレンチェックのスーツに合わせても良さそうだが、アメリカ生まれの靴らしくネイビーブレザー&パンツの組み合わせでトラッドっぽく履きこなすのが一番しっくりしそうだ。ただ、あるブログによれば黒のローファーは最も出番の少ない靴だと書かれていた。確かに自分の手持ちの靴の中でも最も出番が少ないのがウェストンの黒いローファーだ。果たして黒のリザードスリッポンはどうだろうか。

太陽の活動が一時的に弱まり冷夏になるかもしれないとの予想が新聞に載っていた。そういえば昨日も長袖のシャツにネクタイを締めていた。昨年はこの時期からクールビズ・スタイルが多かったが確かに今年は様子が違う。もし予報どおり冷夏だとすると、タイドアップする機会が増えるだろう。となると靴も黒のスリッポンが活躍するかもしれない。今回レストアをお願いした店から「日頃はレプタイル専用の乳化クリームで保革し、履いているうちに表面が曇ってきたらコードヴァン専用のポリッシュで色を入れる。」とのアドバイスを貰った。週末はコードヴァン専用の黒いポリッシュを探しにでも行こうと思う。

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2012年5月12日 (土)

シェファードチェック・スーツ

春から夏はライトグレーのスーツがあると重宝する。それも無地ではなくチェックの方が涼しげだ。グレーの柄物というとグレンチェックを思い浮かべるが、ハウンドトゥースやそれとよく似たシェファードチェックも春から夏にかけての定番。グレンチェックが柄を意識しがちなのに対して遠目にはグレー無地に見えるハウンドトゥースやシェファードチェックこそ「仕事に最適」と薦めるショップスタッフもいる。確かクロージング&ザマンの中でアラン・フラッサーも春物の素材としてシェファード・チェックを推していたと思う。

今まで柄物のスーツを殆ど選んでこなかったが、最近はやや大柄なものから小柄なものまでチェックのスーツやジャケットを買う機会が以前より増えた。体型が細くなって柄物を着やすくなったこともあるが、誂えも含めて手持ちの服の殆どが緩くなってしまったので、新たにサイズを下げた既成服を買い足す必要があったことが大きい。そこで今回は最近揃えたシェファードチェックのスーツを着こなしを交えながら紹介してみようと思う。

1.SHEPHERED CHECK(シェファードチェック)

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シェファードチェックはシェパードチェックとも呼ばれ、スコットランドの羊飼いの服が出自とのこと。羊飼い用の犬であるシェパードという名前も同じ由来だそうだ。白地に黒の細かな格子柄が一般的だが今回紹介するのはブルーとグレーの組み合わせ。遠目には青味がかった明るいグレーに見える。チェックの色目に合わせて身頃のボタンは青が付けられている。爽やかな季節には白無地シャツが一番、あとはチェックの色を拾ってブルーのネクタイを締め、ネクタイの柄からクリーム色を拾ってチーフを選んでみた。

2.スーツのスタイル

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ジャケットのスタイルは目下の主流2つボタンを意識した3つボタン段返り、アンコン仕立てで大見返しの作りは軽・薄が主流のスーツに沿ったもの。トラウザーズはタイトでローライズのテーパードシルエット、勿論ノータック。驚くべきは機械縫いながらサイバラ部分の一部を除いて片伏せ縫いが施されるている点。まるで昔のブリオーニのような作りになっている。勿論ブリオーニは手縫いでこちらは機械縫いだが雰囲気はとてもよく似ている。

3.Vゾーン

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シャツはジャケットに合わせて白の織柄を用意。ロングポイント気味の襟にカラーバーを挟みネクタイのノットを持ち上げてみた。ちょっとした工夫だがこれだけでVゾーンの雰囲気はかなり変わる。ラペルはやや細身でゴージの高いもの。ここ10年近くゴージは高止まりのままで、ここが低いものや肩線よりも急な角度で下に降りているものはどことなく古臭ささを感じさせる。

4.ラペル部分とチェストポケット周辺

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カラーバーの効果はこうして斜めから見ると一目瞭然。タブカラーやピンホールカラーシャツと同じようにアーチを描いてネクタイがジャケット内に収まることで、Vゾーンをより立体的に見せてくれる。機械縫製ながらバルカ気味の胸ポケットはナポリ仕立ての雰囲気もあり、ポケットチーフを挿すと縁部分のカーヴがさらに強調される。チーフはポールスチュアートのものだが、フランス製でハンドロールドヘムのシルクチーフ。

5.カラーバー部分

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シャツの襟にはスティフナーを入れない状態で撮影している。やや古臭さを感じさせるロング本とのシャツもこうしてカラーバーを挟むだけで新鮮に感じられる。カラーバー自体はずいぶん昔、銀座のテイジンメンズショップで購入したもの。つい先日銀座に立ち寄った際、今も健在なのを確認して懐かしさを感じた。ネクタイは50オンスのイングリッシュシルクを使ったローマのメローラ製。まだ店舗をコンドッティ通り近くで開いていた頃にまとめ買いした内の1本。

6.ジャケットの裏側

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ジャケット内側は裏地が背裏と袖筒部分しか使われていない。以前紹介したジャケットと同じカルーゾのものだ。このクラスの既製服ではベルヴェストがベストバランスだと思っていたがカルーゾも悪くない。ただ、同じ48/7Rのサイズながら肩幅はベルヴェストのものよりもやや小さい。それと写真左下にも写っているが、身頃の広がりを抑えるベルトが両脇ポケット裏に縫い付けられているところはベルヴェストにはない特徴だ。

7.本開きの本切羽

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スリーブボタンも身頃同様ブルーのプラスチックボタンを使用。重ねではなく並びボタンで仕上げて貰った。機械縫いながら本開きにしたボタンホール。初めは開き見せで仕上げてきたので再仕上げを頼んだのだが、開き見せで仕上げたボタン穴の上に本開きのボタン穴をこしらえたのだろうか、いつもより大きく感じられる。こうしてみるとボタンの色はかなり鮮やかなブルーで、これならば青の靴を履いても悪くはなさそうだが、ベルトとの相性を考えるとやはり黒か茶になるだろう。

8.襟裏の処理

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共布の襟裏はカルーゾの特徴、仕立服の名残りである髭や、下襟部分には機械縫いながら掬い縫いの跡も見える。綺麗にロールする襟はカルーゾに限らずイタリア既成服の得意とするところ。今回のように初めての柄を試す場合、既成服ならば試着して合うか合わないか判断できるし、気に入ればその場で購入、直しを経ても1週間後には着ることができる。馴染みのテイラーに頼んで仮縫いを経て完成するまで1年待つことを考えると、既成服は実際便利だ。何度か述べたが要は誂えと既成を上手く使い分けることだろう。

9.ウェスト部分

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ベルトも知らぬ間に増える革製品の一つだが、メンテナンスを怠ると痛むのは靴や鞄と同じ。バックルと先端部分にシルバー925が付いた写真のベルトも最近裏革部分にモウブレイのデリケートクリームを塗り、錆びて黒くなったシルバー部分を銀磨きで綺麗にしてから写真に撮ってみた。組下のパンツは履き心地も悪くなく、単体で他のジャケットと合わせても相性が良い。というよりこのスーツ自体、上下どちらも他のアイテムと組み合わせられる懐の広さがある。

10.靴のコーディネイト

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軽・薄なスーツでクールビズ対応となるとスリッポンやローファーも有りかもしれない。だが今回はタイドアップしたスーツということで紐靴に拘ってみた。左は昔の名品ジョンロブ・パリスのエプロンダービー。アルディラは最高の革質だった。右はフォスター&サンのブリーチド・フルブローグ。誂えならではの色気がある。街行くビジネスマンのスーツスタイルもノーネクタイにブラウンシューズという人が増えて着る。仕事には黒の紐靴という決まりも変わりつつあるようだ。

11.ベージュの靴

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エプロン・ダービーといえばドーバーが有名だがより堅牢で革質の良さを誇っていたのが左のシャンボールド。今のものはコバの処理も含めて昔と随分違うが、昔のシャンボールドは夏の海外旅行をこれ1足で過ごしても型崩れすることのない堅牢さを誇っていた。右のフォスター&サンは脱色したアッパーに色を加えていった誂え。独特の淡い色目はどの靴屋とも異なる強烈な個性を放っている。

カラーコーディネイトから考えると春の着こなしは①ベージュをどこかに取り入れること、②グリーンやイエロー、ピンクなどフレッシュで明るい色を加えること、③基本色を明るいグレーまたは明るいブルーと白の組み合わせにすることと書かれていた。もちろん素材や作りも薄く軽いことがポイントだろうが、春らしい色目のものを思い切って取り入れることで、いつもの無難な着こなしから軽快な着こなしに印象も変わる。

今回は遠目は無地に見えるスーツに明るいグレー、シャツのホワイトを基本色に、ブルーのネクタイとイエローのチーフ、ベージュの靴とベルトを食え敢えて「カラーコーディネイターお薦めの色」を取り入れてみた。これにベージュ色の帆布と革の良質な鞄を持てば気分よく仕事に出かけられそうだ。この週末は軽快なバッグを探しにでも行こうと考えている。

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2012年5月 5日 (土)

Indisposable pairs(思い出の靴:#1)

Disposableという言葉には「使用された後に処分できるもの」という意味があるそうだ。それではと反意語Indisposableを調べてみるとSomething that one cannot do withoutと書かれている。その意味は「欠かすことのできないもの」といったニュアンスに近い感じだろうか。週末を利用して屋根裏部屋やクローゼットの奥を整理すると懐かしく未だに欠かすことのできない思い出の品々(Indisposables)があれこれ出てきた。

今まで何回か紹介してきたが、22年間でずいぶん増えたオウンメイクのブルックス製ボタンダウンシャツ。1980年代終わりからお気に入りだったブランド、ポロ・ラルフローレンのUSメイドポロシャツ、インポートカジュアルがブームだった頃の懐かしいアメリカンモカシンなど、このままお蔵入りする前にもう一度愛用してみたい物が沢山ある。そこで今回は久しぶりに出てきた古いスニーカーや懐かしの靴達を復活させる試みの第1回をコーディネイトを交えて紹介しようと思う。

1.The Revival of the indisposables(思い出の靴の復活)

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この春夏に復活させようと思っている靴達。US製のコンバース達やラルフローレンの広告で影響を受けたキャンバススニーカー、夏の定番デッキシューズやハンドソーンモカシンなど。他にもまだまだあるがどれも処分するには惜しく、もう一役活躍できそうなコンディションのものもある。ビットのデッキシューズ以外は全てUSブランドで、如何にアメリカンカジュアルに傾倒していたかが分かるというもの。

2.ポロの広告から

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昔のラルフ・ローレンのカタログをめくる中で目に留まった写真。白のコットンパンツに白の開襟シャツ、首に青と白の縞タオルを掛けてブルージャケットを羽織っている男性の足元を見てほしい。このキャンバススニーカーが欲しくて何軒もポロショップを回り、一番合うサイズを買ったことが昨日のようだ。捨てずに取っておいたはずとあちこち探し回ったおかげで件のスニーカーを無事発見、ついでに昔懐かしい靴達とも久しぶりに再会できた。

3.キャンバススニーカー

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何回も手洗いを掛け、色褪せやブリーチによる脱色ムラのあるキャンバス部分、一方ヒールカウンターは経年変化でひび割れてしまっている。靴としての役目を終えた感のあるスニーカーだが、どうせならばこの靴を履いてポロショップにでも出かけてみたい。こうしたキャンバス地のスニーカーは当時韓国などNIES製のものだったが、どこ製でも良い、同じデザインで復活させてほしいアイテムの一つだ。

4.シアサッカーのパンツとのコーディネイト

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涼しげなシアサッカーのパンツと合わせたスニーカー。カタログのイメージに近いのは同年代のパンツを組み合わせたためで、今流りのインコテックスやPT01といった裾幅の細いイタリア物のシルエットとは対極にあるフォワード2プリーツでワタリの広いもの。上は元祖ポロポニーのポロシャツをタックアウトしてクルーズラインのパーカを更に羽織る。昔のアイテムを組み合わせつつ古臭くならないよう着こなしに気を配りたいもの。

5.LLビーンのキャンプモック

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海外に駐在していた1990年代はイギリスのTMルーィンやヒルディッチ&キー、パリのジョンロブ(既成)に混じってブルックスやポールスチュアートなどアメリカンブランドの通販を利用した。当時はファックスが主流で、中でもLLビーンは対応が早く返品などアフターケアもしっかりしていたのでよく利用した。一体型のソールをマッケイ製法で縫い上げたキャンプモックは勿論アメリカ製。中米や中国へと工場が移転する前の貴重な本国もの。

6.ブルックス+リーヴァイスUS製501と合わせて

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アメリカの製造業が中国からアメリカ本国に回帰しているというニュースが最近も新聞に載っていた。服飾業界でもメイドインUSAが復権を遂げつつあるようだ。昔米国製リーヴァイス501を愛用していた世代としてはジーンズに対する愛着も深い。写真のデニムはブルックスとリーヴァイスのダブルネームで、最近米国ラインを復活させたリーヴァイスの今をよく表している。アイビー世代としてはトップスにバラクーダやマクレガーの”ドリズラー”を持ってきたいところだ。

7.セバゴ:ドックサイダー

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セバゴはトップサイダーが新興国製造に切り替わった後もアメリカ国内で製造を続けていたメイカーだった。残念ながら今は海外の工場で作られているが、写真のデッキシューズはアメリカ製がまだ買えた1990年代中頃のもの。白のステッチを綺麗に保つよう靴クリームを塗る時は特に気を配ったものだ。今年の夏は外国の海へでもバカンスに行こうと思っている。このセバゴを旅行鞄に入れていくのも悪くなさそうだ。

8.ブルー、ホワイト&グリーン

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デッキシューズに合わせたのはイタリアンブランドのホワイトパンツ。スリムフィットで短めの裾上げがなされたPT01だ。それにライムグリーンのソックスをアクセントカラーとして選んでみた。青と白の組み合わせには赤の差し色が定番だそうだが、ライトグリーンも夏色ということで相性は良い。インナーにソックスの黄緑色と合うパープルを合わせ、明るいブルージャケットを羽織れば心は気分はナポリかカプリか。

9.コンバースのハイカット(その1)

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アメリカ本国で生産されたコンバースのハイカット。1990年中頃まで日本でも気のきいたショップや輸入雑貨の店で買えたが、ローカットのものは既にライセンス生産になっていた。見分け方としてはALL★ STARの下にMADE IN U.S.Aの文字があるので直ぐに分かる。ハイカットの場合はアイレットの数が多くて脱ぎ履きするのがともかく難儀だった。つい面倒に感じてあまり履かずにきたが、今年はジーンズと合わせて履いてみたい。

10.アイボリー(生成り)のジーンズと合わせて

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ベージュのオールスターには白のリーバイス501よりも生成色のデニムのほうが合う。写真のジーンズはポロダンガリーズの5ポケッツ。上はポロシャツを着て上からラガーシャツを重ね着するか、クレイジーマドラスのボタンダウンを着て上からチャンピオンプロダクツのリバースウィーブパーカを被るのはどうだろうか。勿論どちらもインナーの裾はタックアウトするのを忘れずに…。

今回は靴からコーディネイトを考えていったがこれは結構楽しい。特にスニーカーはこのところ履く機会が全くなかったのでどのようにカジュアルな服と合わせるか頭の体操になった。それとすっかり履かなくなっていた思い出の靴達を洗ったり保革オイルを塗ったりしながら復活させる作業も面白かった。お蔭で昔のコットンパンツやマドラスチェックのBD、ポロシャツやパーカといった衣料品も一緒に復活できそうだ。

ビジネスマン世代に贈る「週末のカジュアルスタイル」へのアドバイスを見ると①白や青、明灰色や黄色などシンプルな色遣いを心がけること。②ポロシャツやBDシャツの裾をパンツの中に入れないこと。③靴や鞄など小物にも気を配ることなど色々書かれている。昔の靴達を復活させてもう一度履きこなすには昔のままでは年齢が違いすぎる。今の時代や年代に合った色使いと着こなしを心がけながら復活を楽しみたい。

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2012年4月28日 (土)

Aegean Blue(エーゲブルーの上着)

今回のタイトルにある”エーゲブルー”とは以前乗っていたフランス車”プジョー”のボディカラーに付けられていた名称である。ブルーライオンとディーラーを名付けるくらい青にはこだわりのあったプジョーだが2006年にディーラーの看板ブルーライオンのロゴは単なる社名とエンブレムに変わってしまった。エーゲブルーのプジョー206CCとは4年間の付き合いだったが、春から夏にかけてオープントップを楽しみながら海や山に出かけたことが懐かしい。

ミッドナイトブルーからライトブルーまで、服装に占める色の中で最も多く使われる色は青系統だそうだ。ネクタイメーカーの売り上げの70%も青~紺という統計が出ている。実際手持ちのネクタイを見ても青系統のものがやはり一番多い。それでも同じ柄はもちろんのこと、同じ色目のものさえ一つとしてないのだから、巷には如何に多くの青色が存在するのかが分かるというもの。そこで今回は新たに買い求めた最も明るいエーゲブルーのジャケットを中心とした着こなしを紹介してみたい。

1.ジャケットのコーディネイト

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明度の高い青のジャケットには明るい色目のボトムスを合わせたい。そこでアイビー世代には馴染みのあるオイスター色を選んでみた。コットンパンツの中では定番のベージュやタンよりも汚れやすく気を遣うオイスターだが、純白のものよりコントラストが穏やかになる分合わせやすい。あとは靴やベルト、チーフに茶色を持ってくることでアズーロ・エ・マローネの着こなしが完成する。

2.Vゾーン(その1)

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青で揃えたVゾーン。無地のジャケットには柄物のシャツを合わせる。ただし小さな柄では遠目には無地に見えるので、大きめのブロックチェックを用意した。ネクタイはシャツのチェック柄より更に間隔のストライプを用意し、Vゾーンがビジーになりすぎないよう注意する。チーフは明茶のものを差し色として使ってみたが、ネクタイを茶系、チーフを青系と逆にしても悪くないと思う。

3.Vゾーン(その2)

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ネクタイはフランスのタイブランドブリュワー。このブリュワーも他にはない柄や色出しが気に入ってよく買う銘柄だったがが、最近フランス製からイタリア製にファクトリーが代わったようだ。シャツはローマのミコッチ、カルロリーバほど気を使わずにすむ生地で仕立てたもの。ポケットスクェアは空港の免税点で購入したゼニアのシルク製チーフ。昔は現地通貨を使い切るため最後に空港の免税店でよくチーフを買ったことを思い出す。

4.ジャケットのスタイル

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2つボタンに見えるデザインの3ボタン段返り。ドロップ7だがウエストサプレッションはドロップ8に近い。ゴージは肩線よりやや角度が付いているものの高い位置に切られている。フラスコのように下にいくほど膨らむデザインがアクセントのパッチポケット、マシンメイドながら袖山から肩線、脇腹、背中心まで施されている片伏せ縫いなど作りはクラシコイタリアの雰囲気満載といった感じだ。

5.ジャケットの裏側

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軽薄なジャケットらしい大身返しの作り。芯地の使用を最小限にしながらも、凛とした雰囲気は失われていない。サルトリアパルマからラファエルカルーゾに替わり、最近はカルーゾという名前でショップに並んでいるが、ファクトリーとしては「マコ(Ma.Co)」の名で以前から知られているメイカーとのこと。ハンドとマシンの使い分けの上手いファクトリーとして有名ブランドのOEMも手掛けているようで、このところ様々な雑誌でも話題となっている。

6.ベルト周辺部

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ベルトはダブルリングのついたカジュアルなもの。ただし素材が濃茶のカーフのせいだろうか、仕事で着用してもそれほど違和感はない。ためしに明るいウール素材のパンツにも合わせてみたがこちらも大丈夫のようだ。オイスターカラーのパンツはアイビー調でウォッチポケットのついた今時珍しいもの。より細身にリフォームすべく、インシームとアウトシームの両側からワタリを詰めてある。

7.尾錠付きのパンツ

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アイビー好きには堪らないディテールの尾錠(バックストラップ)付アイビーパンツ。6の写真でも分かるようにウォッチポケットや両脇のバーティカルポケットなど往年のデザインを正確に再現している。厚手のチノクロスによる凝った作りが特徴のチノパンツはポロ・ラルフローレンのもの。何とアイビーリーガーズ御用達のJ. プレスでも110周年限定品としてよく似たパンツをリリースしていて、アイビールックがちょっとしたブームのようだ。

8.襟の裏側

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芯地を縫い込んだ跡が見える下襟裏と共布の裏地に髭付きの上襟裏。一見アンコン仕立てのようだが大身返しの裏を覗くと薄い芯地を重ね合わせたり、襟部分は綺麗に折り返るよう別の芯地を縫い合わせたりと複雑な作りが垣間見える。機械縫製とはいえ、快適な着心地のための工夫がなされていて、フレスコのようなシャリ感のある生地とともに如何にも涼しげなジャケットに仕上がっている。

9.カフ周辺

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機械縫いで仕上げたカフのボタンホール。袖先から4㎝のところに第1ボタンが付くよう依頼して仕上げてもらっている。以前はお任せしていたが、この袖先から最初のボタンまでの距離は意外と見た目に影響するようで、最近は並びやボタンホールの穴かがりのピッチと共に指定することが多い。ショップの場合は推奨値があるので任せることもできるが、リフォーム専門の業者は細かく指定した方が間違いはない。

10.ショルダーライン

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なだらかに肩先へと続くショルダーライン。肩の部分が全体的に丸みを帯びていてシャツのように皺の入った「マニカカミーチャ」風に仕上がっている。アメリカントラッドのナチュラルショルダーよりも更にリラックスした雰囲気のある作りは「ナポリ袖」と呼ばれているとのこと。5月1日から始まるクールビズスタイルにはこれくらい甘い作りで緩やかなジャケットの方が相性も良さそうだ。

11.コーディネイトした靴

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軽い履き心地のスリッポンは春夏の必需品。既成靴では究極のソフトフィッティング、アンラインドローファーを合わせたい。最近は夏でもスェード素材が普通になってきているので、今回はカーフとスェードを持ってきた。どちらも一度履くと次の日も続けて履きたくなるほどで、何ペアか用意しておきたい靴の最右翼。左はエドワード・グリーンのハーロゥ(1995年製)で、右はクロケット・ジョーンズのマーストン(2004年製)。

最近昔の紺ブレザーを処分し、長らく愛用してきたイタリア製の青ジャケットもここで寿命を迎えたのにも拘らず、なお誂えと既成合わせて1ダース強のブルージャケット(ブレザーも含む)がクローゼットに掛っている。青という色の幅広さに加えて季節、素材、デザインの違いがあってともかく奥深い。グレーのパンツ同様いくつあっても気になるアイテム、それがブルージャケットだ。

街行くビジネスマンの中にもブルーのストライプスーツにホワイトシャツ、ノーネクタイで出社する人を見かけるようになった。だが上下共地のスーツを軽快に着こなすのは中々難しいようだ。その点ジャケット&パンツならば上下の色合わせを組み替えられるし、インナーに鹿の子編みの台襟付きポロシャツを挟んでも様になる。今年はネイビーよりも明るいエーゲブルーのジャケットで夏の装いを楽しもうと思う。

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2012年4月21日 (土)

Order made shirts(FRAYの特注Ⅱ)

今回はフライのオーダーシャツ続編。そもそもフライのシャツを再び注文しようと思い立ったきっかけは、最初にオーダーしたピンホールカラーのシャツがあちこち傷んでいるのが分かったため。後継を今のうちに用意しようと思ったので、2枚注文してそのうち1枚は最初と同じ白の織柄にしようと決めてから店に出向いた。ところが店に着いて生地見本を見たところ、当たり前だが昔と同じ生地が残っているはずもない。結局ベーシックな生地からよく似た生地のものを探して注文、晴れて今回受け取ったところだ。

それにしてもフライのオーダーは選択肢が広い。襟とカフのスタイルやステッチの入り方、胸ポケットの有無や前立てのスタイルなどベーシックな範囲でもかなり選べる。前回注文した時のことを忘れてしまったが3段階から選べる襟の硬さやタイスペースの間隔設定まであるのには驚いた。これにボタンの厚さやハンド部分の有無、ターンナップカフやダブルカフなどオプション価格有りの選択肢を加えるとオーダー慣れしている人でもさぞ迷うだろう。ということで出来上がったもう1枚のホワイトピンホールカラー・シャツを紹介してみる。

1.届いたばかりのシャツ

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フライのシャツはブリーニのシャツと並んで高級既成シャツのファクトリー、襟の仕上げの美しさに定評がある。ただ日本ではブリーニのシャツはブリオーニの傘下のためだろうか見かける機会が少ないのでフライの方がよく知られるているようだ。写真を見ても襟腰から綺麗に返る襟の美しさが分かると思う。サビルロウ仕立ての英国調スーツであっても日頃合わせるシャツは大抵の場合ターンブル&アッサーではなくフライなのがその証拠だ。

2.カフのデザイン

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先に紹介したラウンドカラーシャツのバレルカフ(左)と今回紹介する2代目の白シャツ(右)のシングルカフ。どちらも襟型に合ったカフスタイルに仕上げてもらった。もっとも白シャツの角切りはイレギュラーで注文主の好みだが…。モノグラミングは自分で好きなところに入れることができないので「購入店のアフターサービスを利用することもできます。」という店員の薦めに従って今回初めてイニシャルを付けずに注文した。カフのステッチはどちらも襟同様コバ縫いで仕上げている。

3.ロングポイントのピンホールカラーシャツ

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襟は通常のロングポイントカラー。クラシックな襟型だがピンホールにする場合はカラースティッフナーが入らないので芯地の硬さには気を配る必要がある。タイスペースを5㎜ほどとれば肉厚でノットが大きくなりがちなネクタイも合わせられるはず。次回はタイスペースを少し空けてみたい。生地はシャドーストライプと呼ばれる織柄の入ったもの。ストライプ部分をよく見るとトリプルステッチになっていて目立たぬとは言えかなり凝っている。

4.シャツのフィッティング

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トルソーに乗せて撮影してみたところ。背裏のダーツの効果でかなりフィットしているように見えるが、実際に着用した感じではボディサイズ(ネック15-1/2)をハーフ下げて15インチにし、背裏のダーツをとるとブルックスのエクストラスリムフィットに近い着心地になりそうだ。「ドレスシャツには胸ポケットは付けないもの」と言ったのはローマのシャツ屋ミコッチの主人だったが、付けても付けなくても価格は変わらないのであれば「あると何かと便利な胸ポケット」を付けない理由もなく、お願いした。

5.ブレザースタイルに合わせて

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スーツにピンホールカラー・シャツはよく合わせているので、ここではブレザーの下に挟んでみた。用意したブレザーはブルネロ・クチネリのもの。以前も紹介したシングルピークドラペルのもので、これくらい個性的なデザインの方がピンホールカラーのシャツに負けない。下はグレンチェックのインコテックスJ35に軽い履き心地のブラウン・ローファー。これからの季節は明茶色のローファーが何ペアか欲しいところだ。

6.アズーロ・エ・マローネ

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ネクタイは白地に青と茶のストライプが入った春夏もの。他にはない色合いが特徴のステファノ・ビジのものだ。イタリア紳士の色合わせでは定番のアズーロ・エ・マローネ(青と茶)になっているところなど如何にもの配色。それならばとポケットチーフも青と茶の混ざったシルクのペイズリー柄をパフスタイルで挿してみた。春から夏にかけては明るめの色使いや素材使いなどイタリア男性の着こなしを参考にすることが多い。

7.素材感を合わせる

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平織りのウール素材を用いたブレザーと同じく平織りのシルクタイ。間に挟んだシャツも織柄の入ったものにして生地の凸凹感を揃えてみた。もっともスーパー220'sのような極細の繊維を用いたスーツだったりすると合わせるシャツやネクタイがなかったりするので、あくまで実用範囲の素材でワードローブを整えるのも賢い着こなしの一つ。白シャツに白ベースのタイではややもするとネクタイが沈んでしまうが、ピンホールカラーのおかげでタイが持ち上がり、立体的なVゾーンになる。

8.ベージュを加えたコーディネイト

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春物のキーカラーはベージュ、ジャケットスタイルならばベージュのベルトを合わせても気にならない。写真のベルトはエルメスのものだが今から15年以上も前に購入、ピッティの関係者が締めるようになるよりもずっと昔のものだ。初代のバックルが経年劣化したためお蔵入りしていたがHバックルを交換、更に別のバックルも買い足したことで再び愛用できるようになった。ブランドのベルトと意識せずに締めると気にならなくなるし、革製品なのでなるべく長く愛用したい。

9.角切りのカフ

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本切羽を全て開けた状態。角切りのカフが見えるが実際はこれに腕時計が加わる。(右手に嵌めるので)。時計を外して切羽を開け、シャツのカフボタンも外して一気に肘までジャケットの袖やシャツを捲る。そして手首から手全体にかけて丁寧に洗う。そんな機会が多いので本開きの切羽があるととても便利だ。また、日頃愛用している腕時計がベゼルの大きいものなので袖口が開きやすい角切りのカフが助かる。

10.靴のコーディネイト

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靴はどちらもクレバリーのタウンカジュアル。軽さと履き心地の快適さはビスポーク・ローファーならでは。クレバリーではローファーはタウンで履くものと考えべヴェルドウェイストで仕上げてくる。カジュアルといえども見た目はかなりエレガントな雰囲気だ。加えてアリゲータ素材だったりすると履き始めは何となく落ち着かないが、それでもあまり気にせず履く。すると段々足に馴染み、何となく服装にも馴染んでくるから不思議だ。

11.ローファーの比較

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左のハーフサドルと右のフルサドルの一番の違いは素材の光沢。元々の原革は両方ともマットだったが、右は仕上げにポリッシングしたので光沢感がある。一方左は後発のオーダー故に磨きをかけないよう依頼、結果仮縫い時と同じ風合いのままデリバリーされた。マットなワニ革素材の魅力は何といっても自然なエイジングを楽しめるところ。小物でいえばカミーユフォルネのマットアリゲータ製時計ベルトも同じ楽しみが味わえるので機会があれば試されてみては如何だろうか。

2回にわたって紹介してきたフライのシャツ。フルオーダーシャツのようにあちこち採寸することもなく、仮縫いのないパターンオーダーではある。だが、既成のシャツで高い評価を得ているフライのシャツをより自分好みの1枚に仕上げてくれるのだから、出来上がりの素晴らしさは予め約束されているようなもの。お気に入りのメイカーがあるならばビスポークシャツ同様、メイカーが行うパターンオーダーの満足度はかなり高い。

デザインに重きを置くならパターンオーダーでもよいが着心地にこだわるならばビスポークに限るという人もいる。だが、仕上がりがイメージしやすいパターンオーダーの実力は高い。フライ以外にもボレッリやバルバなどいくつかパターンオーダーしてみたがどれも着心地だって誂えと遜色ない。パターンオーダーはビスポークと比べて「妥協の産物」ではなく、お気に入りのメイカーが、自分の為だけにお気に入りのスタイルで作ってくれる逸品と考えると、着こなしの楽しみもぐっと広がるのではないだろうか。

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2012年4月14日 (土)

Spring look(白パンツ&春ジャケット)

4月最初の金曜日、時折冷たい風が吹くものの仕事帰りの花見客で地元の公園は大層賑わっていた。淡い色目のスプリングコートに白のパンツルックの女性客と対照的に相変わらず黒服姿の新社会人。尤も同じような黒スーツをよく見てみると爽やかな色目のネクタイで個性を発揮している洒落者もいる。昔から江戸っ子はたとえ花冷えの日でも軽く薄い着物を羽織るのが流儀、伊達の薄着と言われるほど爽やかな着こなしを粋としていた。淡色の極致ホワイトパンツも春先に履いてこそお洒落というものらしい。

女性の方が絵になるホワイトパンツ、男性はホワイトデニムに行きがちだがお洒落大国イタリアでは多くのパンツメーカーがホワイトパンツを打ち出している。以前処分して以来長らく白パンツを所有していなかったのであちこち探していたが、ようやくお気に入りの1本を見つけワードローブに加えた。コットン素材ながらスリムフィットのパンツはデニムのようにポロシャツやニットとではなく、テイラードジャケットに合わせたい。そこで今回は新着のホワイトパンツを中心とした組み合わせを紹介しようと思う。

1.ジャケット&パンツ

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大柄のジャケットがかなり目を引く。着こなしのヒント「柄物は1点に抑える」を参考にシャツは柄物ではなく白無地を選択。白の上下というのも悪くない。もう一点「コーディネイトの基本は3色」という着こなしのヒントもあるようで、それならばと、分量の多い順にホワイト、ブルー、そして差し色のピンクと3色で締めくくってみた。白の分量が多いと軽やかな印象になるので、足元の靴もライトなローファーを選んでみた。

2.トリコロール

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ブルー、ホワイト、ピンクの3色に抑えた着こなし。シャツはコットンボイルでカルゼのような表面が特徴。ネクタイもウーヴンタイで織柄の質感がシャツにマッチしている。上に羽織ったジャケットは強撚糸(ボイル糸)で軽く皺になりにくい平織りのもので、ポケットチーフもリネン100%の平織り。着こなしのヒント「素材感を揃える」を参考にシャツ、ネクタイ、ジャケット、ポケットチーフの素材感を揃えてみたが、確かにどれか一つが目立つこともなく、バランスが取れている。

3.Vゾーン

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ワイドスプレッドのシャツはカルロリーバの生地を使ったローマの誂えシャツ屋ミコッチのもの。タイは色出しが好きなミラノのニッキー。ポケットチーフはフランコ・バッシとイタリア物が続く。上に羽織ったジャケットもゴージが高くパッチポケットにバルカポケットとイタリアン製品らしさが漂う。着こなしのヒントにはないがイタリアンクラシックなアイテム同士を組み合わせるのはよくやる合わせ方の一つ。

4.ウェイスト部分

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淡色のローファーに合わせてベルトも明るい茶色のアリゲータベルトを用意。先端に配されたメタルチップと同じシルバー素材を使ったバックルが特徴のベルトはこれもまたイタリア製。最近のパンツはローライズのものが多いせいか、ベルトのバックル位置もかなり腰下まで下がる。その分ネクタイの大剣がうまい具合にバックルにかかるよう結び目を調節する必要がなくなるのは嬉しい。

5.ジャケットの裏側

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ジャケットはカルーゾのもの。昔のラファエル・カルーゾとは大分違う出来に驚いたが、何とブリオーニの元CEOを経営陣に加えたようだ。ベルヴェストやイザイアといった中堅どころのファクトリーに近い品質ながら価格は控え目なのが特徴。どうやら以前紹介したラグビーのツィードジャケットも同じカルーゾで作られているようだ。ここ数シーズンはパープル・レーベルも同じ工場で作られているとのことで、ラルフ好きの身としてはカルーゾの実力が気になるところ。

6.ホワイトパンツ

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今回の主役ホワイトパンツはルーマニア製ながらイタリアンテイスト溢れるPT01。インコテックスよりもスリムでメトリコやGTAに近く特に裾幅が細い。モデルは斜めのカーゴポケットが特徴のハイテック。ダブルツィストのコットン生地は織柄が入っている。店員の話では「白パンツはこまめにクリーニングに出すスタッフも多い」らしい。ただ、素材がコットンであれば自宅で漂白しながら白さを保ち、洗濯機で洗いプレスを欠かさない程度でも良さそうな気もする。

7.本開きの本切羽

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ジャケットのボタンは貝ボタン(白蝶貝だろうか)を使用しているようで、白の縁取りがパンツとシャツによく合う。本切羽の袖部分は短く詰めた後、一番肩寄りの袖ボタン部分に切羽を継ぎ足して4つ開きにしたもの。ボタンはナポリ風の重ねを選んでみた。本切羽の既製服を本開きで仕上げるようにしているのは、昔店員に「そのままにしておくのはもったいない。」と言われたことがきっかけになっている。実際仕事で頻繁に手を洗う機会が多いこともあって本開きの利便性は殊の外高い。

8.ショルダーとラペル、ゴージライン

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肩パッドは薄手のキャンバス地を2枚重ねただけで、袖を通すとその軽さに驚く。肩線と袖山がなだらかなナチュラルショルダーはラルフ・ローレンの服と似ている部分。袖付け自体は機械縫いだが袖裏の処理は手縫い。要所に人の手を加えた機械縫いの中堅ファクトリーという位置付けのようだ。ゴージラインが肩線に平行でかなり高い位置にある。それがイタリアンクラシックの目下の主流なのだろう。

9.上襟裏

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上襟は捲ると共布の裏地とヒゲと呼ばれる持ち合出しが目立つ。ここも人の手は入っているようだが殆どは機械縫いだ。一方の下襟だが、こちらも機械によるハ刺し(ループ状のもの)風の縫い跡が見える。ラペルのロールはマシンといえども綺麗にロールしていて、最近の縫製機械が如何に高い性能を誇っているかがよく分かる。

10.靴のコーディネイト

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これからの季節に重宝するのがローファー。左はJMウェストンの180シグネチャー、天然のクロコダイル素材を用いた逸品で1995年NY購入の1足。右はクレバリーのフルサドル・ローファー。ルイジアナ産のアリゲータをイタリアで鞣した素材を使ったもので、こうしたエキゾチックレザーはコットン素材のパンツに合わせてややドレスダウンした方が似合うと思う。

11.パナマ帽を合わせて

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今から15年前、猛暑のローマに耐えかねてボルサリーノで買い求めたパナマハット。店員は一番高いものを薦めるが「旅行中気軽に被れるものを」とリクエストして出てきたのが写真の帽子。年月が経ち、オフホワイトだった表面は日焼けし、鍔(つば)のカールも緩んできたが型崩れせずエレガントな面影を残している。その後この帽子を被って旅行を続けたが、ショッピングに立ち寄ったどの店でも客あしらいが良かったことを思い出す。夏の欧州旅行にはパナマハットは必携かもしれない。

爽やかで快適な春は思ったよりも短く、5月の終わり頃になると初夏の陽気を思わせる日が多くなる。昨年のように今年も6月からクールビズスタイルが始まれば、今はオフィスで履くのに躊躇してしまうホワイトパンツもオフィスワークを中心に、仕事着として履くのに抵抗も少なくなるだろう。それにもともとアイビースタイルの頃、オフホワイトに近いベージュのコットンスーツを着ていたことを考えれば白は決して奇抜な色でもない。

健康管理から始まった体型の変化は膨張色である白のパンツを再び履くきっかけを作ってくれた。「体型が細くなると着られる服が多くなるのでお洒落も楽しくなりますよ。」と馴染みの店員は説明してくれたがなるほどそうかも知れない。昔は無意識のうちに控えめな色目や柄を選んでいたが今はあまり気にせず着たいものを着ている。今年はイタリアの洒落者たちの着こなしを参考にホワイトパンツのコーディネイトを楽しんでみたい。

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2012年4月 7日 (土)

Order made shirts(FRAYの特注Ⅰ)

久しぶりにイタリアはフライのシャツをオーダーした。前回オーダーしてから随分年月が過ぎていたが最初に注文を出した店ではその後も受注会を定期的に続けていたらしい。他にはバルバやボレッリのシャツを日本でオーダーしたこともあったがリピートしたのはフライが初めてだ。ナポリのシャツはデリバリー体制に不備が多いのだろう、日本でのス・ミズーラは中々定着しにくい(昨年別のデパートでオーダーフェアを復活させていたが…)。その点フライのシャツは北イタリアのメーカーらしく信頼度は高い。

何よりフライのシャツのMTO(Made To Orderの意)には他社にない大きなアドバンテージがある。それはピンホールカラー(襟型)を選択できるというところだ。フランスのシャルベでは微妙な角度の違いや長さの異なる襟型を選べた。ボレッリやバルバはボタンダウンであってもオーソドックスなものからワイド気味のものまで何種類ものサンプルがあった。しかしピンホールカラーを選べるのはフライだけだ。ということで今回は出来上がってきたばかりのフライのシャツをコーディネイトを交えて紹介しようと思う。

1.届いたばかりのシャツ

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前回は既成と同じ黒の箱だったが、今回オーダーしたシャツはフェラーリのような真紅の箱に入れてデリバリーされた。箱を開けるとフライのシャツ特有の機械縫製による精緻なシャツといった雰囲気が漂う。バルバやボレッリのようなナポリの手縫いシャツに見られる甘くしなやかな表情とは正反対だ。前回オーダーしたピンホールがことのほか気に入って今回は2枚ともピンホールを注文した。

2.新旧の比較

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オーダーしたのはバーニーズ新宿店。前回はバーニーズとのダブルネームのタグが付いているが(左側)今回のものは通常のタグが縫い付けられている(右側)。襟の硬さはソフト、セミハード、ハードと3段階選べるが、セミハードをチョイス。ピンホールで襟の先端が反り返らないようやや硬めの方が良い。確か左上のワイドスプレッドだけ前回ソフトでオーダーしたもので、写真で見ても分かるようにフライにしては珍しく襟腰がクタッとしている。

3.ラウンドピンホールカラー

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英国ではカラーピンシャツと呼ばれるラウンドカラーのピンホールシャツ。昔のイラストには襟腰の高いラウンドの襟にピンホール仕上げのシャツを着たスーツ姿の紳士が描かれていて、そのイメージが頭の中に残っていた。それに加えて知り合いから「フライのシャツでラウンドカラーのピンホール仕様というのがある。」とも聞いていたので、いつか機会があったらトライしてみたいと思っていたところだった。

4.ボディへのフィッティング

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MTOシャツなので既成のシャツのボディを選び、レギュラーかスリムフィットのどちらかを選ぶ。襟とカフのデザインを選び、ネックサイズとスリーブレングスを採寸。生地やボタンの選択、前立てや胸ポケット、イニシャルの有無などを決めていく。ビスポークシャツに近い雰囲気が楽しめる瞬間だ。ボディはネックサイズの1サイズダウンが日本仕様とのことだが、今回はネックサイズと同じボディで後ろにダーツを取るよう依頼。出来上がりはブルックスのエクストラスリムフィットに近い雰囲気で快適なフィット感が期待できそうだ。

5.スーツに合わせてⅠ

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オーソドックスなミディアムグレイのスーツにラベンダー色のシャツとパステル調のネクタイを合わせ、淡く春らしいVゾーンにしてみた。ラウンドカラーのシャツはアイビールックやプレッピースタイルが流行しているせいかショップで見かけることはあるものの街中で着ている人はまずいない。どことなく子供っぽい雰囲気があるからだろう。そこでピンホール仕様にしてみるとクラシックな雰囲気になり今までと違う新しい着こなしが楽しめる。

6.スーツに合わせてⅡ

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スーツ生地はスーパー120’Sながらシャークスキンのような織りが見えるもの。合わせるネクタイも織柄を選んで質感を統一してみた。スーツはⅤゾーンの深い3つボタンにトラウザーズの幅が広いクラシックなスタイル。ただしナポリの超絶手縫いスーツ、アントニオ・ラ・ピニョッラ程ではないにせよ手縫い既製服の逸品。襟の返りや肩周りなどハンドならではの柔らかな雰囲気が感じられる。甘く柔らかなスーツとカチッとしたシャツの合わせも悪くない。

7.ダヴェンツァ

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今回紹介するダベンツァは昔服飾評論家の遠山周平氏が書いた雑誌の記事で初めて知った。イギリスの名門チェスターバリー同様ナンバー6のカテゴリーに属する手縫いの割合が最も高いイタリアの名門工場とのこと。最近ピッティにも出店し、日本での扱いもあるようだが写真のスーツは随分と昔のものになる。当時は知る人ぞ知るメイカーだったようで、地味ながら良いものを作ろうとする意気込みがステッチや裏地の処理といった細部に宿っていた。

8.シャツ&タイ

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今回オーダーしたシャツは生地をシーズンものから選択、ストックの多いカルロリーバだと値段は上がるしヘビーユースには向かない。前立てはなく通常のボタンに胸ポケットを付け、袖はラウンドのバレルカフにしたがここまでは別料金の発生しない範囲。うっかりラウンドのターンナプカフやあれこれ我儘を言い続けるとMTOなのに1枚7万円を越してしまいかねない。ビスポーク以上の値段にならないよう心がけた。ネクタイはミラノのステファノビジ。シャツのラベンダー色を拾ったものを選んだ。チーフはポールスチュアートのもの。シルク製のハンドロール・パープルチップを3ピークで挿している。

9.本開きのスリーブ

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手縫い既製服のダヴェンツァらしく袖の処理も手縫いでお願いしている。勿論日本の直し業者が行ったものだが身頃のボタンホールに合わせて密なピッチで縫い込まれた袖のボタンホールを見ると日本の職人の腕も確かなことを改めて実感する。切羽上部の閂止めや星コバステッチ、ホーンボタンなど写真からも手の込んだ作りになっていることがお分かり頂けるかもしれない。

10.ラペルのロール

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手縫いの星コバステッチに手縫いのボタンホール。特筆すべきは段返り部分。ボタンホール部分の真ん中で襟が自然に折り返っている。ここが綺麗に折り返ることは中々難しく、同じく有名なナポリのアットリーニでもキトンでも不自然な段差が出来てしまう。アメリカのブランド(ブルックスブラザーズなど)のように全て折り返してしまうデザインの方が楽なのに、そうしないところにダヴェンツァの手縫い紳士服メイカーとしての意地のようなものを感じる。

11.コーディネイトした靴

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靴は勿論クラシックなイタリアンシューズ。左はミラノのメッシーナで誂えたもので右はローマのラッタンジで購入したもの。イタリアのスーツに英国の靴を合わせることもあるが、イタリアの紳士靴に見られる独特のスクェアトゥ(アヒルの嘴と言われているそうでマンテラッシのものが有名)がスーツの肩線と合うらしい。年月が経ちワックスで磨くと何とも言えない底光りをするようになっている。

12.イタリアンクラシックシューズ

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イタリアの靴はトゥのメダリオンは英国程種類がないのだろうか、注文であっても既成であっても殆どは写真のようなデザインのものになる。それとコバ部分にロウ目付けを施しているのだろうか、出し縫いのステッチが見えないように処理されているものも多い。左右どちらもフルハンドメイドの靴だが並べてみるとやはりラッタンジの方が既成ということでぼってりとした印象を受ける。メッシーナが一穴ごとに手作業で開けた細かなパーフォレーションラインをはじめ引き締まった表情をしているのと対照的だ。

ピンホールシャツを注文できるメイカーは国産でもいくつかあるようだし、英国のウェブサイトでも見かけた。だが、既成のシャツでは最高峰に位置するフライのピンホールシャツは別格だ。ネクタイの納まり具合や襟のロール具合、さらに細かなところでは襟合わせ部分の分量(タイスペース)を指定することもできるし(今回はなしを選択)、ピンも別料金ながら金と銀から選べる(1本ずつ注文)。同じピンホールシャツを同じメイカーにリピートしたのが論より証拠、フライの素晴らしさを物語っている。

前回はお願いしたイニシャル入れや時計を嵌める側のカフ周りを1㎝大きくするといった細かな仕様は今回一切行わなかった。おかげで既成とさほど変わらない値段に仕上がっている。特にミニマム2枚のオーダーでディスカウントというサービスは有難い。それでもシャツ2枚でチャーチズの靴が買える値段ではある。どのアイテムに予算を掛けるかは人によるだろうが、他のどの店にもないシャツを作れるとしたら出来上がりまで3~4ヶ月待つ甲斐のあるシャツ、それがフライの特注ではないだろうか。

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2012年3月31日 (土)

Making over a suitⅡ(誂え服の直しⅡ)

今年は昨年末からの寒さが長引き、いつもより桜の花芽の生長が遅れているようだ。東京ではあと2,3日で桜が開花するとの予報が出ている。このところ暖かい日があると少しずつ出しておいた春夏物を身に付けていたが、この週末を利用して一気に衣替えを進めた。ついでに処分する古着をあれこれと仕分けながらようやく薄手のものを前にもってきたが、端には直しに出す秋冬物を何着か掛けている。

ブログでも度々書いているが体型が細くなったので今まで誂えた服の仕立て直しを進めている為だ。せっかく衣替えのすんだ春夏物や新たにワードローブに加わった服飾品を紹介したいところではあるが、前々回の記事ビスポークスーツの仕立て直しで紹介したバーズアイのダブルブレステッド6釦のスリーピースの続編として今回はドニゴールツィードのラペルドウェイストコート付3ピースの仕立て直しを紹介しようと思う。

1.新旧スーツの比較

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直す前(左)と仕立て直した後(右)の比較。最も異なる部分はチェスト部分より下、特にウェストからジャケットの裾部分にかけてかなり細身に仕立て直されている。トラウザーズはウェスト回りを数インチ細く仕上げているが、ワタリ部分や裾幅などは依然と変わらない。肩線部分も修正したのかアームホールや筒袖上部のだぶつきも減っているようだ。

2.ジャケットのシルエット

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ウェスト部分の絞りが強くなったせいかスラントポケットの上部が不自然だが、実際に着てみるとウェストから胸にかけて身体に沿ったラインが出ている。前身頃の合わせはストレートに近いが今作っている3ピースはイタリアはリヴェラーノのようなカッタウェイ調になりそうだ。体系に合ったラインというものがあるようで、カッターのピーターがチャコでラインを直接ジャケットに引いていたのが印象に残る。

3.Ⅴゾーン

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シャツとネクタイはラルフ・ローレンのもの。タッターソールのシャツはネル生地に近い柔らかなものだが、シャツは全てクリーニングに出して(もちろん手アイロン仕上げ)しまうので糊がかかった状態で戻ってくる。改善の必要ありといったところか。体に沿ったものに仕立て直すと着心地はぐっと良くなる。手に取るとかなりの重さがあるウェイストコートとジャケットも着てみると全く重さを感じさせない。

4.ウェストサプレッション

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腰回りがだいぶスリムになったため、一番気になっていたのがウェスト部分。試着した状態で後ろに回ったピーターが両脇を摘みながら同行したロバート・ベイリー(同じカッターでファーラン&ハーヴィー&デイヴィス&サンの後継者)に1インチずつ詰めるよう指示を出し、次々とメジャーを当てて補正値を読み取っていた。出来上がりは生地が厚くコシが強い分フィッティングは緩めだが英国調のスーツらしくウェストのくびれが協調されていて直す前とは大きな違いがある。

5.リアルワーキングカフ

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本切羽の仕上げはオーダーを重ねるうちにより熟練した職人が担当するようになるのだろうか、1着目のものと比べるとピッチの細かさなど丁寧さが光る。ボタンホールも最初の頃は4つ開けだったり2つ開けだったりしたが4着目のオーダー頃からは全て本開きの仕様になっている。粗いツィード素材に精緻なボタンホール、こうした丁寧な仕事がスーツ全体を引き締めている。

6.ウェイストコートの直し

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直し前のウェイストコート(左)と仕立て直し後(右)の比較。一番の違いはアームホール部分下の生地のだぶつきが無くなったことだが、その他にもボタンを留めた時の腹部周辺のフィット感が違う。体脂肪を減らすトレーニングで最初に変化が出てくるのが腹部。まず前腹、その後脇腹や腰裏、胸部へと広がってくる。こうなるとトラウザーズのウェスト調節だけでなく、ジャケットもウェイストコートも全てに渡って仕立て直しが必要になる。

7.ポケットチーフ

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ポケットチーフは前回の撮影と同じものを挿している。タイの色を拾って赤の勾玉模様が入ったイエローベースのものだ。シルクの発色が綺麗なチーフといえばイタリア製、エルメスなどフランス製のものも良いがシルクのポケットスクェアには定番のリネンやコットンのものにはない鮮やかさと華やかさがある。今回は3ピークをラフな感じで挿し、先端を微妙に引っ張りながらバランスを整えてみた。

8.サイドベンツ

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ロンドン仕立ての場合はサイドベンツが多い。仕立ては左右のベント端ぎりぎりまで裏地が来ているので、選ぶ色にもよろうが赤やオレンジなど派手な裏地だと歩いてる最中僅かに捲れ返って見えることがある。それが密かな楽しみということらしいが、写真では確かに立った状態のままでも裏地が見える。「これ見よがしなことはしない」のが英国紳士とのことだが、実際はこうした裏地に加え派手なシャツと派手なネクタイを合わせていながら「我関せず」というのが英国流の着こなしではないだろうか。

9.ウェイストコートの尾錠

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ウェイストコートの裏側。日本の仕立屋では体型に沿って作るので飾りの意味合いが強いと言われている尾錠。ロンドン仕立てはちょっと違うようで、尾錠が最後のフィット感を強める役割を担っている気がする。ウェイストコートの直しも背中で詰めるのではなく両脇部分でバランスを取りながら補正したようだ。横から見ても直し前同様バランスもよくフィッティングはパーフェクト。まるで新品のウェイストコートを注文したようだ。

10.ブレイシーズとネクタイ

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ウェイストコート下のブレイシーズはネクタイと色調を合わせた勾玉の小紋柄。こういった洒落たブレイシーズ(アメリカ流にいえばサスペンダー)は英国製にはない。アメリカの方が断然豊富だ。ブレイシーズと同系色のネクタイはシルクのプリントものだが織柄が入った雰囲気がツィードに合う。仕立て直したトラウザーズはサイドアジャスターを目いっぱい引くことなくピタリと腰にフィットしている。

11.起毛素材の靴

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起毛素材の靴といえばスェードシューズ。革の内側を毛羽立たせる加工技術がスェーデンで考案されたことに由来するそうだ。起毛された革の表面とツィード生地との相性は抜群。鹿革のバックスキンやスタグスェードから子牛革のカーフスェード、子羊革のキップスェードまでスェードの種類は様々で、写真の靴は左がバックスキンで右がスタグスェードになる。鹿革のものは特に流通が少なく、右のスタグ(牝鹿)は既に存在していない。左のバックスキン(牡鹿)も状況は似たようなものらしいが、鹿の原皮そのものがどんどん減っていることが原因のようだ。

身嗜みの基本は「身体に合ったものを着ること」と言われ、真にフィットする誂え服は流行とは関係なく長きに渡って着られると書かれている。しかしそれは注文時の体型を維持することが出来てこその話、年齢が上がるとともに体型が変わることも多い。勿論そのことを考慮して誂え服では縫い代を余分に取っているが、今回のように痩せた場合はその縫い代がさらに増えるため、その分補正は大変だったのではないかと想像する。

これから暫くは今の体型に形に合う服が少ない状態が続く。この秋冬はスーツやジャケットを随分買い求めたが、春夏物も揃えていく必要があるだろう。久しぶりに既製服の世話になっているところだが、既製服であっても基本は同じ。気に入ったものを試着し、確かめながら補正も忘れず「身体に合ったものを着る」よう心がけたい。同時に暫くの間出番のない誂え服を少しずつ仕立て直しに出しながら長きに渡って着られるよう整えていきたい。

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2012年3月24日 (土)

Polo world(ラルフ・ローレンの世界:続編)

既にブログでも紹介したが、最近買った洋書”ラルフ・ローレン”を見ていると、昔のアイテムが何とも懐かしくなる。週末はどこに仕舞い込んだのか古着をあちこち探しては引っ張り出してしみた。だいぶ譲ってしまったが、それでもオックスフォードBDからイタリア製のマッケイドレスシューズ、スーツやジャケットにアウターなど随分残っている。友人の薦める「断捨離」を自分も実践したいと思う反面、VAN時代から「長く愛用することを前提としたモノ選びをする」ことこそトラッドな生き方と習っていたので、中々昔の愛用品と決別できない。

ラルフ・ローレンのカタログにはアイビーリーグの流れをくむアメリカントラディショナルや英国をルーツにもつブリティッシュアメリカン、それにカウボーイやネイティブインディアンに代表されるアメリカンカジュアルの3つが常に絶妙にコーディネイトされている。以前も書いたがリーバイス風のデニムジャンパーの下にBDシャツとレジメンタルタイ、上にはキャメルカラーのポロコートを羽織った写真などは今見ても参考にしたくなる。続編の今回は当時のカジュアルアイテムやシューズなどを交えながら当時影響を受けたコーディネイトを紹介したい。

1.オックスフォードBDシャツの魅力

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洗いざらしのオックスフォードBDやチノパンもラルフ・ローレンの広告によく出てくるアイテム。爽やかな配色のレジメンタルタイをラフに結んだスタイルは毎年春になると着こなしてみたくなる。近頃のチノパンはスリムフィットで股上が浅く踝丈が主流。軽いアンコン仕立てのジャケットとの相性は良いだろうが、今は写真(上)のようなプレッピー風の着こなしに憧れている。スリムでタイトなシルエットがようやく一段落しそうな気配もある。今年あたり昔のアイテムを少しずつ復活させてみようかとも思っている。

2.カジュアルシャツとトラッドなタイ

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カジュアルなボタンダウンシャツ。ドレスシャツとの違いはサイズ展開がS・M・L~になっているところ。ブラウジングルックと言えばよいのだろうか、ライセンス品でない本国展開のシャツはともかく大きめに作られていて殆どはMで十分、中にはSで平気なものさえあった。写真のネクタイの内グリーンベースのレジメンタルとチェックの物は珍しいオーストラリア製とニュージーランド製のもの。各地を旅行する度にその国のポロショップに立ち寄っては現地産のアイテムを買い求めたことも懐かしい思い出の一つだ。

3.ダンガリーBDとビッグオックスフォードBD

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上は懐かしいデニム地のボタンダウンシャツ。これをブレザー(金ボタン)と合わせるのがラルフ・ローレン流。レジメンタルタイとの相性も良くアイビーから服飾に入った世代にも違和感があまりないのがラルフ・ローレンだった。下のシャツは1990年代に展開されていたビッグオックスフォードシリーズ。オーバーサイズのBDシャツを半袖のポロシャツの上に重ね着するスタイルにも随分と影響を受けた。このシャツは最初からシャツの裾を外に出すよう考えられていたのか、ポロポニーが右裾の一番下に付けられている。

4.USメイドのシャツとイタリー製のシャツ

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こちらのシャツは上2枚がメイドインUSAで、一番下がイタリア製のもの。一番上のシャツはかなり地厚で、一見チノクロスのようだ。サックスの平場で購入、数ある中からアメリカ製のものを探しだしたもの。中央のダンガリーシャツはマディソン本店で購入、ポロ・ダンガリーのレーベルが懐かしい。一番下はパープル・レーベルが出たての頃のカジュアルシャツ。当時ドレスシャツは英国製だったが、カジュアルなものはイタリー製が多かった。

5.BDシャツとチノパン

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ベージュのチノパンはポロ・チノシリーズ(USメイド)。フォワードの2プリーツで贅沢に生地を使っている。ワタリが広くゆったりした履き心地は今のチノパンとは別ものだが、こうして合わせてみると新鮮に感じる。インナーにポケットTシャツ、デニムシャツは裾をタックアウトしてリボンベルトの端も下げてみた。ネクタイのディンプルを緩めるのがポイントだがラフ加減は思ったよりも難しい。足元は靴はオイルドグレインレザーのブルッチャーモカシンあたりはどうだろうか。

6.ネイビーブレザーに合わせて

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ビッグオックスフォードとチノパンにブレザーの組み合わせ。ブレザーはパープルレーベルのもの。5の写真と同様にネクタイはラフに締めてシャツの裾をタックアウト。もう一点ブレザーの胸ポケットにはチーフを無造作に挿してみた。実際この格好で出かけることはないだろうが、広告のイメージを再現するとこんな雰囲気になる。足元の靴は最近のイタリー製のドライビングシューズ(白)とメイン州のハンドソーンモカシン(チェック)。

7.オックスフォードBDとカジュアルパンツ

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ブレザースタイルにはレジメンタルタイやクレストタイを合わせるのがアイビー時代からの定番。メンクラの街アイ世代には懐かしい組み合わせではないだろうか。端正な顔立ちの英国製ブレザーも他に合わせるアイテムによって随分とカジュアルな雰囲気になる。右の写真は当時のチノパンやコーデュロイパンツを引っ張り出したもの。どれも今見るとワタリが広くそのままでは合わせにくいが、洗いざらしの雰囲気や生地の質、作りなどは今のものよりも丁寧で凝っている。

8.ポロの広告から

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1988年秋冬のカタログから。左端のルームシューズは恐らく英国製。中央のセミブローグも英国製で、当時ドレスシューズは全てクロケット&ジョーンズ製だった。靴に入れたシューツリーが欲しくて日本のポロショップでわざわざ購入したものが次の写真(9番目写真右端のローファー)に映っている。右端のクロコダイルを使ったモカシンシューズがポロの傑作の一つ。残念ながら今や同じものを手に入れることはできないが、昨夏アメリカ製のアリゲータローファーをポールスチュアートで購入したのもこの靴に対する思い入れがあってのこと。

9.ポロ・ラルフローレンのシューズ

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左からイギリス靴(パープル・レーベルネーム)、イタリア靴、アメリカ靴。1990年にラルフローレンの本店を訪れた時もこの3国の製品に新興国のスニーカー類というラインナップだった。左の靴はE.グリーンへの別注で他にもカジュアルなブーツなどはアルフレッド・サージェントが受け持っていたようだ。ところが当時日本のデパート内のポロショップではリーガル製のマッケイ靴が中心に置かれていて、何足か買ったことを覚えている。アメリカントラディショナルウェアにマッケイ靴という組み合わせは不思議に感じたが折衷主義のラルフローレンらしくもあった。

10.イタリア製マッケイコンストラクションの靴

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1990年代初めはイタリアンファッションがブームとなり、華奢なイタリアンシューズが靴屋に並ぶようになった頃でもある。ブラガノシリーズに代表されるコールハーンのオンリーショップが渋谷にできたのもこの頃だった。初めてNY本店を訪れた時に購入したのが写真の靴。ラルフ・ローレンのスーツに合わようアンティーク仕上げが施されたもので、久しぶりに出してみた。今のタイトで細身のトラウザーズに合わせてみるとやはり足元の安定感が足りないようだ。昔風のゆったりとしたシルエットのトラウザーズでクッションを多めに取った裾口から靴が少し覗く、そんな履き方の方が合うかもしれない。

11.パープル・レーベルの広告

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海外駐在中に発表されたパープル・レーベル。本切羽や手縫いのボタンホールなどにフォーカスを当てたイメージ広告に胸躍る思いだったが結局駐在地のポロショップに並ぶことはなかった。仕方なく日本に一時帰国する度に銀座や原宿のショップを覗いたが、初期のスーツは日本人用に着丈が短いものが多く、バランスが良いとは言えなかったことを思い出す。初めてパープル・レーベルのスーツを買ったのは海外、旧ボンドストリートのポロ・ショップだった。チェスターバリー製のスーツをロンドンで買ったのも何かの縁、この後もロンドンのポロショップには随分世話になった。

12.パープルレーベルの3ピース

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ラルフ・ローレンの3ピースはラペルドヴェストのものが多く、そのヴェストも襟が英国のテイラー仕立てのように後付けではなく最初から身頃とラペルが一体になった贅沢なもの。デイヴィス&サンのカッター、ピーターに言わせるとオールドスタイルとのことだが、後付けのものよりヴェストのラペルがロールする部分が見えるので断然格好良い。写真のスーツはハッキングジャケットのようなデザインでスロートタブが付いたもの。スポーティな雰囲気とラウンジスーツらしいストライプ生地の折衷スタイルにリッチなラペルドヴェストが付いた拘りの1着。

12.ラペルドヴェストのロール

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ジャケットのVゾーンから覗くラペルドヴェストのラペル。丁度ロールした部分が見えることで柔らかな雰囲気のVゾーンになる。ボディが青のマルチストライプで襟が白のシャツはスーツ同様パープル・レーベルのもの。これに英国製ドレイクスの青無地ソリッドタイを合わせ、全体を青を基調としたコーディネイトで揃えてみた。チーフはコットン製、4ピークで挿している。靴は黒のパンチドキャップトゥやセミブローグが本命だが、農茶のブローグドシューズも悪くない。

ようやく出てきたカタログの中にシアサッカーのスーツを着た紳士を見つけた。インナーはボールドストライプのBDにボウタイ、ボトムスをゴールドバックルのアリゲータベルトで留め足元は茶白のスペクテイターシューズを履いている。実際にそのままの装いで出かける場など日本では中々ないだろうが実に格好が良い。他にもインテリアと壁紙、テーブルウェアとのマッチング、天蓋付きのベッドやクラシックな柄のベッドリネン、アンティークのチェストとカーペットなど、今見てもライフスタイルに様々なヒントを与えてくれる。

このブログのタイトルも元はラルフローレンがインタビューで「ファッションではなくスタイルを」と言っていた言葉に影響を受けている。8の写真で紹介した広告は1988年、既に25年が過ぎている。それでもルームシューズやセミブローグ、アリゲータのデッキシューズなどどれも色褪せなていないものばかりだ。確かにスーツの着丈やトラウザーズの幅は今のメンズファッションから外れているかもしれないが、クラシックなスタイルは時代を越える魅力がある。ラルフ・ローレ創立40周年の本を見たり、昔のカタログを引っ張り出して記憶をたどったりする中で、改めて色々なことが少しずつ分かってきている。

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2012年3月17日 (土)

Making over a suit(誂え服の直し)

ジム通いや日々の運動で体質と体型の改善が進んだことは以前からこのブログでも何回か紹介しているが、誂えで作ったスーツやジャケットも細身になった体に合わせて、なじみのテイラーに仕立て直しをお願いした。直接キャリーしてロンドンまで運んでもらい、直しに要した期間が約4週間。発送は段ボールの平面トルソーに服を掛けた状態で2着入った大型の段ボール箱ごとロンドンから空輸、DHLで届けられた。

関税対象か否かのチェックで事前にDHLから電話があった。イニシャル表記の名前が書かれたインヴォイスだけではだめで、氏名を正確に伝えた。更に箱の中身がスーツであり、昔のものを直しに出したことを説明し、関税の対象ではないことなどを確認。その後数日経ってデリバリーされた。直しを依頼してから約1カ月後の受け取りだから対応は十分スピーディ。仕上がりも別物のようだ。そこで今回はテイラーによる直しを経て、生まれ変わった様にフィットする誂えのスーツを紹介しようと思う。

1.納品時と直し後のスーツ比較

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2005年の10月に注文した3ピース。1年後の2006年秋のデリバリーだから、かれこれ6年経つ。直しのj範囲はトラウザーズがヒップ部分を中心に3方詰め、ジャケットとウェイストコートはウェスト部分の絞りだけでなく背中心の詰めなども加え、より細やかに補正を行っているようだ。素写真左が2006年の納品時、2012年の仕立て直しが右側になる。トラウザーズの腰回りやジャケットのウェスト部分など今の体型にフィットしており、テイラーの目による補正が入ることではっきりと分かるほどバランスよくスリムになり、フィット感も強まった。

2.Vゾーン

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仕立て屋に直しに出すと丁寧なアイロンワークが施されて戻ってくる。まるで新品のスーツが納品されたみたいだ。ウェストや背中だけでなくジャケットはショルダー部分にも手が入っているようで、体型の変化に伴う修正が様々な部分に入っていることが分かる。Vゾーンはブルーのロンドンストライプシャツにネイビーのドットタイ。いずれもイタリアのものだが違和感なく合わせられる。3ピークで挿したコットンチーフはポールスチュアートのもの。フランスはシモノ・ゴダールの製品のようだ。

3.ウェストサプレッション

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胴の絞りが強くなることでよりブリティッシュスーツらしくなった。ウェスト部分がくびれて腕との間にしっかり隙間が見えるのが英国調。ダブル6ボタンの下2つ掛けを崩して下一つだけ掛けてみた。逆に中1つだけ掛けて下を外す着こなしもあるようで、カッターのピーターは「2つ掛けても1つでも、中でも下でもよい。」と言っていたことを思い出した。ダブル6ボタンのスーツの着こなしといえば真っ先に思い浮かぶのがチャールズ皇太子。皇太子は中も下も両方留めている写真が殆どのようだ。

4.本切羽の仕上げ

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テイラー仕立ては一番上のボタンを本開きにしないことが多いと聞くが、ここでは4つ全てファンクショナルボタンカフとなっている。ボタンホールのかがりはイタリアのサルトのような雰囲気もある。生地はハダースフィールド製スーパー120’sのバーズアイ。確かサビルクリフォードのものだったと思う。日本ではあまり馴染みのない生地名だが名門ミルのようで現在はスキャバルの傘下とのこと。

5.ウェイストコートの比較

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最も細く作られた部分を中心にアームホールからテール部分まで両脇と背中心の3方詰めをした(恐らく)ウェイストコート。以前のように後ろのアジャスターを目一杯奥まで調節しなくともボタンを留めるだけである程度フィットするのが嬉しい。当然トラウザーズのウェイストも3方詰めを行っていると考えられる。スリムになったウェイストコートに合わせてウェストは勿論ワタリ幅などもだいぶ細身になってフォワードのプリーツも綺麗に収まっている。

6.ウェイストコートとダブル前を開けた状態

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ウェイストコート着用に限ってジャケットの前を開けてもよいとされているスーツの着こなしだが、それはシングルのスーツに限ってのこと。ダブルのジャケットは決して前を開けないはず。ところが実際はダブルの前を留めていない写真を結構見かける。度々出てくるチャールズ皇太子でさえ暑い気候の国を訪問した時だろうかダブル前を開いたままで写真に収まっている。ピッティなどで見かけるファッション関係者の場合はねらって前を開けているのだろうが重なりが多い分見ていてやりすぎの感もある。

7.ウェイストコートのディテール

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ウェイストコートも緩やかにカーヴを描いてボタンホールへと続くウェイストコートのVライン。バーズアイの織柄に隠れて見えにくいが手縫いの星ステッチが端を通りシャープに仕上げている。ボタンホールは勿論手縫い。力のかかるポケット内側や裏地のダーツなどミシンが一部使われているがハンドメイドとはかくも手間がかかるものだということを改めて分かった。前面からでは分からないが背中のライニングは内側が袖裏と同じストライプで外側が身頃裏と同じパープルという派手目な作り。上着を脱いで仕事をするには勇気がいる。

9.下一つ掛けとラペルのロール

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2つ掛けの6ボタンダブルを敢えて下一つ掛けにするのは着崩しの一種とのことだが、緩やかにカーヴを描きながらロールするロングターンのラペルはVゾーンを美しく見せる。思えば一番最初に購入したダブルはポールスチュアートでその時も今回と同じ下2つ掛けだった。残念なことに今はもうないが、その後ラルフローレンでダブル6ボタンを購入した。こちらはもともと下1つ掛けのデザインだがラペルの見え方がやや大げさな気もする。やはり基本は下2つ掛けで、時々中釦を外すのが良さそうだ。

10.ハ刺しの跡

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表からは手縫いと機械縫いの区別がつきにくいスーツやジャケット。ところがこちらのサイト(MADE BY HAND)を見ると仕立て服や既成服の細部が公開されていて、如何にビスポークが手間暇をかけているかよく分かる。写真では手縫いによるハ刺しの跡が見えるが、襟裏や裏地の処理は一見手縫いのようでミシン縫いという既成服が多い。それだけ機械の性能が高いのにもかかわらず、熟練した職人の手作業で仕上げるビスポークスーツの値段が高くなるのも頷けよう。今回の仕立て直し、工賃もビスポークに相応しいものだったが、出来上がりには満足している。

11.合わせた黒靴

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合わせた黒靴はどちらもフォスター&サンのもの。ダブルのスーツには右のセミブローグを合わせるのがロンドンはシティの合わせと聞いたことがある。左側はパンチドキャップトゥ。ダブルブレストのスーツを日頃着慣れているチャールズ皇太子が選ぶ靴はシンプルなものが多いのでそれに倣って穴飾りの少ないものを用意してみた。良質の黒革を磨き上げた時の光り方は別格、ダブルブレストの存在感にも負けていない。

誂えの服は体型の変化、とくに太くなった場合を想定して縫い代を多めに取っている。今回のように細くなった場合はその分縫い代を減らしていくのか気になってトラウザーズを裏返してみた。すると今までの縫い代を削らずに細身に修正したようで、他と比較(同じデイヴィス&サンのもの)してみてもたっぷりとられた縫い代が散見できる。カッターのピーターは念のため、元の体型に再び戻ってもよいように余分な生地をカットすることなく細身に仕上げてくれたようだ。

今回の仕立て直しは3ピースが2着分の工賃と送料込みで中堅のイタリア製既製スーツ1着が買える値段だった。料金はともかく来日する度に2着ずつ出すとして残りの着数を考えると3年近くかかることになる。それならば同時並行で熟練の職人が対応する日本の直し業者にお願いした方が早く終了する。日本の職人の技術は素晴らしいので、後は仕立て服に相応しい直し方で仕上げてくれるところを探せばよい。調べてみたところ友人が薦める「サルト」では「オーダー仕様のスーツは通常の2割~5割増し」と明記している。これならば安心して誂え品を直しに出せそうだ。近いうちに銀座を巡るついでに立ち寄ってみたい。

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2012年3月10日 (土)

Ralph Lauren 40周年記念本

1970年代にVANから入った服飾への興味は1980年代に入って第1次インポートブームがやって来ると、ご多分に漏れずブルックスやポールスチュアート、ラルフ・ローレンへと広がっていった。ところが当時の商品はライセンスものが多く、店員は「日本の物の方が質が良いです。」と言うがやはり本物が知りたい。思い切って初めてのニューヨークを訪問したのが1990年。その後はほぼ毎年のようにアメリカ、中でもニューヨークに必ず出向いてはトラッドの名店に足を運ぶようになった。

中でもポロ・ラルフローレンは一番影響を受けた。商品よりもその背景(ライフスタイル)が感じられるイメージ広告を見るうちに、身に付けるものから食器やファブリック、家具までとあれこれ買い込んだ時期もあった。それほど影響を受けた広告だったが当時のカタログが中々見つからずにアマゾンを検索。ようやく手に入れたのが洋書”Ralph Lauren”だった。そこで今回は手元に残る当時のアイテムとともに、本の中の広告や思い出を振り返ってみようと思う。

1.ラルフ・ローレン ブック

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分厚い本は創立40周年を記念したもの。同じ中身でアリゲータ模様のボックス付のデラックス版もあったらしい。最近原宿店を訪問、テーブルに置かれていたこの本を見て懐かしい広告が載っていたので資料用にと購入。アマゾンで新品が約3000円で買えた。ところが今日見たら既に在庫切れで出品者からだと一気に1万円以上になっている。物には買い時があるというのは本当のようだ。写真のテーブルはアンティーク、ランプはリプロダクツだがどちらもラルフローレンに影響を受けて購入した英国製。ポロジャパンの案内で英国製アンティーク家具の販売会に出かけたことさえあったが今では懐かしい思い出だ。

2.イメージ広告

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多くの人がそうであるように、初めて購入したのはポロポニーの刺繍入りのポロシャツだった。当時の広告をみると山高く積まれたポロシャツの写真が幾度となく出ていくる。また襟付きのヴェストもよく掲載されていて、こちらも随分と影響を受けた。他にはフェアアイル柄のヴェストとツィードジャケットを重ね着して(ウィンザー公がルーツだろうか)フライフィッシングに興じる紳士やチェストの下に今脱いだかのように置かれたアリゲータのスリッポンなど、記憶に残る広告が沢山ある。

3.ポロ・ラルフローレンのポロシャツ

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ポロの広告に載っていたポロシャツは新品ながら洗いざらしの雰囲気が漂う、如何にも着心地の良さそうなものだった。襟元のネームタグのすぐ下に付くメイドインUSAのタグを見るにつけ、国内のポロシャツとの違いを感じて、いつしかアメリカに行く度にアメリカ製のポロシャツを買うようになっていった。当時既にシャツ類は殆どが新興国で作られていたが、ポロシャツは1990年代終わりまでアメリカ本国で生産されていたと思う。最後に購入したのが丁度海外駐在を終えるその頃だったこともあってよく覚えている。

4.ポロシャツのタグ

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①はマディソン本店で初購入のポロシャツ。ラルフ・ローレンネームはレディス用と思われているがこれは男性用。オーセンティックラフウェアと記されている部分がドライグッズに代わってその後のポロカントリーになる。②ローマのセレクトショップで購入。欧州向けのタグはアメリカ本国物とはかなり違う。③定番のタグ。広告に出てくるものは殆どがこのデザインになっていた。④1993年発表のアメリカ製ポロスポーツ。現在はRXLネームに移行し、製造国は中国が中心になっているようだ。⑤1995年発表のRRL製ジップアップポロ。ユーズド感たっぷりの加工は古着を追求するRRLならでは。⑥定番のポロと同じファクトリー製(おそらく)のRRLポロシャツ。

5.ドレスシャツとネクタイ

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ポロシャツ同様高く積み上げられたシャツもポロの広告によく出てきた。定番のポロ・レーベルは当時からNIES製が中心だったが、英国製のシャツがパープル・レーベルから出された時は早速購入したものだ。残念ながら現在はイタリア製へとシフトしまっている。一方ブランド出発のアイコン的存在のネクタイはメインのポロ・レーベルが長らくアメリカ製に拘っていたがこちらも近年イタリア製になってしまった。アングロ・アメリカンスタイルのラルフ・ローレンは今や中国とイタリアが支えているのが現実である。

6.ブルータグのシャツ

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ポロ・レーベルのシャツは東南アジアが主な生産国でマドラスチェックのものなどはインド製だった。不思議なことに時々同じドレスシャツの中にアメリカ製のものが混じっていることもあった。どうやら最初の少数ロットをアメリカで生産、その後同じものを大量に新興国で生産していたようだ。サックス5thアヴェニューでは平場にシャツが置かれていたのでわざわざアメリカ製の物を選んで購入したことも懐かしい思い出の一つ。その後1994年頃になるとイタリアの手縫いシャツがワードローブの中心になり、次第にポロのドレスシャツはクローゼットの奥にしまうことが多くなっていった。

7.ポロ・ラルフローレンのスーツ&シャツ

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ソフトスーツ全盛の1990年代にあっても、ポロのスーツは他と一線を画すクラシカルでエレガントなものだった。吸いつくようにうなじへと登る上襟とソフトに折り返る下襟。「本バス芯を使っている」と言いながら店員はラペルのロールに対するブランドとしての拘りを丁寧に説明してくれた。センターボタン付近に目を移すと強い絞りの入ったウェストと深いVゾーンが目に入る。誰にでも受け入れられるように作ったブルックスのサックモデルとは対極の着る人の体形を選ぶスーツ。それこそがポロ・スーツの魅力だ。20年近く経ったが、太めのトラウザーズの復活とともに久しぶりに着る機会が戻ってきそうな予感がする。

8.Vゾーン

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故林勝太郎氏は本の中で「鎌襟がラルフ・ローレンのスーツの特徴」と書いていたが、鎌襟とはよくいったもので、確かに首周りに吸いつき体全体をぴたりと包む上襟はポロ・スーツの特徴になっている。ライトグレーのストライプスーツにブルーのエンドオンエンド地のクレリックシャツ、これにライトグリーンのネクタイの組み合わせは淡いトーンの組み合わせだが新鮮に見える。いつものリネンポケットスクェアを3ピークで挿してみた。靴は黒も良いがポロの広告ではタバコスェードの紐靴を合わせている。

9.パープルレーベルのシャツ

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上の2枚は1995年のパープルレーベル発表から暫く経った頃のシャツ。どちらもメイドインイングランドでスプリットヨーク、ガウントレットボタン有。クレリックシャツの方はダブルカフの部分が白ではなく身頃と同じ生地というラルフ・ローレンらしい拘りのあるもの。一番下の1枚はメイドインイタリーになってからのもので、価格も一段と上がった。もっとも着心地は英国製の頃のものの方がなぜか柔らかな着心地でどちらかというと好みだ。

10.パープルレーベルのスーツ

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発売から間もないころのパープルレーベル。アメリカ製のスーツからイギリスで最も有名な高級手縫い既製服のメイカー、チェスター・バリーが縫製を請け負うようになった。生地はパープルとグレーのストライプがオルタネィティブに入ったラルフ・ローレンらしいもの。スーパー130’sでカシミヤ混の生地はしなやかでパッカリングが起きるほどデリケートだ。初めて袖を通したパープルレーベルのスーツはどこか懐かしい気がしたが、よく考えるとそれよりもずいぶん昔にハケットのチェスター・バリー製スーツを試着したことが記憶に残っていたからかもしれない。

11.ショップアシスタントによるコーディネイト

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スーツを買うに当たって、店員にシャツとネクタイのコーディネイトをお願いした。「ハードチョイス」などと言いながらシャツとネクタイをあれこれスーツに合わせ、選んだのがスーツのオルタネートストライプの両色、パープルとシルバーグレーを拾った組み合わせだった。やや赤みがかったパープルのエンドオンエンド生地のシャツとシルバーのピンドットタイの組み合わせはロンドンで見かけたバンカーストライプのビジネスマンにも似たコーディネイトで白のシャツを合わせたくなる日本人には新鮮な合わせだ。

今では昔のようにラルフ・ローレンのショップに足繁く通うこともないが、銀座に日本初の路面店が出来て、その後立て続けに原宿、鎌倉、神戸と出店が続いた頃は全てのショップに行ってみたこともある。原宿クエストビルの上階で開催されたポロのファッション・ショウを参観したり、鎌倉店の上にあるポロ・レストランにも立ち寄ったりとラルフ・ローレンの世界を楽しませてもらった。アメリカやヨーロッパを訪れるようになってもポロショップを見つけては色々と買い物をしたことが懐かしい。

ポロ・ドットコムを見るとアメリカでは相変わらず優雅なイメージを演出しているようだが日本では路面店は原宿1店舗になり昔とはだいぶ違う。時代の流れに逆らえなかったのか、最初は出店しなかったアウトレット・モールに店を構えるようになると更にイメージも変わる。今やアウトレット店にはアウトレット専用の商品が大量に並びファミリーブランドのようだ。それでも昔のアイテムは捨てないし、掘り出し物を探して購入することもある。創立40周年の記念本を見ながら、昔ほど熱烈ではないが未だにラルフ・ローレンのファンでいることに改めて気付いた。

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2012年3月 3日 (土)

Southwick(アメリカ製のスーツ)

アメリカのスーツはヨーロッパが誂えを基本としていたのとは違い、元々既製服が出発点のようだ。アメリカ最古の紳士服店ブルックス・ブラザーズが提案したスーツも既製服らしく誰にでもフィットするようナチュラルショルダーや前ダーツなしでセンターベントのモデルを作り上げたとのこと。麻袋(サック)のような型からサック・スーツという名がついたのは有名な話だ。服飾に興味をもった1980年代はポール・スチュアートやラルフ・ローレンなどの英国調に夢中だったが、それでもアメリカのスーツといえばナチュラルショルダーのファクトリーメイドが中心だった。

当時シップスで見かけたセント・ローリーやマーティン・グリーンフィールドといったアメリカ製品も90年代中頃から急激に姿を消してしまう。代わりに店頭に並んだのはイタリア製や中国製のものだった。ところが最近、ドル安を背景にアメリカの製造業が復活し始めているようで、老舗のファクトリー、サウスウィックがブルックス・ブラザーズの傘下に入ったことを知った。早速USメイドのブラックフリースを取り寄せ当ブログで紹介したところだが、今回はサウスウィックのオウンレーベル・スーツを購入したので、その着心地やコーディネイトを紹介してみようと思う。

1.サウスウィックのスーツ

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ミディアムグレーのチョークストライプはフランンネル風。ハリとコシがある生地はトラウザーズの膝抜けも少なさそうだ。このあたりはイタリア製でカシミヤ混の柔らさとは裏腹に一日着た時の皺が気になるパープル・レーベルのスーツとは対極にある。ジャケットボタンは焦げ茶のコロッツォ。靴はボタンの色に合わせて茶系のものを合わせた。スタイルはアメリカのスーツメイカーらしく、前ダーツはあるものの段返りの3ボタンにセンターフックベントといった定番のデザイン。

2.ネクタイを替えたVゾーン

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ネクタイをフレンチブルーからグレーベースのレジメンタルタイに替えて撮影してみたもの。ストライプオンストライプの場合は幅を変えるという鉄則通りのコーディネイト。袖山が盛り上がったビルトアップショルダーのように見えるが肩パッドは薄くナチュラルショルダーに近い。ジャケットのカフ部分は最初から本切羽なので袖丈を若干詰めた後本開きにしてボタンを4つ並びで付けてみた。トラウザーズは腿下から急激に細くなり、裾までストレートに続くスリムフィット。

3.Vゾーンのコーディネイト(その1)

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素材は秋冬物の紡毛素材だが、ウールタイではなくやや明るいブルーのシルクタイを選択。上襟は従来のアメリカンスタイルよりもゴージが高く、ラペルの返りなどは機械縫製ながら中々のもの。シャツはホリゾンタルに近いカッタウェイ。ホワイトでダブルカフ、胸ポケットのないデザインは最もドレッシーな部類に入る。ネクタイはイタリア製の織柄。小ぶりなスクェアとデイジーの花(3月頃に開花)をモチーフにした柄が一足早い春を感じさせる。

4.自社製のタグ

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サウスウィックのタグ。工場としてはマーティン・グリーンフィールドやオックスフォード・クローズ(Oxxford Clothes)よりも機械縫製の部分が多いサウスウィックだが、今回紹介するものは昔から請け負ってきたブルックスやJ.プレスのナンバーⅠモデルよりもモダンなデザインのスーツだ。昔見たセント・ローリーの再来というわけではないだろうが、シップスではこのサウスウィック製スーツを何型か扱っており、その内の1着を購入。どうやらビームスやソブリンハウスでもアメリカ製のガーメントを扱っているらしい。アメリカントラッド好きとしては他もリサーチしたてみたいところ。

5.シャツとネクタイ

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シャツは1990年代初期のパープルレーベル。まだ今のように独立したサブブランドではなく、パープルのタグが付けられたものをそう呼んでいた。上質な素材を使った商品は数が少なく高価格帯で、日本ではあまり見かけなかったはずだ。写真のシャツの場合はシーアイランドコットンを使用している。合わせたネクタイはどちらもイタリア製のポールスチュアート・ネーム。ネクタイに合わせたカフリンクスも同じポールスチュアート別注の英国製14Kバーミルのエナメル仕上げ。製造国は様々だが全てアメリカントラディショナル老舗の逸品。

6.グレーのタイと合わせて

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ライトブルーからグレーのネクタイに替えるだけでVゾーンがぐっと控え目になる。スーツのラペルやポケットフラップにはアメリカ製らしくウェルトシームが入っているがあまり目立たない。サイズも38R-32W(EU表示では48R-drop8)ながらかなりタイトな作りで、センターボタンを留めるとウェスト部分はかなり絞りが強い。細身のトラウザーズとともに独特のシルエットは以前の米国製既成スーツとはまるで別物のようだ。胸ポケットには漂白したてのリネンチーフを挿している。

7.ウェスト部分

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ベルトで締めるのが米国本来のスーツスタイルなのだろうか、ラルフローレンなどアングロ・アメリカンなブランドと違ってサスペンダー用ボタンは付いていない。プリーツなしのシンプルなパンツが派手になりがちなチョークストライプ柄のスーツを控え目に見せる。ベルトはバーニッシュドタンと呼ばれる色目のコーチ製。1990年代中頃のものだが、既にこのころから米国外のコスタリカで製造していた。

8.

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センターフックベント。ブラックフリースのネイビーブレザーでも見かけたが、アイビーリーグモデルには欠かせない仕様。ただトラディショナルなスーツには珍しい。ひょっとして細かなディテールに拘りのある日本側から追加でリクエストしたものかもしれない。思い返すとアイビー全盛の頃は「ジャケットの後ろはセンターフックベントでなくてはならない」といった決まりごとが蘊蓄付きで結構あった。また、そんな約束事に真面目に拘っていた時代でもあった。

9.リアルワーキング・カフ

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袖の長さは人それぞれ違いの多いところ。サウスウィックの本切羽部分は袖をカットすることを想定して切羽部分が長めにとられている。3センチ近く袖先を詰めてもまだ下から4センチ空けて4つボタンを並べられる余裕がある。この辺はアメリカ製らしくイタリアの既製服メイカー(ベルヴェストやカスタンジア)などよりも直しを考慮した作りになっている。本開きのボタンホールはショップの直しだが出来栄えは完璧。トラウザーズの裾上げと合わせても直し工房より工賃はリーズナブルだった。

10.コーディネイトした靴

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スーツボタンは小さくても目立つ。特に茶系のものは遠くからでも意外と分かるのでボタンと靴の色目は合わせたい。アメリカではスーツにタッセル・スリッポンはポピュラーな組み合わせとのこと、茶系のタッセルシューズにしようか迷うところだが、スーツがチョークストライプの正統派なので茶系の紐靴を英国製の中から選んだ。できればアメリカのスーツにはアメリカ製の上質なブローグシューズが欲しいところだが、目下既成靴の数を減らしているので現実は難しいだろう。

11.旧グリーン&ロブ

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どちらも昔の靴。左のジョンロブ・パリスは10年以上履き続けている。多少はくたびれたがソール交換もなく今も現役だ。現在のミュージアムカーフとは違って単色だが、革質のよさが分かる。エルメス傘下というのも納得できる品質だった。右のオールドグリーンは1990年代中頃、エルメスに買収されるまでの所謂旧グリーン工場で作られたもの。当時8万円台だったが、青山のブルックス本店まで見に行ったことが懐かしい。フルブローグとセミブローグが展開されていたと思うがその内の1型。

サウスウィックのスーツにはイタリア物のような仕立ての柔らかさは感じられない。どちらかというと質実剛健、無骨な作りと言えよう。ただ、強めの前ダーツによる抜群のフィット感や本切羽など細かな作り込み、機械縫製ながら丁寧なボタンホールや襟の処理等、ビジネススーツとして十分な仕上がりになっている。アメリカのブランドからUSメイドのスーツやジャケットがなくなることを心配してきたが、往年の名ファクトリーがこうして復権し、日本で買える時代が再び巡ってきたことは素直に嬉しい。

少し前まで誂えが中心だったスーツやジャケットも、ジム通いで体型が変わった今は昔のように既成品の世話になることも多い。勿論馴染みのテイラーで作ったスーツは直しに出しているので順次ロンドンから送り返してくるだろう。1シーズン1着のオーダーだから着数にして10数着、そう数は多くないがそれでも直しが全て終わるまで数年はかかる。カッターのピーターに「このままの体型を維持するのか」と聞かれた際、勿論「Yes.」と答えた。新たな誂えも少しずつ増えるだろうが、暫くは既成服の世話になるはず。アメリカ製のスーツを忘れず時々チェックしていきたい。

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2012年2月25日 (土)

Tassel slip-on(タッセルスリッポン)

アイビーに夢中の頃は靴といえばリーガルのローファーばかり履いていたが、社会に出てからはごく自然にトラッドなスーツと紐靴というのが決まり事になっていた。ところがある時靴屋に並ぶタッセルスリッポンに心惹かれて初めての黒を購入。それからはブレザールックや何とスーツにまで合わせて随分履いた。今は処分してしまったが、初めてのタッセルスリッポンには色々な思い出がある。後になって、タッセルスリッポンの元祖はオールデンで1948年に発表されたデザインであること、それを広めたのがブルックスブラザーズだったことを知った。そしていつかはブルックス本店で本物を買いたいと思うようになっていった。

1990年初めてニューヨークを訪問。ブルックス本店でリーガル以来2度目のタッセルスリッポンを購入した。ところが紳士服の主流がアメリカントラッドからアルマーニやその後に続くイタリアン・クラシックに移るようになると、「弁護士の靴」としてポピュラーだったそのデザインも次第に忘れられてしまう。その後20年近いブランクを経て、プレッピーやアイビールックに再び注目が集まりはじめた数年前からタッセルスリッポンも復活。既成靴だけでなく誂え靴の世界でも見かけるようになった。そこで今回は、人生3度目となるタッセルスリッポン注文記について仮縫いの様子を交えながら紹介していこうと思う。

1.マットアリゲータのタッセルスリッポン

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既に何回か書いているが、目下ビスポークの短靴はカジュアル(紐なし靴の意)しか注文していない。十分すぎる紐靴に対してエラスティックサイドのものを含めてもスリッポンタイプの靴が少ないためだ。今回はタン色のマットなミシシッピ・アリゲータを使ったタッセルスリッポンをオーダー。ひと時代前のアメリカ製タッセルスリッポンのイメージではなく、なるべくヴァンプ部分の長いものを作って貰うよう依頼したもの。ソールが装着されると今よりも細長くスマートなスリッポンシューズになるだろう。

2.真上から見た図

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つま先からヴァンプを経てインステップ上部のタンまで斑が左右で線対称になるようカッティングされたアリゲータの革。アリゲータの原革のどの部分をどこに持ってくるのか、職人の経験とセンスがものをいう。タッセル(房部分)は同じアリゲータ素材で作られているがシューカラー(履き口)部分を走る革紐は同系色のカーフ素材を編みこんでメッシュ状にしたものを通している。この辺は前回の注文時に担当した職人のティーム・レッパネンとの間で入念なやり取りを行っている。

3.掬い縫い

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掬い縫いの様子がよく分かる底部分の写真。手縫い靴の証が至る所に散見できる。いつもペンのようなもので描かれている扇状の線付近をよく見ると、そこから土踏まず部分のウェルトが薄く削られている。この線を境にアーチ部分のべヴェルドウェイストが始まるのかもしれない。クレバリーではタウンシューズは通常べヴェルドウェイストで仕上げるようだが、フォスターはスクェアウェイストが標準とのこと。履き心地の違いや如何にということで、近いうちに両者が揃ったら比べてみようと思う。

4.フィッティング

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フィッティングは概ね良好で足入れの際「プシュー」と空気の抜ける音がするなど仕上がりの良さが窺える。唯一気になったのが履き口部分。足に沿って吸いつくはずのインサイド部分がやや笑いがちになっている。これは以前2足作ったローファーでは見られなかった現象で、靴の周りにメッシュのレースが走るタッセルスリッポン独特のデザインによるものかもしれない。ジョージ(グラスゴー)もチェックしながら「ここは調整する」と言っていた。ところで実際はどのように調整するのだろうか、とても興味がある。

5.靴のインサイド

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今回のパターンはアウトサイドはもとよりインサイドにも革の切り返しがない。ということはつま先から踵まで1枚のアリゲータスキンでアッパーを作り上げ、踵で縫い合わせていることになる。アーチ部分は綺麗にカーヴを描き、皺も入っていない。改めてタッセルスリッポンはアリゲータの斑を楽しむには最も適しているデザインだということに気がついた。まだ完成前だが色違いでもう1足アリゲータのタッセルスリッポンを注文したいくらいだ。

6.ヴァンプ部分

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ヴァンプ部分は1枚革をU字型にカットし、改めてピックステッチで縫い合わせるようリクエストしたが、熟練したクローザーがリタイアしたのだろうか、それとも技術的にロールドステッチのほうがよいと判断したのだろうか、前の2足と違う仕上がりとなった。尤もタッセルスリッポンはロールドステッチが通常なので違和感はない。それに繊細なロール部分やステッチの細かさは特筆もの、手編みのレースやハンドクラフトタッセル(アリゲータ製)とともにシューフロントはとても賑やかだ。

7.靴の踵部分

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踵側から写した靴。履き口の周りを走る細革が目を引く。これがあるだけでローファーよりぐっと華やかになる。宮廷で履かれたというタッセルシューズの華やかさとスリッポンのもつ気楽さがミックスされたタッセルスリッポンはビジネスにもカジュアルにも合わせられる靴としてアメリカの靴メイカーが得意とするデザインだった。そういえば、昔アメリカ製ジョンストン&マーフィーのウィングチップ・タッセルスリッポンというものをもっていたが処分してしまった。今にして思えばとっておけばよかったかなとも思う。

8.ヴァンプ部分

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ヴァンプ部分を一番特徴づけるモカステッチ。上質なアリゲータスキンを極細のロールドステッチで仕上げたモカ部分はこの靴の一番の見せ所。同じ型の靴を「タッセルモカシン」と呼ぶこともあるが、その場合はどちらかというとバス・ウィージュンのようなマッケイ縫いの靴こそ相応しい。ハンドソーンやグッドイヤーの場合はタッセルスリッポンあるいは単にタッセルシューズと呼んだ方がしっくりきそうだ。

9.靴のアウトサイド

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インナーに見える丸窓には10-11つまり2011年の10月に注文したことが記されていて、この場合は前回のトランクショウ時の受注というこになる。インサイド同様アウトサイド側にも革の切り返しはなく、アリゲータの斑が踵まで綺麗に続いている。細革は蝶結びになっているが仮縫い状態のせいか緩いようだ。ソールがついてデリバリーされる時はどんな靴になっているか楽しみだ。

10.アンソニー・クレバリーモデル

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オーダーの元になった型はアンソニークレバリーラインの"The De Rede"。もともとアンソニークレバリーの顧客で有名なBaron De Rede(Baron:バロンは男爵の意)がオーダーしたものを再現したセミ・ビスポークのサンプルを引用。このセミ・ビスポークはハーフインチ刻みのサイズ展開で既成靴並みのサイズバリエーションでありながらハンドウェルテッドシューズというライン。どの程度かはわからないが多少のモディファイも可能とのこと。

既に紐靴をオーダーしなくなってから数年が経つ。この間デリバリーされたのはローファーが2足とレイジーマン。これに今夏ピックアップ予定のローファーとタッセルスリッポンに追加注文のアリゲータ・ローファーが加わって合計6足。何と全てスリッポンタイプになる。黒のサイドエラスティック以外はカジュアル専用になってしまうが、それでも靴を頻繁に脱ぎ履きする日本では紐靴よりも断然重宝する。

実際週5日の内紐靴を履くのは2日程度。スーツであってもサイドエラスティックを選ぶ方が多く、紐靴を履かない週だってありそうだ。寧ろ週末のジャケットスタイルに紐靴を履く方が多いかもしれない。クールビズやウォームビズの影響でオフィシャルなドレスコードもだいぶ変化してきている。近い将来軽いジャケットでオフィスワークが可能になればスリッポンシューズ、中でも汎用性の高いタッセルスリッポンは重宝するだろう。今回はアリゲータだが、黒や茶のカーフで日本の靴屋にお願いしてみようかと思っている。

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2012年2月18日 (土)

ハリーのツィードジャケット

今回のタイトルはハリーのツィードジャケット。といってもハリー・ポッターではない。昔の映画ダーティ・ハリーの主人公ハリー・キャラハンのことだ。ヘリンボーンのツィードジャケットを羽織り敢然と悪を倒す刑事だが、その強引なやり方故にいつしかダーティ・ハリーと呼ばれるようになった。主演のクリント・イーストウッドはメイフラワー号の乗員を祖にもつ家系でスコットランド、アイルランド、イングランド、ドイツ4カ国の血を引いているとのこと。ツィードジャケットが似合うのも納得。実生活でもツィードジャケット姿が多いようで、珍しいところでは硫黄島を舞台にした映画のために訪日した際のスーツ姿が印象に残る。

ダーティ・ハリーは全部で5作撮られたが何といっても1作目が強烈だ。44マグナ弾を装着する銃を片手に銀行強盗に向かっていく冒頭のシーンは、主人公キャラハン刑事のツィードジャケット姿とともに強く印象に残る。今のように好きな映画を好きな時に見ることができなかった昔はテレビの洋画時間帯はとても貴重で、ダーティという言葉が心に引っかかり、その後も再放送される度に逃さず見ていた。そこで、今回は映画を参考にしたツィードジャケットの着こなしを紹介しようと思う。

1.キャラハン刑事の着こなし

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映画の冒頭、キャラハン刑事はグレーのヘリンボーンツィードジャケットにそれよりトーンを落としたグレーのトラウザーズ姿で登場する。ジャケットはラペルがウェルトシームのトラディショナルモデル。黒のエルボーパッチが個性的で、同じものを既製服で探してもまず見つからないデザインだ。冒頭で着用していたツィードジャケットは主人公ハリーのトレードマークとして、その後もスラックスを色々替えながら何回も登場する。勿論靴はグレーに合う黒、しかも紐靴だ。

2.ヘリンボーンのツィードジャケット

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映画でもツィードジャケットの下にボルドー色のニットヴェストを着込み、白無地のレギュラーカラーシャツと赤と青のレジメンタルタイを締めていたキャラハン刑事。ダーティと呼ばれるくらいだから胸にチーフを飾るはずもなく、映画に倣って今回はブレストポケットに何も挿していない。ジャケットは映画と同じ3ボタンの段返りモデルだが、映画のようにウェルトシームの襟ではなく、シャツもレギュラーではなくワイドスプレッドのものを合わせてみた。

3.Vゾーンのコーディネイト

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映画の中のアメリカントラッド風なツィードジャケットと違ってハイ・ゴージの襟や肩パッドのないアンコン仕立てのジャケットが如何にもイタリアンファクトリーらしい。芯地を極力省いた作りながら生地の張りと巧みなパターンで重厚なツィードジャケットの雰囲気を表現しているところなど中々のもの。インナーのヴェストはピュアカシミヤだが、映画の中では役柄からすると素朴なウール素材かもしれない。

4.袖口のディテール

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ジャケットの袖は本切羽仕様。袖を少し詰めたうえで袖ボタンを4つ配するには切羽部分を少し上に付け足す必要がある。そんな細かな直しに加えて第1ボタンのスタートを袖先から4センチにしたり、袖のボタンホールのかがりを身頃のそれと合わせたりと我侭なリクエストに応えてくれるのは国内で購入すればこそ。きめ細やかなアフターサービスはオンラインで買い物をしていたのでは中々味わえない。

5.タイとシャツ、ヴェストの素材感

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ざっくりとした手触りが魅力のツィードジャケットには、まずロイヤルオックス地のような織の入ったシャツを用意。次にクリスピーなジャケットとシャツ合わせてVゾーンにも凹凸感のあるネクタイを締めてみる。久しぶりに出したのは25年前のタイ。ラルフ・ローレンのものだ。素材感を合わせることでVゾーン全体にまとまりが出てくる。それにしても自分では思いつかないコーディネイトに挑戦できるのも映画を参考すればこそ。お洒落の達人が映画に詳しいのも頷ける。

6.ジャケットの作り

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ジャケットはベルヴェストのリミテッドエディションライン。限定とのことだがいつもと変わらぬ素材やデザイン、縫製の確かさが窺える。カーディガンのように動きやすく軽い仕立ては雑誌で「軽・薄」と紹介されていたが「頼りない」という感じはしない。それどころか着てみると仕立て服のような着心地さえ感じる。このあたりは最近よく買っていたアメリカのファクトリーでは真似の出来ない部分で、イタリア製の質の高さを実感する。

7.腰周りとベルト

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ベルトはツィードのジャケットにマッチする黒の革ベルト。日本製のもので、勿論素材も国産のコードヴァン。日本の馬革はアメリカのホーウィン社のものに勝るとも劣らないという評判も聞く。以前も書いたが肉厚の一枚革のコードヴァンベルトをVANのオンラインショップで見つけた。昔アイビーから服飾に興味をもった世代としてはいつか機会があったら購入してみたいと思っているものの一つだ。

8.トラウザーズ

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合わせたトラウザーズはウールフランネルカーゴ。映画ではウールサージのようなやや光沢のあるスラックスを履いていたキャラハン刑事。ノープリツーでシングルカフのものだったと思う。(ダーティ・ハリー2内)、今回はベルヴェストに合わせてボトムスもイタリアンブランドG.T.A(縫製はルーマニア)のカジュアルラインをもってきた。カーゴながらサイドポケットのマチがなくすっきりとしたデザインが嬉しい。何よりPT01やインコテックスJ35よりも更に細身なところが気に入っている。

9.カシミヤのニット

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ヴィンテージニットとでも呼べそうな1970年代のバーバリー。カシミヤ100%のヴェストは昔のブランドタグが付けられているが、よく見るとマックジョージとのダブルネームになっている。このマックジョージ社、昔はブルックスブラザーズのカシミヤ製品などを手掛けていたが今は廃業したとのこと。ブレイマーやバランタイン、ライル&スコットやグレンマック、懐かしのスコティッシュニットメイカーもここ数十年の間に吸収合併されたり廃業したりと紆余曲折があるようだ。

10.コーディネイトした靴

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用意した黒靴はアメリカの映画らしくプレーントゥブルッチャー(右)とキャラハン刑事の定番ツィードジャケットに合わせたイギリスのオックスフォード(左)。足で稼ぐ刑事らしく履き込んで皺の寄った靴を用意してみた。映画では主人公のハリーは内羽根の靴を履いていたと思うが、役柄のイメージとしては外羽根の方が似合いそうな気もする。左は20年以上、右も10年以上が経過した靴だがどちらも実にタフ、随分と酷使したが未だ底を張替えることなく活躍している。

11.手入れの行き届いた黒靴

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履きこまれた皺、時折靴墨を加えながら磨き上げた甲革は如何にも仕事靴のイメージがある。高価でなくとも革靴は履いたら手入れを行い、時々革のケアをしながら大切に扱えばいつの間にか風格が出てくるもの。左は1991年にロンドン購入のチャーチ。ライニングが布張りのチェットウィンドは心なしか皺も大きく入っている。一方右は日本で購入したKTルイストンのプレーントゥ。雨用の靴として天気の悪い日に履き続けてきたが丹念な手入れを行うことで綺麗に蘇った。

アメリカはクラス社会と書かれていたが、市長、警察署長、殺人課の課長、主人公のキャラハン刑事では各々服装が違う。キャラハン刑事のポジションに相応しいのがツイードジャケットにスラックスということになる。決してスーツ姿ではないということだ。それでもダーティ・ハリー3では相棒の女性刑事とともに市長に表彰される(寸前で止めるが)シーンがあって、その時はダークグレーの3ボタンスーツで登場している。コーディネイトはもとよりドレスコードや社会背景、文化や習慣を知る上でも映画はとても参考になる。

古いものでは「北北西に進路をとれ」や「シャレード」のケーリー・グラント、「ローマの休日」のグレゴリー・ペックや「華麗なる賭け」のスティーブ・マックィーン、最近のものでは「アンタッチャブル」のショーン・コネリーや「インディ・ジョーンズ」のハリソン・フォードなど着こなしのヒントを与えてくれる映画を何本かまとめて購入しておいた。次の週末は夜更かしながらお気に入りの映画を見て、着こなしのヒントを発見してみたい。

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2012年2月11日 (土)

Norwegian boot

記録的な豪雪だった1月が過ぎ、立春を迎えたあたりから少しずつ空気も温んできているようだ。穏やかな天気となった2月最初の週末、恒例のクレバリーとファーラン&ハービー(デイヴィス&サン)のトランクショウに出かけた。今回は仮縫いと新たな注文だけだったが、最近はオーダーを通じて知り合った友人やロンドンから来た職人との再会の方が楽しみになっている。特に今回はパーティもあり、思い出に残る満ち足りた一日になったのは言うまでもない。

目下クレバリーではブーツとタッセルローファーを注文している。今回は本来ならブーツの受け取りのはずだが前回の仮縫いで手違いがあり、作り直しの上再仮縫いとなった。結局注文から完成まで1年半要することになる。だが、ハリウッドでのトランクショウで鰐革の靴を同じ型で一遍に25足注文したスターの話を聞いたところ、「たとえ有名人であっても作るラストは1ペア、1足にかかる時間も他の顧客と同じ。完成まで相当な時間がかかる」とのことだった。つまり誂え靴とは時間がかかるものなのだ。そこで、今回は時間をかけて製作中のブーツを仮縫いの様子も含め紹介してみたい。

1.コンビネーションブーツ

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シンプルなキャップトゥのデザインは一見ドレッシーなブーツのようだ。ところがコバ周辺をよく見るとノルウェジアンステッチが入っていたり、ピッグスキンとカーフのコンビネーションになっていたりと誂えならではの迫力が感じられる。実は前回の仮縫い時はピッグスキンがスェードに、ノルウェジアン仕立てがストームウェルト仕立てになっていたので完全に作り直しとなった。今回追加で最上部3つのアイレットをフックにするよう注文を入れている。

2.ボトムメイキング

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インソール裏側は中板で覆われているので、いつものハンドソーンのような中底にフェザーを立てた跡や縫い込まれたウェルトの掬い縫いは見えない。360度のノルウェジアンステッチが入るので、ウェイスト部分はべヴェルドではなくスクェアになるとのこと。厚めのシングルソール、ダブルソールのどちらにするか迷ったが、ヴェンドしやすいようにE.グリーンのドーバー同様ハーフミッドソールをリクエスト、ついでにつま先にメタルトゥチップを付けるようお願いした。

3.つま先部分

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前回の仮縫い時はつま先のメダリオンや切り返し部分にパーフォレーションが入るセミブローグタイプだったが、今回は全く別のタイプになっている。あまり細かな注文をしないせいなのだが、これだけ変わるというのも不思議だ。誰がディレクションしたのか分からないが、結果的には今回のパンチドキャップトゥの方がごつくてエレガントなブーツというイメージに合っていたのでこのままゴーサインを出した。最近はあまりこだわらず任せることが多い。その方が未知の1足に出会える楽しみがあるからだ。

4.上から見たブーツ

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長いクレバリーのオーダーの中で2度目のパンチドキャップトゥ。昔はビジーで迫力のあるセミブローグやフルブローグの方が好みだったが、最近昔のドイツの靴雑誌で外羽根のパンチドキャップトゥブーツの写真を見つけ、その格好よさに心惹かれていたところだった。今回のブーツも黒革で作ったらその雑誌に載っていたドレスブーツにも負けないものになりそうだ。上3つはフックにしたが残りのアイレットもドレッシーな雰囲気を大切にハト目にしなかった。

5.ブーツのインサイド

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低いつま先からカーブを描いて一気に登るフロントライン。改めて自分の足が甲高であることを実感する。時間をかけて足入れするといつもより長く、そして大きく「プシュー」っと空気の抜ける音が聞こえた。フィッティングは申し分なく、ハードな外観ながら快適な履き心地が期待できる。実物を見るまでイメージが湧かないのがコンビ靴。今回の組み合わせは正解だったようで、このところサンプルの多いコンビの靴はどうやらクレバリーの新しいハウススタイルになりつつあるようだ。

6.ブーツのアウトサイド

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靴のアウトサイド側はV字型の部分切り返しがないので、よりすっきりとしたデザインに見える。もともとピッグスキンとカーフのコンビネーションはイメージにあったが、革を決めるにあたっては職人とカーフ、ピッグスキン両方の革見本をあれこれ組み合わせながら決めていった。コンビの定番は同系色のグラデーション(カーフ同士)か艶有りと艶無し(カーフとスェードやバックスキン)だが、今回は異素材(カーフとマウンテンラムなど)の組み合わせに挑戦した。ある程度誂え靴が揃ったらコンビに挑戦するのも中々楽しい。

7.靴の内側

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以前ならば注文時の年月を手書きした部分はエドワードグリーンのように丸い窓になっていたがどうも最近のクレバリーは時々省くようだ。尤も履き心地には全く関係のないことなので気にはしていない。履き口後部のプルタブはブーツを履くときに欠かせない便利なもの。ドレッシーなブーツならば敢えて付けないという選択肢もあるようだが、カジュアルなノルウェジアンブーツには必要だろう。

8.踵部分

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この角度から見るとアメリカのアウトドアブーツのようなごつささえ感じる。踵部分は既にコバが充分張っているが、底付け後は出し縫いが加わって無骨な雰囲気も一段とアップするはず。もともと登山靴に用いられるカントリーブーツの製法とドレッシーなスクェアトゥ、カジュアルなコンビネーション・レザーとエレガントなデザインといった相反する二つの要素を上手く組み合わせて1足の靴に仕上げることができるのも誂え靴ならでは。

9.アイレットから履き口付近

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アイレットは7つ、上部3列をフックにすると4アイレッツになる。既成靴では米国のオールデンが5アイレッツに3フック、英国のエドワードグリーンは4アイレッツに4フックだった。ビスポークの場合はブーツの全高にもよるだろうが、概ね4アイレッツに3フックが定番のようだ。今回仮縫い状態まで仕上がったブーツを見ているだけで、もう次の1足が欲しくなってくる。どうやらブーツには短靴とは別の魅力があるらしい。

10.ピッグスキン

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ピッグスキンは靴の素材としては頑丈な部類に入る革なのだろうか、踝部分に当たる感じはカーフのグレインレザーよりも硬い。ただ、グレインレザーとは違う天然素材ならではの表情、特に3つの毛穴が綺麗に並んだ表面は昔から気になっていた。残念ながら既成靴では扱いがないため、誂えでしか味わえない革になる。そこでいつかは注文しようと考えていたところにピッグスキンで作られたビスポークローファーを見たことが今回の注文の大きなきっかけとなっている。

ブーツと靴の誂えは似ているようで異なる部分が結構ある。足首上部の周囲や踵からの長さなど追加で採寸したこともそうだが、最も大きな違いは当たり前だが短靴より靴の面積が多いことだ。デザインの見え方やコンビにした時の革の分量など中々イメージしにくい。加えてアイレッツかフック付きか、プルタブを付けるか否か、踵からアンクル部分のデザインやソールの仕様など短靴以上にあれこれ考えを巡らす必要がある。

何よりもブーツはそれ自体存在感がある。プレーンなつま先であってもブーツになるだけでぐっと目立つ。ショップで見かけるものはドレススタイルを意識したエレガントなものが多いようだが、せっかくの誂え、スタイリッシュかつカントリーウェアとも合わせられる欲張りなものが欲しいと思っていた。ようやく注文してから1年、待ち望んでいた完成も近づいてきた。どうせなら今秋のデリバリーに合わせて今のうちからジャケットやアウターも揃えておこうと考えている。

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2012年2月 5日 (日)

Plaid suit

当ブログのオンラインでスーツを買うの巻で紹介したブラックフリースのグレンプラッドスーツがようやく出来上がってきた。セール直後はショップからの直し依頼が殺到する上に個人で持ち込む客もいたのだろう、工房も随分と忙しかったようだ。通常は1週間のところ2週間かかっての仕上がりとなった。直しを依頼した個所は袖丈の詰め、袖先部分の本切羽・本開き仕様、トラウザーズの裾上げダブルカフ仕様の3か所。仕上がりはいつものように丁寧で文句なしの出来だ。

既成のシャツならアメリカのメイカーは大抵袖の長さを選べるが、スーツやジャケットなどは自分の腕が短いせいか、大抵直しを入れなくてはならない。昔はリフォームの看板を掲げるテイラーに持ち込んでお願いしていたが、「既製服なのに本切羽?」と怪訝な顔をされたこともある。あれから20年以上、今ではテイラー以上の腕を持つ直しの専門店もあって隔世の感がある。そこで今回は既製服の直しについて触れながら到着したばかりのスーツを紹介しようと思う。

1.ブラックフリースのスーツ

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ヒップが見えんばかりの後姿が特徴のブラックフリース。着丈の短さに慣れるまで多少時間がかかる。ダーツを取らない前身頃にサイドベンツや小さなラペルは昔のブルックスとは別物のようだが古いアイテムとの相性は悪くない。むしろ縫製は1990年代のメイカーズよりも手仕事の部分が多いのだろうか雰囲気のある仕上がりになっている。ウェブカタログで見るよりもトラウザーズの裾幅は広く、この辺は実際に商品を身に着けるまで分からない部分かもしれない。

2.Vゾーンのコーディネイト

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シャツはブラックフリースのスプレッドカラーシャツ。スティッフナーが入らないので襟はクタッとした感じだ。ネクタイは同じグレンプラッドのタイを合わせてみた。オンラインカタログでは共布のウールタイを締めているので引用してみたが思ったよりもしっくりと来るようだ。ポケットチーフもブルックス製で赤地の千鳥格子。スーツとネクタイ、ポケットチーフが同じ柄模様になったがそれほど気にならなさそうだ。

3.ラペルのロール

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スロープを描いて昇っている上襟周辺。昔のオウンメイク(メイカーズ)とはネック部分の収まりが違う。時々襟の裏や胸のあたりに生地から飛び出している細長く茶色の毛は馬の尻尾だろうか。胸ポケット周辺も今までのブルックスとは別物の雰囲気。既製服ながらファクトリーメイドというよりもどちらかというとテイラード仕立ての丁寧さが感じられるのがブラックフリースの特徴になっている。

4.スリーブカフ

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シグネチャーカフの場合はボタン2つで、ブラックフリースのサイトでもそれを推奨している。だが、ダーツを取らない身頃とはいえサイドベンツやラペルの形状、バルカポケットになったブレスト周辺を見るとカフボタンも2つよりは3つ、4つのほうが合いそうだ。直しに出す際ボタンを色々と置いてみたが敢えて3つにしてみた。勿論ジャケットのボタンホールのピッチと合わせてボタンホールの縫いをお願いしている。

5.サイドベンツ

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思った以上に切れ込みが深いのがブラックフリースのスタイル。横から見たときにカフボタンが2つではバランスが悪くなるような気がして数を増やしている。ただ、同じブラックフリースでもブレザーの場合は提案通り2つボタンで仕上げた。というのもブレザーの場合はセンターフックベントで、横からは切れ込み(ベント)が見えないからだ。これだけ深くてもつれたり広がったりせず綺麗に納まるのはカッティングの妙なのだろうか。

6.ライニング

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意外に着難いのがジャケット。ライニングがコットンだと滑りが悪く、特にアームホール周辺を含めジャケットのつくりがタイトなこともあってすんなり肩に収まるという感じはしない。下に着たシャツには胸ポケットが付いていて、如何にもアメリカのシャツといった雰囲気が感じられる。米国から欧州に服装の興味が移った頃はシャツの胸にポケットがないことに驚いたものだが久しぶりのアメリカンクロージングには殊の外親しみを感じる。

7.トラウザーズのデザイン

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ノープリーツながら腰回りのフィット感を高めるためにダーツを取ったフロント部分。リヴェラーノ&リヴェラーノで誂えたノープリーツのパンツが同じ仕様だが、既成のパンツでここまでの仕立てをするメイカーは中々ないのではないだろうか。ウェスト部分をベルトで締めてもこのダーツのお陰で腰回りには適度の余裕がある。そのためポケット部分に横皴が入ることもなく、実に快適な履き心地に感心してしまう。

8.ロッカーループ

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デザイナーのトムブラウンが拘っているのがこのロッカーループ。シャツにももちろん装着されているが友人によると何とニット類にもこのループ、ちゃんと付いているそうだ。ハンガーが見当たらない場所で、このループを使ってフックに引っかけて暫く掛けておいたが型崩れすることもなく思ったよりも使い道がありそうだ。ただしスーツ姿を後ろから見た時は違和感を感じる人も多いかもしれない。

9.パターンオンパターン

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グレンプラッドのスーツ生地とネクタイ地とチーフの柄の大きさに着目してみる。少しずつ大きさを変えているため近くで見てもそれほどビジーな感じがしない。それに遠目からはどの柄も殆ど無地に見えるので全体としては控えめなコーディネイトになる。合わせる靴は黒ならばよりコンサバに、赤茶色ならばややリラックスした感じだろうが、どちらを選んでもマッチするのがアメリカの既製服。

10. 靴のコーディネイト

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裾のダブル幅はブラックフリース推奨の5㎝で仕上げてもらった。カジュアルなパンツをWカフに仕上げる時は自宅で行う場合もあるが、やはり直し業者の仕上げは綺麗だ。合わせた靴はバーガンディの外羽根。クラシコイタリアや英国調のスーツよりアメリカントラッドとの服装に合わせてこそ引き立つ。度々紹介してきたブルックス別注オールデン(左)とイギリスのエドワードグリーン(右)。

ブラックフリースのアメリカ製スーツやジャケットはイタリア製のものと比べるとショルダー部分の収まりやアームホール、上襟の登りと下襟のロール感などに多少の違和感を感じるものの昔のイメージとは随分違う。イタリー製のラルフローレンではなく、カナダ製のポールスチュアートでもなくブルックスのUSメイドに的を絞って購入したのも新しい発見が色々とあったからだ。

今はシャツも含めて週に3日はアメリカ製品を身に着けているが、商品の質は以前に比べて断然よい。如何にも工業製品といった昔のものと比べると素材や個性豊かなデザイン、凝った作りに感心してしまう。これからもアメリカ製の逸品を買っては直しの工房にせっせと出すことになろう。手持ちの既製服を順次スリム化していることと合わせて「誂え品の出来上がり」とは別に「直しの出来上がり」を楽しみに待つ機会が暫くは続きそうだ。

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2012年1月29日 (日)

CREST TIE(クレストタイ)

週末を利用してワードローブを整理、ついでに手持ちのネクタイを調べてみた。まずあまり締めないネクタイやカシミヤなどの冬物はクローゼットへ、年間を通じて合わせるものや春らしいピンク、ブライトグリーン(若草色の意)などを引出しに並べてみた。改めて眺めてみるとやはり一番多いのがネイビーの小紋タイだった。ドットも小紋に含めると3段ある引き出し1段分はネイビーのネクタイが占拠している。

反対に一番少ないのがクレストタイだった。昔アイビーに傾倒していた頃はそれなりに揃えていたが、ワードローブが誂え中心に代わったこともあって殆どを友人に譲ってしまい、今では1本しか残っていない。ところが昨シーズンからアメリカントラディショナルに興味が戻り、この冬はブルックスのオンラインショッピング三昧だったこともあって新たにクレストタイが欲しくなっていたところだった。そこで今回は久しぶりに買い求めたクレストタイをツィードジャケットやブレザーと合わせた装いを紹介しようと思う。

1.ツィードジャケットと合わせて(その1)

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ブルックスツィードと呼ばれるエクスクルーシヴな素材を用いたブルックスのジャケット。所謂ナンバーⅠモデル(サックスタイル)だが、直し業者に依頼してフィット感を高めたもの。こうしたツィードジャケットに鳥のモチーフタイやチェックタイを合わせるとどうしてもカントリー色が強くなる。ところがクレストタイに替えてみると映画インディアナジョーンズのインディ教授が大学で講義しているような雰囲気になる。ツィードジャケットにクレストタイは都会で着る時に使える組み合わせだと思う。

2.コーディネイト

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やや細身のシルエットに直したツィードジャケットの下に合わせるシャツは勿論エクストラスリムフィットのブルックスUSメイドポロカラー。本国から個人輸入したものだが日本で展開しているものとまったく変わらない。ややボルドーに近いクリムゾンレッドのクレストタイはジャケットの赤いオーバーペインを拾ったもの。ポケットチーフにも赤の勾玉模様の入ったものを配してみた。ネクタイとチーフはどちらもラルフローレンのもの。

3.靴のコーディネイト

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ツィードジャケットの下に合わせたグレイフランネルのトラウザーズはブラックフリースのもの。パイプドステムのアイビー風シルエットだが前面のベルトループ下にダーツを取り、腰周りをフィットさせている。合わせる靴はタッセルスリッポンとプレーントゥ。どちらもブルックス別注のオールデン特製。右のバリーラストはオールデンの中でも一番日本で展開されている定番ラストだが、フィット感はタイトではなく若干踵が抜けやすい感じがする。

4.ツィードジャケットに合わせる(その2)

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こちらのツィードジャケットはファーストイヤー時代のRRL。英国製の生地を使い背抜き仕立てで作り上げたもの。こちらも直し業者に出してフィット感を高めている。段返りの3ボタンでダーツを取らないパターンながらチェンジポケット付のブリティッシュテイストが加わった感じは如何にもラルフローレンらしい。革の包みボタンもヴィンテージの雰囲気を上手く醸し出している。

5.コーディネイト

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フィット感の強いジャケットに合わせるシャツは日本の百貨店別注の6ボタンポロカラー。ブルーのキャンディストライプで生地は定番のオックスフォード。こちらもエクストラスリムフィットだ。シャツの青とツィード地の緑に合わせてグリーンベースに青のレジメンタルストライプが入ったクレストタイを締め、ポケットチーフはツィード生地の中の茶を拾って茶系のホースモチーフの入ったものを挿してみた。ネクタイとチーフはどちらもポロのもの。

6.靴のコーディネイト

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ツィードのジャケットにはボリュームのある靴が合う。左はカラー8のチャッカーブーツ、定番品だ、一方右はオールデンサンフランシスコに別注を掛けたマホガニーコードヴァンのノルウェジアンスプリットトゥブルッチャー。現在はウィスキー、ラベロ、シガーとなり、このマホガニーは中々見当たらないようだ。注文時にプランテーションクレープソールを指定したので通常のレザーソール版よりも履き心地は良い。

7.ブレザーに合わせて

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定番の3ボタンサックスタイルのブレザーは最近紹介したJ.プレスのもの。こちらも昔のものでサイズが大きすぎる為直し業者に出している。メルトン生地のネイビーブレザーにフランネルのトラウザーズ、白のオックスフォードポロカラーは定番中の定番。そこでネクタイはビビットな色目のものを持ってきた。どこにでもあるようなコーディネイトからネクタイを替えるだけで装いの印象は随分と変わる。

8.コーディネイト

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合わせたシャツはブラックフリースのBB#1で袖が若干長い以外はエクストラスリムフィットとほぼ同じフィッティング。サーモンピンクのクレストタイは単体で見るとやや派手だがネイビーのメルトン生地というマットな質感のブレザーに合わせることで違和感もなくなるようだ。ラルフローレンらしい色出しのクレストタイに合わせたポケットチーフはダンヒルのタッターソール柄。ピンクという珍しい色目に惹かれてロンドンの空港で一目買いしたもの。

9.靴のコーディネイト

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定番のブレザーにはローファーが欠かせない。右はオールデンのペニーローファー。定番のVANラストを使用したものでセレクトショップにオールデンが入ってきた頃のものだ。一方左は同じくオールデンサンフランシスコに別注をかけたバリーラストのサドルオックスフォード。ウィスキーコードヴァンにプランテーションクレープソール、バリーラストを使用したサドルシューズはアイビー好きなら1足は持ちたい。

10.クレストタイ

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今回紹介した3本のクレストタイに今まで愛用してきた青のクレストタイを合わせて一気に4本に増えた。このクレストタイ、探してみるとどこのブランドでも気に入ったものがある訳ではない。J.プレスやブルックスの本国サイトでは気に入ったものが見つからず、アメリカのポロ.コムでも欲しいものがなかったが流石は日本のプライベートセール、アイビー調のものはアメリカ本国よりも手に入りやすいようだ。

クレストタイはスーツには合わせにくいので専らジャケットスタイルに合わせることになる。それも今回紹介したようなブレザーやツィードジャケットが一番で、シルエットはアメリカントラディショナルなものに限る。ナポリ仕立てやサビルロウ仕立てに合うタイがあるように、アメリカントラディショナルなスタイルに合うタイもある。

色々な着こなしがしたいと思えば服だけでなく、シャツやネクタイ、靴やベルト、チーフや小物類のテイストも揃える必要があろう。勿論英国調やナポリ調一筋ならばそういった心配もないが中々そうは行かない。ワードーローブもそれなりに増えてくる。復刻版ブルックスの6ボタンシャツをきっかけにこのところアメリカントラディショナルスタイルで装う日が多いが、週明けは揃えたてのクレストタイを締めてジャケットを羽織り、颯爽と出かけてみたい。

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2012年1月22日 (日)

Black Fleece(海外通販顛末記)

年末年始のウィンターセールは専ら海外通販を利用したが先週最後の注文品が届いた。一回でまとめて注文すれば送料も安く付いたのだろうが、その時々で色々なサイトを見比べながらの注文故、結局は3回に分けての注文、4回に分かれての到着ということになった。ベッドリネン2セット以外はウールのスーツから始まってオックスフォードシャツやフランネルトラウザーズ、最後に到着したウールのネイビーブレザーまで、ブラックフリースのまとめ買いという結果になった。

順調に届いたのはシャツ3枚とベッドリネンのみで、キャンセル扱いだったスーツが届いたり、スーツがキャンセルならばとオーダーしたブレザーとトラウザーズが別々に届いたり、挙句にブレザーの付属ボタンがなくて至急送るよう依頼したりと、ともかく気をもむ買い物だった。エラーは起こりうるものととらえるか、そのエラーを極力起こさないよう徹底するか、日本とアメリカの考え方の違いを感じたこの冬の海外通販、今回はその顛末期を最後に届いたブレザーと一緒に紹介しようと思う。

1.ブラックフリースブレザー

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デザイナーのトムブラウンが考える着丈の短い上着。そのシルエットはダーツを取らない3ツ釦段返りだが襟は小振りで第2釦がハイウェストの新しいスタイルだ。J.プレスと違ってジャケットポケットにはフラップが付かない。縫製はUSメイドのサウスウィック製だが、昔のオウンメイクのように手縫いのボタンホールではない。素材はダークネイビーの地厚なウールフランネルでラペル端やポケット端、袖山や背中心にウェルトシームが走るクラシックな仕上がり。

2.ニューサックスタイル

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ラペルのロールは第1釦に僅かにかかるくらいで、このあたりは伝統的なブルックスのナンバーⅠモデルとはスタイルを異にする。背裏やパッチポケットの裏地はコットン、袖裏はベンベルグのトリプルバーストライプとブラックフリースのスーツ同様の作り。特に伝統的なアメリカ製のオッドジャケット同様ハーフライニングで仕上げられているところなどクラシックをベースにしたネオトラディショナルといった雰囲気もある。

3.Vゾーン

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オックスフォードのシャツは都内老舗デパート別注復刻版6釦ポロカラー。勿論アメリカ製のブルックス製品でエクストラスリムフィット。タイトなブラックフリースのジャケットにマッチするフィッティングが嬉しい。ネクタイは1990年代、珍しい英国製のポールスチュアートだ。ポケットスクェアも同じポールスチュアートのもので昨夏購入したばかり。10年以上経った今も同じブランドで買い物出来る喜びがトラッドウェアにはある。

4.ラペル周辺

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小さめのラペルは昔のブルックスよりもゴージが若干上に上がっており、その分刻みは下方向に向いている。イザイアほどではないがフィッシュマウスラペルのような形状が特徴で、当然合わせるネクタイは細めで芯地の薄く軽いものがマッチする。胸部分のパッチポケットは三角フラスコのように裾広がりになっていて、この辺りはデザイナーの感性が反映されているようだ。

5.手縫い既成服の象徴

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ラペル裏は通称ヒゲと呼ばれる持ち出しがあり、テイラード仕立ての雰囲気を感じることができる。上襟の腰部分は昔のオウンメイクブレザーのように幾重ものミシンステッチが積み重なる作りではなくイタリアの手縫い既製服メイカーと似たもので、ラペルのフラワーホールこそマシンメイドながら今までのUSメイドとは別物に近い。ブラックフリースの重衣料が従来のイタリー製からメイドインUSAになったことや他にない素材使いの巧みさに興味を惹かれ、オンラインショッピングながら随分と散在した。

6.ジャケット裏

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大身返しのジャケット裏。パイピング処理を施したシーム部分やブラックフリースの大きなタグが目立つ。ジャケットの裏を覗くとキャンバス製の芯地とフエルトに近い地厚の裏地の2重構造になっている。またショルダー部分はかなり厚めで大きいパッドがしっかりと入っていて、イタリー製のアンコンジャケットのような薄い感じはしない。ボトムスはセレクトショップのオリジナルでアイビー色の強いシルエットのトラウザーズに同じく国産のコードヴァンを使用したベルトを用意してみた。

7.センターフックべント

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昔のVANやライセンス品のJ.プレスでしか見たことがなく、USメイドでは初めて見たセンターフックベント仕様。昔のブルックスの商品をインターネットで検索しても中々このフックベント仕様のもに巡り合えないが、デザイナーのトムブラウンはブルックスのアーカイブからヒントを得てブラックフリースをデザインしていると聞く。アメリカで写真集「テイクアイビー」のアメリカ版が販売されて評判を呼んだそうだが、ひょっとして日本のアイビームーブメントもデザインソースになっているかもしれない。

8.ロッカーループ

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上襟中央部分のロッカーループ。元々ボタンダウンシャツの襟後ろに付くボタンや背中のセンターボックスプリーツ上のロッカーループなど細かなディテールに拘っていたのがアイビーファン。ブラックフリースの細かなディテールへの拘りも昔からのアイビーファンを惹きつける魅力の一端、ブルックスブラザーズの復活とまでは行かないが少なくともマークス&スペンサーが親会社だった頃よりも魅力的になってきていると感じる。

9.未処理のカフ部分

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ブレザーが届いてから1週間経ったが、その間送ったメールは5通、あまりにも返事が遅いので最後には「リジェクト品として返品するので送料の負担とカードアカウントからの引落を停止する」旨を伝えたところブラックフリースの責任者を含め担当者から一気に3通のメールが届いた。現在5個のカフボタンと1個のジャケットボタンをフェデックスで送っているとの返事だがまだまだ安心できない。届いたボタンが違うことだって大いにあり得るからだ。もし無事に届けばこのカフ部分にシグネチャーカフとしてトムブラウンが推奨する2つボタンをやや間隔を空けて付けることになろう。

10. コーディネイトした靴

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今回紹介した靴はいずれも15年以上経つ昔のオールデン。左は1996年のブルックス別注プレーントゥ。当時既にオールデンのものはストームウェルトだったがブルックスだけがグッドイヤー製法でハト目の外羽根を展開していた。右のローファーは更に古く間もなく20年を迎える。まだソールを1度も張り替えたことはないが生涯現役で活躍できそうなタフさの感じられる1足だ。どちらも写真撮影に当たって久しぶりにメルトニアンのシューポリッシュで磨きをかけた。

11.オールデン

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皺部分がささくれ立って艶がなくなるのがコードヴァンの特徴。そこでポリッシュする際に皺に沿って風邪薬などのガラス製空き瓶の底部分を用いて押し付けるようにポリッシュを馴染ませる。最後に乾いた布きれで磨いてみるとそれなりに効果があったようだ。最近の円高でオールデンを本国から個人輸入する人も再び増えていると聞く。日本限定品ではなく定番品やアメリカ本国展開品を買うのならばこれだけの内外価格差、関税を納めてもさぞお得なのではと想像する。

さて数回にわたって紹介してきたオンラインショッピングも今回で終了する。暫く前に紹介したオンラインで購入したスーツの課税額は6,600円、一方スーツの後に届いたシャツやベッドリネンの課税額は3,100円で総額9,700円を納めた。輸入した825㌦のスーツと500㌦のシャツ&べッドリネンの合計1,325㌦に送料100㌦を加えてこの日のレート77.97円/㌦で換算すると111,110円、これに前述した納税額を加えると120,810円が今までの総額となる。もし同じ商品を日本で買うと178,500円のスーツに58,500円のシャツ、ベッドリネンは日本未発売だが同じ価格として16,000円の合計253,000円となる。アメリカ本国のオンラインを使うと国内価格の何と48%の値段で商品を購入できたことになる。

日本で同じものを購入した場合の利点は①お直しが直接業者に出すより割安になること②細かなフィッティングに立ち会って貰えること③楽しく店員と話せることだろうか。今回はアメリカ本国ではセール品を買い、日本ではセールをやっていない為定価で比べたのでフェアではないだろう。だがこのまま日本が定価の見直しをせず、また半期に一度のセール時期に思い切ったリダクションを行わなければ今回の状況はそのまま続く訳で、そうなれば①~③のサービスよりも日本国内の48%で物を買う方法を選択する流れはもっと広まるのではないだろうか。

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2012年1月15日 (日)

Price adjustment(海外通販総集編)

新年を迎えデパートやショップなど、どこも秋冬物のセールがひと段落したらしい。少しずつ春夏物の新作が入り、商品の入れ替えも進んでいるようだが、その分店内は統一感がなくどことなくよそよそしい感じがする。今期のセールは30~40%のオフプライスが殆どだったようでセール価格を見ても割高感がある。それよりも今はかってない円高の時勢、オンラインの海外クリアランスを利用する方がはるかにお買い得に違いない。

特にアメリカ本国のブルックスブラザーズ・オンラインは最も利用したショッピングサイトでU.Sメイドに的を絞り、シャツやジャケット、トラウザーズやスーツ、ベッドリネンなど随分注文した。ただし、確かにお買い得感は高いが同時にデリバリーのタイムラグやトラブルなど厄介なこともある。実際注文時の価格が発送前に更にリダクションされるという事態も起こった。尤もそこはオンラインショッピング先進国のアメリカ、Price Adjustment(プライスアジャスメント:価格修正)を要求したが、今回はオンラインショッピングの総集編として「個人輸入の利点と注意点」を紹介しようと思う。

1.ニューデリバリー

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前回紹介したブラックフリースのスーツに続いて到着したセールのシャツ。手前右のストライプのものはセールになりやすいが白のオックスフォードは年明け後は元の値段に戻っていた。$175の白シャツをクリスマス直後のセールを賢く利用すると$105(約8190円)で買えることになる。今回はボタンダウンではなくタブカラーとワイドカラーを選択したが、イギリスやイタリーのシャツとは異なる風合いとデザインで、先に購入したブラックフリースのスーツと合わせるのが良さそうだ。

2.ワイドカラーのオックスフォードシャツ

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カラースティッフナーの入らないワイドスプレッドのシャツ。洗濯機で洗いをかけ、手アイロンで皺の残る状態のまま着るのが様になりそうな雰囲気がある。襟がくたっとした感じは胴の絞りが強いサビルロウスタイルのジャケットやゴージの高いナポリ風のジャケットに合わせるとどうしても違和感がある。その代り、洗いざらしのままジャケットの下に着てノータイでラフに合わせるのに重宝しそうだ。余談だがブラックフリースのカフ部分は剣ボロにガウントレットボタンが付く。ブルックスのオウンメイクBDシャツよりも作りがしっかりしているのが嬉しい。

3.アイビールック

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届いたバーストライプのBDシャツをアイビーモデルのメルトンブレザーにパイプドステムのセミフラノトラウザーズと合わせる。久しぶりに出した3パッチポケットのブレザーだが、実は同じデザインのものをブラックフリースで注文している。既に「発送した」とのメールがあったが、届いた箱には同時注文のトラウザーズ1本が入っているだけだった。その後、ブレザーもまもなく届いたがスリーブボタンが付属していなかった為、メールで送るよう要望している。このようにオンラインショッピングは商品がばらばらに届いたり、付属品が整っていなかったりと様々なトラブルがつきものだ。

4.Vゾーン

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トリプルバーストライプのシャツは同じブルックスのナンバーⅠネクタイではストライプが似通ってしまうので縞の太いものを用意した。エンブレムは所属するクラブのものがないので、昔に購入した古い英国製(恐らくロンドンバッヂ&ボタン製)のものを仮留めしている。トラウザーズはプレーンフロントのパイプドステム。アメリカントラディショナルの流れを汲むアイビールックには古くて新しい魅力がある。

5.エンブレム

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金糸を使ったハンドエンブロイドのエンブレム。昔はトラッドショップに行くと必ず置いてあったが最近は見かけることもあまりない。1980年代に購入したもので金糸の色も経年変化でだいぶくすんでいる。ところでアメリカ本国のJ.プレスのサイトを見るとチェスト部分が箱ポケットのブレザーにもエンブレムをつけているが、やはりパッチポケットのブレザーこそエンブレムが様になる。

6.ブレザーの裏地

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今回撮影に用いたブレザーはJ.プレスのもの。赤のパイピングがブランドのアイコンだ。ブレザーはエンブレムより古いもので、日本にJ.プレスが紹介されたごく初期の1着。ライセンス品になる。1990年に初めてニューヨークに行き、J.プレスに立ち寄った時はこじんまりした店に驚いたものだが、当時は近くに有名なトラッド店Chipp(チップ)がまだ存在していて、本でしか知らなかったアメリカントラディショナルの名店巡りをしたことが懐かしい。

7.靴のコーディネイト

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アメリカントラディショナルに合わせる靴といえばオールデンが本命。フローシャイムやジョンストン&マーフィーでないのはブルックスネームの靴をオールデンが請け負っていたからに他ならない。右はカーフ素材のブルックス別注タッセルスリッポン、勿論オールデン製。左はブルックスのアンラインドローファーを参考に日本のユナイテッドアローズが代理店を通して別注を掛けた10thアニバーサリーの限定品。

8 タブカラーシャツ

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ブラックフリースのタブカラーシャツ。通常は小さめのカラースティッフナーが入るのがブルックスの特徴だが、こちらはワイドカラー同様くたっとした襟元になる。芯地が薄くナローなタイ以外は受け付けない作りで、ブラックフリースの細いラペルとタイトなVゾーンのジャケットに合うよう出来ている。今回のオンラインショッピングは全てブラックフリースのBB1を注文したのでサイズ違いこそなかったが、キャンセル扱いのスーツやブレザーの付属ボタンについてカスタマーサービスとは頻繁にやり取りしている。

9 ネクタイのコーディネイト

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シャツに合わせたネクタイを選んでみたところ。シャツがUSメイドならばタイもアメリカ製に拘りたい。左は1990年代初めのナンバーⅠストライプタイ、中央は2000年代に入ってロゴが変わった頃のブルックス製ソリッドタイ、そして右が1990年代、香港のラルフローレンで購入したアメリカ製のレジメンタルタイ。当時ラルフローレンのタイは菱屋という日本のメイカーがライセンス生産をしていたが、ちょうどインポート物を扱うラブラドールのようなショップに入り浸っていた頃で、本国物に拘っていた時期でもあった。

10. プライスアジャストメントされたトラウザーズ

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定価が$400だったフランネルトラウザーズが40%オフになった時に注文したので$240という表示が出た。ところがデリバリーの気配がないうちに50%オフの$200になってしまったので、あわててカスタマーサービスにメールを打ったところ、既に発送したので現在の価格に合わせて差額分をカードに返金するとの回答が届いた。どうやら注文の確認を受けてあわてて発送したようでこのあたりは世界共通、どこかドタバタ騒ぎのようで思わず笑ってしまう。

トラブルを解決する交渉力(英語で)と気長に待つ覚悟さえあれば、オンラインショッピングをそれなりに楽しむことができる。何といっても日本では考えられないほどリーズナブルな価格で手に入れられる利点がある。それにブラックフリースのように日本では入荷商品の数が少なく欠品が多い場合でも本国のサイトならば在庫はそれなりにある。後は買い時を逃さないようにすれば十分満足の行く結果になるはずだ。

一方、注文時にIn stock and reservedと表示されずにアイテムの発送が○月○日発送予定と表示される場合はトラブルが起こりやすい。在庫状況を確認し、オンラインショッピング部門になければ全米中の店舗在庫から発送するのでレシートにはロデオドライブ店やマディソン本店などあちこちのアドレスが印刷されていた。この段階こそヒューマンエラーが頻繁に起こる可能性が高く、厄介なトラブルを回避するにはやはり十分な在庫があるものを購入するのが一番だろう。

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